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ファンであることについて、そして旅をすること

péro / Drop Shoulder Oversized Coat / 122,000+tax

洋服やジュエリー、そしてワインやコーヒ、アートなど芸術作品まで様々な分野において、私は土着的なものに憧れます。その憧れの眼差しは、あくまで生活者でなく訪問者であり、エキスパートでなくいちファンであるというスタンスに置かれているものです。いちファンはその地に詳しい訳でもなく、文化を知っている訳でもなく、住んだこともなければもしかしたらその地の空気を吸ったこともないかもしれない、だけれどファンとして心からの尊敬と憧れと興味を抱いてそれらを見つめる視点を持っています。

深くを知らないことの面白さは、知っていないことに対して責任を問われないことと、それらをファンとして享受することで遠い異国の地を旅している気分にさせてくれることでしょうか。そしてこれら土着的なものの何よりの価値は、そこにしかない、その土地でしか育まれてこなかった貴重な資産であることと、それらが未だどこの国をも旅をしていないという出会いの奇跡かと思います。

péro / Regular Collar Shirt / 58,000+tax

インドのローカルな人々のドレスからインスパイアされ、インドの伝統技術を用いたテキスタイルを用いて、インドの人々の手で紡ぎ出されるpéroの洋服たちは、インドから旅をしたことはなく、それらが買い付けられた− 例えば日本 −へ、インドの空気を、匂いを纏ったまま、初めて旅をしてここ日本へやってきます。

そして私と、あるいは誰かと奇跡の出会いを果たした時、その土着的なものへの憧れは単なる憧れであり尊敬で、純粋な感動のみが湧き上がってきます。そしてそこには、日本にいながら未だ訪れたことのないインドの土を踏みしめる足や、ラジャスターン州の空気を吸い込む鼻や喉の渇きを感じられる、行ったことのない旅の記憶がどこからかやってきます。(守屋)

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シンプルなフォルムはどこから来るのか

forme / Side Zip Boots / 64,000+tax

突然ですが、シンプルなフォルムについて敢えて逆説的に考えるとするならば、それは自然発生的に現れるものでもなければミニマリズム的でもなく、手軽で簡素なものでもない非常に神聖でダイナミックなフォルムなのではないかと思います。formeというブランドについて考えた時に浮かんだのは、「シンプルなフォルムはどこから来るのか」という問いでした。

formeのシューズや革小物は一見するとシンプルで端正で奇をてらったようなデザインの物がありません。それらのフォルムを生み出す要素は、デザイナーのミニマリズム的な価値観の表れでは決してないはずで、あるいは複雑性を削ぎ落とした安直なデザインの結果でももちろんないはずです。よくよくformeのシューズを観察すると、足首に沿うようにカーブした美しい曲線や、かかとから足首をしっかりホールドするような柔らかな後部の曲線が見て取れます。

装飾のない足入れの筒の始まりには、丁寧な革の始末のあとと職人の手仕事の美しい痕跡がちらりと顔を覗かせています。ただ真っ黒に静かに存在感を放つ革そのものさえも、シンプルでいながら高度技術を駆使したタンナーの手によって、生々しい革の表情を持つ素材そのものから、神秘的な輝きや品格を持つ重要な構成要素としての素材へと変身を遂げています。

それらの要素を眺めた時にふと思った問いに対する私なりの回答は、「シンプルなフォルムはデザイナーの自由なアイディアと素材が課せられる物理的制約の間で生まれるのではないか」ということです。制約と機能とがぎりぎりのバランスを保ちながら、その結果としてシンプルなフォルムへと全ての要素が集約されていく—シンプルなフォルムとは偶然の産物でも近道を辿って行き着く目的地でもなく、調和から生まれる非常に自然的宇宙的産物なのです。(守屋)

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1%にさえ

Phlannèl / Wool Yak Cable Knit Short Cardigan / 38,000+tax

異素材を組み合わせるという方法論は、現代の環境変化に対応出来るような快適な着心地を求める市場のニーズや作り手の欲望と、その願いを叶えることが出来るようになった技術の進歩に支えられています。その二軸によって、古くから衣服に使われてきた天然素材の持つ利点は最大限に引き出されるようになりました。

高級素材といわれるカシミヤには敢えてウールを掛け合わせることで、カシミヤ特有の毛玉を抑制し、ウールが持ち合わせるハリのある表情を生み出すことを可能にします。それでいてカシミヤ本来の柔らかな質感を損なわないままに仕上げられたニットは、お互いの弱さを打ち消し、強さを引き出し合うという最良の結果を生み出しています。

ヤクとウールの組み合わせも同様に、ヤクの柔らかな肌触りは得てして型くずれの原因にもなり、ウールは単体だと肌触りではヤクに劣りますが、そこで両者を組み合わせることで耐久性のある柔らかな着心地の衣服が誕生するのです。このように、異素材を組み合わせる方法論は市場ニーズに応えた商品を生み出す結果をもたらしてきましたが、そこに映し出されるのは、どんな思いや意図を持ってそれらの方法を選択したのかという、作り手の価値観に他なりません。

ウールを掛け合わせた理由は、もしかすると単純に、ハリのある強い表情を表現したかっただけかもしれません。もしくは、長く使うことを想定して耐久性を優先した結果かもしれません。ただのその結果の中にも、ベースをカシミヤでなくヤクを50%にした理由や価値観があります。ウールを45%合わせた上でモヘヤを5%追加した意図もあります。もしくはリネンを60%にした思いがあります。

Phlannèl / Arles Wool Linen Wrap Skirt / 34,000+tax

素材の1%にさえこめられている作り手の思いを感じてみることは、衣服を纏う上では少々過敏な感性かもしれません。ただ、それを持つ人と持たない人が作り手との間に感じる距離はきっと違ってくるのだろうと思います。(守屋)

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見えない未来の話

SEEALL / HAND LOOM TELAR COAT Brown Mix / 105,000+tax

あらゆる物事を正確に予見するテクノロジーの進歩は驚くべきスピードで進んでいます。台風の進路予想は数日前から正確に把握できるようになり、それによって電車の臨時ダイヤのアナウンスがあり、労働時間の調整さえも前もって行われる、そんな時代になりました。

SEEALL / HAND LOOM CARDIGAN JACKET / 93,000+tax

様々なものごとが先読みできるようになった現在において、見えない未来はほとんどないと言っても良いくらいで、予想外の展開はなかなか起こり得ないものになりました。

本来であれば、未来は予見することが難しいものであったでしょうし、だからこそその見えない未来に人間は不安を抱くのであって、それ故に発展してきたのが情報テクノロジーです。その素晴らしい武器を片手にして今思うことは、見えない未来に不安を抱いたり、期待したり、わくわくしたりする純粋な人間としての感覚の繊細さと尊さです。

見えない未来があるからこそ、その未来にいるお客様を想像してお店に並べる商品をセレクトすることが楽しいでしょうし、見えない未来があるからこそ、自分自身の更なる飛躍や店の発展に期待を掛けて努力することも出来ます。あるいは、見えない未来に不安を抱くからこそ、現状に満足しない危惧の念を持ち続けることが出来ます。

SEEALL(全てを見る)というブランドがこれから歩もうとするまだ見えぬ未来に期待しながら、「見えない未来」の儚さを慈しみ楽しむ感覚を久しぶりに味わうことが出来ました。ファーストコレクションとなりました19AWシーズンのアイテムを、そんな今、是非見ていただきたいと思います。(守屋)

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纏う時には聴覚を働かせて

MARIA RUDMAN / SAMI Series / 48,000〜

日本より遥か遠く、緑豊かなラップランドの地にも文明は着実に歩を進めています。多くの人の想像を裏切るかのようですが、伝統を重んじるサーミ族の生活の中にもガソリンで走る自動車や一般的な電化製品は当たり前のように存在しているといいます。電波も、その及ばぬ地を知らないかもしれません。

(Top)SAMI M 5 / (Bottom)SAMI M 6 / 68,000+tax

そんな土地で、今はかなりご高齢になった女性が少しずつ制作を進めているというMARIA RUDMANのジュエリーは、どんな音に包まれているのでしょう。想像してみたことはありますか。

ジュエリーが生まれるアトリエは、街の中心地にあるのでしょうか、それとも少し離れた土地にひっそりと佇んでいるのでしょうか。そこには、風のそよぐ音、雪のしんしんと降り積もる音、動物の鳴き声は聞こえてくるのでしょうか。はたまた、車の走る音が日本のようにどこにいても空間を揺らし、響き渡ってくるのでしょうか。

SAMI L 1 / 102,000+tax

アトリエの扉を開いて中に入ると、そこにはコツコツと制作を進める静かな時間の流れる音があるのでしょうか。それとも、仲間同士の語らう声が聞こえてくるのでしょうか。あるいはラジオから流れる音楽が聞こえてくるかもしれません。トナカイの革にピューターを刺す時、その糸を抜く時はどんな音がするでしょうか。「シュー」、「ポツリ」と心地よいリズムでそれは続くのでしょうか。

知らないことを知ろうとする時、服やジュエリーを纏う時、調べる前にまずは目の前にあるものを触覚、視覚、嗅覚を使って全身で感じて理解しようと試みてください。そして聴覚までもをフル稼働させ、想像力を働かせてそこに隠れたストーリーを読み解いてみてください。そうした時、現実には存在しないかもしれないけれど、誰もが体験でき得ない新たな世界が広がり、思ってもみなかった素晴らしい体験が出来るはずです。(守屋)

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