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Phlannèl Special Interview - 新たな挑戦の話

Phlannèl / Goat Suede French Army Vest / 70,000+tax

3回目を数えるPhlannèlデザイナーへのインタビューを2020SSシーズンアイテムの発売と共に掲載いたします。今シーズンより遂にレザーアイテムを手掛けるなど、これまで以上に深みを増し独自の色彩を帯びた新シーズンのコレクションを是非お楽しみください。そして、こちらの記事を通して現在のPhlannèlが見つめる視線の先を共有出来ればと思います。

 

生地は生き物

20SSシーズンのアイテムがリリースとなりましたが、今季のコレクションで新たに取り組んだこと、意識したことなどあれば教えてください。(守屋)
─この後の質問でも出てきますが、formeさんとのコラボレーションシューズの制作やレザーアイテムの制作が新たな試みです。あとはPHLANNÈL SOLのラインナップを増やしました。PHLANNÈL SOLだけでもよりブランドとして成立するようになったと思います。(Phlannèl 浅川)

意識的になのか、結果的になのか、今シーズンは前回よりもまた更に素材のクオリティの高さを感じました。展示会でどの素材のアイテムに触れてみても、すごく肌馴染みがよかったことが印象に残っています。
─19AWでもそうでしたがPHLANNÈL SOLが存在することで、Phlannèlコレクションの方は素材をアップグレードして制作しています。今季はそれに加えて、春夏のコレクションということもあり夏に快適な薄手の素材の使用を意識しました。軽やかさがありながら、その中でもテクスチャーなどではバリエーションを増やして、抑揚のあるコレクションに仕上げました。(浅川)

今シーズンのアイテムで特に作るのに苦労したアイテムはどれですか。(守屋)
─実は、洋服というのはデザインはあまり変えていなくても、そのデザインを新しい生地に乗せると突然何かしらの歪みが出てしまったりするもので毎回違う苦労があります。生地は生き物なのだなあと、そういった時にいつも実感します。ただ20SSは比較的作りやすい素材が多く、順調でした。敢えて挙げるとすれば、やはりレザーです。中々思うような仕立てにはなりませんでした。(浅川)

例えばどんな部分でしょう?(守屋)
─断ち切りの縫代始末のレザーは、なるべくその部分の幅が均一にいくように気をつけたり、前端や袖口カフス端などは特にですが、出来る限りフラットに仕上がるようプレスをかけたりなど綺麗に仕上げるのに細かく細かく注意して制作しました。これまでもお付き合いがあり信頼している先に縫製依頼をしていますが、また新たな課題も見えてきたりもします。(浅川)

そうは言ってもPhlannèlらしく無駄の削ぎ落とされた簡潔なアイテムの顔が見えて、とても素敵な仕上がりだと感じました。(守屋)
─同じパターンでも縫製工場や作り手によってやはり仕上がりの顔は全く別のものになります。日本人は良くも悪くも生真面目なので、綺麗に綺麗に仕上げることだけに気を取られると、悪くいうとつまらない、雰囲気のないものになってしまいます。例えばBLOOM&BRANCHにあるヨーロッパの服は、縫製が優れて美しい訳ではないものがあったとしても他にはない雰囲気を持っていますが、そういうバランスの取り方一つにも個性は表れます。(浅川)

すごく勉強になります。そんな中で今季どうにかリリースを叶えたレザーアイテムなのですね。(守屋)
─今季は今まで手を出してこなかったアイテムに挑戦しようと決め、Phlannèlらしいレザーアイテムを作ることに挑戦しました。素材は、ヌバックのようなゴートスエードを採用。Phlannèlらしい赤みのあるベージュ色をつけました。裏側をナッパラン加工という表革のような加工を施し、裏地をつけず、一枚仕立てにし、軽やかに着ていただけるように仕上げました。レザーアイテムはまだまだ開発模索中ですが、これから定番にしていきたいと考えています。(浅川)

Phlannèl / Cotton Cashmere Lily-yarn Knit Cardigan / 38,000+tax

「白」の明るさ

本来のPhlannèlらしさに立ち返ったとお話していた19AWのものよりも20SSはまたカラーパレットががらりと変わった印象ですが、今季はどんな気分や思いが反映されていますか。(守屋)
─大理石や鉱物などの石の色目を中心に据え、それを支えるベーシックカラーとして黄味の強い生成りを提案しています。 この「黄味の強い生成り」はベーシックカラーでありながら、全体のコレクションを明るく華やかにする役目も果たしています。ヴィヴィットな色を好まないPhlannèlとしては、白や生成りの分量を増やすことで明るさを表現しています。Phlannèlはどうしても渋めの色を好んでしまいますが、春夏のコレクションは秋冬よりも少し明るくなるような色目をつけたくなります。そのような中でPhlannèlらしさを保ちながら、とてもバランスの良いカラーパレットになったと思っています。(淺川)

Phlannèl / Cotton Cashmere Lily-yarn Knit Pullover / 38,000+tax

今季はバリエーションが増えたというPHLANNÈL SOLですが、定番アイテムのアップデートはありましたか。(守屋)
─Tシャツとチノパンをアップデートしました。まずTシャツの方は、今までは肌触りの良いスビンコットンをメインとしていたのですが、ある程度定着してきてリピートしてくださる方も増えたので、バリエーションとして真逆のジャージ素材を新しく作りました。空紡糸を度詰して、カリッとしたタッチのハリのあるジャージです。70年代のフルーツオブザルームのTシャツ生地をイメージし、それをPHLANNÈL SOLのフィルターを通して上品に仕上げています。特徴としてはシルエットが立体的に出ること、そしてハリ感によって身体から自然に離れるので夏に風通しがよく、涼しいです。今回はまだですがこれからリリースになるので楽しみにしていてください。

PHLANNÈL SOL / FW-128 / 22,000+tax

チノパンは新型を1型増やしました。20世紀初頭のワークパンツから着想した「FW-128」というモデルです。深い股上とゆったりした腰回り、裾にかけて緩やかにテーパードするシルエットなどベースの部分はそのまま活かしましたが、シルエットを現代的にアレンジしています。(淺川)

現実と非現実の均衡

19AWシーズンからPHLANNÈL SOLが始まったり、日本人モデルを起用したビジュアル制作だったりと、リアリティに寄り添う一方で非現実的なロケーションでのイメージビジュアルがあったりして、「リアリティ(=生活の一部)」というPhlannèlの芯の部分と同時に進む新しさのある独自世界の広がりが引き続き新鮮な20SSコレクションですね。(守屋)
─イメージビジュアルやカタログの作成は毎シーズン、アートディレクターの方を中心に更新し続けています。皆さんプロの方ですから色んな引き出しが沢山あり、毎回楽しみなお仕事でもあります。日常に寄り添う服だからこそ、ロケなどで非日常な空間と組み合わせることで、リアリティになりすぎない表現を用いたりというのも意識はしています。(淺川)

アンテナを張り続けること、インプット・アウトプットの継続を前回述べられていましたが、淺川さんご自身の中でそれらの方法の変化や意識の部分での変化などはあったのですか。(守屋)
─意識していることはこれまでと全く変わっていません。Phlannèlのデザインにおいても、長く着れる服を作りたいという根底の思いは変わっていませんが、ブランドに携わる時間が長くなればなるほど、それを忘れずにブレずにいることの方が大変になります。なのでそのブレを作らないよう意識しながら、それでもPhlannèlは自分自身の感性と感覚を頼ってデザインしています。一方でPHLANNÈL SOLは、より他にはありそうでないもの、そして長きに渡ってベストセラーになるような名品を生み出したいと考えながらの開発です。が、中々難しいです。頑張りたいですね。(淺川)

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ことばの箱から漏れた空気は

40's French Army Belted Pants / 30,000+tax

「ことば」という箱には全てを有形物のように見せる特殊な力があります。目の前にある絵画や耳に聴いた音楽、食べた料理などに関する一般的魅力や個人の主観、それ以外の付属説明などの無形の欠けらを集めて「ことば」という箱の中に入れると、多くの人にある程度の同一感覚でそれら無形のもの(=感情)を共有することが出来るようになります。

心の中にふわふわと浮かんでいる、色のついた空気のような無形のもの(=感情)も、「ことば」という箱に収めてみるとその色のついた空気は他人にも見えるようになって、それがブルーなのかピンクなのか、イエローなのかを共有することが出来るようになります。

ただ、その「ことば」の箱に押し込んでみようと思った色のついた空気は、空気なので少し漏れ出すこともあります。その漏れ出た部分の共有が難しいからこそ、他人へは自分の感情を言葉で全て伝えようと思っても、どうしても完全理解に至らないという難しさがあるのだろうと思います。そして実は、こぼれてしまった側の色のついた空気の方が濃度が濃かったりするのです。本当はこっちの漏れてしまった側が大切で、こっちを上手く言語化出来たらよかったのに、どうしてか空気は知らぬ間に漏れ出てしまうのです。

そしてその「ことば」の箱から漏れてしまっている部分への理解度というのは、相手がどれだけ自分と似た価値観を持っているかに起因していて、言葉を発した人と全く違うフィールドで生きていてきた人や価値尺度が異なる人にとっては、箱から漏れてしまった空気の色を推測することは非常に難しいと思います。だから特殊な力をもつ「ことば」の箱も万能ではなく、それほどに人間の感覚というものは複雑なのです。

French Navy Breton Shirt / 14,000+tax

どうしてこんな話をしているかと言いますと、ビンテージの良さというのはどれだけ”希少性”や”味わい深さ”や”面白さ”を「ことば」の箱に押し込めてみても、きっと箱の中身を共有出来る人とそうでない人とは二分されるものだろうと感じたからです。その箱から漏れた空気の色を言葉を介さず共有出来る人とでないとわかり得ない部分に、それらの良さと面白さの真髄があると思ったからです。けれど、そういった類の洋服は非常に面白くありませんか。どれだけ蘊蓄があろうと、情報があろうと、結局はそれらが届かないところに、真の魅力はあるのですから。(守屋)

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あるべき場所にある美しさ

Bergfabel / Shearing Work Jacket / 280,000+tax

東京に住む人が京都や金沢や、そして北海道、沖縄に旅行に行くのは、きっと美しい景色を見たり美味しいものを食べたりして、東京では味わえないリラックスした気持ちと美意識を体感したいということが潜在的な理由になるかと思いますが、そこでふと思ったことは、東京に住むどれだけの人が、この東京の街を美しいと日々思っているかということです。そして私自身は、東京の街を「美しい」と思うことは控えめに言ってもほとんどありません。

古都金沢の街並みが美しいのは、その古き良き建築物や美術品があるべき姿でそのまま残されているからでしょう。そして新しく造られる建物やお店や道路にしても、ありとあらゆるもの、街の景観を作りあげているものたちはあたかも昔からそこにあったようにすんなりと街に馴染んでいます。その「あるべき場所にある」美しさが、長きにわたり人々を引きつける景観の美しさを保っている金沢の特色でしょう。

沖縄の海や北海道の緑が美しく感じることも同様の理由で、もちろん人間が作り出したものでは無い自然というものは、あるべき理由があってそこに存在しています。寒い国にはその土地の気候にあった緑が育ちますし、食物もその土地にふさわしいものが自然と育ち、その土地の名産となります。美しい海やサンゴ、そして色鮮やかな魚たちはその温暖な海の気候にあった生き物だからそこに存在しているわけで、それがそのまま寒い海に移植されることは決して不可能な話です。

Bergfabel / Farmer Coat / 155,000+tax

あるべき姿のまま存在している自然や、あるべき姿のまま残された景観に美しさを感じる人々は、不用意に作りあげられた景観や商業ベースの建築物には決して「美しい」という感情を抱くことはないと思います。便利で快適かもしれないけれど、それと美しさはもしかすると対極にあるかのように遠い意識の違いであるようです。

洋服についてもきっと同じで、着るべき人が着ていれば、どれだけ古いものでも美しいし格好が良く、視線を一心に集める存在になるであろうと思っています。そしてあるべきクローゼットに収まっている洋服の姿も同様に美しいものです。この洋服の隣にはどんなものが掛けられているか──それだけでその服の心地良さそうなオーラやそれが放つ美しさは変化します。お店ではあるべき場所に収まってその美しさを魅せてくれる服たちがここにはありますが、誰かのクローゼットの中でも同じように心地良さそうに収まっていて欲しいなと、そう願うばかりです。(守屋)

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今見ているもの

灰釉粉引花入(松) / 10,000+tax

自然のものが絶対的な善であるとは限らない。自然から採取される天然の塩は、ミネラル由来の旨味と塩味を持つが出汁のような複雑さを伴う味わい深さを増進させることは出来ない。バランスよく整えられて用意された人工調味料は、それだけで味の濃さや旨味、重層感全てを増進させることが出来得る。

青灰稜花六寸台皿 / 5,500+tax

利便性と手軽さを重視すれば、もしかすると自然のものよりも人工のものの方が理に叶っていると言える場合もある。ただ、本当に身体が心地よく健やかに感じるものはどちらだろうか。そこに正解はなく、全ては個々人の感覚に委ねられる。

灰釉粉引片口(大・淡緑) / 7,500+tax

自然のものが絶対的な善であるとは限らない。自然から採れるものだけを調合した釉薬は色が安定せず、思った通りの色彩表現をなし得ないこともある。同じものを複数生産するためには、化学に頼り、色を安定させて思い通りの仕上がりを叶えてくれる釉薬の方が適していることは言うまでもない。

思っても見ない仕上がりを自然物ならではの表情と喜ぶか、色合いの異なる対のマグカップに違和感を覚えるかは感性の違いでありどちらも正解や不正解の価値指標には則らない。全ては個々人の感覚に委ねられる。

淡緑三島大皿 / 30,000+tax

自然のものが絶対的な善であるとは限らない。人工物が絶対的な悪であるとも限らない。ただ、自分の持つものや当たり前に世間に広まっているものたちを全て手放してみると、そこにただ在る自然のありのままの姿を、そのまま受け入れることが出来るようになるのかもしれない。不便も歪さも何もかもが、心地よく手を取り合って自分の中で成立するようになるのかもしれない。全ては、個々人の感覚に委ねられている。(守屋)

【川口武亮 / 今見ているもの】
WEB SHOP個展会期:12月7日(土) - 9日(月)
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