BLOG

ふつうが普通でなくなった今

knitbrary / Two-tones Fisherman Sweater / 90,000+tax

欲しいコートを試着してみて、同行している友達やパートナーに感想を尋ねたとき、「ふつうだよ」と言われたりしたことはありませんか。恋人や家族と食事に出かけて、同じ皿を味わっている時に「ふつうに美味しいね」と感想を述べあったりしたことはありませんか。

私が接客業をしていた時に良く耳にしていたのは「ふつうのニットが欲しいのに探すとないんです」、あるいは「ふつうに使いやすいバッグでおすすめはありますか」といった声でした。「ふつう」とはつまり可もなく不可もなく丁度良い具合である様を表す言葉ですが、今日において「ふつう」が示すニュアンスは肯定的でポジティブな意味合いが強いように思います。

knitbrary / V-neck Cables Sweater / 110,000+tax

とびきり美味しいパスタではなく安心感があって幸福感が得られる「ふつう」に美味しいパスタ。品質が良く見劣りしない、袖を通した人だけが黙って肯いてしまうような満足感があり、そして長持ちするけれど特別目を引くわけではない「ふつう」に素敵なニット。要は何て事のなさを持ち合わせた「良いふつう」を求めているだけのことなのです。

少しのデザインや個性や利便性など思いつく限りの付加価値たるものを付加させようとこぞって社会が動き続けた代償は、どこにでもあったはずの「ふつう」が消えてしまったことなのだと私個人としては感じています。「ふつう」は今日では「ふつう」ではなくなり尊く稀な存在になってしまいました。なんて事のない、「良いふつう」はどこにあるのでしょうか。(守屋)

BLOOM&BRANCH WEB SHOP
BLOOM&BRANCH Instagram

「はずす」ための訓練

Le Yucca's / Le Yucca's Sneaker / 148,000+tax

「はずす」「着崩す」「抜け感を出す」など、近年消費されるようになってきた言葉がありますが、ともするとそれらの言葉達は勝手に一人歩きを始めていて、そもそも根元にあったはずである「はずす」ためのルールというものが全く見えていない着こなしを街で散見するようになったと私個人としては感じています。

ファッションにおける「はずす」という言葉は「ルールから外れる、逸脱する」ことを指しているのでしょう。つまりはずすということは、いわばバランスボールの上に真っ直ぐに立ち上がっている状態から、片足を持ち上げて立てるようになるというようなもので、勿論その難易度は上がり、そして卓越した体幹やバランス力が必要になるはずなのです。

ここで言うところの体幹とはつまり着こなしにおける「ルール」に対する理解度のことであり、スーツスタイルの原点的着こなしのルールやアイビールックの原点的着こなしのルールを心得ていることがその体幹の強さに当たります。そしてバランス力とはそこから外れる塩梅を見極める能力のことであり、適度にルールから逸脱するセンスのことです。

Le Yucca's / Suede Ghillie Shoes / 118,000+tax

それだけ洋服や着こなしに対する前提理解や、繊細で熟練した技もしくは先天的な能力が必要であるはずの行為を、その先端だけ掻い摘むことで達成しようとするのは少し横柄で強引で短絡的に過ぎるところがあるのではないでしょうか。着こなしとは本来コミュニケーションツールであり、自分がどんな人間でどんな価値観を持っているのかを一番外側で表現するものであるはずなのだから、そんなに簡単に小手先で完成させてしまっては非常に勿体無いと思わずにはいられないのです。

おそらくこのスニーカーやスエード靴も「はずし」のアイテムとして一役買ってくれることは間違い無いのですが、上記のように短絡的に考えていてはきっと「はずれ」ないままに終わってしまいます。バランスボールに片足で立ち上がって不自由なく読書でも出来るような技を身につけるくらいに、理解を深めて技を磨いた人に是非おすすめしたいと思います。それだけ、Le Yucca'sのシューズは単純なものでは無いといことだけをお伝えしたい次第です。(守屋)

BLOOM&BRANCH WEB SHOP
BLOOM&BRANCH Instagram

不要なパンデミックを起こさぬよう

KIJI / OUDO - Natural / 28,000+tax

次の秋冬シーズンに向けた別注商品のご相談をさせていただくため、先日あるブランドの方とお話をしていたところ「別注商品の依頼は多く受けるがBLOOM&BRANCHのように継続してリリースしているお店は決して多くはない」ということを伺いました。我々は何かを始めるときは必ず「継続すること」を意識しているので、そのお話は少し意外でした。

何かを続けるということは良く見える側面も、その反対の側面も勿論持ち合わせていて、例えば長期的な視野を持つためには流行だけを見つめることは不要になり、じっくりと腰を据えて安定的な取り組みを行うことが出来る良さがあります。生産者やどこかのブランドの協力を得てものづくりをする際も、お互いに消費されることを恐れず、長く続く良いものを作ることだけを考えて膝と膝を付き合わせて話を進めることが出来ます。

KIJI / SHIMA - Natural / 25,000+tax

反対に、「継続=変化がない」ということになるとどうしても市場からは飽きられてしまい、せっかく良いものを発信していてもそれを適切に伝える機会を逃してしまうことになります。変化がないことは惰性と取られてしまうことは往々にしてあるでしょう。それを逃れるためには、少しずつ少しずつ、変化させ成長させながら地道に何かを続けていくという、いわゆる忍耐力のようなものも同時に必要になります。大きな社会的影響は起こせなくとも、良いものを適切に伝えられれば良く、そしてその波及力は継続することで徐々に大きくなれば万々歳といったところでしょうか。

イノベーションは私たちの生活の余分な隙間に入り込んでせかせかと生活の速度を上げ、得られる情報量を圧倒的に増大させ、そしてそれらの及ぶ広さは想像も出来ないところまで広がっていますが、そんな経済やビジネスのダイナミズム主義のような感覚から程遠いところにいる我々の現在地について、先述のお話を伺い改めて認識するに至りました。

我々はこれからも少しの成長と変化を伴って少しでも長く継続させることをミッションとし、不要なパンデミックを起こさぬよう、地道な活動を続けていくことしか出来ないのだと思います。お陰様で継続しているKIJIのデニムシリーズも、見えにくくはありますが少しずつ成長をさせている商品です。そしてコットンそのものの糸の色を活かした新色のNaturalカラーをリリースする取り組みは、継続する為の少しの変化の証です。(守屋)

BLOOM&BRANCH WEB SHOP
BLOOM&BRANCH Instagram

肩書きというのは非常に曖昧なものである

TENDER Co. / COTTON MOHAIR TAMMY YOKE POCKET SHIRT #1 / 48,000+tax

洋服をデザインする人の中には、構築的なパターンと立体的なシルエットを作り出す建築家のようなデザイナーや、美しい絵画を描くように色彩と操り眼前にその表現を魅せる芸術家のようなデザイナーもいます。そしてウィリアム・クロール氏のように対象物に対しての溢れ出るほどの探究心を持って向かい合う研究者のようなデザイナーもいます。

もともと持っている彼の探究心の深さは言うまでもなく、その研究者としての眼差しは、きっと彼がセントマーチンでの教授職についているという彼自身の生き方が寄与するところが大きいのかと思います。学びの場に身を置くということは、実際的にも多くの文献に触れる機会が多いのではないか、そういった現実は彼の持つ研究熱心な姿勢をより加速させるのではないか、ということは容易に想像が出来ます。

そしてそういった研究者のような眼差しを持つデザイナーが生み出す服はアーカイブの単なるサンプリングに終始することは決してなく、例えば労働服としてデニムが機能していた時の時代背景、その時代の人々の生活、その土地の風景全てがしっかりと咀嚼されていて、彼の中で醸成され、彼のフィルターを通して、全く新しいものとして生み出されているのです。

また、いつも実験的な植物染料などを用いた染色は研究者としての実験の様子を想起させます。そしてそれによって表れる見たこともないような色彩は、化学反応を起こした実験結果のようです。良い結果がもたらされた際にはその染料は長く使用されますが、それが使用できなくなった際には新しい染料を求めて新しい実験がまた繰り返されます。研究と実験は終わることがありません。(守屋)

BLOOM&BRANCH WEB SHOP
BLOOM&BRANCH Instagram