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限界点を探る

NICENESS / GUY / 48,000+tax

細かな意匠がそこかしこにと作り込まれ、そこに作り手の叡智が凝縮されているほど、その物にまつわるストーリーはより長くなり物語としての存在感を増していきます。それというのは本来ならば作り手本人から語られるはずのものであり、あるいは本人から直接聞いた物語をまた誰かへと語り継いでいくことで、それは持ち得るエネルギーを保持し続けることを可能にします。

ギミックの効いたアイテムの蘊蓄は、調べればある程度のことはインターネット上で知ることができます。それに対して私たちは知識を得たかのように感じ、知った気になり、その作られたものの意図を理解していると感じて消費活動を行うことが多かれ少なかれあるでしょう。知っている気になっているデザイナーの思いとは裏腹に、私たちはその思いを抱いているデザイナーの顔すら、実際は知らないということが往々にしてあり得るというのに。

私自身、価値ある情報はきっと一次情報あるいは二次情報くらいまでに留まるものと思っています。実際に目で見たり聞いたり触れたり、あるいはそれを実際にした人から直接その具合を聞いたりすることだけでしか、本当の意味で何かを体験したり理解することは難しいのではないかというのが、私の実体験に基づく個人的な見解です。

だからこそ、簡単に調べたりすることをよしともせず、こう言ったインターネットの上での文字情報に必要以上のことを書くことはせずにいたいし、知りたい人は実際に店に行ってプロの販売員からそれらの情報を聞くべきだという思いはいつまでも拭い去ることはできません。ただ、時勢もあるからこそ、それらの体験をオンラインでも提供できる方法を、私たちは模索している最中です。むやみやたらなオンラインでのそれとは、絶対に一線を画したものを提供したいと切に思っています。(守屋)

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Contradiction

KIJI / KACHI ICE BLUE / 27,000+tax

KIJIの定番アイテムであるデニムシリーズは、今更ながらの説明になりますが、デニムの本場であるアメリカのデニムを目指していない、あるいはそれに近づかないようにしているという点で新しさがあると思います。そして国産デニムといえば日本が世界に誇ることの出来る製品の一つであることは揺るぎのない事実であるにも関わらず、KIJIはその国産の良さすらも新しい解釈を持ってオリジナルな価値に変容させています。

コットン素材の藍染のセルビッチ付きで、アタリはLevi'sのビンテージのように縦落ちするデニムというのがその世界での善だと捉えるならば、そもそも素材からしてその定説に背いているのがKIJIです。基本から筋違いであるのに、一方では縦落ちする経年変化の風合いという良さは保っているのです。ビンテージのデニムであったり国産の技術を示すキーともなるセルビッチは、パンツの筒の外側に持ってくることはせず、それゆえに裾を折ってもその技術を見せびらかしたりすることなど不可能になります。

しかしその技術をKIJIのデニムはしっかりと受け継いでいて、誰にも見えない腰回りの内側の部分にそれを潜ませており、極め付けにそれは、多くのデニム愛好家が好む「赤耳」ではないのです。そんな多くの矛盾を孕んだデニムの新作のICE BLUEは、USA製のビンテージデニムのようなムラがあってのっぺりとしていない色落ちというのを敢えて避けています。その真逆をつき、逆説的に単調で均一でのっぺりとした表情を持っています。

そののっぺりとした表情はビンテージデニムでいうならばあまり良しとされない表情であるはずなのです。これがKIJIのデニムとなった途端、ヨーロッパのビンテージのトラウザーなどを主なデザインベースとしていることも相まって、その単一的な表情がシャープさや品の良さを保ってカジュアルな雰囲気を抑えるという新しさを持ち始めるのです。そんな新作デニムは、「新しい定番」という多くの矛盾を含んだ言葉で表現されうる一本となるのでしょう。(守屋)

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どこにでもありそうなどこにもなさ

KaILI for BLOOM&BRANCH / UTOU US (LIGHT GRAY) / 16,000+tax

BLOOM&BRANCHが常々やっていることといえばいかに普通を貫けるのかということだけであり、どれだけ奇を衒うことを避け、生活に馴染ませていけるかという限界点の突破へと邁進しているのみです。これだけ多様なものに溢れ、フォトジェニックな場所やものが珍重される時代において、全く逆の方向へと歩を進めているようにも見えてしまいます。

このKaILIのエクスクルーシブアイテムは何が特別なのかと言えばその色のみであり、さらにはかなり普通の色を特別に作ってもらっているものです。どこにでもありそうなLIGHT GRAYとSAND BEIGEですが実はどこにもないのです。特に今年らしい色であるわけでもなく、どんな時代にもありそうな、本当にありきたりな色なのですが、何度も言いますがどこにもないのです。

KaILI for BLOOM&BRANCH / UTOU US (SAND BEIGE) / 16,000+tax

ミルクコーヒーのような柔らかなSAND BEIGEは流行りのグレートーンのベージュとはまた異なりカーキを帯びた格好良いベージュともまた異なります。落ち着いていて優しそうで、安心感や懐かしさを感じるような、どこにでもありそうなSAND BEIGEです。コンクリートの冷たさはないけれどしっかり青さはあるLIGHT GRAYはBLOOM&BRANCHの店内に同化してしまって本当に目立たなくなります。それくらい普通のLIGHT GRAYです。それなのにどこにもない色です。

その“どこにでもありそうなどこにもなさ”は、UTOUというデザインとの親和性がとても高いと感じています。どこにでもありそうな普通のデザインに見えて、その実力や隠されたギミックは使った本人にしか分からないし、それも雷が落ちたような衝撃的な感動体験を提供してくれることもないのです。美味しい食べ物の栄養がじわりじわりと体内に染み渡って、気がついたら身体を健やかに育ててくれているような、かなり意識しないと見逃しそうになるほどの感動を提供してくれます。そんなものどこにあるでしょう。(守屋)

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私の欲しいものはどこにあるのだろう

Vintage / 60s French Air Force M-47 Field Pants Lately Dead Stock / 24,000+tax

過去にもVintageに関する記事をこちらの書いていましたが、その時にも「希少性だけが価値ではない」といった旨のことを書いていました。人の価値観はそう簡単に変わることがないのだなと変に感慨深くなり、同時にそんな自分自身に安堵感を抱きました。

先日公開されたコンテンツでもディレクターの柿本が話していますが、希少で高値になったものであっても、市場がこぞって求めるものであったとしても、それが今の自分自身の価値観や感覚に沿うものでなければ、自分にとってはその値段同様の価値が見出されていないということになります。その時は市場の価格と自分の価値観には不思議と大きな乖離があるのです。

目の前にあるものの傷が自分にとっての価値になる場合もあれば、特異な形がその価値を生むものであったり、あるいはサイズや、ブランドネームや、そのものの存在自体が価値になります。必要とする人が多ければ多いほど、テクノロジーの力を借りればそれはスケールメリットを得て価格を下げられるかもしれないし、反対にそれが難しいものであるならばオークションのように価格はぐっと上昇します。

大きな市場の生み出す価値基準とは異なる指標を自分の中に持っていることは、もしかすると非常に非効率なことなのかもしれませんが、それを世の中から見つけることの面白さと、どこに自分の琴線に触れるものがあるか手探りになる感覚も、言わば従来的な買い物の醍醐味であるように思います。それがディレクターの場合はいつも訪れているパリにたまたまあったということです。(守屋)

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