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言葉を尽くして

AURALEE / WOOL KID MOHAIR KERSEY SLIT SKIRT / 36,000+tax

フィードに流れてくるスタイリング画像を見て購買欲求を掻き立てられてり、画面越しに誰かが商品を持って説明してくれる動画を眺めてウインドウショッピングのように楽しんだりと、私たちの生活の中には写真や動画の形をした情報のやりとりというものが急速に浸透していき、新しい当たり前となりつつあります。

例えば商品を手に持って熱心に説明の言葉を添えてくれる人の映る動画を眺めていて思うことは、そこにあるのは主役としての商品であり主形態としての動画というコンテンツなのですが、補完的に添えられている彼らの語る言葉にこそ、重要な側面があるような気がしてならないということです。

素晴らしいストーリーの語られた美しい動画や完成度の高い写真は、それ自体が価値でありアート作品の様相すら呈していますが、そこに意味性や目的性を見出すことは多くの消費者にとっては難しく、そこに同じ空気感を纏った言葉が添えられていることが、その動画や画像の意味や輪郭を明確に形作ってくれるような気がしています。画面越しの誰かに向けて話をしたり何かを見せたりしているときにも、言葉を尽くして説明しなければそこにはやはり温度のない画面があるだけで終わってしまうのです。

対面で直接語られるものではなかったとしても、目の前にいない相手に向けられた言葉なのだとしても、そこにいる誰かに対して言葉を尽くすことは、新しい当たり前のプラットフォームの中ではより重要度を増していくのではないでしょうか。そこに添えられる"言葉"の持つ意味をもう一度自分に問い直してみたいなと、上達しない写真技術に直面しながら素直に感じ入りました。(守屋)

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マイスタンダードの見つけ方

PHLANNÈL SOL / Light Suvin Cotton French-sleeve T-shirt / 11,000+tax

定番の一着だと思って買い足しているカットソーは、実は「定番だ」と自分に言い聞かせたところでその立ち位置は案外危ういものであることがあります。その定番は数年続いているものなのか、それとも2、3年置きに移り変わる定番なのかと振り返ってみると、後者の定番として思い当たるものが数着、クローゼットの中で今日も自分の活躍の場を与えられるのを待っています。

前者の方の、数年続いている定番というのは、アイテムそれ自体が、マイスタンダードとしての存在意義を獲得しています。"PHLANNÈL SOLのカットソー"が定番なのではなく、"PHLANNÈL SOLのユニセックスTシャツ"こそが自分の定番だということです。一方で後者の方は、まだその定番という言葉が、そのアイテム自体には係っていないという状態であるのでしょう。まだ、PHLANNÈL SOLのカットソーが定番だというだけで、もしかしたらそれは今年はユニセックスTシャツかもしれないし、来年は違うかもしれないのです。そんな危うい立ち位置は、いとも簡単に別のブランドに定番の座を譲ることになります。

またあるいは、自分が定番だと決めた一着は、実は毎年生産されておらず、気がついたときにはどこにも売っていないという状況だってあり得るのだと思います。案外、毎年律儀に同じものを作ってくれるブランドはあまりなく、老舗の海外ブランドや専業ブランドなどに限られてくるでしょう。だからこそ、これぞ私のスタンダードと呼べるようなアイテムと出会えることは大変に貴重だと思います。

老舗の誰もが知っているブランドではないのに、律儀に毎年同じものを作っているブランドがあったとしたら、それはきっとそのブランドの強みとなるアイテムなのだと認識して間違いはないはずです。そう思って、マイスタンダードになり得るのか、一度クローゼットに迎え入れて審査をしてみるのも悪くないかと思います。そうしているうちに、貴重な貴重なスタンダードに出会える日が、必ずやってきます。(守屋)

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桜の季節の後から紅葉まで

Phlannèl / Cotton Silk Over Sized Band Collar Shirt / 28,000+tax

コートやジャケットのインナーとなるようなシャツの担うべき役割は、桜の木の下あたりに置き去りにされ、夏へと向かうこれからの季節にはまた違った役割がきらきらと輝く太陽の光に混ざって降り注いできます。もちろんそれは、カットソーの上にさらりと羽織って温度調節をすることであり、強い日差しを遮って、汗ばむ身体を守ることにあります。

その役目を果たすシャツには、肌に触れることの心地良さや幾度となくやってくる洗濯に耐えうる強度や、脱いで手に持ってもシワになりづらいことなど本当に様々なことが求められてきます。そして実用面以外で私がこの季節のシャツに求めたいのは、「シャツから覗く肌とのバランスが取りやすいこと」です。

単純に肌を露出した状態の首筋に光るネックレスより、シャツの襟元からちらりと見えるそれがより美しく見えるように、半袖のシャツから伸びる腕より、長袖を無造作に捲り上げた先から表れる腕が美しいように、シャツがあるからこそ際立つ人の姿や肌、そしてそこに乗せられたジュエリーの輝きがあるはずだと思っています。だからこそ、肌が見えすぎるだけのシャツは良くないし、かといって身体を覆い隠してしまい少しの隙も与えないようなシャツはバランスが取りづらく季節に対する要望を満たせないのです。

バランスの取りやすいシャツには人それぞれの着こなしが如実に表れてきます。そしてそこに表現されたバランスの取り方というのは、どんなコーディネートを組んでいるかということにもまして、その人の感性を顕にしてくれます。その明快に表現された人々の感性は、とても魅力的に映ります。(守屋)

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正しく装う

SHORT SLEEVE RAGLAN ALOHA SHIRTS - Black / 28,000+tax / Mens

アロハシャツは現地の人々にとって、男性の正装として認識される服なのだそうですが、その「正しさ」については、アロハシャツのルーツを共にする私たち日本人にとってもなかなか理解しづらいものがあります。正装と言われて思い浮かべるのは、襟付きのシャツにタイを締める、さらにはジャケットを羽織る姿ではないでしょうか。

そもそも「正装」とは、「正しく装う」ことであると考えるならば、その正しさの依拠するところはそれを装う場所、シーンということになります。その文脈に則ると、前述の「正装」のイメージは冠婚葬祭時に着用される装いの正しさであるかと思うのですが、そのようなシーンにおいて「正装」として着用されることを許されるアロハシャツも、そこに描かれる絵柄のモチーフによって細かく定められているようです。

勿論、そういったシーン以外の場において、例えば観光地を盛り上げる場所で、雰囲気づくりのために着用されていることも往々にしてあり、そのような場での「正装」として成立するアロハシャツは、きっと明るさ、華やかさ、幸せな時間や心の表れる色彩を用いたシャツということになるはずです。そして描かれる柄はハイビスカスをはじめとする現地らしい植物や海の絵柄であることがその時求められる正しさです。

SHORT SLEEVE RAGLAN ALOHA SHIRTS - White / 28,000+tax / Womens

では、これらのアロハシャツを街の中や生活の中で着用する際の「正しさ」はどこにあるのかと考えるならば、その答えは、頑張らないこと、格好つけずにリラックスして着ること、であるというのが私の持論です。

日常生活のシーンの中で正しくあるためには、自分自身があくまで自分らしくあることこそが一番の正解の形なのだと考えると、それを覆い隠すように背伸びをしたり、頑張って、気を張って、ベールを纏うような行為は正しさとは離れていくのではないでしょうか。特に、ハワイの柔らかく寛大な島の雰囲気を想起させるアロハシャツを着ようと思うならば、尚更気を付けたい正しさであると思います。(守屋)

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一杯のコーヒーを

大村剛 / 色絵カップ各種 / 3,500+tax〜

ほっと一息つくためのコーヒー。眠気と戦い集中力を高めるためのコーヒー。談笑するためのパートナーとしてのコーヒー。自宅でもオフィスでも、座って何か作業する時間が長ければ長いほど、コーヒーを必要とする時間、あるいは自分でコーヒーを淹れる時間というものが増えてくるだろうと思いますが、先日公開したCOBI COFFEEマネージャーへのインタビュー記事で語られていたことで印象的だったのが、「コーヒーの味をデザインできる楽しさ」がコーヒーを淹れる時間には含まれているということです。

大村剛 / コーヒーサーバー色絵 / 10,000+tax

缶コーヒーでも、マシンメイドのコンビニコーヒーでも、そして専門店のハンドドリップコーヒーでも、それらはまるで別の飲み物であるにも関わらず「コーヒー」という名のものとに一括りにカテゴライズされます。その一括りになったコーヒーのうち、味わい以外で違いをなすものとしてはその前後にある時間の流れなのかと思います。一括りのコーヒー達に求める役割は、それを手にする人々によって千差万別なのです。

ある人は缶コーヒーを手にする時間で仕事を一区切りさせる人もいるでしょう。またある人はコーヒーショップにコーヒーを買いに行く時間で気持ちをリフレッシュする人もいるでしょう。そうかと思えばある人はコーヒーを片手に仕事をすることで集中力を保っているのでしょう。そして、本当に少数派になるかもしれませんが、コーヒーを淹れる時間を通して、気持ちを整えたり、思考を整理したり、あるいは何か自分好みのものを生み出す楽しさを感じている人もいるのだろうと思います。

大村剛 / コーヒードリッパー黒 / 6,000+tax

その時間を過ごしたからといって心がどうにか動くわけでもなければ、仕事の効率が上がったり、誰かから喜ばれたり報酬をもらえたりするものでは決してないのです。ただ真剣になってコーヒーを自分のために淹れてみる、自分の思い通りの何かを作り出してみる、それだけのことなのです。それだけのことが、無駄に思えることが、もしかしたら人生を楽しく豊かなものにする近道なのかもしれません。大袈裟な言い方をすれば、コーヒーを淹れる時間は、コーヒーの味をデザインするだけでなく、自分の人生や自分の時間をデザインする時間なのかもしれません。(守屋)

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パラドックスに備えて

KIJI / ILLUST ALOHA SHIRT / 24,000+tax

夏というものは、さあこれから長い夏がやってくるといくら身構えても、どれだけ夏の予定をしっかり立てようとも、気づいた時にはあっという間に、私たちの後ろ側へと通り過ぎているものです。

今年の春、誰もが春を見落としてしまったと感じていると思います。花見が出来なかったり、行楽の予定を棒に振ってしまったり、それこそ用意していたドレスを着て、シャツを着て、降り注ぐ太陽を存分に浴びることが出来なかったと。でも本当にそうでしょうか。いつもより、桜を愛でよう、春を精一杯感じようと、心の中では必死に季節を追いかけてはいませんでしたか。

KIJI / MONGARA ALOHA SHIRT / 24,000+tax

きっといつもより少し敏感になりながら、太陽のありがたさを感じたり、風の端にある季節の匂いを嗅ぎとったり、風景の変化や空の色の変化とゆっくり目を合わせて対話していたのではないでしょうか。

思った以上に、夏は圧倒的なパラドックスを持って私たちの前に現れます。私はこの春の季節に体験し習得したスタンスを持って、この一瞬の夏を迎え入れ、楽しみたいと心から思います。もう夏の準備は、しておいても早くはないかもしれません。このアロハシャツに刻まれた円相の一本一本がまさに私たちの過ごす1日1日なのですから。(守屋)

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アートを完成させるには

SCHA / Derby CA Seagrass Hat -SPECIAL EDITION- / 32,000+tax

先日の記事で、帽子は日差しから身を守るための道具として生まれたという旨の文章を書きました。勿論、ものの誕生には全て目的があるもので、その目的のためにデザインされた必然の形があるものです。そして、それらに解釈を加えることでファッションアイテムとしての誕生があるのだろうと思います。

ただ、解釈を与えられたファッションアイテムとしての物体には、本来の目的以上に求められる新たな目的が加えられること、そしてそれが何よりの最優先事項になることも往々にしてあります。例えばデザイナーのエヴァにとって、帽子の目的は自己表現の媒体として存在していることです。外的要素から頭を守るという本来の目的のためにデザインされた「帽子」という概念的な形を踏襲していながら、そこには自由に生茂る草花のような、秩序に囚われない表現の広がりが存在します。

アートピースとして、表現物としての帽子という目的が最優先事項となれば、本来の目的(何かから頭を守る)を達成し得ない形であってもそれは全く問題ではなくなり、その意思が、透けるような編み目や柔らかな素材という形となって表現されるのです。彼女の生み出す帽子の美しさに魅了されるファンは多いと思いますが、アートピースとしての帽子の存在意義が求められた結果なのですから、それは実に自然なことではないでしょうか。

そして彼女生み出すアートは、帽子を被る人と、その被り方という要素が加わって初めて完成されます。(守屋)

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今日の旅先

Phlannèl / American Sea Island Linen Pintuck Shirt Blouson / 38,000+tax

現実的に自らの身体をどこか遠くの異国へ旅させることが難しい時、心だけでも優雅な旅をさせる方法はいくつかあります。所謂現実逃避の方法と言ってしまえばそれまでですが、例えば映画を観て世界に自分を没頭させたり、本を読んで空想の世界を広げたり、かつて旅したときの写真を見返してタイムスリップしたりなどが出来るでしょう。それと同様に、服を着るということも、忘れてはならない心を旅させる方法の一つなのではないかと思っています。

ブランドそれぞれに、独自のコンセプト、表現したい世界観があります。フランス生産に拘っているブランドはフランスの古い資料やビンテージアイテムから洋服のデザインソースを得ている場合もあるでしょうし、そもそも旅をテーマにシーズンコレクションを組み立てているブランドもあります。あるいは、毎シーズンのテーマは設けていないものの、デザイナー自身が旅した土地で見た色や風景、その土地の伝統衣装などから新しい洋服をデザインする方もいます。

そんな洋服の背景を知ったとき、見えたとき、感じられたとき、きっと洋服が心底好きな人ならば、その土地のことやデザインソースとなったオリジナルのアイテムのことをより理解しようと、自分なりに考えてみたり調べたりするのではないでしょうか。その土地はどんな色が散りばめられた世界なのか、どんな空気の匂いがするのか、人々は普段どんな服装で街を歩いているかと想像するそれこそ、心が旅しているまさにその時なのです。

本を読んで頭の中に世界を思い描くように、洋服を着ることそれだけでも、洋服それぞれが連れて行ってくれる世界があり、そこにいる自分を夢想することは容易に出来ます。意外と見落としてしまうことが多いのですが、これは洋服の楽しさを構築する大きなパーツの一つなのではないかと思います。今日の旅先はどこにしましょうか。(守屋)

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二つの接合点

Lunor / A5 226 / 37,000+tax

日差しから身体を守ためにある帽子、寒さを防ぎ手を保護するための手袋、足を傷つけないように包み込む靴などの道具と違い、眼鏡に託された役割は「補うこと」です。低下した視力を回復させるため、視力を補助するための道具として眼鏡は誕生し、知識人を中心に愛用されてきたという経緯があります。

そんな補助器具としての役割は、コンタクトレンズに始まり、レーシック手術などの誕生もあって代替可能な機能となりました。いつしか時代遅れの道具と化した眼鏡という補助器具ですが、それにも関わらず今もこうして無くなることなく存在し続けています。

Lunor / Aviator Ⅱ / 46,000+tax

おそらく、眼鏡に装うための道具という新たな役割が付与されたからでしょう。人の第一印象を決定づける顔というパーツに装着する道具は、必然的にそのデザインのアップデートを求められることになります。そして装身具として、金、銀、チタン、鼈甲、セルロイドなど様々な素材を用いて美しく見られるための道具としての役割を少しづつ増していきました。

Lunorの創業者は、補助器具としての眼鏡の存在意義が強かった時代のアンティークの眼鏡や顕微鏡、望遠鏡、ひいては検眼機までをも収集していたそうです。そんな彼はきっと、眼鏡に託された二つの役割の接合点となった人そのものと言えるでしょう。(守屋)

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未来へ投資すること

OUTIL / MANTEAU LUZE / 60,000+tax

この時勢を考えずに純粋に洋服に向き合おうと思ったところで、どうしても頭や身体は素直にこの正常でない環境のことを考え、過敏に反応してしまいます。そんな数日を過ごす中で私の肌でひしひしと感じることは、ここにある洋服たちがどれだけの人の関わりや数えきれない苦労を経て運ばれてきたのかという奇跡への感動と、それに私たちは正当な対価を支払えているのかという疑念の思いです。

これまでだって、当然のように私たちのもとにやってきていたように思われるこれらの服たちは、本当に多くの人の手や国境を跨ぎながらここまで辿り着いているのですが、昨今の状況によって強いられる苦難が増している今、それぞれに関わる人々の努力と、お客様のもとまでこのクリエイションを届けたいという熱意だけが、ここまで洋服を運ぶことを可能にしているのだと感じます。

私たち自身も、特に東京近郊に住む人々はむやみな外出や必要以上の購買行動が憚られる中、洋服を買うことは現状娯楽消費と見做されるでしょうからほとんどの場合においては「不要なもの」にカテゴライズされてしまうような状況です。それでもそんな洋服を買うということは、「今」ではなく「将来」の私たち自身に投資することと、ここまで洋服を届けてくれた全ての人の「未来」に投資するという意味合いを持つのではないでしょうか。

来る先の未来で自分がどうあるべきかを想像して、そんな自分がどんな心持ちでいるべきかを考え、そのためのモチベーションとなる服を買うとか、目指すべき自分にふさわしい服を買うことで将来の自分へ投資するということ。そして、この困難な状況で予定通りの生産活動が出来ないことで必要な収入を得られず、もしかしたら次シーズンの生産へ影響が出てしまうかもしれない人々がいることを想像して、自分が応援したいブランドやそこに関わる人々の未来へ投資するということ。不必要に思われることでも、何のためかを思えば、本当に必要な購買、そして必要に見えて不要な購買だってあると思います。今こそしっかり考えてみるべきではないでしょうか。(守屋)

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シャツにアイロンをかけるとか

m'sbraque / S2B COLLARLESS TRIM JACKET / 78,000+tax

朝起きたら必ずカーテンを開けて太陽を浴びるとか、朝一杯のコーヒーを必ず飲んでから仕事に出かけるとか、夜寝る前には必ず明日履く靴を磨いておくとか、毎日の生活の中に存在する習慣は、それが意識的なものであれ無意識下のものであれ人それぞれに必ず一つは存在するのではないかと想像します。

多くの人が週5日の通勤がルーティーンとなっている世の中では、週5日の決まった習慣はきっとあるでしょう。それと同様に多くの人は、週のうち5日間は仕事用の服に身を包むことになっているはずです。人それぞれの違いとしてそこにあるのはそれがスーツなのか、オフィスカジュアルウェアなのか、休日と変わらぬカジュアルウェアなのか、決められた制服なのかの差だけでしょう。

例えばその週5日の通勤という、習慣を作り上げる前提条件たるものが崩れ去った時、人はその習慣を続けるのでしょうか。通勤が週に2日だけになりそれ以外は人に会わずにもいられる仕事環境なのだとしたら、週5日着るはずだった「仕事をする自分のため」の服に袖を通すことは続けるでしょうか。それに伴う朝の一杯のコーヒーの時間は大切に守り続けるでしょうか。

例えば私はファッション業界で働いている以上、仕事用の服も休みの服もさして変わらずいわゆる自由な服装で毎日過ごしていますが、それでも仕事の時には出来るだけ背筋がしっかりと伸びるような身なりを整えたいと思っているので、もちろん毎朝、その日に着るシャツやカットソー、ジャケットにシワがあったらアイロンを当てることは当然の習慣となっています。これは例え週5日の勤務がなくなったとしても、自分の身体の延長として存在する服を大切に扱いたいという気持ちがある上、頭と心のネジを仕事モードに切り替えるスイッチとして「アイロンを当てる」という行為が存在しているので、その習慣は続けるだろうと思います。

習慣というのは習慣にするまでに大変な時間を要するわりに習慣を止めることは非常に簡単なのものです。わざわざ習慣にしたものを、ずっと変わらずに習慣として留めておけるか否かの境目は、日常のなかに表れるわずかなシワをぴんと伸ばしておきたいか、それともそれを見て見ぬふりをするかどうかの違いくらい、わずかなことです。ただそのわずかな違いが、きっと日常に大きな差を生み、日常全体のまとまり、バランス、見え方全てに表れるのでしょう。(守屋)

 

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楽しみなことを

Bergfabel / Cotton Linen Stripe Moon Coat / 128,000+tax

春の芽吹きはじめる3月の今頃から、新緑が深まっていく5月頃まで、四季のある日本においては1年の中でも特別と言って良いほど心地良い風を一日中感じられる絶好の行楽シーズンです。ということは、お花見をはじめ様々なイベントへ出かけるため、または新生活に向け、洋服を買い足す理由が多いシーズンということになります。

ですがこの厳しい時勢により、仕事でもプライベートでもありとあらゆる予定が組み変えられていったりキャンセルになったりしているであろうと思います。同時に、それらの予定を楽しみに、洋服を選んだりはたまた買い物に出かける機会というのも減っているであろうことは容易に想像がつきます。

Bergfabel / Linen Long Farmer Stand Collar Shirt / 48,000+tax

勿論それは仕方のないことであり、安易に買い物に出かけましょうなどと呼びかける気もありませんが、買い物をする楽しみやそれがもたらす心の充足感、また気に入りの服に袖を通すことで明るく前向きに変化する心の動きというものは、今だからこそしっかりと思い出し、覚えておく必要があるように感じます。何かを楽しむという自然な気持ちを決して我慢せず、押さえ込んだり蓋をして忘れ去ろうとするのではなく、むしろそれを今こそ求めて然るべき時であろうとすら思います。

もしかしたら変更になってしまうかもしれないけれど、これから控えている楽しみな予定を思い浮かべながら買い物をすること、心地よい服に袖を通すことは、確かな心の栄養となって心に明るい花を芽吹かせてくれるでしょうし、それは日々を生きる糧となって、なんとなくもやがかかったような暗い日々の中で心を常に平静に保たせてくれる存在となるでしょう。そして我々がこれから判断を誤ることなく進むべき道を選択出来るよう、正しい道を照らす道標のように私たちの目の前に常に光を灯してくれるでしょう。

クローゼットを開け、今日着る服を選ぼうとする時、お気に入りの服がそこにあること、新しく買った服がそこにあること、それは、とても幸せなことだと思います。洋服はいつでも我々のそばで、いつもの日常を忘れず、ただそこに存在してくれます。(守屋)

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春の影は白昼夢のように

KIJI / CACHECOEUR BLOUSE / 27,000+tax

そこに影が映し出されるとき、影のこちら側には必ず光が存在しています。強くくっきりとした影であっても消えてしまいそうな儚い影であっても、雲のように大きな影でも花弁のように小さな影でも、その影を作り出しているのはいつどんな時でも光なのであり、もしくはそこに光を見つけたならば、同時に光の向こう側に影はいつでも生まれます。

人々を目覚めさせるようゆっくりと明るく差し込む朝の光と冷たい空気の中で揺れるレースのカーテンとその影は、本来目に見えるはずのない微かな風の存在を私たちに教えてくれます。空いたグラスに何気なく生けられた花の姿を窓から差し込む太陽が照らす瞬間には、思ってもみなかった形の影が姿を表して、息の詰まるような1日の隙間に新しい出会いとほんの少しの安らぎの時間を与えてくれます。

KIJI / GATHER SKIRT / 27,000+tax

光が作り出す影の魔法によって、日常の何気ない風景は、まるで映画ワンシーンのように色鮮やかに映し出されるのです。光は未来を予見する存在として、あるいは明るいものの比喩として用いられることが多く、その反対側に影という存在が認識されることが多いのですが、光と影はいつでも手を取り合っていて、こちらとあちらでお互いに反対を向くのではなく顔を合わせて目と目を合わせているのであろうと私は思います。

もしあなたがそこに美しい光を見つけた時、同時に光の向こう側には美しいドラマティックな影が誕生しているはずです。もしあなたがそこに美しい光を見つけた時、同時にこのKIJIのブラウスやスカートは春の白昼夢のような淡い美しい影をそこに落としているはずです。(守屋)

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良き所有者としての責務

GALLEGO DESPORTES / CHEMISE EMANUELLE / 34,000+tax

近年のアパレルウェアの消費動向として、「自分が着た後に売れるかどうか」を見据えて買い物をする人が増えているといいます。その目の前の物の純粋な良し悪しよりも、総合的なコストパフォーマンスの高さがより尊重するべき価値指標となっている現実に、現代を生きる一人の人間として私は少々ついていけていないような心持になってしまいます。

「購入した服を自分だけで楽しんだ後、誰にも譲らずに消費して捨ててしまうことよりはエコな考え方ではないだろうか」という声も聞こえてきそうな気はしますが、では、そもそも自分が心底惚れ込んでもいない服であって、先々のその服の価値に目の前での購買行動を左右されてしまうほどの物ならばいっそのこと買わずにいる方が良いのではないでしょうか。それ以前に、洋服の行末などというものはきっと洋服自身が勝手に決めてくれるはずなのであり所有者が決定する権限すら持ってはいないはずなのです。

GALLEGO DESPORTES / CHEMISE 29 / 32,000+tax

昔、新卒で勤めはじめたアパレルの会社の先輩にGALLEGO DESPORTESのスカートを譲っていただいたことがありました。その先輩はきっと、誰かに譲ることや、自分が着た後の洋服の行末など考えてもいなかっただろうと、そのスカートを着る時はいつも考えています。

洋服のその後の行先など考えずに、痛むことも厭わずに、大切に沢山履かれた後の生地の表情がそこにはあります。密な織のコットンが柔らかくなった肌触り、自然に変化していったピーチスキンのようにふんわりと起毛した表情を持つ一着を差し出された私は、二つ返事でそれを有り難く頂きました。その時その先輩はスカートを大切に持つ責務のバトンを、私に譲ったのだと思います。

洋服の行末は洋服自身が決めてくれます。それを、良き道に導く責務は、服の所有者にはありますが、先ほども書きました通りその決定権は、我々所有者にはないはずなのです。良き所有者であったならば、洋服はずっとその人の手元にあるだけで、仮に良き所有者となれないならば、洋服自身が自然と期を見て手元から離れていくだけのことです。その行き先を、良き先にすることだけは我々所有者が責任を持って見守り続けなければいけないなと思います。(守屋)

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非日常でないからこその

VINCENT JALBERT / CAMISOLE LACE SHORT / 130,000+tax

特別なシーンのための服ではない日常のための服ではあるけれど、少し特別感のある憧れの一着を手にした時の話です。そんな服を手にしたとき、人は誰しもそれに分相応であるべく自分の人間味を意識せずにはいられなくなるものですが、それと同時に、手にした喜びや嬉しさ、温かな空気が自分の身体の中に流れてくるような感覚、ふわふわと心だけどこかへ飛んでいってしまいそうな浮遊感をおぼえた経験がある方も少なくないはずです。

そうして手にした憧れの一着を身に纏って初めて出かけるときは、普段の生活の範囲ではあるにしても例えば楽しみにしていた食事の予定がある日であったり、家族と久しぶりに過ごす休日であったり、もしかしたら自分の子供の大切なイベントの日であったりと、ちょっとした思い出に残る出来事が予め設定されている日であることが多いと思います。

そんな、疑う余地なく思い出に残る日のことであったとしても、そのとき何を身に纏っているかということだけでその思い出のリアルな感覚であったり純度や温度というのは変わってくるもので、そのときにふわふわと高揚感をもたらしてくれる特別な一着を着ていたならば、その日の出来事は、その洋服の手触りと共に高い純度を保って長きにわたり自身の心の中に密閉保存されていきます。

そして更に言うならば、それは思い出に残るほどでもない当たり前の日常であった日にも同じ現象をもたらしてくれるもので、ふわふわと高揚感をもたらしてくれる服というのは、何気ないある春の日に、それを身に纏っていた自分とその隣にいた人の温度や姿を合わせて記憶し記録し、特別な思い出の日に仕立てておいてくれるのです。非日常でないからこその、素敵な思い出をきっと届けてくれるはずです。(守屋)

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創造のいれもの

STUDIO KETTLE  / The Fisherman Painted / 19,000+tax

創造とは、目で見たり耳で聞いたり、手や肌で触れる様々な事象や現象と、その当事者の心象とを出会わせることです。そうして生まれた創造物は、その当事者の身体を「いれもの」として熟成されることもあれば、出現したと同時に「いれもの」から外へと飛び出すこともあります。

熟成させるためにはそれに適した「いれもの」がもちろん必要となるわけで、また、勿論のことですが「いれもの」の状態によってその熟成具合は変化します。それはちょうどお酒やチーズが、その置かれる環境や季節によって変化の具合や出来上がる味が変わっていくようなものです。そして熟成には適していない「いれもの」もあり、鮮度のあるうちに外へと表出させた方がいい場合もあります。

STUDIO KETTLE / The Cap Waxed / 15,000+tax

おそらくSTUDIO KETTLEの創造によって生まれたこれらの帽子たちは、上記の熟成の期間を経ることなく、出現したと同時にそのフレッシュさを保ったまま外に飛び出してきたものの例に含まれるであろうと思います。熟成による滑らかな口当たりや奥深い旨味というよりは、フレッシュで爽やかな香りと、ストレートに伝わる素材自体の持ち味を存分に活かしているように感じるからです。

更に言うならば、その創造のために吸収された事象や現象や彼らのうちに起こっている心象は今にしか存在しない物事であり、今の彼らの持つ「いれもの」は今にしか存在しません。そうであるからこその唯一無二性の創造物が、ここにこうして生まれているのです。今後彼らが熟成に適した「いれもの」を得た時には、今の創造によるような鮮度のある味や香りを味わうことは許されないのではないでしょうか。

ただ、その時にはまた今とは全く異なる事象や現象が心象と重なりあって、その時にしか出来ない創造が為されているのだろうと思います。そして、それが最適な「いれもの」の中でじっくりと熟成された時には、またその時にしか味わうことの出来ない唯一無二の創造物が誕生しているのだろうと思います。(守屋)

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捉えることができる

CASEY CASEY / OLI COAT-COT 140 / 140,000+tax

服が服としてそこにあるそのままの姿や、ファッションを楽しもうとする意識の下でファッションツールとして身に纏われる服の姿ではなく、そこにファッション意識の有無にかかわらずそれを誰かの生活の中で身に纏われている時の服の姿というものは、我々のようなファッションを生業とする立場の人間だけが捉えることができる姿ではないでしょうか。

例えばCASEY CASEYの服というのは、今の気分を反映するようなリラクシーなサイジングやシルエット、素材の妙、そして洗いをかけたことで生まれる豊かな表情が魅力なわけですが、それらは均一化された価値尺度に則って述べられる感想であり、ある程度ファッションが好きなおおよその人々にはこの言葉が指し示す洋服の姿を捉えることは難しいことではないはずです。

ただそれを、どんな人が身に纏うべきなのか、それを身に纏った人の生活がどんな様子であるのか、その人の生活のどんなシーンでそれらの服たちが着られているのかという部分に目を向けられる人はほとんどいないでしょう。控えめに言ってもその想像の範囲はあくまで「自分が」という主語の下でのシーンを越えていくことはなかなかないはずです。

そこに存在する服をただ服として捉えるだけでなく、その服の未来の姿やあるべき姿、それが着られるべき人物の生活や「その生活に潜り込んだ服の姿」というものを、我々は捉えることができます。それは数多くの人の生活を見聞きし、そこに見合う服を見繕い、その後その人と共に生活をした洋服の姿を見守ってきた我々だからこそ、捉えることができる姿なのだと思っています。(守屋)

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不自由のなかに表れるセンス

R&D.M.Co- / FLOWER MATELASSE BOLERO / 46,000+tax

大人になればなるほど纏う服というのはオケージョンとの関わりをより強め、それは必然になり、そのチョイスはより高度技術を要しながらもよりセンスを明確に表現するものになります。そしてオケージョンという制約がある上で服を選ぶこと、纏うことの楽しさは以前にも増してより大きなものへと広がっていくように思います。

学生の頃は出かける先も限られており、そしてそれはほとんど全く制約のない場所への外出ばかりで、そのために選ぶ服には自分の単純な「着たい」という気持ちだけを込めてもさして問題はなかったのではないでしょうか。私自身、就職活動でスーツに身を包んだ時が、それまで生きてきた人生のうちで最もオケージョンたるものを意識した場面だったかもしれません。そしてその時、纏うものに自分を表現しきれなかった、いつもと同じ自分でいられなかったと感じた何とも言えない心許なさは強く心に残りました。

しかしながら洋服に関わる仕事をする上でも、歳を重ねてみると仕事関係者との会食の場面があったり、洋服業界以外の業界の方との商談があったり、冠婚葬祭の場に出席する回数も増えたり、自分の「着たい」気持ちだけで纏うものを選ぶことが出来ない場面が増えました。そうしてみて感じたことは、オケージョンに合わせてという制約下だとしてもそこには確かに「自分自身での選択」が必要とされ、そして制約のある中で選ぶことはより自分のセンスを問われるのだということです。

普段の自分のスタイルではない着こなしを要する場面に、普段の自分の洋服をもってしてどのような着こなしをすることで正解を導き出すのかという問題は、きっと経験の浅い時には楽しさを見出せず苦労だけを伴うものと感じていたのでしょう。そしてどう足掻いても不正解しか導き出せなかった自分に対して「こんなはずじゃなかった」という気持ちを正当化するために、それを嫌悪感という感情に置き換えていたのだと思います。

オケージョンという制約下においても自分らしくいられる洋服の着こなしを導き出す方法を、ある程度歳を重ねながら経験によって学び、そこによりセンスが問われることに気づき、だからこそその洋服の選択に楽しさを見出し、そしてそれを自分の想像通りに着こなせた時の楽しさを知り、更に洋服を纏うことの面白さを知りました。そうした道のりの先には、「あんな場面で着こなしてみたいな」という想像をもって買い物をするというまた新しい楽しさを見出す道がつながっています。(守屋)

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ふつうが普通でなくなった今

knitbrary / Two-tones Fisherman Sweater / 90,000+tax

欲しいコートを試着してみて、同行している友達やパートナーに感想を尋ねたとき、「ふつうだよ」と言われたりしたことはありませんか。恋人や家族と食事に出かけて、同じ皿を味わっている時に「ふつうに美味しいね」と感想を述べあったりしたことはありませんか。

私が接客業をしていた時に良く耳にしていたのは「ふつうのニットが欲しいのに探すとないんです」、あるいは「ふつうに使いやすいバッグでおすすめはありますか」といった声でした。「ふつう」とはつまり可もなく不可もなく丁度良い具合である様を表す言葉ですが、今日において「ふつう」が示すニュアンスは肯定的でポジティブな意味合いが強いように思います。

knitbrary / V-neck Cables Sweater / 110,000+tax

とびきり美味しいパスタではなく安心感があって幸福感が得られる「ふつう」に美味しいパスタ。品質が良く見劣りしない、袖を通した人だけが黙って肯いてしまうような満足感があり、そして長持ちするけれど特別目を引くわけではない「ふつう」に素敵なニット。要は何て事のなさを持ち合わせた「良いふつう」を求めているだけのことなのです。

少しのデザインや個性や利便性など思いつく限りの付加価値たるものを付加させようとこぞって社会が動き続けた代償は、どこにでもあったはずの「ふつう」が消えてしまったことなのだと私個人としては感じています。「ふつう」は今日では「ふつう」ではなくなり尊く稀な存在になってしまいました。なんて事のない、「良いふつう」はどこにあるのでしょうか。(守屋)

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「はずす」ための訓練

Le Yucca's / Le Yucca's Sneaker / 148,000+tax

「はずす」「着崩す」「抜け感を出す」など、近年消費されるようになってきた言葉がありますが、ともするとそれらの言葉達は勝手に一人歩きを始めていて、そもそも根元にあったはずである「はずす」ためのルールというものが全く見えていない着こなしを街で散見するようになったと私個人としては感じています。

ファッションにおける「はずす」という言葉は「ルールから外れる、逸脱する」ことを指しているのでしょう。つまりはずすということは、いわばバランスボールの上に真っ直ぐに立ち上がっている状態から、片足を持ち上げて立てるようになるというようなもので、勿論その難易度は上がり、そして卓越した体幹やバランス力が必要になるはずなのです。

ここで言うところの体幹とはつまり着こなしにおける「ルール」に対する理解度のことであり、スーツスタイルの原点的着こなしのルールやアイビールックの原点的着こなしのルールを心得ていることがその体幹の強さに当たります。そしてバランス力とはそこから外れる塩梅を見極める能力のことであり、適度にルールから逸脱するセンスのことです。

Le Yucca's / Suede Ghillie Shoes / 118,000+tax

それだけ洋服や着こなしに対する前提理解や、繊細で熟練した技もしくは先天的な能力が必要であるはずの行為を、その先端だけ掻い摘むことで達成しようとするのは少し横柄で強引で短絡的に過ぎるところがあるのではないでしょうか。着こなしとは本来コミュニケーションツールであり、自分がどんな人間でどんな価値観を持っているのかを一番外側で表現するものであるはずなのだから、そんなに簡単に小手先で完成させてしまっては非常に勿体無いと思わずにはいられないのです。

おそらくこのスニーカーやスエード靴も「はずし」のアイテムとして一役買ってくれることは間違い無いのですが、上記のように短絡的に考えていてはきっと「はずれ」ないままに終わってしまいます。バランスボールに片足で立ち上がって不自由なく読書でも出来るような技を身につけるくらいに、理解を深めて技を磨いた人に是非おすすめしたいと思います。それだけ、Le Yucca'sのシューズは単純なものでは無いということだけをお伝えしたい次第です。(守屋)

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不要なパンデミックを起こさぬよう

KIJI / OUDO - Natural / 28,000+tax

次の秋冬シーズンに向けた別注商品のご相談をさせていただくため、先日あるブランドの方とお話をしていたところ「別注商品の依頼は多く受けるがBLOOM&BRANCHのように継続してリリースしているお店は決して多くはない」ということを伺いました。我々は何かを始めるときは必ず「継続すること」を意識しているので、そのお話は少し意外でした。

何かを続けるということは良く見える側面も、その反対の側面も勿論持ち合わせていて、例えば長期的な視野を持つためには流行だけを見つめることは不要になり、じっくりと腰を据えて安定的な取り組みを行うことが出来る良さがあります。生産者やどこかのブランドの協力を得てものづくりをする際も、お互いに消費されることを恐れず、長く続く良いものを作ることだけを考えて膝と膝を付き合わせて話を進めることが出来ます。

KIJI / SHIMA - Natural / 25,000+tax

反対に、「継続=変化がない」ということになるとどうしても市場からは飽きられてしまい、せっかく良いものを発信していてもそれを適切に伝える機会を逃してしまうことになります。変化がないことは惰性と取られてしまうことは往々にしてあるでしょう。それを逃れるためには、少しずつ少しずつ、変化させ成長させながら地道に何かを続けていくという、いわゆる忍耐力のようなものも同時に必要になります。大きな社会的影響は起こせなくとも、良いものを適切に伝えられれば良く、そしてその波及力は継続することで徐々に大きくなれば万々歳といったところでしょうか。

イノベーションは私たちの生活の余分な隙間に入り込んでせかせかと生活の速度を上げ、得られる情報量を圧倒的に増大させ、そしてそれらの及ぶ広さは想像も出来ないところまで広がっていますが、そんな経済やビジネスのダイナミズム主義のような感覚から程遠いところにいる我々の現在地について、先述のお話を伺い改めて認識するに至りました。

我々はこれからも少しの成長と変化を伴って少しでも長く継続させることをミッションとし、不要なパンデミックを起こさぬよう、地道な活動を続けていくことしか出来ないのだと思います。お陰様で継続しているKIJIのデニムシリーズも、見えにくくはありますが少しずつ成長をさせている商品です。そしてコットンそのものの糸の色を活かした新色のNaturalカラーをリリースする取り組みは、継続する為の少しの変化の証です。(守屋)

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肩書きというのは非常に曖昧なものである

TENDER Co. / COTTON MOHAIR TAMMY YOKE POCKET SHIRT #1 / 48,000+tax

洋服をデザインする人の中には、構築的なパターンと立体的なシルエットを作り出す建築家のようなデザイナーや、美しい絵画を描くように色彩と操り眼前にその表現を魅せる芸術家のようなデザイナーもいます。そしてウィリアム・クロール氏のように対象物に対しての溢れ出るほどの探究心を持って向かい合う研究者のようなデザイナーもいます。

もともと持っている彼の探究心の深さは言うまでもなく、その研究者としての眼差しは、きっと彼がセントマーチンでの教授職についているという彼自身の生き方が寄与するところが大きいのかと思います。学びの場に身を置くということは、実際的にも多くの文献に触れる機会が多いのではないか、そういった現実は彼の持つ研究熱心な姿勢をより加速させるのではないか、ということは容易に想像が出来ます。

そしてそういった研究者のような眼差しを持つデザイナーが生み出す服はアーカイブの単なるサンプリングに終始することは決してなく、例えば労働服としてデニムが機能していた時の時代背景、その時代の人々の生活、その土地の風景全てがしっかりと咀嚼されていて、彼の中で醸成され、彼のフィルターを通して、全く新しいものとして生み出されているのです。

また、いつも実験的な植物染料などを用いた染色は研究者としての実験の様子を想起させます。そしてそれによって表れる見たこともないような色彩は、化学反応を起こした実験結果のようです。良い結果がもたらされた際にはその染料は長く使用されますが、それが使用できなくなった際には新しい染料を求めて新しい実験がまた繰り返されます。研究と実験は終わることがありません。(守屋)

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Phlannèl Special Interview - 新たな挑戦の話

Phlannèl / Goat Suede French Army Vest / 70,000+tax

3回目を数えるPhlannèlデザイナーへのインタビューを2020SSシーズンアイテムの発売と共に掲載いたします。今シーズンより遂にレザーアイテムを手掛けるなど、これまで以上に深みを増し独自の色彩を帯びた新シーズンのコレクションを是非お楽しみください。そして、こちらの記事を通して現在のPhlannèlが見つめる視線の先を共有出来ればと思います。

 

生地は生き物

20SSシーズンのアイテムがリリースとなりましたが、今季のコレクションで新たに取り組んだこと、意識したことなどあれば教えてください。(守屋)
─この後の質問でも出てきますが、formeさんとのコラボレーションシューズの制作やレザーアイテムの制作が新たな試みです。あとはPHLANNÈL SOLのラインナップを増やしました。PHLANNÈL SOLだけでもよりブランドとして成立するようになったと思います。(Phlannèl 浅川)

意識的になのか、結果的になのか、今シーズンは前回よりもまた更に素材のクオリティの高さを感じました。展示会でどの素材のアイテムに触れてみても、すごく肌馴染みがよかったことが印象に残っています。
─19AWでもそうでしたがPHLANNÈL SOLが存在することで、Phlannèlコレクションの方は素材をアップグレードして制作しています。今季はそれに加えて、春夏のコレクションということもあり夏に快適な薄手の素材の使用を意識しました。軽やかさがありながら、その中でもテクスチャーなどではバリエーションを増やして、抑揚のあるコレクションに仕上げました。(浅川)

今シーズンのアイテムで特に作るのに苦労したアイテムはどれですか。(守屋)
─実は、洋服というのはデザインはあまり変えていなくても、そのデザインを新しい生地に乗せると突然何かしらの歪みが出てしまったりするもので毎回違う苦労があります。生地は生き物なのだなあと、そういった時にいつも実感します。ただ20SSは比較的作りやすい素材が多く、順調でした。敢えて挙げるとすれば、やはりレザーです。中々思うような仕立てにはなりませんでした。(浅川)

例えばどんな部分でしょう?(守屋)
─断ち切りの縫代始末のレザーは、なるべくその部分の幅が均一にいくように気をつけたり、前端や袖口カフス端などは特にですが、出来る限りフラットに仕上がるようプレスをかけたりなど綺麗に仕上げるのに細かく細かく注意して制作しました。これまでもお付き合いがあり信頼している先に縫製依頼をしていますが、また新たな課題も見えてきたりもします。(浅川)

そうは言ってもPhlannèlらしく無駄の削ぎ落とされた簡潔なアイテムの顔が見えて、とても素敵な仕上がりだと感じました。(守屋)
─同じパターンでも縫製工場や作り手によってやはり仕上がりの顔は全く別のものになります。日本人は良くも悪くも生真面目なので、綺麗に綺麗に仕上げることだけに気を取られると、悪くいうとつまらない、雰囲気のないものになってしまいます。例えばBLOOM&BRANCHにあるヨーロッパの服は、縫製が優れて美しい訳ではないものがあったとしても他にはない雰囲気を持っていますが、そういうバランスの取り方一つにも個性は表れます。(浅川)

すごく勉強になります。そんな中で今季どうにかリリースを叶えたレザーアイテムなのですね。(守屋)
─今季は今まで手を出してこなかったアイテムに挑戦しようと決め、Phlannèlらしいレザーアイテムを作ることに挑戦しました。素材は、ヌバックのようなゴートスエードを採用。Phlannèlらしい赤みのあるベージュ色をつけました。裏側をナッパラン加工という表革のような加工を施し、裏地をつけず、一枚仕立てにし、軽やかに着ていただけるように仕上げました。レザーアイテムはまだまだ開発模索中ですが、これから定番にしていきたいと考えています。(浅川)

Phlannèl / Cotton Cashmere Lily-yarn Knit Cardigan / 38,000+tax

「白」の明るさ

本来のPhlannèlらしさに立ち返ったとお話していた19AWのものよりも20SSはまたカラーパレットががらりと変わった印象ですが、今季はどんな気分や思いが反映されていますか。(守屋)
─大理石や鉱物などの石の色目を中心に据え、それを支えるベーシックカラーとして黄味の強い生成りを提案しています。 この「黄味の強い生成り」はベーシックカラーでありながら、全体のコレクションを明るく華やかにする役目も果たしています。ヴィヴィットな色を好まないPhlannèlとしては、白や生成りの分量を増やすことで明るさを表現しています。Phlannèlはどうしても渋めの色を好んでしまいますが、春夏のコレクションは秋冬よりも少し明るくなるような色目をつけたくなります。そのような中でPhlannèlらしさを保ちながら、とてもバランスの良いカラーパレットになったと思っています。(淺川)

Phlannèl / Cotton Cashmere Lily-yarn Knit Pullover / 38,000+tax

今季はバリエーションが増えたというPHLANNÈL SOLですが、定番アイテムのアップデートはありましたか。(守屋)
─Tシャツとチノパンをアップデートしました。まずTシャツの方は、今までは肌触りの良いスビンコットンをメインとしていたのですが、ある程度定着してきてリピートしてくださる方も増えたので、バリエーションとして真逆のジャージ素材を新しく作りました。空紡糸を度詰して、カリッとしたタッチのハリのあるジャージです。70年代のフルーツオブザルームのTシャツ生地をイメージし、それをPHLANNÈL SOLのフィルターを通して上品に仕上げています。特徴としてはシルエットが立体的に出ること、そしてハリ感によって身体から自然に離れるので夏に風通しがよく、涼しいです。今回はまだですがこれからリリースになるので楽しみにしていてください。

PHLANNÈL SOL / FW-128 / 22,000+tax

チノパンは新型を1型増やしました。20世紀初頭のワークパンツから着想した「FW-128」というモデルです。深い股上とゆったりした腰回り、裾にかけて緩やかにテーパードするシルエットなどベースの部分はそのまま活かしましたが、シルエットを現代的にアレンジしています。(淺川)

現実と非現実の均衡

19AWシーズンからPHLANNÈL SOLが始まったり、日本人モデルを起用したビジュアル制作だったりと、リアリティに寄り添う一方で非現実的なロケーションでのイメージビジュアルがあったりして、「リアリティ(=生活の一部)」というPhlannèlの芯の部分と同時に進む新しさのある独自世界の広がりが引き続き新鮮な20SSコレクションですね。(守屋)
─イメージビジュアルやカタログの作成は毎シーズン、アートディレクターの方を中心に更新し続けています。皆さんプロの方ですから色んな引き出しが沢山あり、毎回楽しみなお仕事でもあります。日常に寄り添う服だからこそ、ロケなどで非日常な空間と組み合わせることで、リアリティになりすぎない表現を用いたりというのも意識はしています。(淺川)

アンテナを張り続けること、インプット・アウトプットの継続を前回述べられていましたが、淺川さんご自身の中でそれらの方法の変化や意識の部分での変化などはあったのですか。(守屋)
─意識していることはこれまでと全く変わっていません。Phlannèlのデザインにおいても、長く着れる服を作りたいという根底の思いは変わっていませんが、ブランドに携わる時間が長くなればなるほど、それを忘れずにブレずにいることの方が大変になります。なのでそのブレを作らないよう意識しながら、それでもPhlannèlは自分自身の感性と感覚を頼ってデザインしています。一方でPHLANNÈL SOLは、より他にはありそうでないもの、そして長きに渡ってベストセラーになるような名品を生み出したいと考えながらの開発です。が、中々難しいです。頑張りたいですね。(淺川)

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ことばの箱から漏れた空気は

40's French Army Belted Pants / 30,000+tax

「ことば」という箱には全てを有形物のように見せる特殊な力があります。目の前にある絵画や耳に聴いた音楽、食べた料理などに関する一般的魅力や個人の主観、それ以外の付属説明などの無形の欠けらを集めて「ことば」という箱の中に入れると、多くの人にある程度の同一感覚でそれら無形のもの(=感情)を共有することが出来るようになります。

心の中にふわふわと浮かんでいる、色のついた空気のような無形のもの(=感情)も、「ことば」という箱に収めてみるとその色のついた空気は他人にも見えるようになって、それがブルーなのかピンクなのか、イエローなのかを共有することが出来るようになります。

ただ、その「ことば」の箱に押し込んでみようと思った色のついた空気は、空気なので少し漏れ出すこともあります。その漏れ出た部分の共有が難しいからこそ、他人へは自分の感情を言葉で全て伝えようと思っても、どうしても完全理解に至らないという難しさがあるのだろうと思います。そして実は、こぼれてしまった側の色のついた空気の方が濃度が濃かったりするのです。本当はこっちの漏れてしまった側が大切で、こっちを上手く言語化出来たらよかったのに、どうしてか空気は知らぬ間に漏れ出てしまうのです。

そしてその「ことば」の箱から漏れてしまっている部分への理解度というのは、相手がどれだけ自分と似た価値観を持っているかに起因していて、言葉を発した人と全く違うフィールドで生きていてきた人や価値尺度が異なる人にとっては、箱から漏れてしまった空気の色を推測することは非常に難しいと思います。だから特殊な力をもつ「ことば」の箱も万能ではなく、それほどに人間の感覚というものは複雑なのです。

French Navy Breton Shirt / 14,000+tax

どうしてこんな話をしているかと言いますと、ビンテージの良さというのはどれだけ”希少性”や”味わい深さ”や”面白さ”を「ことば」の箱に押し込めてみても、きっと箱の中身を共有出来る人とそうでない人とは二分されるものだろうと感じたからです。その箱から漏れた空気の色を言葉を介さず共有出来る人とでないとわかり得ない部分に、それらの良さと面白さの真髄があると思ったからです。けれど、そういった類の洋服は非常に面白くありませんか。どれだけ蘊蓄があろうと、情報があろうと、結局はそれらが届かないところに、真の魅力はあるのですから。(守屋)

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あるべき場所にある美しさ

Bergfabel / Shearing Work Jacket / 280,000+tax

東京に住む人が京都や金沢や、そして北海道、沖縄に旅行に行くのは、きっと美しい景色を見たり美味しいものを食べたりして、東京では味わえないリラックスした気持ちと美意識を体感したいということが潜在的な理由になるかと思いますが、そこでふと思ったことは、東京に住むどれだけの人が、この東京の街を美しいと日々思っているかということです。そして私自身は、東京の街を「美しい」と思うことは控えめに言ってもほとんどありません。

古都金沢の街並みが美しいのは、その古き良き建築物や美術品があるべき姿でそのまま残されているからでしょう。そして新しく造られる建物やお店や道路にしても、ありとあらゆるもの、街の景観を作りあげているものたちはあたかも昔からそこにあったようにすんなりと街に馴染んでいます。その「あるべき場所にある」美しさが、長きにわたり人々を引きつける景観の美しさを保っている金沢の特色でしょう。

沖縄の海や北海道の緑が美しく感じることも同様の理由で、もちろん人間が作り出したものでは無い自然というものは、あるべき理由があってそこに存在しています。寒い国にはその土地の気候にあった緑が育ちますし、食物もその土地にふさわしいものが自然と育ち、その土地の名産となります。美しい海やサンゴ、そして色鮮やかな魚たちはその温暖な海の気候にあった生き物だからそこに存在しているわけで、それがそのまま寒い海に移植されることは決して不可能な話です。

Bergfabel / Farmer Coat / 155,000+tax

あるべき姿のまま存在している自然や、あるべき姿のまま残された景観に美しさを感じる人々は、不用意に作りあげられた景観や商業ベースの建築物には決して「美しい」という感情を抱くことはないと思います。便利で快適かもしれないけれど、それと美しさはもしかすると対極にあるかのように遠い意識の違いであるようです。

洋服についてもきっと同じで、着るべき人が着ていれば、どれだけ古いものでも美しいし格好が良く、視線を一心に集める存在になるであろうと思っています。そしてあるべきクローゼットに収まっている洋服の姿も同様に美しいものです。この洋服の隣にはどんなものが掛けられているか──それだけでその服の心地良さそうなオーラやそれが放つ美しさは変化します。お店ではあるべき場所に収まってその美しさを魅せてくれる服たちがここにはありますが、誰かのクローゼットの中でも同じように心地良さそうに収まっていて欲しいなと、そう願うばかりです。(守屋)

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今見ているもの

灰釉粉引花入(松) / 10,000+tax

自然のものが絶対的な善であるとは限らない。自然から採取される天然の塩は、ミネラル由来の旨味と塩味を持つが出汁のような複雑さを伴う味わい深さを増進させることは出来ない。バランスよく整えられて用意された人工調味料は、それだけで味の濃さや旨味、重層感全てを増進させることが出来得る。

青灰稜花六寸台皿 / 5,500+tax

利便性と手軽さを重視すれば、もしかすると自然のものよりも人工のものの方が理に叶っていると言える場合もある。ただ、本当に身体が心地よく健やかに感じるものはどちらだろうか。そこに正解はなく、全ては個々人の感覚に委ねられる。

灰釉粉引片口(大・淡緑) / 7,500+tax

自然のものが絶対的な善であるとは限らない。自然から採れるものだけを調合した釉薬は色が安定せず、思った通りの色彩表現をなし得ないこともある。同じものを複数生産するためには、化学に頼り、色を安定させて思い通りの仕上がりを叶えてくれる釉薬の方が適していることは言うまでもない。

思っても見ない仕上がりを自然物ならではの表情と喜ぶか、色合いの異なる対のマグカップに違和感を覚えるかは感性の違いでありどちらも正解や不正解の価値指標には則らない。全ては個々人の感覚に委ねられる。

淡緑三島大皿 / 30,000+tax

自然のものが絶対的な善であるとは限らない。人工物が絶対的な悪であるとも限らない。ただ、自分の持つものや当たり前に世間に広まっているものたちを全て手放してみると、そこにただ在る自然のありのままの姿を、そのまま受け入れることが出来るようになるのかもしれない。不便も歪さも何もかもが、心地よく手を取り合って自分の中で成立するようになるのかもしれない。全ては、個々人の感覚に委ねられている。(守屋)

【川口武亮 / 今見ているもの】
WEB SHOP個展会期:12月7日(土) - 9日(月)
個展作品ページはこちら

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knitbraryの良いところは何ですか

knitbrary / Chunky Cardigan / 125,000+tax

ライフスタイルやライフスタンス、いわば新しい価値観や文化というものは、誰かから教えられるものではなく、自らで情報を取捨選択し、拾った情報を自らの肉体と精神のフィルターを通して噛み砕きながら体得していくべきものであると思っています。その時に、決して忘れてはならないことは、まず素直に心動かされること。そしてそれがいいものだと感じるならば、自分もいつかそれを手に入れたい、理解したいと願う気持ちを忘れないことだと思います。

その純度の高い受容の精神があってこそ、そこで理解しようと試みた価値観やその後に手に入れた体験全てが、その人のフィルターを通ったその人だけのライフスタンスとして体得されていくのではないでしょうか。そしてそのような温度を持った誰かの価値指標なり情報だけしか、この情報社会の中においては価値を持たなくなっているとも思います。ここには、そのようにして何かを得たい、理解したいと願いそれを叶えた人々が体得した、knitbraryという一つのブランドに対する価値指標を掲載させていただきます。


− knirbraryの良いところは何ですか

 

− knirbraryの良いところは何ですか

エレガントに寄るか、手編み感のあるナチュラルに寄るかの二極に偏る“上質なニットブランド”というカテゴリーの中で、丁度良くバランスを保っているところ、そしてそこがBLOOM&BRANCHの洋服にも馴染むこと。あとは、デザイナーが丁寧に色の組み合わせや、日本人に合わせた袖丈や、お店に合わせたサイジングなどの相談に乗ってくれ、オリジナルなオーダーを可能にしてくれること。(Women's Director 中出)

人の手から生み出すものはニットに限らず個体差が出てくるし、どうしてもハンドメイドというとナチュラルだったりほっこりという土味的な印象が強く出てしまうと思います。だけれど、knitbrary はモダンさを兼ね備えていて、その調和が非常に上手だと思っています。職人さんが作っているにも関わらずその職人さんの色が付かず、静かに、でも主張のあるアイテムとして確立しているというのか。ちなみに、かぎ針編みのショートカーディガンは、編み地も素敵ですが、私の様な小柄な身長の人にはとても良い着丈バランスで、シンプルにデニムとユッカスと合わせるのが素敵です。(Press 西村)

− knirbraryの良いところは何ですか

デザイン面で言うと、手編みの物は古臭かったり普遍的な物が多い中で、どこか新しさを感じるというところ。それはシルエットも含めて言えますが引き算の中に垣間見える足し算の部分が良いです。手編みニットなのにほっこりせずに品格が漂うとか。あとアルパカの手編みってそうないと思います。その気持ち良さは格別です。(AOYAMA Shop Manager 伊藤)

肉厚のフィッシャーマンニットなどとは違って、柔らかく着易さに優れたところが良いです。素材自体のクオリティも高いので、シンプルなスタイリングでも上品に着こなせます。(AOYAMA Shop Staff 香村)

knitbrary / Crew Neck Lady Cardigan / 102,000+tax

− knirbraryの良いところは何ですか

極めてシンプルなデザインと風合いだからこそ、その人自身の個性が存分に出る品の良いニットだと思っています。(AOYAMA Shop Staff 安達)

ニットの入った箱を目にした時にまず、時計とかアクセサリーを手にしたような高揚感を覚えます。ただならぬオーラを纏ったその箱を開けて物を手に取ると、デザインやカラーは普遍的。だけど何故か滲み出る高級感や上質感は着ないと分からない良さです。「高級」とか「上質」という言葉は平易ですが、これに関しては沢山のニットを着てきて、良き物への判断基準が備わっている人にだけ分かるものかと思います。(TOKYO Shop Staff 粕谷)

knitbrary / Lines Pattern Sweater / 105,000+tax

− knirbraryの良いところは何ですか

日本人のような丁寧な心配りで海外で出会うラフなクリエイターの中でもちょっと異質。生真面目で温かくて、そんな2人を一方的に好きでいます。作りは手編み、手横機といった時間のかかることやってるんですが、完成したものもやっぱり温かい。体感的な温度もそうですが、ニットから伝わってくる幸福感が違う。(Director 柿本)

Text : 守屋

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パリでも、ニューヨークでもなく

Phlannèl / Baby Alpaca Multi Border High-neck Sweater / 34,000+tax

空気がすっと澄み渡って、頰をかすめる風の中にほんの一握りのひんやりとした心地よさを持ちながら、それでも太陽の温もりを目一杯抱え込んだ空気の柔らかさで溢れる秋の空気が、私は一番好きです。夏のくっきりとした世界の色は、一転してその彩度を下げながらも透明度を増してきらきらと輝き、全てがグラデーションの中で一体感を持ってすっぽりと在るべき場所に在るような、そんな心地良さがありませんか。

今年は関東をはじめ全国的に見てもなかなか紅葉が始まらなかったばかりか、夏の終わりと秋の始まりを行ったり来たりするようなどちらともつかない、よく言えば気持ちの良い暖かさが続く気候でしたのでなかなか秋の実感も湧かないままにとうとう11月を迎えてしまいました。ぽっかりと大事な季節を噛み締め忘れてしまったような不意を突かれたような感覚です。

そんな日々の中にでも少しずつ色づく街路樹の黄色やオレンジがあり、そしてそれを映し出すキャンパスとしての空は、青さを落ち着かせて街の色を引き立ててくれるような、薄いベールを纏った美しい青に変わりました。街のコンクリートも、からからと干からびてしまった素っ気なさから、本来あるべき潤度を取り戻したようにそこにある空気を集め、時折落ち葉のアクセサリーを纏って街にしっかりと同化しています。

Phlannèl / Wool Yak Cable V-neck Knit / 32,000+tax

夏にはきっぱりとそれぞれの色と個性と質感を主張しあって賑やかだった大地も自然も街も、秋にはそれぞれが調和し丸さを帯びて母のような寛大さと温かさを持ち、来るべき冬に備えているような、そんな感覚を覚えます。そのグラデーションを帯びる季節の色を目の当たりにし、日本ならではの秋の色と空気を感じながら、それらを忠実に再現しているPhlannèlのアイテムをふと思い出す。クローゼットを開けて、去年の冬に自分の身体を温めてくれていたニットを思い出す。

今年もようやくそんな季節がやってきました。このグレーを帯びた青は秋の空の色、もしくはグレーの濃さを思うとこれから寒さの増す季節の色かもしれません。ここにはパリの空の色はなく、ニューヨークもシアトルも、プーケットもハワイもリオデジャネイロもありません。ここには、確かな日本が表現されています。(守屋)

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流動的なファッションの中に「不変」を見る

POOL by CLASS / Calton Brown / 73,000+tax

基本的に洋服は大好きだが着道楽ではなく、洋服というプロダクトは好きだしデザインという領域の話は好きだけれどファッションは好きではなく、マーケティングなんて出来ることなら考えたくないという業界人として間違いなく失格の烙印を押されてしまう欠点が私にはあります。ちなみにこの考え方は、シンプルで長く使える洋服や上質な日常着をベースとして提案しているBLOOM&BRANCHの世界観が好きなお客様には少しは理解してもらえる部分があるのではないかと淡い期待を抱いています。

これは決して根拠のない自信や願望ではなく、その価値観に共感してくださるお客様がいるからこそ毎シーズンPhlannèlでは変わらない定番品をリリースするSOLというレーベルが誕生したわけですし、それらを求めてくださるお客様が沢山いらっしゃる事実があります。ですがそんなお客様にも、日常から少し距離を置いたようなファッションアイテムに是非触れてみて欲しいという一見矛盾する考えを今回はお伝えさせていただきたいと思っています。

POOL by CLASS / Manashiki / 43,000+tax

上質な日常着を基本とする店内では、ファッション性の強いアイテムやデザイン性の強いアイテムはより際立って見え、必要以上にそのファッション性だけが目に入って来がちなのですが、これらのファッション性の強いアイテムは、流行とは無縁ながらそのシーズンの中でデザイナーが表現したい世界観を強く反映している、その時のリアリティが凝縮されたアイテムなので、正直なところ次のシーズンになっても愛用していられるかと問われると私自身にも疑問が残ります。ですがこれらのアイテムの多くはファッション業界を第一線で長く引っ張ってきたデザイナーが作るものであり、そこに一時的な感情は多少含まれていながらも芯の部分では確固たる世界観をどっしりと構えています。「変化」の中に必ず「不変」を持っているのです。

この「不変」がしっかりとあるからこそ、1年目に飽きるほど着て2年目にはそっとクローゼットを温めるだけになったアイテムも、3年目になるとまたじわじわと袖を通したい感情が湧いてくる。その理由は時を経て初めて、そこに表現されていたのは流行や気分ではなく「不変」の拘りの世界観やメッセージなのだと気づく事が出来るからです。更に彼らの作る洋服には、経年により美しく変化する表情を持つものがほとんどです。彼らはファッション性の中に「不変」を表現する方法の一つとしてそのような経年の美しさを選んでいるのかもしれません。

そして、BLOOM&BRANCHにあるアイテムは全てにその「不変」の役割を求める事が出来ると断言できます。何故かというと、そのような信頼のおけるデザイナーの作るものしかセレクトしていないからです。その時流行っているだけだったり、信念のないマーケット重視のブランドのアイテムは、ここにはありません。ここにあるそれらのアイテムを多く買って、一定の時を経た今だからこそ、自信を持ってお伝え出来るようになりました。(守屋)

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信用を担保に

Phlannèl / Arles Wool Balmacaan Coat Womens/ 85,000+tax

エルメスやルイヴィトン、カルティエ、そしてメルセデスベンツなど、ヨーロッパにはもの作りにおける老舗ブランドがあまた存在し、世界中でファンを獲得し、その地位を揺るぎないものとしています。同じく、もしくはそれ以上に長けたもの作りの技術や職人気質の文化があるはずの日本では、残念ながら先述のようなブランドの発見や育成が出来ていないのが現状かと思います。

Phlannèl / Arles Wool Balmacaan Coat Mens / 85,000+tax

戦後の日本においては経済成長こそが正義であり、誇るべき希少な技術よりも生産性が、オリジナリティより市場ニーズが優先され、その結果ブランドらしからぬカラーの商品が売られていたり大量生産に向けて貴重な技術が望まぬ方向へ利用されていたりしたかもしれません。あくまで上記は個人的な仮説にすぎませんが、それらの市場原理と人々の視点が、本来あったはずの「老舗ブランドたり得る原石」をことごとく壊してしまっていたのではないでしょうか。

ヨーロッパで誕生し世界のマーケットを牽引する老舗ブランドには、そこに存在する職人技術への敬愛があり、市場ニーズよりも自分たちの作りたいものやブランド理念が優先され、薄利多売ではない適正価格で良いものを世に広めたいという心意気がずっと消えずに継承されていることでしょう。

需要に媚びないことが、逆に供給物へのニーズを生み出し、その繰り返しが長く続く歴史を形成し、その長い歴史という裏付けによって人々の信用を勝ち得て、その先にはその信用を担保として歴史を長く続けていくというパターンを作り上げたのだと思います。信用は何にも変えがたい無形財であるのだということに、どれだけのブランドが気づき、その発見のともしびを絶やすことなく継続していけるのでしょうか。

要するに、10年、20年スパンでブランドの未来を考えるのではなくて、100年以上のスパンで考えられる視点が存在するか否かがその分かれ目になるような気がします。日本はそんな世界に誇れる老舗ブランドを作り上げるマーケット作りから始めないといけないのかもしれません。本当に良いものは流行物ではないし、目立ったりもしない、だけれどその芯には揺るぎない信念があり他者への敬愛があり、それは持つべき視点を持った人には必ず見えてしまうものです。(守屋)

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