JOURNAL

意味のあるものづくりを
- OLDMAN'S TAILOR

「常に何か別注ができないかと考えているわけではないですが、自分が気に入っているアイテムをもっとBLOOM&BRANCHらしくアップデートして、お客さまに喜んでもらえるものがあれば是非やりたいなとはいつも思っています。今回のはじまりも同様に、自分が一年中着ているほど気に入っているレザージャケットを、よりBLOOM&BRANCHらしいアイテムとして昇華して、多くの人に届けられないかなと思ったことがきっかけでした」。

 

少し野暮ったく荒々しさをも見せるスウェードの表情に対し、とろとろと滑るようになめらかな質感が美しい佇まいのジャケットはディレクターの柿本自身が愛用するもの。今回の別注アイテムはそんな一着をより多くの人に届けたいという思いから生まれたそうです。

 

「自分の所持するOLDMAN’S TAILORのジャケットはデニムジャケットがベースになったデザインで、比翼ボタンでスタンドカラーという仕様。だからコートのインナー使いとか、Tシャツに羽織るだけのような使い方で着ていてとても重宝しています。

何気なくTシャツの上から羽織ったとき、素肌に触れるレザーの質感が本当に滑らかで心地良く、質の高さに感動を覚えました。この肌に吸い付くような素晴らしい感覚をたくさんの人にも体感してもらいたい、少しでも多くの人に届けたい、と純粋に感じて。革選びに始まり納得のいく品質を超えながらも金額面でも妥協しないものを作るために生産背景にも拘って、ようやく答えを見つけることが出来ました」。

 

 

「まず今回のデザインは、OLDMAN’S TAILORで定番となっているデザインのジャケットです。知っている方も多いでしょうが、フランスの羊飼いのためのコートであるマキニョンコートをベースにしています。彼らの作業着として存在するものなので、ハサミを入れるポケットがついていたりと細かなところに機能的なデザインが落とし込まれています。BLOOM&BRANCHではフランスでビンテージの買い付けもしていて、20世紀初頭のインディゴリネンのマキニョンコートを仕入れていたこともありました。だからこそこれをベースに別注アイテムを作るということもすごく自分たちらしいなと思って、この形で作らせてもらえないかと依頼しました」。

 

古いフランス古着は洋服に造詣の深い人から、今では若い方でも詳しい人がたくさんいますよね。虜になっている人が多いという印象です。洋服の玄人にやはり着て欲しい、体感して欲しいという思いが強いのでしょうか。

 

「洋服に詳しかったり、フレンチビンテージに詳しい方には絶対に引っかかるデザインになっているはずです。世の中にあるレザージャケットは基本的にはアメリカやイギリスが出自のものがほとんどなので、フランスがベースになったレザージャケットというのも、そもそもこの世にあまりないものなんじゃないかと思っています。ただ、これまで様々な洋服を着てきたけれどレザーを着たことがない人、特に若い方でレザージャケットに挑戦したいなと思っている人には、絶対に着てみて欲しいと思っています。その考えもあって、品質と価格とのバランスにとにかく拘りました」。

 

 

今回の別注の大きな目的の一つが、レザーを着たことがない人にも手に取ってもらうこと。その思いを実現させるために拘ったという、品質と価格のバランスを取ることは、どのように実現の道を模索したのでしょうか。

 

「素材の質や製品クオリティに妥協せず、価格の面でバランスの取れたものを作る方法を模索する中で見つけた答えが、インドネシアのバリで育った上質な子供の山羊の革を使うこと、そして現地のインドネシアの職人に一貫して革の鞣しから縫製までお願いするということでした。僕自身、アジア生産のものを見ると、品質に疑いを持ってしまったり、マイナスなイメージを抱いてしまうので、当初インドネシアの生産背景を使うことに自信が持てなかったのも事実です。ですが、その生産背景について詳しく教えてもらうと、職人が一つひとつ手作業で鞣しや縫製を行う工場があることが分かりました。そして何より、インドネシアで生まれ育った革なのだから、インドネシアの地にあるテクニックを用いてその地の職人の手によって作られるという流れがとても腑に落ちました」。

 

 

「例えば今、インドの手工芸は日本にも入ってきていて、カディなど本国でしか生産し得ない素材があることやテクニックが存在することを僕たちは知ることが出来ますよね。それらはきっと日本で再現しようと思っても限界があるもので、『インド製』であることに意味があるはずなんです。ただ、その背景に対する知識や理解がなければ、単純に『インド製』や『インドネシア製』の服に魅力を感じることはまず難しい。背景を知り、その地にしかないクオリティのものがあることを知るからこそ、ものの正しい価値を理解して、納得して、その上で自分がいいと思えるものを選ぶことが出来るんじゃないかと思います」。

 

革選びの段階では表革にするか裏革にするか、山羊にするか羊にするか、など全ての選択を視野に入れる中で、最終的にBLOOM&BRANCHらしさと品質の良さを求めてこの革を選択したそうですが、この2色に絞ったことにも理由はあるのでしょうか。

 

「自分が持っているこのレザージャケットのベージュがなんとも使い勝手がいい色でどんなスタイルにも合わせやすく、この色は絶対にやろうと思っていました。実際に自分がそうしているのですが、ベージュのトーンを合わせて、このジャケットの上にベージュのコートを着ていて、そんな雰囲気で、上からベージュのトレンチとかステンカラーのコートとかを合わせて着てもらいたいなと思っています。白のシャツ、白のトラウザーとかにも本当に相性がいいです。

反対に、黒のコートの下にはこの色は合わせられず、自分だったら黒のコートの下にはやっぱり黒のジャケットを合わせたいし、黒のトラウザーやカットソーには黒のジャケットを羽織りたいと思います。だから、そういったスタイルに合わせてもらえるように今回黒の別注もお願いし、2色の展開になりました。自分はUS NAVYの40年代くらいの古い海軍のデニムを履いていて、そういった太めのデニムに合わせるのが今の気分かなと感じますね」。

 

 

「もう一つ、そうやって同系色のスタイリングを提案する理由があって、これはスウェードという素材のデメリットに対するものでもあるんですが、スウェードはやはり摩擦で汚れがつきやすかったり毛がポロポロと出てきたりします。もちろんその経年こそが格好良さだし自然な表情だと思うので、僕がずっと着ているジャケットは、江戸屋のブラシでかなり強めにブラッシングをして、毛羽を楽しんだりもしています。少し生地自体が痩せてくる感じはありますが、こんなに滑らかに、そして柔らかくなるのがとにかく気持ちいいんです。その心地良さを、何より体感してもらいたいです。

それは良さである反面、このジャケットの上から羽織ったコートの裏や、摩擦するバッグなどにはスウェードの毛が付きやすいというデメリットにもなります。なので、そういった点からも、同系色のインナー、アウターなどを合わせたスタイリングをすることで、そのデメリットをより目立たせないようにする、という意味でおすすめしています」。

 

 

「特徴的なディティールであるカンヌキも、一つひとつ職人が手で仕上げてくれています。これを見たときに、自分が選んだ方法は間違いではなかったと、自信を持つことが出来ました」。

 

 

 

photo : Ryuhei Komura

text : Yukina Moriya