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優れたDJが必要

OLDMAN'S TAILOR / Suede Work Jacket - Camel / 98,000+tax

この世に存在する商品の中に、必要不可欠なデザインを探そうとしたとき、果たしてどれほどものを見つけることができるでしょうか。市場に溢れすぎた商品の中で人から選ばれるためには、おそらく目立つデザインを加飾することが手っ取り早い方法として取られることが多く、特に日本では利便性という言葉が強固な価値を持っているように思います。

良い塩梅のセンスに「利便性」が付加された途端、それは「ありふれたもの」から「気が利いたもの」という付加価値を伴った存在に格上げされることがしばしばあります。その結果、本来必要がなかったものにまで「便利」を付加するために不要なデザインが備わってしまった、というものを散見します。もちろん「便利」は一例にすぎず、過不足なく仕上がっていたものに「トレンド」が付加されていたり「豪華」が付加されていたりするのですが、果たしてその物が存在するためにそのデザインは本当に必要だったのかと思わず首を傾げた経験は決して少なくありません。

デザインが付加された経緯を遡ればその過不足は測量可能であり、その経緯は、ものが生み出される目的を振り返れば必要か否かは明瞭です。「10月に売れるスウェットを作るため」、「20,000円の価格を通すため」という目的のために採用された吊り編機を使用した生産背景やディティールは、そこに存在するものに対しては本当に必要だったのでしょうか。「20,000円で販売する、その値段ででき得る最大限の生産背景を探す」という経緯を辿って選ばれた吊り編機という選択とは雲泥の差があるはずなのです。

結局のところ、付加価値をつけるために出来たデザインは不必要であり、付加価値というのはものやサービスに対して事後的に付与されるからこそ付加価値なのであり、それを目的とした時点で論理は破綻しています。やりたいこと、目指したいことに対して最大限に尽くせる方法を模索する結果に出来たものに対して、それを受け取る人がそこに「付加価値」を初めて見つけるに過ぎないのです。

誰かに必要とされるだろうものをこの世に生み出す、そこにおいて、最良の方法を最大限探し尽くしてものを作ること、デザインすることが本来真っ当なものづくりの経緯であったはずなのです。良い素材、良い生産背景は今の時代はきっとひと昔に比べて数多存在するからこそ、それらを駆使することができる力を持った人、それを良いバランス力で整える力を持った人が必要なのでしょう。そしてそれを、商売的感覚からは一歩離れて、純粋な目で良し悪しを見つめられる人が必要です。(守屋)

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能動的な受け手の存在こそ全て

m's braque / CHINA JACKET DEADSTOCK HOMESPAN / 60,000+tax

メンズ・ウィメンズディレクターがそれぞれの視点でものについて言葉を綴るJOURNALという新しいコンテンツがBLOOM&BRANCHのHP内にてスタートしております。9月にリリースとなったm's braqueとの別注アイテムやOLDMAN'S TAILORとの別注アイテムについて、制作における思いを語った回も公開となりました。

m's braque / 3TUCK BELTED TROUSERS DEADSTOCK WOOL KERSEY / 38,000+tax

オウンドメディアの重要性が叫ばれるようになって久しく、今では多くの個人やブランド、企業が自身のYouTubeチャンネルを開設しており、商品にまつわるストーリーや、スタイリング提案を流して有益な情報を提供しているチャンネルが相当数増えたように思います。そんな中で、BLOOM&BRANCHでは「BLOOM&BRANCHらしさ」の表現として、動画制作ではなく静止画を含むJOURNALというページにて言葉を綴る方法を選択したわけです。

良くも悪くも、文章だけでは伝えられないことというのは洋服において本当にたくさんあります。手触り、シルエット、ドレープの表情などはいくら精度の高い言葉や写真をもってしても表現し切ることは困難を極めます。そこまでして、JOURNALというページで、BLOOM&BRANCHらしさや考えていることを伝えようとした意味とはどこにあるのか、私的な見解を述べるとするならば、おそらく情報を受動的ではなく、能動的に受け取ってもらいたいという思いが強かったからなのではないでしょうか。

テレビも映画も、動画チャンネルも、映像というのは画面を眺めていると受け手の心持ちやペースや感情の変化をもろともせず決まった速度で流れ続け、そこに詰め込まれた情報は私たちの目の中に否が応でも飛び込んでくるものです。文章となった言葉達は、私たち読み手が読もうとしなければ、読み進めなければ、情報は自動的に入ってくるものではありません。「らしさ」というのは言葉にすると平易で簡単な言葉になりますが、それをいざ表現するべき時には、多角的な意味性を伴った表現というのが必要になるのでしょう。その包括的な表現として、BLOOM&BRANCH JOURNALというものが誕生したのだと思います。こちらの別注アイテムについては、もちろん私の言葉でなく、ウィメンズディレクターの中出の言葉にこそ真実があるものです。是非ご一読ください。(守屋)

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刹那生の反対側に位置するもの

NICENESS / ROYAL

例えば食事を楽しむ場合、それは味わいを楽しむものであるのはもちろんのこと、そこから漂う香りなどの嗅覚情報、給される皿やしつらえなどの視覚情報も伴ってその食事の「美味しさ」は決まってくるのではないでしょうか。本来の目的である「美味しいものを食べる」ということの周りにある様々な体験情報によってその美味しさは二倍にも三倍にも膨れ上がります。

それが洋服の場合は、真の目的はもちろん身に纏うこと、装うことであるので自分が洋服を着たときの見た目の格好良さや落ち着き具合というのが最終的には洋服を所有するときの大きな価値となるでしょう。ではその周りにある情報、纏うことの価値を増進させる情報とは何なのでしょう。

洋服では嗅覚や味覚の体験はない反面、手触りや着心地といった触覚が大切な要素になります。やはり肌に触れたとき、身に纏ったときの心地良さはそうでないときと比べて大きな価値、というよりは絶対的に譲ることのできない不可欠要素となるはずです。そしてもう一つ、食事はその席だけで消えてしまうライブパフォーマンス的な価値を持ちますが洋服はそれを何年、何十年と長く着ることで価値を増進させていくという特徴もあると思います。

家や車にも同じことが言えますが、真鍮の表札が古美色に変化していく経年や、漆喰の壁が深みを増していく変化の様はライブパフォーマンスとしての一瞬の価値体験にはないものがあります。そのような経年の価値というものは、それを体現している人や店で直接体験することも可能ですし、それを持ち帰って、自分だけのご褒美のようにこっそりと味わうことも叶います。それもまた醍醐味ですね。(守屋)

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上手とは何か

STUDIO KETTLE / The Pint Bag Waxed Cotton / 16,000+tax

絵が上手、下手というのは何を基準に判断しているのでしょうか。「上手い絵」と「価値ある絵」はイコールの関係にあるのでしょうか。「下手な絵」でも「価値ある絵」とは存在するでしょうか。このキャンバスに描かれた絵を見ても、「上手」かどうかを判断出来る人は決して多いとは思いませんが、例えば多くの人はきっと「素敵だ」などのポジティブな感情を抱くのではないでしょうか。

絵画のみならず、音楽も言葉も料理も造作も、上手いと言われる人がきっとそれにまつわる職業に就き、対価を受け取れるような立場にあるのでしょうから、そんな方々が提供するものがきっと世の中では「上手い」とされ、「価値がある」とされているのだろうと思います。ただ、「上手い」以外のものにも私たちは所々で価値を見出し、それらを欲する場面があるはずなのです。

STUDIO KETTLE / The Pint Bag Painted Canvas / 18,000+tax

レストランの食事が絶品に美味しいことはもちろんそれを作るシェフが料理上手だからなのですが、たまに実家に帰って食べる絶品ではないけれど懐かしい母の味の料理は、決して「上手」ではないけれど「価値があるもの」として、自らが求めていることはないでしょうか。決して上手ではない子供の絵が、誰かの心を震わせることがあるのも同様に、「上手」と「価値がある」ことがイコールでつながらない例えの一つにあげられます。

ではどうして、下手でも価値があるものが生み出されるのかという疑問に対しては、個人的にはそこに愛情があるかどうかに尽きるように思います。母の料理の持つ愛情の無限大さ、子供が絵を描くことが好きで、絵を描きたいという純真無垢な行動への愛情は、時として何よりもの価値を生み出すのだと思います。好きこそものの上手なれではないですが、日々のものごとに対して、どれだけ愛情を持って接するかによってそこから生まれる影響の輪は変化していくでしょう。(守屋)

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