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境界

manuelle guibal / THEME ARZA H TRENCH / 100,000+tax

生活の中には時間の切れ間というようなものがいくつも存在しています。寝ると起きるの間、自宅でのオフモードから通勤電車、そして会社でのオンモード。お風呂でのリラックスタイム、団欒の食卓、そして眠りにつくまでのささやかな読書のひととき。

manuelle guibal / THEME TINO H MAO CHEMISE / 42,000+tax

一つひとつの時間の境目を意識し、一つひとつの塊の時間へ深く没入していくということが、近年では非常に難しくなり、時間と時間の間にデジタルデバイスが介在し、全てを細切れにしていきました。通勤電車という一塊の時間は、SNSで情報収集をする時間となり、そうかと思えばポップアップされたメール受信の情報を見てビジネスメールの返信時間へと変わり、そうかと思えば気になっていた洋服をリサーチし、という具合に、ひとつづきであったはずの時間は、どんどんと細分化されているように感じます。

一つ、何かに深く没入していくという時間が少なくなり、長い時間読書に興じたり、アイディアを練るための脳のストレッチ時間を十分に持てなくなり、気がついたらあの人と会話をし、この人とメールをし、という時間の消費は、長く、そして深い時を過ごすことを難しくしました。

あっちを見てこっちを見て、画面をスクロールしてあれこれタップしているうちに、ただでさえ見分けづらくなった季節の境目を全く気にも留めることなくやり過ごしてしまうのでしょう。意識的に時間の切れ間を少なくしたり、何かに没入したり、顔をあげる努力をしながら、本来気づくべきものや向き合うべき自分の姿というのを、見失わないようにしたいものです。(守屋)

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情緒と道具の間

Le Yucca's / Loafer / 125,000+tax

私を構成する上で欠かすことのできない要素として、軸足を置く土台として、生活というものをこれまでになく強く意識するようになりました。生活を差し置いてでも、仕事で成し遂げたいことがあるとか、生活が苦しくなっても手に入れたい靴があるとか、つまりはそれこそが幸せの形だったわけなのですが、果たしてこれは空想なのではないかと、疑いの目を向ける人は増えたはずです。

毎日安いコンビニのパンを買って空腹をしのぎながら手に入れる十数万円の服や靴は、その物質的価値以上の情緒をもたらす一着や一足となったことは、明らかなる事実であり決してそれを美化したりあるいは後悔することもありませんが、では今の自分も変わらずにその意識で物事を成し遂げたり手に入れたりしたいのでしょうか。

どれだけの情緒的価値を手に入れようとも、生活は私たちの前に横たわり、そして生活とは情緒と道具の間に存在するものだと、現代を生きる私たちは感じているはずなのです。情緒だけの夢物語も、道具だけの修行の日々も、満足ではなく、その間にある、生活というものこそが、私の心を満たし、幸せとは何かを考えさせる機会を与えてくれるもののように感じます。(守屋)

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じっくりと味わうことの幸せ

Phlannèl / Organic Cotton Over Sized Hooded Sweatshirt / 22,000+tax

Phlannèlが目指すのは“並外れた普通”、“最高級の普通”。決してPhlannèlの服に袖を通した人全てをファッショナブルな印象に仕上げてくれることはなく、良くも悪くも、目立つことなく自然に上品な雰囲気を醸し出される程度でしょう。服を纏っている人自身も、急激な気分の高揚があるわけではなく、ちょっとした嬉しさや安心感がある程度のはずです。

例えるならばそれは、白いお砂糖をふんだんに使った甘い甘いケーキと、素材の持つ自然な甘味を活かしてこっくりと仕上げられた栗きんとんの違いのようなものでしょうか。頭の先から足の先まで甘い幸せに包み込まれる白砂糖の魔法は、急激な幸福とともに不足感を同時にもたらします。一方蜂蜜やきび糖のもたらすものはゆるやかな坂を登っていくように訪れる幸せと共にそれが長く長く続く余韻です。

刺激的なものや目を惹くものについ目線を奪われてしまうことの多い昨今ですが、その一瞬の満足や目眩しに翻弄されることなく、自分の生活をより豊かにしてくれるものを、自分の目でしっかりと選ぶことが、長期的な幸福をもたらしてくれるのだと、私は信じています。(守屋)

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同質化ではなく一体化を

Phlannèl / Summer Loop Yarn Collarless Jacket / 48,000+tax

シームレス、ボーダーレス、ジェンダーレス。様々なことやものの境界線が非常に曖昧化されている昨今において絶対的なもの、局地的なスタンスというのは受け入れられづらくなりました。「女性らしい服」が絶対的支持を受けづらくなった一方で、「ジェンダーレスな服」が一定層の支持を得ていることは明白な事実です。

あるいはメンズライクな服を女性があえて纏い、元来女性的とされているアイテムと掛け合わせることで、自分のスタイルのうちに「ジェンダーレス」や「ボーダーレス」を作り出すことも可能ですし、実際にそういったスタイリングの人を街中で散見するようになりました。

物事の中間を取ること、境界をなくすことはフレキシブルで自由な選択を可能にする一方で、両極にあったはずのそれぞれの個というものを潰し、ありとあらゆるものを同質化・均質化させてしまうという可能性もはらんでいます。同質化が決して悪いとは言いませんが、ファッション領域において私が考えることには、やはり同質化されたものは単調で退屈に感じやすいのではないでしょうか。

ふと目に留まる着こなしの人は、決して派手ではなく、ともすると当たり障りのないフラットな服を纏っているかもしれませんが、そこには「個」が潰されることなくしっかりと残っているのではないでしょうか。中間のもの、境目のないもの、均質化されうるものを着るときにこそ、どこかに局地的なものを取り込んだり、あるいは自分という「個」を発揮する必要がありますね。(守屋)

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研ぎ澄ます

児玉美重  露華 52,000+tax / 露華 白 32,000+tax

昨年はこれまでになく、家での食事を意識することを余儀なくされ、更に言うと生活空間そのものを見つめ直すのに絶好の機会を与えられたように思います。空間に花を活けることが新しいルーティンとして日常に加わり、身の周りを整えることがいかに自分の心の整理になるかを改めて認識することになりました。

花を活けることは空間を設えることではなく、花を活けるという行為をもって自身の心を整え、空間に向き合う視点を新しいものにセットし直し、そこに居ることを快く引き受けるための準備をするようなものでしょうか。

食卓に並べる器を選ぶのも同じことでしょう。お世辞にも美味しいとは言えない自分の手料理を少なからず良きものに見せる、見立てるための器としてではなく、その皿を用いて供する食事の場を整えるということへの自分自身の意識づけや、食事を少しでも美味しく楽しいものにしたいという自分自身の向き合い方をセットするようなものではないでしょうか。

水垣 千悦 / ウズ福皿 / 3,000+tax

そんなに難しく考えずとも、自分の感性に引っかかった気に入りの皿や心がときめいた花器や、それに活けるための好みのお花など、心地よいと思えるものに囲まれた空間を用意することは、自分の感覚が常に穏やかに整うための環境整備であり、ささやかなことに美しさを見出す視点を常にフレッシュに保つことができる重要なチューニングのようなものなのではないでしょうか。去年得た新しい感性は忘れず今年も持ち続け、慎ましやかに毎日を過ごしていきたいものです。(守屋)

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