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波間を思う

i am dork / Wide BD Shirt / ¥53,900

それぞれの時代を生きてきたそれぞれの人が通る、それぞれのカルチャーが私たちの中にそれぞれ必ず存在します。海を隔てた遠く知らない国で起こっている出来事にキャッチアップする術を持ち合わせなかった時代を生きた人にとって、それが日本へと伝来してきたときの衝撃たるや今の時代とは比にならないものであったのでしょう。

大きな波はじわじわと情報の中心地から文字通り波及していき、その速度は緩やかで、ただしかし勢い故の影響範囲の広さはあったはずです。ムーブメント、カルチャーの発出する波間が短くなった今は、それぞれの持ち合わせるエネルギーというのはきっとかつてのそれよりは弱まっていると実感しています。容易に手に入る情報は、便利である反面その希少さは薄れていくのでしょう。

若者だれもが熱狂し、その波が日本に押し寄せ、そして日本でも同様に多くの若者が熱狂したスケートカルチャー。遅れてやってくる雑誌を破けるまで繰り、あれこれと友達と談議し、あれが欲しいこれが見たいと熱望し、そしてできる限りそこに映し出される“格好いい”同世代の少年少女を恋い焦がれて真似する行為—そこには、知らないからこそ自分なりの空想の世界を繰り広げながら自分が信じる世界を生きる熱い思いがあったはずです。

全てを理解し、知り尽くすことは優れた人間になるためにはあるいは必要なことなのかもしれませんが、知らないことがあること、そしてそれを知るために想像・空想を繰り返すこと、目の前に見えないものへ心を寄せることは、私たちが少なからず忘却している視座であり、失ってはならないものである気がしています。(守屋)

*6月23日にWEBSHOPはパルクローゼット内ショップへ完全移行いたします

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洗濯機としわくちゃのシャツ

CASEY CASEY / VERGER BIS BOWLING SHIRT / ¥52,800

CASEY CASEYのシャツやジャケット、そのほか全てのアイテムについて、どんな瞬間が一番CASEY CASEYらしくあるだろう?と考えたことはあるでしょうか。春らしい暖かな太陽が降り注ぐ気持ちの良い朝、自分が所有しているシャツを洗濯機で洗ってくしゃくしゃになったそれを明るい太陽の下にさらそうとするとき、そのくしゃくしゃになったシャツを見て、私はそんなことを考えました。

CASEY CASEYらしさのひとつとも言えるペーパーライクな張りのある素材感は自然なシワの表情を携えています。それらは、かつてデザイナー自身が染めたり、洗いをかけたりという作業を全て手作業で行っていたときから続くチャームポイントであり、そしてデザイナーは使っているドイツ製の洗濯機の全てに固有の名前をつけて愛を持って接していたのだといいます。自由な創造と愛ある作業によって生まれたアイテムたちは、ひとつひとつが他にない個性をもったものになるのは必然でしょう。

そんなストーリーをかつて見聞きしたことがあったからか、やはり洗濯機に自分の持っているCASEY CASEYのシャツを放り込むときも、洗ったシャツを干すときも、なんだかあるべき場所にそのシャツが戻っていくような、そしてまた新たにさっぱりすっきりした清々しい表情で太陽の下にやってきてくれるような、そんなことを感じさせてくれます。(守屋)

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自分に似合うものはどこにある?

STUDIO NICHOLSON /  PEACHED COTTON TWILL PANTS - DEEP PLEAT WRAP FRONT / ¥49,500

自分に合うボトムスを探して果たしてどれくらいの金額を使い、失敗し、自分の身体作りに励んだり、あるいは諦めて“こんなもんだろう”というフィット感のパンツをお直しして履いてきたのでしょう。リラックスシルエットがトレンドになりはじめ、ある程度ゆるっとしたシルエットだったらそれなりに見えることを見つけてしまった途端、そんな努力はどこかへと追いやられ、なんとなく自分の好みに合うものを取捨選択して楽しむようになりました。

ウエストをなおさないで履けるパンツなど存在しないかのように思い込み、ベストパートナーと出会おうとする努力を怠って数年の月日が経ちました。何事も努力をしないと劣化していくもので、自分の体型への認識だったり、どんなものが“本当に自分に似合うのか”という判断力はその間にどんどんと鈍くなったと言っても過言ではありません。そんなときに頼りになるのが他者の声で、誰かが格好良く履いていたりすると自分もそうあれるのではないかと思い込み、同じものを買ってみては“こんなものだろう”というなんとも歯切れの悪い納得感で自分を満たしていました。

ある日ふと、こんなことではいけないような気がしてきて、パッと目が覚めたような感覚があり、再び自分に本当に似合う洋服探しを、自分の身体と二人三脚で繰り広げることになった結果、ようやく出会ったのがSTUDIO NICHOLSONのパンツでした。ウエスト詰めも、丈詰めもしなくていい。きちんとクリエイションの伴った洋服の中でそんな一着に出会えたことが嬉しく、そし着る当事者である自分をしっかり見つめることと、似合うを探し続ける努力があってこそ、洋服というのは素敵に着こなせるものなのだと再認識した出来事でした。

だからといって全ての人にこのブランドの洋服がおすすめなわけではもちろんありませんが、私が今まで決して似合わないだろうと思い込み試着も憚られていたブランドの洋服がぴったりきたような出来事が、他の誰かにも訪れることを願っています。そのためにはどれだけ現実に見える手のひらの中の世界よりも、非現実的に見える目の前の世界のほうが、実は本当に現実なのだということも知っておく必要があるかもしれません。(守屋)

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出会いのときめき

POOL by CLASS / CCAA16UNI / BIG WAFFLE / ¥86,900

なるべく長く一つのものを使い続けようと考える時、ことファッションに限って言えば私たちはなぜだか『長く使える物=流行に流されない物=シンプルなもの』という流れを組んでしまうことが多いようにも思います。私自身、出来るだけ長く愛用しようと考えた時、目の前にある2つの服のどちらかを選べと問われたらおそらく“無難な”色やデザインの方を選び取ってしまうような気がしています。

その考えに一石を投じるような意見をもらえたことをきっかけに以前にも似たような記事を書きましたが、シンプルすぎるものは結局飽きが来てしまうから、いかに作り手の個性をひっそりと汲み取れるような洋服であるか、そして出会ったときのときめきを忘れずにあれるか、ということが私たちがものをいざ使ったり捨てようと思い至った時の、最後の砦となるような気がしています。

自分の所有物のなかで、手にとってときめかないものは容赦無く捨ててしまえばすっきりと片付き幸せな生活が待っているということも言われてきた世の中ですが、“今”ときめきがもし仮になかったとしても、“出会った時”のときめきを今も忘れずにあれるのであれば、決して捨てる必要なんてないし、そういったときめきを絶やさないであろうものを買うこと、そしてその気持ちを大切に育てる姿勢も、同時に大切なように思います。

前回の記事もそうですが、そんなことがふと頭によぎるのはなぜか決まってPOOL by CLASSの洋服を見た時なのです。個性が強すぎるわけでもなく、かといって私がずっと憧れるほど追いかけているブランドでも正直ないのですが、やはりそこに滲み出るデザイナーの意思や、洋服としてまとめあげられたときの完成度の高さに感服の思いは抱かずにはいられないのです。そして、この出会いのときめきは、きっと十数年後に自分のクローゼットの中でこの服と目を合わせたときには絶対に思い出すであろうと確信することができるのです。(守屋)

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