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Sight

Phlannèl / Summer Twist Wool UK Ceremony Trousers (Check) / ¥50,600

Phlannèlの22SSコレクションのテーマカラーとなる青。毎日見上げる空は青く広がっていて、そこには海の青が反射されているかのようです。空はなぜ青いのか、というのは多くの子どもたちが一度は思い浮かべる疑問のひとつでしょう。太陽の光によって私たちの目に青が届くという事実は、大人になったいまでも、それを思い返すことで世界を見る目を一度リフレッシュさせてくれるような気がします。

青は、空や海を想起させるためか、緩やかにたゆたう自由さを感じさせてくれます。これがネイビーに近くなればなるほど、ユニフォームや正装のイメージが強くなっていき、その自由さは少し減退するのではないでしょうか。芯の強さや統率力を意識させる強い青とはまた違う、自由な青。

そこにトラッドな要素やワークウェア の要素が加われば、意識していた青とはまた違った表情をもった洋服たちが顔を覗かせます。色彩による私たちの心理変化や、洋服のデザインがもたらす印象操作というものの不思議さを改めて感じさせてくれるでしょう。そしてPhlannèlの洋服はそこに正解を示さず、理解を着用者に完全に委ねてくれますし、理解したあとの表現についても、完全に私たちの自由意思に委ねられています。

Phlannèlの世界について、写真とテキストで表現されるコンテンツ、「Sight」がPhlannèl HPにて隔週更新されています。ぜひこちらも見て、ブランドの世界を広く体感していただけましたら幸いです。(守屋)

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知性と個性

PHLANNÈL SOL / Stand Collar Pullover Shirt / ¥23,100

日本古来の言語意識の一つに、「縦には正しさを、横には不正をみる」考え方があるようです。正誤という判断とは異なるにしろ、確かにストライプは正装の場でも着用を許させることがある一方でボーダーはカジュアル着として認識されることが大半です。そういった意識が影響しているわけではないにせよ、ストライプのシャツはどこか着る人を端正に、そして知的に魅せてくれる力があるように感じます。

知性を漂わせるストライプシャツはおそらくその多くが寒色系で、そして織りなす線は細くしなやかさを携えていることが多いのではないでしょうか。これは完全な私見ですが、細いストライプの知性の一方で、太いストライプ模様の大胆さは、着る人の意思の強さや芯の太さを感じさせ、とてもファッショナブルに見え気がしています。

PHLANNÈL SOLのストライプシャツの面白いところのひとつが、その細さと太さ、要するに知性と個性を両方持ち合わせていることです。遠目にこのシャツを着ている人を見てみたとき、淡い白とブルーのストライプの柄を認識しますが、その人に近いてみるとその淡い白の間には繊細なブルーが顔を表します。

知的で繊細で個性もあり、意志の強さをも感じさせる人がもしいたとしたら、きっと魅力的な人に違いない、とこのシャツを眺めながら感じ入るとともに、そんな人物への羨望の気持ちもあってこのシャツを是非自分のクローゼットへ迎え入れたいと思うのです。(守屋)

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一つの楔

PHLANNÈL SOL / Motorcycle Pants / ¥35,200

OUTILの宇多氏に素材開発を依頼した特別なモーターサイクルコートとモーターサイクルパンツ。ものづくりにおける姿勢についてはJOURNALでご紹介しておりますが、そこにおいて印象的だったことは、作る場所による土地の個性や空気は必ず出来上がったものに表れるということです。

東北で生産されることの多いPhlannèlの作るものは、たとえ同じ生地を使って作ったとしても多くを西日本やフランスで作っているOUTILのそれとは保つ空気が全く違うのです。もちろん、肌感覚ではそれを身に着ける私たち自身にも伝わっているものなのでしょうが、言語化されて初めてその空気の違いを認識することができ、洋服に対するとても新鮮な視点を得ることができたように思っています。

だからと言ってもちろんのこと、「フランスで作られるものが好き」とか「新潟で作られるものが肌に合う」などと言ったことには決してならず(そうした判断は正しさからはずれているとも思います)、誰がどのように考えてどのようなものをどのようなアプローチで生み出したのかという過程全てを無意識下で感じた上でただ好きか嫌いか、心が動くか動かないかでものを選択することがファッションの楽しみ方の全てであることには変わりはありません。

そのものづくりの過程に打たれた楔のようなものの一つがただ生産する場所であるだけなのですが、ただ、その楔の一つを知っていることと知らないことで見える世界の彩度の違いは、きっとあるのではないでしょうか。是非多くの人に、直接見て触れて感じて、そのあと見える世界の違いを楽しんでみていただきたいと思っています。(守屋)

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違和感を大切に感じること

PADMORE&BARNES×KAPTAIN SUNSHINE for BLOOM&BRANCH / Arran Exclusive / ¥46,200

外へ外へと放出される人間の気持ちや興味関心が、様々な制限のおかげで内へと向かうことが多くなった昨年だったように思います。“内向的”という意味ではなく、“内省”するような視座を、少なからざる人々がこれまでの人生経験において最高潮に持ち合わせたのではないでしょうか。

人と違う服を着たいと思う人が個性的なファッションスタイルを確立していたり、あるいはトレンドから逃れまいとする人がファッショントレンドを支えていたこれまでの流れから一転し、内側へと向かう人々の視座により、他者と比較するのではなく、「自分にとってどうであるか」という価値観でものは選択されるようになりました。

自分が好きかどうか、自分の生活スタイルに合っているかどうかが、他者との違いよりも大事な要素になりました。ただそれは決して自分の周辺環境への興味がなくなったということではないと私個人は感じています。これまで知らなかったような自己の深い感性を自分でよく理解してこそ初めて、他者との違いを正確にと言いますかより高い解像度で認識できるようになることだと思っています。

だからこそ、今の自分は他者に対してどのようなスタンスを取っているのか、違いは、オリジナリティは何なのかを、おそらくですがより深く考え、理解することができるようになった人が多いのだと思っています。そうなってきたときにまたファッションはより一層、自分のものさしで考え表現でき、より一層、楽しいものになると思っています。(守屋)

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どこにも、誰とでも、どんなときも

Barbour for BLOOM&BRANCH / Stand Collar Jacket / ¥72,600

冬の空気がぴりりと緊張感があるからなのか、気温が下がり本格的な冬の到来を感じると何故だか身なりをしっかり整えていつもより少しぴしっと決めたくなるときがありませんか。特段、誰かと食事にいく予定や、大事な商談があるわけもない普通の日常の中のありふれた1日でも、何故だかふと、今日はちゃんとした服装をしたいな、と思うのは、夏より圧倒的に冬が多い気がします。

アウターを着なければ寒いし、コートというアイテムはどこかフォーマルな印象があるからそういった思いつきが自然発生してしまうのかもしれません。あるいは、年の瀬に向けて今年1年の自分を振り返って来たる1年を迎えられるようけじめの気持ちがあるのかもしれません。

外出の機会が減り、着飾る機会も今までよりは少なくなって、誰と会うわけでもない日に“丁度いい”服を求める傾向がより一層強まった中で、日常にも“丁度いい”し、着飾りたいときにももってこいの、そんな万能なアイテムなんてあれば最高なのにと思って見渡してみると、思ったほど理想に当てはまるものは多くありません。

歴史あるBarbourだからこその質実剛健な面構えと、どんな天候にも対応し得るスペックを備えた素材使い。スタイリングによってマフラーや革の手袋を足して革靴を合わせれば大抵のところには胸を張って出かけられるし、デニムにスニーカーでアウトドアアクティビティにも似合ってしまうし、ちょっと近所まで買い物に出かけるにも、おおよその洋服にはばっちりとはまる。中にニットも着込めるしインナーダウンなんてあれば真冬もへっちゃらで…と、地味なようでいいところを挙げればキリがない一着です。良い年の瀬をお迎えください。(守屋)

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白いコート

NICENESS / CRMSO / ¥248,600

冬の空はどこまでも高く高く私たちから遠ざかりながら雲の姿をどこかに追いやって究極まで澄み渡り、そして空と私たちとの間には果てしなく澄み切った空気が広がります。冬の晴れ間は、夏のそれのようにエネルギーを放出するような晴れ間ではないものの、どこまでもじんわりと、幸せという見えないオーラのようなものを地上まで届けてくれる静かな包容力があります。

陽光は、限りなく透明の空気を通過して白く柔らかく降り注ぎます。緑から茶色に変化した木々、落ち葉が積もったコンクリート、あるいは雪が積もっているところもあるでしょうが、徐々に彩度を落としていく街の中で、真っ白のコートはそこに広がる空気と合わさり、混じり、そしてそこに溶けこんでいくのでしょう。色彩を欠いた世界では、ものは白か黒かのどちらかに近づいていくもので、黒は暗さを、白は明るい光を含みます。

明るい光の満ちた白の安心感と温かさは大きく腕を広げて私たちを包み込んでくれるようです。その頼りがいある姿に、私たちはきっと、つい身を委ねてしまうことでしょう。どんな色を纏っていても、どんなところに向かおうとも、あるいはどんなに心が暗くても、安心できる頼もしい相棒が一人いれば、きっと大丈夫だと、そう思えるような存在です。

白のコートには、黒のコートにはないそんな魅力が詰まっています。どんな素材でできていて、どんな形をしていても、白のコートは白のコートとしての不思議な力を持っているはずです。そして何より、色を持たない白は、ここからどんな色にも染まりどんな色にも変化し、どんな色とも仲良く手を取り合うことができます。(守屋)

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人間的な時間を意識することで見えるもの

Phlannèl / Arles Wool Tweed Gown Coat / ¥96,800

ギリシャ語において、時間を表す単語にはクロノスChronosとカイロスKairosという2つの単語が存在するのだということを私は最近知りました。クロノスとは一定の速度で一方向にのみ進んでいく、いわゆる時計的な時間を指します。一方でカイロスとは、出来事の連続性や重なりによる時間、主観的な時間を指します。

例えば、明るい時間から楽しく友人とお酒を飲み交わしていると一瞬で夜がやってきてしまうことや、退屈な講義が永遠に長く感じられる時間のことです。カイロス時間は人間時間であり、その長さは感じる人によって自由に伸び縮みします。

私たちは主に仕事において、人によっては生活全体において非常に効率を好んで現代を生きています。いかに一定時間にたくさんのタスクをこなせるか、いかに無駄を省いて必要なことに専念できるか、ということを常に考えて生活しています。かと思えば自分以外のことには非効率をとても好む側面もあります。一針一針丁寧に縫われた手仕事の生きる洋服に価値を見出し、工場生産ではない、顔のわかる誰かが作った温かい料理に幸せを噛み締めながらお腹を満たします。

どちらが良い、悪いの問題ではありませんが、無意識に生きていると世の中はクロノス的時間軸で進んでいき、本当に自分が豊に感じられることや幸せを見出すきっかけを失いかねません。意識的に目を向けるべきはカイロス的時間。バスケットボールの試合中、シュートをするために飛び上がった一瞬は、本人にとっては全てがスローモーションに見え、相手の動きも、ボールの動きも、そして自分の体もコマ送りに見えるときがありますが、そんな一瞬を見るように、私たちの生活を囲む環境の一つ一つをゆっくり見つめてみることも、時には大切なのではないでしょうか。(守屋)

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快適以上

COMOLI / Sheep Skin Flight Jacket / ¥264,000

近年のファッションの潮流としては快適性、機能性を追求したデザインや素材使いが主としてあるのではないでしょうか。それだけが全てではなく、快適でなおかつ美しく見えるとか、心地良くてなおかつオケージョンにも対応できるデザインであるなどアプローチは数多あれどものごとの軸足として強く存在している価値観かと思います。

快適以上のものが存在するでしょうか。心地よさを突き詰めた服以上に“良い服”というのはあるでしょうか。袖を通した時、手に触れた時に気持ち良さを感じる服がもたらす幸福度はおそらく、着ることで気分が高まるような類の洋服以上に生理的な階層においての、人間のかなり根本的な心地よさへと繋がるものだと感じます。

着心地さえよければ通念スウェットでいいのかといえばもちろんそんなことはなく、季節に応じた素材使いの洋服を、作りのいいものや作り手の理念のある洋服を着たいものですが、それでもやはり快適性には抗いきれません。COMOLIのシープスキンジャケットにひとたび手を伸ばしたならば、私たちは心の底から、身体の軸のさらに芯の部分から湧き上がる幸福感を感じることができます。

ひとたびそれに体を預けたならば、幸福感は身体中に満ち満ちていくでしょう。なんとも言いえないじんわりとたしかな暖かさを肌に感じながら、快適性に勝るものはないのだと、つい口から言葉がもれてしまうはずです。(守屋)

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楚々

SOSO / REBUILD SWEAT / ¥22,000

新レーベルSOSOの語源は“楚々”。清らかで美しいさま、可憐でたおやかなさまを表す言葉で、そのような人をイメージしたものづくりをしています。さらに、“楚”ということばの語源を調べてみると、『いばらしば、また草木の茂みの根の張ったところをいう』(常用字解 p389『礎』解説より)、あるいは茨や人参木という中国を原産とする低木そのものを指すのだそうです。茨や人参木は夏頃、小さな淡い色をした花を咲かせるので、その様を表し“楚々”ということばが生まれたとも言われています。

特に茨はバラ科の植物ですが、他の一般的な薔薇と違い幾重にも重なる花弁を持たないため華やかさがなく、静かで控えめな印象を持ちますが、茂る緑の草の中に姿を見せる白い小さな花たちの姿は、鮮やかではないものの持つ強さをたたえた美しさがあることを教えてくれるようです。

ちなみに、いばら(草木の茂みの根の張ったところ)に建物の柱の土台となる石(礎石)が置かれるさまから“礎”という文字が生まれたのだそうです。礎石そのものの意味から、“礎”という文字はそのまま、あらゆる物事の土台や基礎という意味を持ちます。楚が石を得て礎になる様子は、デザイナーがトラッドというファッションのベースを得て自身のものづくりの礎を築いたことに通ずるようで非常に面白さを感じました。

美しさというものは、時代によって多様に変化していく概念であるがゆえ、清楚なさまが美しさとされたり、豪華なさまが美しさとされたり、力強さこそ美しさとされたり、一概に捉えることができないものであると思います。現代においては一方的に押し付けられる『一般的な美』というものはあくまで商業的な美であるにすぎず、本当に美しいものというのは、美しいものを美しいと感じる人々の心にあるはずです。あくまでその美しさの一側面として、楚々があるのではないかと思います。(守屋)

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ズームアウトして世の中を見てみる

POOL by CLASS / MUKU / ¥81,400

長く着る服はシンプルであっては飽きが来てしまうからそこに少しの個性や主張が欲しい。それがあってこそ愛着が湧く服となり、長く手元に残しておきたい服になるのではないか。そういった話を先日のJOURNALの取材で伺い、サスティナビリティという言葉が一人歩きを始めているように見える世界への私自身の視線の狭さを知りました。

サスティナビリティー:持続可能性のために、再生繊維を使うこと、化学繊維を極力使用せず環境汚染を最小限にとどめること、生産過程においても環境へ配慮した方法を積極的に採用すること。そういったアプローチであればものを限りなく作り続けることができるのかと問えばもちろん答えはNOであり、そうやってできた素晴らしいプロダクトを、いかに私たち消費者が捨てずに長く使うのか、という最終的な着地点を見誤ってしまっては元も子もないのではないでしょうか。

もちろん、そうした取り組みの必要性、そして取り組まれている個人や企業の努力は計り知れません。ただ、再生繊維であれば“素敵なもの”であり、それを消費し、また新しいものを買うのではなくて、いかに“捨てないもの”を選べるのか、という私たちの姿勢があってこそ、この社会のサスティナビリティーは有効に作用していくように思います。一つの単語にクローズアップされた視点をズームアウトして、その周りにある状況をしっかり把握する目を、私たちは忘れてはいけません。そしてこのアイテムのように、ぐっと心を引き込むようなシンプルではない個性を放つものを見た時のときめきを、私たちは大切にしなければなりません。(守屋)

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楽しい冬に向けて

Bergfabel / Ludwig Coat / ¥165,000

朝のひりっとする空気と静けさが、どんどんと早まる夕暮れの時間の、薄紫色に染まる空の高さが、夜の星空の清らかさが、間近に迫った冬を知らせてくれています。今年は少なからず去年に比べて外へ出かける機会も多そうです。機能を重視し、とにかく防寒できて使い勝手がよいアウターが欲しかった去年の私の思考回路は少し変化していて、ちょっと背伸びもできるような、とはいいながらカジュアルに羽織ることができる汎用性もあるコートが欲しくなっています。

お洒落をしなくても日々を乗りこなしていけると思っていた時期を経てもなお、やはりお洒落をしたいし、自分らしい服に袖を通したいと望むのはかつての私たちが心の底から楽しんでいたファッションの熱を忘れられずにそこにしがみついているからでしょう。一瞬忘れていたかもしれない純粋な欲望は静かながらに私たちの心の奥では火を絶やさずしっかりと燃え続けていたのかもしれないと思います。

今年の冬はだからこそ、ちょっとフォーマルな格好良いコートを羽織って、でもあくまでカジュアルに、スニーカーでも革靴でもいいからさくっと履き古したシューズを履いて、襟を立てたりマフラーを巻いたりして、心を暖かくして街を歩きたいものです。

クラシカルなツイード生地やラペル、エポーレット、ダブルブレストのデザイン、それらは少し前の私たちだったら、もういらないかもな、と幾ばくか感じていたファッションの形、デザインであり、言い換えるならば“かつてあったファッションのかたち”のかけらのようなもの。それが今は懐かしくもあり、新しくもあり、こういうものを手にとって、それを今の自分らしく、気張らず、かといってなんでもない服装ではなく少しお洒落をしているぞと思えるような、そんな着こなしに身をおさめたいのです。(守屋)

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オリジナリティを探る

YLÈVE / WOOL CASHMERE SHAGGY KN P/O BIG / ¥35,200

オリジナリティとはなんでしょうか。アパレルブランドにおいて圧倒的なオリジナリティを発揮しものづくりを続けているブランドはどれほどあるのでしょうか。洋服作りは、創作活動とは異なり、あくまで買い手・お客様があり、その少し手前で、作り手が作りたいものやこと・オリジナリティというべきものを付与させながらクリエイションをしているわけです。

市場に寄り添いすぎたり、流行に対して機敏になりすぎていれば当たり前にオリジナリティたるものは薄らいでゆく一方ですが、そうすることなく作り手が表現したい世界観や追求したい素材、デザインなどを追い求めて行ったところで、これまで先人が世に送り出してきたクリエイティビティの堆積が目の前にはあるわけで、さらにここまで溢れかえった情報の中で“どこにもない”ものを生み出すことは非常に難しくなっていると言えるでしょう。

どこの超長綿であるとか、どこのバージンウールであるとか、どれほど高いランクのカシミヤであるとか、そういった希少性を追い求めたとて、世界には、日本には同等の素材を使うブランドや、それを謳い文句にしているブランドはいくらでもある世の中になりました。そんな中でも、良い素材をどう調理して一つのものを完成させるかという過程には、やはり一人一人の作り手のオリジナリティは色濃く出てくるわけで、素材選びもデザインも技術もクオリティも、色や質感も全てをひっくるめて一つのものを完成させたその過程こそが、一番私たち消費者が見つめるべきところのように感じます。

そして結果的に生まれたものに対して、「このブランドらしいな」などの感想はあまりにも短絡的であり、そのものがどのように自分の目に映ったのか(可愛いのか、美しいのか、特に気に留めない程度のものなのか)をしっかりと自分自身に問い、それに袖を通した自分がどう見えるのか、それを纏った自分の気持ちがどうであるのか、それを手にした自分の生活はどのように送られていくのか、ということにこそ視線を向けてじっくりと考えるべきではないでしょうか。そうして実際に使われてこそ洋服のもつオリジナリティが文字通り肌に感じられるようになるのではないでしょうか。(守屋)

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ハーフコートって便利

KIJI / WOOL×QUILTING REVERSIBLE COAT / ¥59,400

ロングコートは、中に何を着ていようともすっぽりとその洋服たちを隠してしまうものですが、そのすっきりとした見た目によってコートを着ている人はどこかスタイリッシュに見えるものです。インナーがスウェットでも、足元がスニーカーでも、品の良いコートをばさっと一枚羽織ってしまえばカジュアルさは軽減され一気にフォーマルな装いへと変身するようです。

一方でハーフコートはすっきりとした着丈によってボトムスから下のアイテムは顕になります。太いスラックスを履いているのか、スウェットパンツを履いているのか、ドラマチックなスカートを履いているのかで人の装いに対する印象は大きく左右されます。ロングコートはそれ自体が装いの印象を決定づける一方で、ハーフコートにはそれ以外のアイテムへの個性の発出の余地を残している懐の深さがあるようです。

そしてもちろん、コート自体も、ナイロン素材なのかウールなのか、スタンドカラーなのかラペルのついたジャケットのようなデザインなのかで印象は大きく変わります。“とりあえず羽織ってしまえばこっちのもの”なロングコートと違って、その日どこに出かけるのか、TPOに合わせたコーディネートにしておかないとあとで後悔することにもなりかねないちょっとした煩わしさもあるからこそ、一辺倒になりがちな冬の装いの幅が広がるスタイリングを考える楽しさがあるような気がしています。

仕事仲間と会うとき、ディナーに出かけるときにはウールの表情がドレッシーな面を表にして革靴を合わせて。自転車に乗って友達とカフェに出かける時や家族とドライブに行くときにはナイロンの面を表にして天気にも左右されない安心感を携えながらチノパンやワイドトラウザーでリラックスしたスタイルにしたり。ハーフコートならではの楽しさ、便利さを体感してみませんか。(守屋)

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らしさとは?

PHLANNÈL SOL / Wool Yak Turtleneck Knit / ¥33,000

長く愛用できる良質な素材を使うことや、出自の分かる素材を使うことは現代のものづくりにおいてはさほど珍しいアプローチではなくなりました。それどころか、洋服を買うときの最低限の条件として消費者自身がそれを大きく掲げているほどに無視することのできない必須項目にすらなっているようです。

それゆえ、単にいい素材を用いていることはものづくりをする側、ブランド側からは声を大にしてアピールしたとてさほどの希少性もなくなりました。それ以上に、その素材を“なぜ”選んだのか、そうして選んだ素材を“どういった方法で”洋服作りに活かしているか、どのようなデザインに落とし込んでいるか、という独自のアプローチをみせることが必要になっているような気がしています。

そのアプローチも、突飛な手法を用いた希少性が面白がられる場合もあれば、いかに素材の良さを最大限に高められるかを考えたありふれたアプローチだったとしてもそれがブランドらしい選択だったならば広く消費者に受け入れられる場合もあります。要は、素材に対してもものづくりに対しても、ブランドに対しても消費者に対しても、真摯に向き合い素直な表現をすることが、結果的には多くの人との対話のきっかけを作ることになるのではないでしょうか。(守屋)

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無意識的と意識的

STUDIO NICHOLSON / FELLINI - ELEVATED PANTS WITH TAB DETAIL / ¥58,300

子供ながらに、生まれながらの本能に沿っておそらく私たちは小さい頃からお米の美味しさを知っていて、更に意識はせずとも新米の美味しさ奥深さを舌は先祖からの積み重ねによって認識しているのか、秋の食は多くの人を魅了しています。なぜだか秋になると食欲が湧いてあれもこれもと美味しい食材に目移りするのは何も意識の問題だけではなく、単に食材自体の旨味が凝縮される季節であることの必然でもあるのですが。

ただ、幼き頃からなんとなく新米の美味しさを認識していたとしても、その美味しさや素晴らしさを本当に心から噛み締めることができるのはやはり大人になり、様々な食べ物の味を知り、春夏秋冬を数多繰り返してきてこそのものなのではないでしょうか。私も、小さなころからなめこのお味噌汁は美味しいものだと感じてはいたももも、真空パックにされていない新鮮ななめこの食感や芳醇な香り、そしてお味噌の味、お出汁味全てを一緒に味わってそのどれもを本当に美味しいと感じられるようになったのはつい最近のことです。

ファッションの文脈に置き換えるには荒々しいことになりますが、チノトラウザー、デニム、カシミヤのニット、ポプリンの白シャツなど、若い頃からそれらを着る機会がある定番のアイテムの真の素晴らしさやブランド毎の個性や趣のようなものは、きっと経験を重ねた大人にならないと、ものの奥の奥に潜む魅力に気がつくことは難しいように思います。メンズファッションよろしき端正でスマートな印象のシルエットや素材使い。飾り気のないデザインの醸し出すトラディショナルな空気。言葉にすればありふれていますが、このトラウザーの持つ“礼儀正しさ”が真に善であることは、世の中のあれこれを知り始めた大人だからこそわかるものではないでしょうか。(守屋)

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人の第一印象にこの服はどれほど作用するのだろう

blurhms / Reversible Hospital Jacket / ¥71,500

人はなにを見て、その人を認識し識別するのでしょう。初めてあったその人と再び出会うとき、なにを持ってかつてあったことのあるその人だと認識するのでしょう。髪型、眼鏡、特徴的な目や印象的な鼻。背格好。おおよそその記憶の経路を辿る鍵となるのは顔やそのまわりのパーツと全体的なバランスかと思います。

どんな服装をしていたかを記憶に留められる人は意外と少ないのではないでしょうか。初めて出会ったその時に“面白いデザインの服を着ている人だな”という印象を持ったとしても、それが記憶の中では時を経るごとにどんどんと曖昧になり、“面白いデザイン”がどんなであるかなどはさっぱり忘却され、そしてそのあとで勝手な自分のイメージによって作り出された架空の人物とその人の着こなしというものが頭の中で残り、記憶として定着していくのでしょう。

自分に馴染みのあるブランドの服をもし初めて出会ったその人が着ていたならば、それはその人を記憶する重大な鍵となりますが、それ以外の場合においては、誰がどんな服を着ていたか、ということに関しての記憶はほとんどつかみどころのない霧のようにうつろげです。すごく上質そうなカシミヤのニットを着ていたなとか、目の覚めるようなブルーのシャツを着ていたなとか、上質そうなジャケットをカジュアルに着こなしていたバランスの人だったなとか、もし記憶にとどまっていたとしても洋服に関するヒントはそれくらいなのではないでしょうか。

blurhmsの服は特に、例えば初めて出会った人がどんな服を着ていたかを思い出す時に記憶に残らない類の、すごく控えめで主張がなく、一瞬で万人の目を引くデザインがあるわけでもない普通の服です。ただ、その服を長年着続けたならば、それはその無個性を脱してその人そのものを映し出すほど個人的な香りをまとうものになります。第一印象ではない、第五、第六印象のときに、重要なパーツになる存在の服。自分を印象付けるわけではなく、自分の印象を吸い込んでくれるような、そんな服です。(守屋)

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無計画による胸の高鳴り

m's braque / SMOKING JACKET Tweed / ¥85,800

SALEの時期が必要以上に早まったり、先行予約で商品を買うとお買い得だったり、アパレル業界特有のシーズンの波に乗ると本当に必要なときに必要にかられて洋服を買うということが少なくなっていきます。夏にダウンコートを予約し、本当にそれが必要な冬がやっきたときにはもう春のシャツを予約している、そんな現象が起こります。

欲しいものは早く買わないとなくなってしまう、予約しないと完売してしまう、という理由で買い物を効率化しお財布の計画を立てて必要な洋服を揃えていくこと。それ自体は理にかなっており何も悪いことはないのですが、ふと、予定していた打ち合わせの前に時間があいたとして、近くにあったお店になんの気もなく立ち寄ってみたらみたことがないジャケットが置いてあり、衝撃の出会いのようにびびっときてしまう、なんてことももちろんあり得るでしょう。

予定になかった買い物に、お財布計画はくるうばかりで、その後の予定の変更すら必要になるかもしれないのですが、だったら最初から予定なんて立てずに、計画的にお買い物をせずに、出会いと直感だけでそのシーズンに必要なものを揃えてみるのも、決して悪くないことです。計画のうちにある商品が発送されて自宅に到着した時と、計画になかった洋服とであってなぜか片手にショップバッグを持って帰ったその時と、どちらが胸の高鳴りを感じるでしょうか。(守屋)

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意味を超えた強度

PHLANNÈL SOL / Cotton Linen Corduroy Harrington Jacket / ¥41,800

もともとコーデュロイはフランス王室に仕える庭師の制服として生まれたという説があります。それがイギリスへ伝わりハンティングをはじめとする労働着としての役割を与えられました。強く頑丈な素材ゆえの、ある意味必然性をともなった流れがそこにはありますが、古いワークジャケットやハンティングジャケットを見るとその美しい光沢を伴った素材の素晴らしさに見惚れることは少なくありません。

戦地へ向かう兵士へと供給された衣服にさえ、使い捨てであることを忘れてしまったかのように美しい縫製や素材使いを見ることもあります。昔は地球にある素材そのものが強く美しく健康だったためか、効率を求めたテクノロジーがありがたきかな存在しなかったためか、数百年進んだ現代においても当時を省みると及ばぬところが多いことを気づかされます。

なぜ、この素材を選んだのか。なぜ、このデザインなのか。なぜ、この縫製なのか。なぜ、この色なのか。全てに意味を問われる時代のなか、かつてのものたちがそうであったように意味を測ることは難しいけれどなぜだか美しく作られているものに、どうしても惹かれてしまうことがあります。意味を度外視し、単なる美しさを求めることは、決して悪いことではないはずです。強度を求めたら違う方向へと進むべきだったのかもしれないコーデュロイも、意味より美しさや意味より楽しさを求めた素材には、“意味を超えた違う強度”が備わっています。(守屋)

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自己顕示のファッションも自己満足のファッションも

POOL by CLASS / LADY'S SLIPPER / ¥44,000

ファッションとは自己満足のためのものだと言われたり、自己顕示や承認欲求を満たすもの、他人に対して自己を表現するためのものとも言われたりします。どちらもきっとファッションの役割として実際に機能していることであり、そのどちらもが結果的には、自己の心を晴れやかにするものであることに変わりはありません。

自分の内側に秘めている“本当の私”といえばいいのでしょうか、私はこうだと己で感じている自分自身を他人にも認めてもらうために、自分の一番外側に見えるところでそれを表現する。そしてそんな自分の表現が人に認められたり、自分が認識している自己と同じものを他人が認識してくれたならばそれで自身の心は満たされ、私は今の私でいいんだ、という安心感をもたらされるのでしょう。

あるいは、今の自分が楽しく、快適にいられるのであれば、たとえそれが部屋で過ごすにはあまりに上質で誰かに見せるべきほどの価値のある服だったとしても、自分自身のためだけにその服に袖を通し、自分のためだけの時間を自分の部屋の中で過ごす、というのも正しいファッションのあり方のように思います。(守屋)

 

真っ直ぐに道を歩むには

VINCENT JALBERT / Natural Lace Plastron Dress Linen / ¥99,000

洋服がずっと好きで、学生時代から服作りを学びアパレル業界に身をおいている人もいれば、昔は飲食業で働いていたところ一念発起してアパレル業界に飛び込んできた人、あるいはかつて医師として働いていたり教師だった経歴を持つ人。アパレル業界というのは本当に多様なバックグラウンドを持つ個性的な人で溢れています。

ずっと料理が好きでその技術を磨き続けてきたのに、どこか心の奥で燻っていた洋服への興味やどうしても惹かれていく衝動を抑えきれず、これまで安定して着実に進めてきた歩を全く別の方向へ向けなければならなくなった時、これまでの自分の経験とはなんだったのか、今この決断は間違いだったのではないか、と自問自答することもあるだろうと思います。あるいはずっと洋服が好きでアパレル業だけを突き進んできたとしても、ふと後ろを振り返った時に不満が募ったり、続く道の先に何があるかを想像できずに不安に駆られたりすることがあるのかもしれません。

ある時自分の歩いてきた道を振り返ってみると、それが真っ直ぐ、光を刺すように一本で繋がっていたとしたら。そうありたいとおそらく多くの人が願うでしょうが、そのためには、ひたすらに自分の好きなこと、信じることを選択して一歩一歩、前に向かっていくしか方法はないのだと思っています。かつて経験していた、食材ひとつひとつの構成を組み立てて料理を完成させる思考が、あらゆる条件を踏まえてコーディネートを構築していくことに通じるように、きっと自分が好んで選び取ってきたもの全ては、一本の糸でつながっているのだと、信じています。そしてそうした人の生み出す洋服だったりスタイリングだったり接客が、他者の心をそっと揺らし、誰かの道を先導していくような力を持つのだと思っています。(守屋)

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どこに何を着ていく?

m's braque / W4B COMFORT LOOSEN JACKET / ¥74,800

旅に出る時の持ち物を精査しているとき、旅先で着る服をどうしようかということが頭に浮かびます。普段生活している土地で自己表現として自分の着たいものを選んでいる時以上に、旅先ではいかに快適に心地良くあれるかということが大切な判断材料になり、そして滞在先の土地にいかに違和感なく馴染めるか、ということもそれなりに重視されてくるでしょう。

行き先によって身に纏うものが普段の等身大の自分とは少し離れることはしばしばあります。例えば自己表現としての自分よりも少し背伸びをしたパーティー服や、カジュアルダウンして機能性を重視してキャンプに出かけるとき、あるいは仕事に出かける時の服装も、取引先と顔を合わせる時なのかオフィスワークなのか在宅なのかでももちろん変化するでしょう。どれが本当の自分に近いかどうかは、人によって異なりますが、家ではカットソー一枚でリラックスして過ごすけれど外に出る時にはそこにジャケットを一枚羽織る、その時の自分が一番心が晴れて生き生きとする、そんな人ももちろん少なくないはずです。

ただ近所に夕飯の買い出しに出る、近くの本屋に参考資料を探しにいく、たったそれだけのためにもしかするとわざわざジャケットを着るなんて大袈裟かもしれないという気持ちになったりもするでしょうが、それで心がふわっと地面から少し浮くような気持ちになったり、歩き方がしゃきっとしたり、その行為が楽しみに変わったり、自分に自信が持てたりするのであれば大袈裟なんてものではなくそれが自分がそうするべき理由ですし、その時ジャケットを羽織る理由です。そうしたい自分がいたならば、それはその時の本当の自分の姿に他なりません。

肌馴染みのいいカットソーとショートパンツだけでカフェに出かけて友人と会うことが自分にとって最高に心地良い時もあれば、アイロンをぱりっと掛けたシャツを着て車に乗り込み海へ向かうことが最高に心地良い時もあります。どこに何を着ていくのが正解か、という問いに対してもっと素直に自分の心とだけ向き合ってみると、TPOにとらわれすぎない、本当に自分らしい在り方というの姿が見つかるかもしれません。(守屋)

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ワンピースを着なくなった日

PHLANNÈL SOL / Stand Collar Shirt Dress / ¥29,700

その一枚でスタイルが完成する、着るだけでさまになる、そんなワンピースのプラグマティックな役割を好んでいる人は少なくないはずです。私自身、春はシャツドレス、夏はカットソードレス、そして秋にはまたシャツドレスを着て、冬になるとその上にニットを重ねタイツを履き、長いコートを羽織っています。

スカートを好まない人にとってそれは羽織りものにもなり得るし、パンツをレイヤードしたスタイルを楽しむことだってできるのです。そんなワンピースを着なくなることを考えたこともありませんでしたが、生活スタイルが変われば当たり前に着るものも変化するもので、自転車での移動がメインとなったライフスタイルには全くもって適さないものなのだと、思い知ったのが最近の出来事です。

日常的に着なくなってからでも、やはりその都合の良い一枚の存在に頼りたくなる日はもちろんあり、そういった時には自転車に乗ることを諦めてワンピースに手を伸ばします。その一枚に身体を通し、靴を履いてコンクリートの地面をこつこつと鳴らして歩くことに、これほどまでに新鮮さを感じたことは初めてでした。

揺れる裾は、夏の太陽を浴びてその涼やかな影を私の歩く先に落とし、秋にはそよぐ風がふらりふらりと揺れる心をたなびかせ、風のない日には深く静かに思いを巡らせます。常日頃から当たり前にそこにあるものを、少しの間手放したりしてみるだけで、知らなかった姿を発見することができます。そんな一枚に手を伸ばさず自転車を漕ぐ日常のうちで、次にそれに手を伸ばす日が確実にやってくることを静かに楽しみに待つのです。(守屋)

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服を着ることで価値観を昇華したい

KIJI / COTTON VENETIAN SAILOR SHIRT / ¥25,300

作り手がいて、ものが出来上がり、そこに表現される世界観には、控えめに言っても必ず作り手のパーソナリティがどこかに反映されているもので、その極々私的なアイデンティティのようなものを消すようにものを作る人もいれば、それを恥ずかしく思いながらも今の自己として惜しみなく出し尽くす人もいる、その違いだけなのでしょう。

作り手が、通ってきた道、見てきたもの、訪れた国や聞いた音楽、食べたものや心を揺らして涙を流したものたちのかけらが、少しずつ少しずつ、洋服の中にあることを思うと、これはプロダクトであると同時にやはりアートにも近いような、そんな曖昧な立ち位置を思わせます。人の体に流れる血液と同様、きっと洋服の糸の中をそういったエッセンスが流れているのかもしれません。

メンズ服もレディース服も、分け隔てがなくなってきたこの時代において、それ以前の世の中でそれらの別のカテゴリーとされていた洋服たち全てをフラットな感覚で見続けてきた人の作る服には、やはりそのフラットな感覚が反映されているように思えてなりません。それがパーソナリティだとまでは言えないにせよ、そういった作り手の足跡というものが見えた時、そこに私たちは何を感じるでしょうか。個人の価値観とどうすり合わせ、どう自分の中へと落としこんでいくでしょうか。(守屋)

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シャツの襟元のように気分が巡る

Christian Wijnants / TAJ / ¥26,180

着る人を選ぶとか、スタイリングが難しいとか、トレンドがあるので長く楽しめないとか色々と懸念をし、避けてしまうことが多いのが柄物。柄物のスカートを買うなら、無地の方が使いやすいかもしれない、長く飽きないかもしれないといつも同じような選択をしてしまう私はあまり冒険を得意とはしていません。

素敵に柄を着こなしている人には憧れるけれど自分がどう着用したらいいのかピンとこないものが多いのですが、考えてもみれば柄も一つのデザインの表現であって、無地のカットソーのネックかクルーネックか、Vネックか、モックネックか、あるいはシャツの襟がワイドスプレッドかボタンダウンかという違いと同様のことでしかないのです。

たとえ無地の白いカットソーでも、ネックがVだったら今の気分ではなく、しばらくクローゼットで眠っていることもあります。逆にこのカットソーが一つあれば、気分から遠ざかっていたり着映えせず眠り続けていた黒のスラックスに久しぶりに手を伸ばしてみたい気持ちにさせてくれます。巡り巡っていつかの未来には、また違うドレスとこのカットソーがお互いを輝かせ、新しい風を私のクローゼットの中に吹き込んでくれるようになるのでしょう。(守屋)

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良いものは誰にとっても良いものなのか

NICENESS / ANTHONY / ¥64,900

インディアンアーミーカモフラージュ、M43フィールドジャケット。洋服に興味を持った人ならばどこかで一度袖を通す経験があったであろう定番の品。ベースとなるデザインは誰も見たことがないほどの希少性の高いものではないにも関わらず、NICENESSの手にかかればそれは今まで見たことのないような新しい一着となります。

カモフラージュを職人が手染めすることによる不規則性がこれほど新鮮に目に映るとは誰が思ったでしょうか。コンクリートジャングルを生きる私たちにはグリーンやブラウンのカモフラージュは必要ではなく、都会に溶け込むためのカモフラージュの色彩がこれほど高揚するものだと誰が思ったでしょうか。

そしてただ新鮮だったりただ懐かしかったりするものではなく、ものはものとしての良さを最大級の屋台骨として携えています。どんなものでもとにかく素材が良い、作りが良い、染めや加工の工程が良ければ玄人はもちろんそれらの生産背景を聞いてたまらずに引き込まれるでしょうし、そこまで洋服に興味のない人にとっては、蘊蓄を無視して「ただなんとなくよさそう」という無意識下での納得へと漕ぎ付けられるのです。

良いものは良いし、それに引き込まれた私たちは、これらをいつまで経っても良いものだと純粋な心と目と肌でそれを感じ続けるのでしょう。鮮度だけではない本質的な良さというものを私たちに教えてくれるような一着です。(守屋)

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続けること

KIJI / SUSU / ¥30,800

例えばルーティンワークとしているランニングやヨガ、テキストを書くことは、継続することで初めてデフォルトの自分の状態というものが明らかになってくるものです。あるいは仕事で毎日欠かさずチェックする店舗の売り上げや集客状況など、継続してデータを収集することで新しい発見があったり微細な変化に気がつくことものです。

日常的に継続はされず、気の向くままにランニングに行くのでは、普段の自分の身体の状態がどんなであり、今日の自分はそれに比べてどの程度なのかは測ることが難しいものです。それと同様に、毎日、毎月、毎シーズン、何かを作り続けることで、それに対する周囲の反応の変化や自分の技術の鍛錬によって何か思ってもみなかった知見が手に入ったり、続けることで誰かに認められたりもするものでしょう。

次々に新しいものを生み出すことはそれはそれで大変ですが、何かを継続せず、前に自分のしたことや制作したものを毎回毎回帳消しにして新しい何かにトライするのでは、やはりどこにも積み上がる経験や実績や名声もありません。何かを諦め、今目新しいと感じるものに飛びつくことは誰でもできますが、何かを続けることはそれを続けたその人自身にしかできない経験をすることができるのです。

KIJIはいつもデニムをリリースするけれど、いつもデニムをリリースするからこそ、そのデニムが今どれほどのクオリティを保てているのかが見え、積み上げた経験によってアップデートを行うことができ、それに対しての周囲の反応の変化にも気づき、そしてまた内省して次に向けて動くのみなのです。「継続は力なり」とは使い古された言葉ではありますが、物凄いスポードで動き続ける現代の中において、より一層何かを継続することの難しさとそれに対する価値を感じています。(守屋)

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スタイルは私だけのもの

R&D.M.Co- / CHAMBRAY BUGGY SHIRT / ¥31,900

スタイルは、いずれかのジャンルに属するためのいわば制服のような役割を担っていたことがかつてあったと思います。女性のスタイルでいうなら例えば赤文字系青文字系、渋谷系、原宿系、カジュアル、コンサバ、アウトドアなど。「自分はこんなスタイルが好き」という意思表示はつまり自分がそんなジャンルに属するタイプの人間であることを表し、そしてそれに共鳴する仲間とその価値観をシェアして楽しむものでした。

様々なことの境界が曖昧になりつつある今、スタイルのジャンル分けも細分化されていきその境界も例外なく曖昧なものになっています。「少しきれいめなカジュアルスタイル」、「メンズライクなコンサバスタイル」、「ややモダンなナチュラルスタイル」など、ネーミングにも窮するようなスタイルが様々に存在します。それほどまでに、スタイルとは自分がどんなジャンルに属するのかの表現ではなく、あくまで自分自身を映し出す表現方法としての役割が強まったことの証なのでしょう。

特定のジャンルを目掛けて発案される洋服や、トレンドに乗ったデザインももちろん今でも後を断ちませんが、それを選びとる私たちの趣向が自分の内側へと向かっていったように、自分の内側へと向かっていった結果現れる個性や意志のようなものが強固に投影されている服には、それ相応に熱量のある共感者が生まれていくように思います。個性を表すものが洋服ならば、さまざまな個性の集積を自分のスタイルとして、唯一無二のものとして、作り上げていけたらそれほど楽しいことはないでしょう。(守屋)

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早まる季節は私たちの手元をすり抜けるけれど

KIJI / SHIRRING SHIRT / ¥26,400

最近はどんなにおしゃれなものも、どんなにトレンドなものも興味がなくなり、やはり自分の内面の状態に目を向けることも増えました。じめじめと息苦しい梅雨のときも、汗だくになる夏の日も、まるでわたしの体の中から湧き出てくる湿度や粘り気を吸い取ってからりと外に吐き出してくれるような、そんな洋服を心が求めています。

心が弾む洋服というものは、必ずしもデコラティブでキャッチーでハッピーで、一瞬で心を掴むようなデザインが必要なのではないこともずっとわかっていながら最近になって本当の意味で理解してきたことですが、地味でも目立たなくても、それに袖を通す自分の気持ちは高揚する洋服がたくさんあるのだと私は知っています。袖を通している時にとどまらず、それはただ持っていることや持ち続けたことでもたらしてくれる高揚もあります。

着古した姿の美しい洋服は、クローゼットに収まっているところを見るだけでやはり私自身の心を穏やかにしてくれます。自然な経年しわや産毛が逆立ったような表情のシャツにアイロンをかけるときの特別感は、なんと表現できるでしょうか。その心の高まりはまるで、洗濯物が一日でからりと乾くことが嬉しいなと感じる程度の、日常にひっそりと花を咲かせるささやかなものではありますが、ささやかだけれど大切なものはたくさんたくさん日々に潜んでいることを私たちは忘れてはいけません。

四季の境も曖昧になり、それどころか季節は、追いかける私たちの手元をすり抜けるように、私たちを置いてけぼりにしながら先へと進んでいます。その一日一日に危機感を感じながらも、ものごとの良い方を見ることや、ささやかなことに目を向けることを忘れず、来る夏をより涼しく気持ちの良い季節にしたいものです。(守屋)

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美しさへの欲望をずっと

Phlannèl / Suvin Cotton Wide Collar Dress Shirt / ¥28,600

この世の生物のほとんどが、ただ生きることに留まり命を燃やしています。一方で私たち人間はより美的な生き方を本能的に求めていることも真理です。そのままでも食べることができる野菜たちをわざわざ料理し、テーブルに皿を並べ、あるいは素手の文化圏もあるでしょうが、多くはカトラリーを用いてそれらを味わうという行為をわざわざするのです。

服を着る生物もほとんどわたしたちだけで、身を隠したり防御のための道具として生まれた洋服という布製のものは、そこにより美的な役割を求められるようになりました。

綿花を紡ぎ、糸を拠り、一枚の布を作る工程の中に、“より着やすく”そして“より美しく上質なこと”を求めるようになったのは、文化や技術の発展と人間の成熟に依るところも大きいのかもしれませんが、私たちが持つ本能がその探究への燃料だったとも言えるでしょう。

時代は変わり、経験や知識を蓄え理性を働かせ、私たちは必要最低限を求めることができるようになり、作ったものをまた新たなものへと循環させていく術も得ましたが、より美しいものを求めるということ、美しいものに触れたいという欲望は決して消失していいものではないように感じます。その美しさへの欲望が消え失せない限り、美しいものは生まれ、その美しさという普遍の価値観はアップデートされていくのでしょう。(守屋)

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小さく目立たぬところに、楽しさを閉じ込めて

Phlannèl / Cotton Silk Komon Maxi Skirt / ¥36,300

かつて人々は、豪華さを以って権力を象徴していました。手近にある木や石を用いて作られた道具たちのプリミティブな姿は、やがて文化を反映させた複雑で絢爛なものへと変化していきました。実用性よりも意匠をこらすことを優先されたとも思われる中国王朝の青銅器や陶磁器には、才ある職人が長い月日を費やしたと思われる文様がこれでもかと、びっしりとその肌を覆っています。

文化を凝縮させたものの持つ凄みは人々を圧倒し、それが富や権力の象徴となったと言われています。プリミティブから複雑へと変化した土地それぞれでの発展を遂げていくのですが、日本において反物はその素材や色、文様によって階級が決定されていた時代もありました。絹を使用することを禁じられた庶民階級の人々は、近づかなければ一見無地ともみえるほどの地味な色でいかに細かな模様を施すかを、制約ある生活における美学として成熟させていきました。

藩の印として生まれた紋柄も幾何学模様や自然から抽出する形を模したものなど様々に生まれていったのだそうです。どこの国にも、自然界から得られるインスピレーションを生活のデザインに落とし込む文化はあるようで、フランスでも、南プロバンス地方の名産であるアーティチョークを小紋柄に落とし込んだテキスタイルなどが生まれていきました。小さく控えめで一見見えないような一つひとつに、その時代を生きた人々の楽しい熱量が込められているのでしょう。(守屋)

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