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自己顕示のファッションも自己満足のファッションも

POOL by CLASS / LADY'S SLIPPER / ¥44,000

ファッションとは自己満足のためのものだと言われたり、自己顕示や承認欲求を満たすもの、他人に対して自己を表現するためのものとも言われたりします。どちらもきっとファッションの役割として実際に機能していることであり、そのどちらもが結果的には、自己の心を晴れやかにするものであることに変わりはありません。

自分の内側に秘めている“本当の私”といえばいいのでしょうか、私はこうだと己で感じている自分自身を他人にも認めてもらうために、自分の一番外側に見えるところでそれを表現する。そしてそんな自分の表現が人に認められたり、自分が認識している自己と同じものを他人が認識してくれたならばそれで自身の心は満たされ、私は今の私でいいんだ、という安心感をもたらされるのでしょう。

あるいは、今の自分が楽しく、快適にいられるのであれば、たとえそれが部屋で過ごすにはあまりに上質で誰かに見せるべきほどの価値のある服だったとしても、自分自身のためだけにその服に袖を通し、自分のためだけの時間を自分の部屋の中で過ごす、というのも正しいファッションのあり方のように思います。(守屋)

 

真っ直ぐに道を歩むには

VINCENT JALBERT / Natural Lace Plastron Dress Linen / ¥99,000

洋服がずっと好きで、学生時代から服作りを学びアパレル業界に身をおいている人もいれば、昔は飲食業で働いていたところ一念発起してアパレル業界に飛び込んできた人、あるいはかつて医師として働いていたり教師だった経歴を持つ人。アパレル業界というのは本当に多様なバックグラウンドを持つ個性的な人で溢れています。

ずっと料理が好きでその技術を磨き続けてきたのに、どこか心の奥で燻っていた洋服への興味やどうしても惹かれていく衝動を抑えきれず、これまで安定して着実に進めてきた歩を全く別の方向へ向けなければならなくなった時、これまでの自分の経験とはなんだったのか、今この決断は間違いだったのではないか、と自問自答することもあるだろうと思います。あるいはずっと洋服が好きでアパレル業だけを突き進んできたとしても、ふと後ろを振り返った時に不満が募ったり、続く道の先に何があるかを想像できずに不安に駆られたりすることがあるのかもしれません。

ある時自分の歩いてきた道を振り返ってみると、それが真っ直ぐ、光を刺すように一本で繋がっていたとしたら。そうありたいとおそらく多くの人が願うでしょうが、そのためには、ひたすらに自分の好きなこと、信じることを選択して一歩一歩、前に向かっていくしか方法はないのだと思っています。かつて経験していた、食材ひとつひとつの構成を組み立てて料理を完成させる思考が、あらゆる条件を踏まえてコーディネートを構築していくことに通じるように、きっと自分が好んで選び取ってきたもの全ては、一本の糸でつながっているのだと、信じています。そしてそうした人の生み出す洋服だったりスタイリングだったり接客が、他者の心をそっと揺らし、誰かの道を先導していくような力を持つのだと思っています。(守屋)

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どこに何を着ていく?

m's braque / W4B COMFORT LOOSEN JACKET / ¥74,800

旅に出る時の持ち物を精査しているとき、旅先で着る服をどうしようかということが頭に浮かびます。普段生活している土地で自己表現として自分の着たいものを選んでいる時以上に、旅先ではいかに快適に心地良くあれるかということが大切な判断材料になり、そして滞在先の土地にいかに違和感なく馴染めるか、ということもそれなりに重視されてくるでしょう。

行き先によって身に纏うものが普段の等身大の自分とは少し離れることはしばしばあります。例えば自己表現としての自分よりも少し背伸びをしたパーティー服や、カジュアルダウンして機能性を重視してキャンプに出かけるとき、あるいは仕事に出かける時の服装も、取引先と顔を合わせる時なのかオフィスワークなのか在宅なのかでももちろん変化するでしょう。どれが本当の自分に近いかどうかは、人によって異なりますが、家ではカットソー一枚でリラックスして過ごすけれど外に出る時にはそこにジャケットを一枚羽織る、その時の自分が一番心が晴れて生き生きとする、そんな人ももちろん少なくないはずです。

ただ近所に夕飯の買い出しに出る、近くの本屋に参考資料を探しにいく、たったそれだけのためにもしかするとわざわざジャケットを着るなんて大袈裟かもしれないという気持ちになったりもするでしょうが、それで心がふわっと地面から少し浮くような気持ちになったり、歩き方がしゃきっとしたり、その行為が楽しみに変わったり、自分に自信が持てたりするのであれば大袈裟なんてものではなくそれが自分がそうするべき理由ですし、その時ジャケットを羽織る理由です。そうしたい自分がいたならば、それはその時の本当の自分の姿に他なりません。

肌馴染みのいいカットソーとショートパンツだけでカフェに出かけて友人と会うことが自分にとって最高に心地良い時もあれば、アイロンをぱりっと掛けたシャツを着て車に乗り込み海へ向かうことが最高に心地良い時もあります。どこに何を着ていくのが正解か、という問いに対してもっと素直に自分の心とだけ向き合ってみると、TPOにとらわれすぎない、本当に自分らしい在り方というの姿が見つかるかもしれません。(守屋)

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ワンピースを着なくなった日

PHLANNÈL SOL / Stand Collar Shirt Dress / ¥29,700

その一枚でスタイルが完成する、着るだけでさまになる、そんなワンピースのプラグマティックな役割を好んでいる人は少なくないはずです。私自身、春はシャツドレス、夏はカットソードレス、そして秋にはまたシャツドレスを着て、冬になるとその上にニットを重ねタイツを履き、長いコートを羽織っています。

スカートを好まない人にとってそれは羽織りものにもなり得るし、パンツをレイヤードしたスタイルを楽しむことだってできるのです。そんなワンピースを着なくなることを考えたこともありませんでしたが、生活スタイルが変われば当たり前に着るものも変化するもので、自転車での移動がメインとなったライフスタイルには全くもって適さないものなのだと、思い知ったのが最近の出来事です。

日常的に着なくなってからでも、やはりその都合の良い一枚の存在に頼りたくなる日はもちろんあり、そういった時には自転車に乗ることを諦めてワンピースに手を伸ばします。その一枚に身体を通し、靴を履いてコンクリートの地面をこつこつと鳴らして歩くことに、これほどまでに新鮮さを感じたことは初めてでした。

揺れる裾は、夏の太陽を浴びてその涼やかな影を私の歩く先に落とし、秋にはそよぐ風がふらりふらりと揺れる心をたなびかせ、風のない日には深く静かに思いを巡らせます。常日頃から当たり前にそこにあるものを、少しの間手放したりしてみるだけで、知らなかった姿を発見することができます。そんな一枚に手を伸ばさず自転車を漕ぐ日常のうちで、次にそれに手を伸ばす日が確実にやってくることを静かに楽しみに待つのです。(守屋)

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服を着ることで価値観を昇華したい

KIJI / COTTON VENETIAN SAILOR SHIRT / ¥25,300

作り手がいて、ものが出来上がり、そこに表現される世界観には、控えめに言っても必ず作り手のパーソナリティがどこかに反映されているもので、その極々私的なアイデンティティのようなものを消すようにものを作る人もいれば、それを恥ずかしく思いながらも今の自己として惜しみなく出し尽くす人もいる、その違いだけなのでしょう。

作り手が、通ってきた道、見てきたもの、訪れた国や聞いた音楽、食べたものや心を揺らして涙を流したものたちのかけらが、少しずつ少しずつ、洋服の中にあることを思うと、これはプロダクトであると同時にやはりアートにも近いような、そんな曖昧な立ち位置を思わせます。人の体に流れる血液と同様、きっと洋服の糸の中をそういったエッセンスが流れているのかもしれません。

メンズ服もレディース服も、分け隔てがなくなってきたこの時代において、それ以前の世の中でそれらの別のカテゴリーとされていた洋服たち全てをフラットな感覚で見続けてきた人の作る服には、やはりそのフラットな感覚が反映されているように思えてなりません。それがパーソナリティだとまでは言えないにせよ、そういった作り手の足跡というものが見えた時、そこに私たちは何を感じるでしょうか。個人の価値観とどうすり合わせ、どう自分の中へと落としこんでいくでしょうか。(守屋)

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シャツの襟元のように気分が巡る

Christian Wijnants / TAJ / ¥26,180

着る人を選ぶとか、スタイリングが難しいとか、トレンドがあるので長く楽しめないとか色々と懸念をし、避けてしまうことが多いのが柄物。柄物のスカートを買うなら、無地の方が使いやすいかもしれない、長く飽きないかもしれないといつも同じような選択をしてしまう私はあまり冒険を得意とはしていません。

素敵に柄を着こなしている人には憧れるけれど自分がどう着用したらいいのかピンとこないものが多いのですが、考えてもみれば柄も一つのデザインの表現であって、無地のカットソーのネックかクルーネックか、Vネックか、モックネックか、あるいはシャツの襟がワイドスプレッドかボタンダウンかという違いと同様のことでしかないのです。

たとえ無地の白いカットソーでも、ネックがVだったら今の気分ではなく、しばらくクローゼットで眠っていることもあります。逆にこのカットソーが一つあれば、気分から遠ざかっていたり着映えせず眠り続けていた黒のスラックスに久しぶりに手を伸ばしてみたい気持ちにさせてくれます。巡り巡っていつかの未来には、また違うドレスとこのカットソーがお互いを輝かせ、新しい風を私のクローゼットの中に吹き込んでくれるようになるのでしょう。(守屋)

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良いものは誰にとっても良いものなのか

NICENESS / ANTHONY / ¥64,900

インディアンアーミーカモフラージュ、M43フィールドジャケット。洋服に興味を持った人ならばどこかで一度袖を通す経験があったであろう定番の品。ベースとなるデザインは誰も見たことがないほどの希少性の高いものではないにも関わらず、NICENESSの手にかかればそれは今まで見たことのないような新しい一着となります。

カモフラージュを職人が手染めすることによる不規則性がこれほど新鮮に目に映るとは誰が思ったでしょうか。コンクリートジャングルを生きる私たちにはグリーンやブラウンのカモフラージュは必要ではなく、都会に溶け込むためのカモフラージュの色彩がこれほど高揚するものだと誰が思ったでしょうか。

そしてただ新鮮だったりただ懐かしかったりするものではなく、ものはものとしての良さを最大級の屋台骨として携えています。どんなものでもとにかく素材が良い、作りが良い、染めや加工の工程が良ければ玄人はもちろんそれらの生産背景を聞いてたまらずに引き込まれるでしょうし、そこまで洋服に興味のない人にとっては、蘊蓄を無視して「ただなんとなくよさそう」という無意識下での納得へと漕ぎ付けられるのです。

良いものは良いし、それに引き込まれた私たちは、これらをいつまで経っても良いものだと純粋な心と目と肌でそれを感じ続けるのでしょう。鮮度だけではない本質的な良さというものを私たちに教えてくれるような一着です。(守屋)

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続けること

KIJI / SUSU / ¥30,800

例えばルーティンワークとしているランニングやヨガ、テキストを書くことは、継続することで初めてデフォルトの自分の状態というものが明らかになってくるものです。あるいは仕事で毎日欠かさずチェックする店舗の売り上げや集客状況など、継続してデータを収集することで新しい発見があったり微細な変化に気がつくことものです。

日常的に継続はされず、気の向くままにランニングに行くのでは、普段の自分の身体の状態がどんなであり、今日の自分はそれに比べてどの程度なのかは測ることが難しいものです。それと同様に、毎日、毎月、毎シーズン、何かを作り続けることで、それに対する周囲の反応の変化や自分の技術の鍛錬によって何か思ってもみなかった知見が手に入ったり、続けることで誰かに認められたりもするものでしょう。

次々に新しいものを生み出すことはそれはそれで大変ですが、何かを継続せず、前に自分のしたことや制作したものを毎回毎回帳消しにして新しい何かにトライするのでは、やはりどこにも積み上がる経験や実績や名声もありません。何かを諦め、今目新しいと感じるものに飛びつくことは誰でもできますが、何かを続けることはそれを続けたその人自身にしかできない経験をすることができるのです。

KIJIはいつもデニムをリリースするけれど、いつもデニムをリリースするからこそ、そのデニムが今どれほどのクオリティを保てているのかが見え、積み上げた経験によってアップデートを行うことができ、それに対しての周囲の反応の変化にも気づき、そしてまた内省して次に向けて動くのみなのです。「継続は力なり」とは使い古された言葉ではありますが、物凄いスポードで動き続ける現代の中において、より一層何かを継続することの難しさとそれに対する価値を感じています。(守屋)

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スタイルは私だけのもの

R&D.M.Co- / CHAMBRAY BUGGY SHIRT / ¥31,900

スタイルは、いずれかのジャンルに属するためのいわば制服のような役割を担っていたことがかつてあったと思います。女性のスタイルでいうなら例えば赤文字系青文字系、渋谷系、原宿系、カジュアル、コンサバ、アウトドアなど。「自分はこんなスタイルが好き」という意思表示はつまり自分がそんなジャンルに属するタイプの人間であることを表し、そしてそれに共鳴する仲間とその価値観をシェアして楽しむものでした。

様々なことの境界が曖昧になりつつある今、スタイルのジャンル分けも細分化されていきその境界も例外なく曖昧なものになっています。「少しきれいめなカジュアルスタイル」、「メンズライクなコンサバスタイル」、「ややモダンなナチュラルスタイル」など、ネーミングにも窮するようなスタイルが様々に存在します。それほどまでに、スタイルとは自分がどんなジャンルに属するのかの表現ではなく、あくまで自分自身を映し出す表現方法としての役割が強まったことの証なのでしょう。

特定のジャンルを目掛けて発案される洋服や、トレンドに乗ったデザインももちろん今でも後を断ちませんが、それを選びとる私たちの趣向が自分の内側へと向かっていったように、自分の内側へと向かっていった結果現れる個性や意志のようなものが強固に投影されている服には、それ相応に熱量のある共感者が生まれていくように思います。個性を表すものが洋服ならば、さまざまな個性の集積を自分のスタイルとして、唯一無二のものとして、作り上げていけたらそれほど楽しいことはないでしょう。(守屋)

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早まる季節は私たちの手元をすり抜けるけれど

KIJI / SHIRRING SHIRT / ¥26,400

最近はどんなにおしゃれなものも、どんなにトレンドなものも興味がなくなり、やはり自分の内面の状態に目を向けることも増えました。じめじめと息苦しい梅雨のときも、汗だくになる夏の日も、まるでわたしの体の中から湧き出てくる湿度や粘り気を吸い取ってからりと外に吐き出してくれるような、そんな洋服を心が求めています。

心が弾む洋服というものは、必ずしもデコラティブでキャッチーでハッピーで、一瞬で心を掴むようなデザインが必要なのではないこともずっとわかっていながら最近になって本当の意味で理解してきたことですが、地味でも目立たなくても、それに袖を通す自分の気持ちは高揚する洋服がたくさんあるのだと私は知っています。袖を通している時にとどまらず、それはただ持っていることや持ち続けたことでもたらしてくれる高揚もあります。

着古した姿の美しい洋服は、クローゼットに収まっているところを見るだけでやはり私自身の心を穏やかにしてくれます。自然な経年しわや産毛が逆立ったような表情のシャツにアイロンをかけるときの特別感は、なんと表現できるでしょうか。その心の高まりはまるで、洗濯物が一日でからりと乾くことが嬉しいなと感じる程度の、日常にひっそりと花を咲かせるささやかなものではありますが、ささやかだけれど大切なものはたくさんたくさん日々に潜んでいることを私たちは忘れてはいけません。

四季の境も曖昧になり、それどころか季節は、追いかける私たちの手元をすり抜けるように、私たちを置いてけぼりにしながら先へと進んでいます。その一日一日に危機感を感じながらも、ものごとの良い方を見ることや、ささやかなことに目を向けることを忘れず、来る夏をより涼しく気持ちの良い季節にしたいものです。(守屋)

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美しさへの欲望をずっと

Phlannèl / Suvin Cotton Wide Collar Dress Shirt / ¥28,600

この世の生物のほとんどが、ただ生きることに留まり命を燃やしています。一方で私たち人間はより美的な生き方を本能的に求めていることも真理です。そのままでも食べることができる野菜たちをわざわざ料理し、テーブルに皿を並べ、あるいは素手の文化圏もあるでしょうが、多くはカトラリーを用いてそれらを味わうという行為をわざわざするのです。

服を着る生物もほとんどわたしたちだけで、身を隠したり防御のための道具として生まれた洋服という布製のものは、そこにより美的な役割を求められるようになりました。

綿花を紡ぎ、糸を拠り、一枚の布を作る工程の中に、“より着やすく”そして“より美しく上質なこと”を求めるようになったのは、文化や技術の発展と人間の成熟に依るところも大きいのかもしれませんが、私たちが持つ本能がその探究への燃料だったとも言えるでしょう。

時代は変わり、経験や知識を蓄え理性を働かせ、私たちは必要最低限を求めることができるようになり、作ったものをまた新たなものへと循環させていく術も得ましたが、より美しいものを求めるということ、美しいものに触れたいという欲望は決して消失していいものではないように感じます。その美しさへの欲望が消え失せない限り、美しいものは生まれ、その美しさという普遍の価値観はアップデートされていくのでしょう。(守屋)

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小さく目立たぬところに、楽しさを閉じ込めて

Phlannèl / Cotton Silk Komon Maxi Skirt / ¥36,300

かつて人々は、豪華さを以って権力を象徴していました。手近にある木や石を用いて作られた道具たちのプリミティブな姿は、やがて文化を反映させた複雑で絢爛なものへと変化していきました。実用性よりも意匠をこらすことを優先されたとも思われる中国王朝の青銅器や陶磁器には、才ある職人が長い月日を費やしたと思われる文様がこれでもかと、びっしりとその肌を覆っています。

文化を凝縮させたものの持つ凄みは人々を圧倒し、それが富や権力の象徴となったと言われています。プリミティブから複雑へと変化した土地それぞれでの発展を遂げていくのですが、日本において反物はその素材や色、文様によって階級が決定されていた時代もありました。絹を使用することを禁じられた庶民階級の人々は、近づかなければ一見無地ともみえるほどの地味な色でいかに細かな模様を施すかを、制約ある生活における美学として成熟させていきました。

藩の印として生まれた紋柄も幾何学模様や自然から抽出する形を模したものなど様々に生まれていったのだそうです。どこの国にも、自然界から得られるインスピレーションを生活のデザインに落とし込む文化はあるようで、フランスでも、南プロバンス地方の名産であるアーティチョークを小紋柄に落とし込んだテキスタイルなどが生まれていきました。小さく控えめで一見見えないような一つひとつに、その時代を生きた人々の楽しい熱量が込められているのでしょう。(守屋)

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リネンのシャツ

OLDMAN'S TAILOR / DOUBLE POCKET SHIRTS GREEN CHECK / ¥35,200

まだ洋服に興味が湧き始めたばかりの頃は、リネンシャツというのは大人の洋服だと思っていました。少なからず今でもその思いは持ち合わせており、洗い晒しの自然体な表情や、何度も水を通した事による落ち感ととろみの増した風合いは、なかなか若い自分には似合わないものだと思い、どちらかといえば敬遠していたかもしれません。

年齢が伴わないうちに着ようとすると何故だかだらしなく見えたり、大人びるどころか老けて見えたりするものがありますが、それが不思議と、自分自身が年を重ねたときに袖を通してみると、自然なシワ感のあるリネンのシャツやワンピースは上品で穏やかな印象をもたらしてくれたり、着古した素材の風合いはもうひとつの肌のように自分自身になじみます。

真っ白でない、コットンやリネンの素材の色を残した白いシャツやカットソーも同じように、若かった自分にはどうしても着こなすことができなかったはずなのに、いつしかそれを自分の中の余白のように洋服に取り入れることができるようになっていました。それは、年齢を重ねた人の肌の質感、目の色、体格、そして洋服を着続けてきた経験からなる言葉にできないオーラのようなものが、その変化をもたらしているのだろうと思います。

お世辞にも綺麗とは言い難い古着のアイテムをあれもこれもと盛り込んでファッションを楽しんでいた若い時の着こなしは、それはもちろんその時にしか表現できなかった自分であり、その時の自分でしか似合うことがなかった着こなしなのでしょうが、それを経た今だからこそ、リネンのシャツが似合うような自分になれているのかもしれません。そんな、自分の年齢や成長を測るアイテムのひとつが、私にとってはリネンのシャツです。(守屋)

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せっかくだから、という気持ち

elsa esturgie / elipse / ¥39,600

今日と同じ明日は来ないから、今日という日を精一杯に生きよう、精一杯に楽しもうと思うと、食事のひとつひとつ、着るもの、会う人、朝起きる時間もベッドで過ごす時間も少しでも満足いくものやことを選んでいたいとどうしても欲張りな私は考えます。せっかく今日という日を生きる私のエネルギーになるのだから、せっかく私といういきものを作る要素になるのだから、良質なものを、そして美味しいものを食事にとりたいという欲が働きます。

せっかく限られた時間に服を着るのだから、せっかく今日は晴れているのだから、心踊る洋服に、お気に入りの洋服に身を包みたいという欲が働きます。そんな私の時間は限られているので、少しでも自分が会いたい人のために時間を使いたいし、せっかく使った時間はより良いものになるように、全力でその目の前にある仕事や遊びやあるいは“無”に向かい合いたいという熱が自分の内から湧き出てきます。

せっかく1日を全力で生きたし楽しんだのだから、明日の自分もこうであれるように良い睡眠をとりたいし、今日の自分より明日の自分が少しでも大きくなっていられるよう、寝る前の時間に本を読んで少なからずの知識や経験や知恵を取り込もうとする往生際の悪さが1日の終わりに露呈します。そしてそんなことをしているうちにやってくる自然な睡魔によって明日の自分へと、今日の私は向かいます。

せっかくだから自分らしくないものではなくて、心躍る服を着ようとする気持ちとともに、ここに列挙した全てのシーンで、自分の身を包むものというのはその時の自分の気持ちを鼓舞するものでもあります。寝るときに着るパジャマでさえも、その時の自分の心をコントロールする大切な要因の一つです。1日のほとんどの時間を洋服は私たちを包んでいますが、その役割はきっと身を隠したり守ったりするためだけではないはずです。(守屋)

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どこからきてどこへ向かうのか

PHLANNÈL SOL / Summer Smock Gather Dress / ¥35,200

ある一定のレベル以上の日本製ブランドの大半にとって、高品質の素材を用いてものづくりをしているということはもはや当たり前となりつつあります。以前はそれほどまでに品質に拘ることや、それをわざわざ消費者に伝えることが必須ではなく、消費者もそれらの情報よりもまずは見た目の美しさやトレンド感、心躍るか否かのファーストインプレッションに体重をかけてものを見ていたように思います。

形はごくシンプルだからこそ、それをずっと長く愛することが出来るし飽きずに持ち続けることが出来るという、それまでの流れとは異なるものづくりのブランドが誕生した時、そこには「長期間の着用に耐えうる品質」であることが避けることのできないミッションとして同時に立ちはだかったのだと思います。そのミッションをクリアしたからこその、他の追従を許さないクオリティの商品は、ただ消費者に見てもらうだけではその言わんとすることがなかなか伝わりづらかったのでしょう。

ひとたびそうした商品クオリティに関する情報が開示されたならば、消費者はその素晴らしさにもちろん気づき、安価で消化するだけのものにも自然と違和感を覚えるようになり、一定以上のクオリティを求める消費動向が生まれていったように思います。作り手が正しいと思うものづくりを行い、そこから消費者は学び取り、自らの購買行動において正しいと思うものを選び取っていく、というのはごく自然発生的な流れです。

今ではそれが当たり前になってしまったからこそ、真実がなくクオリティを謳うものも決してないとは言えなくなりました。ただ耳触りのいい言葉だけ並べ、目に入りやすい写真を撮り、それがあたかも正しいように見せることは、決して一言で悪だと片付けられませんし、苦し紛れの販売促進活動なのかもしれません。それが街中にたくさんあることを肝に銘じながら、心に刺さった言葉や写真や商品が、本当にどこからきてどこへ向かおうとしているのかということまで、知ろう、学ぼうとすることを私たちは続けなければなりません。それが、自分が応援したいものづくりや好きなブランドを正しく支援する方法です。(守屋)

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ある要素の新しい役割

Scye for BLOOM&BRANCH / Striped Cotton Popline Grandad Pullover H/S Shirt / ¥30,800

そもそもクレリックシャツというのは実用性から生まれたデザインであるそうなのですが、“ブルーストライプポプリン素材のクレリックシャツ”と聞くと、言葉だけで破壊力抜群の爽やかさを持ち合わせており、これこそ夏の一着だと思わせてくれます。

一見するとクラシックでトラッドな雰囲気の素材を用いていながら、サイジングと丈の長さによって生まれたアンバランスさがカジュアルで適度なリラックス感をもたらしてくれる不思議な一着です。クレリックシャツはカフスももちろん白地に切り替えられているものですが、5分袖の先には見えるはずの白が見えません。襟元だけに、その爽やかさを携えています。

以前に、『白いカットソーが襟元からのぞくことで抜け感というのは生まれる。シャツの襟元から素肌がのぞくことではそれは叶わない』といったことをディレクターがBLOOM&BRANCH JOURNAL内で語っていました。このシャツにおいて、クレリックの襟元はシャツ襟という役割ではなくて、そのインナーの白いカットソーのような役目を果たしてスタイリングを完成させてくれるのだと感じさせられました。

歴史的に見るこのシャツの成り立ちにおいても、素材においても縫製ももちろんどこにも抜け感の要素のない一着のシャツの襟元の、白という一つの色だけが、唯一の抜ける印象を作り出しています。元々そんな役割はさながらなかったはずなのですが、バランス一つで新しい役割を果たす要素がありました。視点を一つ変えるだけで、実はどこにでも、新しさは作り出せるのかもしれません。要素一つひとつを分解して解像度を上げてものごとを見つめて見るいいきっかけになりそうです。(守屋)

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刺激と感性

KIJI / MENS PULLOVER SHIRT / ¥22,000

若者がものを買わなくなったと言われて久しく、近頃はより一層、何か新しいものを一つ手に取りそれに代金を支払うその一つの行為に意味を求められるようになりました。それによって消費行動は以前にもまして消極的になったと言っても過言では無いかもしれません。

たくさん消費することを善とする考え方は資本主義経済においては避けては通れぬ思想であり背骨のような存在であるからこそ、これまで私たちはより多くのものを買い、それに代金を支払い、お金という概念を循環させることになんの疑いも持っていませんでした。今、より多くを消費する行為に疑問符がつけられる中、それでも世に生まれてくるものには、その横並びにある「いまあたらしく出てきたもの」以外の、この世に存在する全てのものと比較される土俵に上がることが必然になり、そこで軍配が上がらなければもちろん人々からの支持は受けることができません。

世にある全てのものの中でどれが最も美しいのか、どれが最も心地よいのか、どれが最も自分に必要なのか。大衆の意見に動かされる時代から自分の心の機微をいかに察知してものを選び取るかという選択のセンスが必要になっています。ものを買わなくなったからと言って人々の感性は落ち込むのではなく、そればかりかますますの鋭さを要するのです。

判断力を高めるため、そしてそれを鈍らせず常にセンサーを敏感に保っておくためには、日々考え続けること、そして日々新たな刺激を適度に取り込むことが必要です。それはもちろんお金を払ってものを買ってこそ磨かれるものもありますし、ただ多くのものに五感で触れることだけでも研ぎ澄まされることもあります。マンネリの上にあぐらをかくことをやめて自分の感性が喜ぶものを探しに行きませんか。(守屋)

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同じものを違うように

PHLANNÈL SOL / Light Suvin Cotton French-sleeve T-shirt / ¥12,100

一着の洋服を長く着続けることは一つの良識であり、変わらず同じものが好きでいられることは、変わらない信念や価値観を持った変わらない自分がいるということで、それもまた一つの美学があると言えます。お気に入りのシンプルなTシャツは、いつもどんな時も心を穏やかにしてくれ、つい手が伸びてしまうからこそ、去年買ったものを今年も買い足しておきたいと考える人は決して少なくないでしょう。

そしてずっと同じものを着続けていたいと思うと、そこには不思議とアンビバレントな感情が湧き上がってきませんか。去年同じTシャツを今年も着るのが楽しみな反面、去年それを着ていた自分とは少し変化していたいと、そうは思いませんか。変わらないことは善ですが、人は少なくとも生きている限り一つ歳を重ねますし、それによって体型も変化します。一年前の自分よりは確実に多くのことを経験しているからこそ、それによって目つき顔つきが変わることももちろんあります。

より大きな心をもち、より繊細な感性が育ち、より広い視野を得たからこその、去年とは違う今年らしさ、今の自分らしさがきっとあるはずですから、それを素直に身なりに落とし込みたいと思うのはともすればごく自然なことなのでしょう。それが出来てこそ、長くものを持つことでの楽しさも広がりますね。(守屋)

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ウィークエンド・バッグ

dragon / POMPOM DOUBLE JUMP / ¥28,600

大きなバッグが流行っていようと、小さなバッグを皆が持とうと、私は仕事の時にはパソコンや書類を常に持ち歩くので、否応なしに大きめのバッグが必須です。同じように、小さな子供と出かける母親は常に大きなバッグに子供の荷物を詰め込んでいる必要があるので、常に容量の大きなバッグが欠かせないパートナーになるのでしょう。

小さなバッグを片手に、サブバッグには大きい荷物を詰めて仕事に出ることもあります。小さなバッグは休みの日のためだけのものではありませんが、それでも、大きなバッグを持たずに、お財布や携帯やコンパクトなポーチと、簡単な文庫本だけをバッグに入れて出かけることができるのは大抵休日で、そんな日は現実的物質的にも、精神的にも解き放たれた自由さを感じさせられるものです。

リラックスして品良く着られるドレスをさらっと纏って、このバッグをさっと片手にサンダルで、オープンエアーな近所のカフェでコーヒーを飲んだり、公園に行って自然の香りの中読書をしたり、そして夕飯の買い出しをして帰路に着く。重いバッグから開放されただけで、そんな時間がより一層贅沢なものに感じられます。心の切替スイッチは人それぞれだと思いますが、私はそんな些細な小物の変化によって、ばちんと、より大きな音を立ててスイッチが切り替わっているのかもしれません。(守屋)

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ヒールシューズが履けないとか、スニーカーが好きじゃないとか

BEAUTIFUL SHOES / SHALLOW / ¥46,200

オフィスで働く女性はヒールシューズを履いていることがこれまでは多かったですが、その名残で、今でも女性はヒールを履いているべきだとされる声も多いのだと聞きました。女性らしさの象徴の一つともされるヒール靴は、足を美しく見せてくれる反面、やはりどうしても足を痛めてしまう原因にもなりますし、どうしても履けない、履きたくないと感じる女性も少なくはないでしょう。

もちろん、そんなシューズが好きな女性にとってはそれを履く自分が美しさを携えたようで気分が上がったり気持ちが引き締まったり、ヒールシューズを履くことと脱ぐことで仕事のオンオフを切り替えられたりもします。どちらが良い悪いではなく、それは全て好みの問題であり、選択の権限は全て着用者にありそれは全てが自由です。

いつどんな時でもスニーカーを履いていたい人、コンフォートな靴を選びたい人、子供の世代にも残せる作りのいい靴を修理しながら大切に履きたい人。靴選びの軸は実に様々で、それは時流や用途を超えたところにすら存在します。誰にでもちょうどいい靴というのはなかなかないのが現実です。

コンフォートな履き心地で見た目も美しく、着用者の足も美しく見せてくれ、精巧な作りで修理も出来て長持ちし、どんなスタイリングにも合う、そんな万能選手はどこかにいるでしょうか。そして、そんなバランスの取れた一足はどんな人に求められるのでしょうか。強い個性や要望のない多くの人の狭間で、そんな一足は、実は静かに存在し輝いて、求める誰かを待っています。(守屋)

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アーバンとアウトドアを行き来する

KAPTAIN SUNSHINE / 43 Fatigue Denim Trousers / ¥38,500

都会でハイスペックなアウトドアウェアを着ている人を見るようになったのはいつ頃からでしょうか。スポーティーなムードがハイブランドのコレクションに見られるようになり、アーバンアウトドアウェアなる言葉も生まれ、都会的で洗練されていながら過酷な状況への耐性が充分に備わった洋服は、ファッションアイテムの一つとして市民権を得ていきました。

アーバンアウトドアウェアの持つ都会性は、それまでアウトドアウェアに多用されてきたカラーリングを排除し、シックなモノトーンやアースカラーで構築され、そして肝心な動きやすさは緩やかな可動域を考慮したパターンではなく伸縮性のある素材を使うことで担保されています。要するにアウトドアウェアらしい大きなシルエットではなく細身で、すっきりとした印象を持つものです。

KAPTAIN SUNSHINEの洋服にも、どこかアーバンとアウトドアを行き来するような、都会的な印象も自然やスポーティーな印象も感じるのですが、それは不思議と前出のアーバンアウトドアウェアとは異なるものです。その都会性は、古いアウトドアウェアやワークウェアのデザインを踏襲しているからこそ醸し出されるものであり、そしてアウトドアでは使わない上質な素材感によって表出するものです。アウトドアの要素はもちろんデザインから感じ取られるわけですが、それがどうしてか今っぽくなく、急いでいない時間の流れを感じるようで。それが特異な都会性とハイスペックなアウトドアウェアのちょうど中間をすり抜けるようなバランス感を持っています。

BLOOM&BRANCH JOURNALの取材の際に、クラシックアウトドア、古いものが好きと楽しそうに語っていたデザイナーの児島さんの作るものには、"かつてのアウトドアウェアらしさ"によって都会的な雰囲気が生み出されるという一見矛盾するような楽しさがふんだんに盛り込まれているのです。だからこそ、都会も似合うし、海や山も似合ってしまう、そんなバランスは新しいアーバンアウトドアウェアのようです。(守屋)

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慣れと距離を置く

Phlannèl / Cotton Silk Khadi Shirt Dress / ¥39,600

特に仕事において、慣れというのは最も危険で避けるべきだと私が考えているものです。どんな単純作業やルーティンワークであっても、慣れてしまい考えなくなった時、その仕事一つひとつの仕事の意味や自分がその仕事に関わっていること自体の意味さえもなくなっていくような気がしています。

毎日の通勤通学の道のりや、毎日のコーディネートや、パートナーや友人とのコミュニケーションも同じことで、慣れてしまうとその毎日がありふれたものに感じてしまうし、「またこれか」というその気持ちは日々楽しむことの活力さえ、自分自身で削いでいくことになりかねません。

また今日も同じスタイリングになってしまった、と思う中で、決して新しい洋服が必要な訳でも、一発逆転的な個性溢れる一着が必要な訳でもありません。それは単に自分の視点の問題なのです。ありふれた、着慣れた洋服一着でも、視点を変えて見ると今まで見落としていたその一着の魅力が見つかるかもしれない。

歩き慣れた帰り道をいつもと違う道に変えてみたり、いつもの帰り道の中でも普段目を向けない並木や道路や人々の行き交う姿に目を向けてみたり。ちょっとした視点の変化で日々の慣れから遠いところに自分を置いておきたいものですね。(守屋)

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たかがTシャツ1枚でも

NICENESS / BERNARD / NN Vintage T-Shirt / ¥19,800

Tシャツにデニムという一見シンプルなスタイルにこそ、その人らしさやセンスというのは滲み出るものです。無地のTシャツだったとしたらその色、サイズ、ウエストをタックインするか否か、あるいはスカーフや腕時計などのアクセサリーをどの程度つけるか。細かなセレクトの全てが全体のバランスを決定づけます。

もしそれがプリントTシャツだったとしても同じことで、さらに難しいのはプリントの配色と全体のカラーバランスがどうであるかであったり、あるいはそのTシャツがビンテージなのか新品なのかでも、全く異なる印象を与えるでしょう。ビンテージライクなプリントであったとしても、それが新品のカットソーであれば、素材特有のハリ感や洗練された雰囲気が全体をきれいにまとめ上げてくれるでしょう。

一方で本当のビンテージTシャツをきていたとすれば、経年がもたらすヤレた雰囲気や独特の抜け感、肌に馴染んでいる雰囲気は、他の人には全く同じ表現を許さない唯一無二のものとなります。Tシャツにデニムのスタイルだけでなく、セットアップスタイルのインナーに無地のカットソーを合わせるかビンテージTシャツを合わせるか、その選択でも出来上がるスタイルには雲泥の差が現れることは言うまでもありません。

その小さな選択の積み重ねがその人らしいセンスを凝縮した着こなしになりますし、その小さな選択を積み重ねて決まったその日の着こなしには、少なくとも自分だけは、心躍らされているはずです。やってくる毎日を当たり前の毎日にするのか、昨日とは少し違う1日にするのかは、そんな小さなチョイスが変えていくものなのでしょう。(守屋)

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好きなものの話

POOL BY CLASS / Arawak / ¥57,200

ファッション産業は大きなムーブメントを起こしやすいことが長所である反面、その大きなムーブメントは表層的なものに留まってしまうと、それは文化として根付くことはなく、一時の流行として風化してしまう、させてしまうという怖い側面を孕んでいます。どれだけ素晴らしいクリエイションであろうとも、どれだけ貴重なものであろうとも、トレンドという波に過ってのまれてしまったならば、あとは引くのを待つのみとなります。そんな恐ろしいほどの力を持つ「流行」というものは、多数の人の投票によって成り立っているのは言うまでもありません。

ただ、その「好き」という意思表示や投じる一票は、誰かが好きだから「私も好き」であるという類のものが多く、もしかすると「自分だけが好き」だと言い切れる人はほとんどいないのかもしれません。自分が好きだと思うものを列挙していき、その中には人が好きだと言わないものはどれだけあるでしょうか。

ファッションにおいてそのような選択肢があることは、時代遅れとして捉えられることがあるのですが、それはまさに誰にも邪魔されることのない、自分だけの波であり、それを心地良く乗りこなせるのも自分だけなのです。特別な波、そして自分だけの特別なサーフボードを手に入れたときの快感を是非味わってみたいものですね。(守屋)

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考えることを辞めない

OUTIL / MANTEAU PIPILLIN PEPPER & SOLT / ¥83,600

BLOOM&BRANCH JOURNALの取材の際にOUTILデザイナーの宇多さんがおっしゃっていた話ですが、植物を染料として染めると一言で言っても、それが環境負荷になる場合もあるという話がとても心に引っかかっています。オーガニックコットンやエコレザーという言葉も同じように、耳障りがよく罪悪感がないために、多くの人にはそれらの商品を選択することが「正しいこと」として認識されているように思います。

植物で染めるということも、深く考えないでいればとても聞こえはよく、それがあたかもサスティナブルで正しい手段のように感じてしまいます。しかしながら、その方法にも様々あり、環境に大きなインパクトを与えるものもあるのだそうです。しっかりとそれを認識し、方法を模索し、時には利益を度外視してものづくりに励めば、そのインパクトを最小限に抑えながらもクオリティとしては妥協のないものは作り出せるのだろうと思います。

ファッション産業においてサスティナブルを語ることは簡単なことではありませんし、極論を言えばものをこれ以上作らないことが全ての結末なのだとも思う一方で、良きものを残すことや、素晴らしい作り手・技術・産地を守ることはそれと並行して考えるべきことでもあります。ものごとの一側面だけを見ているだけでは出てこない答えはありますし、時として正しいことは反対側から見ると悪にもなり得る。全方向からその正しさを問うという姿勢こそが、今私たちに必要なことなのでしょう。

甘い言葉で正義を振りかざすこともよくないですが、それ以上に、それらを傍観すること、考えを止めること、そして懸命に何かを考えてポーズをとっている人を批判することの方がよほど間違いであるような気がしてしまいます。少なからずとも考えてアクションを起こしたのならば、考えずにただ立ち止まって誰かの揚げ足をとっている人よりは余程前に進んでいると思うのです。その背中を多くの人に見せること、綺麗事を語るだけでなく実際に恥やプライドを捨てて行動を起こして先を行くことが、必要なのではないでしょうか。そんな背中を見せてくれる宇多さんのものづくりには、きっと理屈なしに多くの人が心を揺さぶられているはずです。(守屋)

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裏でも表でも

cantate / SUKA JUMPER / ¥330,000

例えば熱い討論を繰り広げることになった仕事の場や、仲の良い間柄の人との些細な喧嘩のとき、あるいはあまりの楽しさに全てをさらけ出せるほど心を許した食事の席などで、自身でも知り得なかった自分の一面というのを垣間見て、内側に秘めた思いや感情はこんなものがあったのかと驚くことがたまにありませんか。

普段はこんな姿を人に見せることなどなかったのにと思うほどの熱量のこもった感情を抑えきれずに吐露してしまったその時、自分の知らない姿を見た時、これは本来の自分の姿ではなく口から出てきたその言葉は本心ではないのだ、と誰よりも先に自分自身に弁明したい気持ちにかられたことが、誰しもにあるのではないでしょうか。

「表裏のない人」というのは良い人を指し、反対に「表裏のある人」は多くの人に嫌悪されるような声が多くありますが、少からざる人には必ずと言っていいほど「表と裏」はあるもので、時として表に、裏側に隠していた自分が顔を出すことだってあるのです。感情に任せてしまえば裏が途端に表に出ることだってあるのです。

表と裏をエゴによって使い分けるのはやはり首を傾げてしまうところはありますが、表も裏もあって自分だということを自分が受容し、表に見える部分をきれいに保ちたいと努力したりすることは悪いことではありません。時として見え隠れする裏側の自分の声にハッとさせられた時、意外にも自分自身で思いもよらない発見だってあるものです。(守屋)

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オーラを纏えるひと

Cristaseya / JAPANESE TRIPPLE GAUZE PATCHED JACKET / ¥143,00

シャツにジャケット、タイを締めてデニムを合わせ、少し短めの裾から覗くカラーソックスに、ビスポークと思わせるほどその人の足にしゃんと馴染んだ革靴。どこにでもいるような(今は少ないかもしれませんが)王道の着こなしにも関わらずどこか普通じゃない雰囲気がある人を見たことがあるでしょうか。

着こなしで言えば全く面白味があるわけでもないのに、どこか違和感というべきかその人らしいセンスのかけらがどうしてもその姿の中から見つかってしまうような人がいるでしょう。それは年齢や経験によって醸し出されることが多いですし、若い人がそうした着こなしをすると大きな大人は「洋服をわかっていない着方だ」と揶揄したりもするかもしれませんが、若い人にもそういった面白さやその人らしさを上品に持ち合わせている人もたくさんいます。

私が知る、合わせは王道でクラシカルなのにどこか面白さを漂わせるスタイルを得意としたある人は、逆にこういったどこの国にも属さない無国籍な洋服さえも、着こなしだけでイギリスにもアメリカにも出来てしまい、それなのに決して普通に収まらずに目を、会話を楽しませてくれる人です。そんな人が洋服屋であろうとなかろうと、洋服のプロであろうと趣味として楽しむ人であろうと、オーラを纏う力を持ったそんな人の姿が格好良いということには、変わりありませんね。(守屋)

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苦手を好きになる

KIJI / SUNA CHAMBRAY / ¥28,600

KIJIといえば生地と同色のステッチワーク。KIJIといえばコットンテンセルの光沢ある軽やかなデニム生地。という「らしさ」を持たない新作のシャンブレーシリーズが誕生しました。早速ですが、私はシャンブレー、特にウェスタンシャツというものは苦手です。

アメリカのウェスタンシャツの代名詞ともいえるブランドは、かつてプロのカウボーイと契約し、カウボーイのためのウェスタンシャツをデザインしました。誰かのためにデザインされているということは詰まるところデザインの意図が存在するわけで、その一つがタックインするために長めにとられた丈と、少しシェイプを持たせた身幅でした。

プロのカウボーイではなく、現代を生きる私たちにとっては、その長めの丈が時として不便を生み、細めの身幅は不自由を感じさせるものとなります。それはデザインされたもののターゲットが私たちでなかったのでもちろんものの欠陥などではなく、端的にいえば、当たり前の結果です。

四季のある日本で生活する私たちにとっては、着脱できる洋服は便利であり、羽織るためには適度な丈というものがあり、そして一枚着でも羽織でも不自由のない身幅というものが理想ではあります。それをデザインが叶えてくれる、それがKIJIらしさの一つの側面でもあるように私は思います。デニムがカジュアルで苦手な人にも履いてもらえる少し綺麗なデニムや、ウェスタンシャツが苦手な人にも心地良くフィットするウェスタンシャツがあるブランド、それがKIJIです。(守屋)

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それぞれ

Phlannèl / UTO×Phlannèl FRANCE APRON / 15,000+tax

人の生活は千差万別なので、「こんな生活に馴染むように」、「こんなシーンで使ってもらえるように」と生み出される商品は、その目指す姿を消費者によって正しく達成されることはそうないことだと思います。良くも悪くも、予想だにしなかった姿をもって誰かの生活の中に存在していることの方が、きっと多いのでしょう。

陶器のコップはある人にとっては湯呑みであり、ある人にとってはカトラリースタンドとなるように。ランニング用のシューズがある人にとってはファッションアイテムとなるように。今回発売されたワークウェアとしてのエプロンは、もちろんキッチンで使う人もいれば工房で使う人もいるし、毎日洗って清潔に使う人もいれば、汚れるものとしてたくさん汚し、定期的にしか洗濯をしない人もいるでしょう。

腰紐をぎゅっと縛る人、そこにクロスを挟み込む人。胸前部分を折って腰下のエプロンとして使う人もいるでしょう。正解を押し付けるような商品に、否応なくその指定の型にはめ込まれるのが苦手な私にとって、そんなふうに手にした人それぞれが、思い思いの生活の知恵を付け足しながら、ものを生活に馴染ませていく姿を見れたことは非常に幸せなことでした。

SNSでそういった日常はいくらでも切り取られシェアされやすくなったため、その共有はありがたくもある一方で、それぞれの姿には囚われることなく、自分自身の生活に心地よい姿を見出せることができたら良いのではないかと思います。それこそがものの存在する意義であり、私たちがきっと心から幸福や満足を感じる方法でしょう。(守屋)

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服の寿命を考える

KIJI / SHU / 23,000+tax

ファッションが民衆化することによって、洋服の寿命というのは圧倒的に短くなりました。早く、安く生産して届けられるトレンドのアイテムは、言わずもがなトレンドと共に着倒されることもなく捨て去られていきます。トレンドはより瞬発的になり、熱狂はより短期間になり、買い物はますます衝動的になり、そして洋服の寿命はこれでもかと短くなっていきました。

まだデニムがファッションではなかった頃、それは労働者のものであったため、デニムが求められることはいかに長く着られるか、という耐久性でした。ここ数年までファッション産業において、長く着られるかどうか、というのはほとんど考えられておらず、一部のエシカル消費者が考えていたにすぎないことのように思います。長く着られるものである以前に、洋服には、ファッションには、トレンドが求められていたからです。

そんなデニムもファッションアイテムになり、トレンドの形というものが数年おきに切り替わるようになり、その生産には大量の汚染水を伴うことが指摘されていますが、数十年前のデニムを今でも「王道」として多くの人が求める様子はどうでしょう。デニムというアイテムが悪いのではなく、トレンドとして消費するためのファッションアイテムになることが悪いのであって、一着のその洋服が数十年着ることが叶うものなら、それはある意味では正しい姿なのではないでしょうか。(守屋)

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