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裏の裏は表

BEAUTIFUL SHOES / MIDDLECUT SIDEGORE / 57,000+tax

生地にはいわゆる表と裏が存在します。織物では織り柄が表現される側が表とされますが、敢えてそれを裏返して洋服の表地として用いられることもあります。当たり前の話をしますが、革にももちろん表と裏があり、革はその用途によってどちらの面が表として使用されることも往々にしてあります。磨き上げられた銀面が美しいシューズもあれば、毛羽の立った表情が趣深いジャケットも存在します。

あるいは洋服に関しては、生地の表側を洋服の裏地として使うこともあります。キュプラがコートの裏地として用いられていることが多いですがそれは一つの例えとして挙げられるでしょう。その裏地として多用される素材を、敢えて表に出してもいいのではないか、と考えてその素材を主役に洋服を作っていたデザイナーがいました。裏を表に出すという逆転の発想は、他にも表裏を返してジャケットを羽織るといった着こなしにおける段階でも試されていたのは記憶に新しいのではないでしょうか。

靴はもちろん足を入れる入り口があり、地面を踏み締める底があるので上下を返して履くことは不可能ではありますが、裏の裏は表という理論で考えるならば、裏に「らしさ」という表情があってももちろんおかしくはない話でしょう。

昔とある器の作家さんが教えてくれたのですが、ある器が素晴らしい出来であるか否か、その作り手の技術が優れているか否かは、器の裏側を見て判断することもあるのだそうです。普通であれば見えないところに気を配る、自らの表情を映し出すということは、「表の顔だけで判断されない真髄」のようなものを留めておきたい作り手の強い意志のようにも感じられます。(守屋)

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静かに心を震わせるもの

molli / WIDE CARDIGAN IN ZIGZAG KNIT / 52,000+tax

クラフトマンシップ、手触り感、唯一無二の表情、手工芸などもっともらしい言葉を並べてものの持つ歪さや希少性にスポットがあてられる機会が増えました。トレンドワードのように簡単に吐き捨てられてゆくその言葉が形容するものそれ自体は、一方でその正しい価値を持っているのかさえ危ういものが増えているように感じます。

手工芸性を伴うものに求められる一方的なイメージはおそらく多少なりとも歪さを持ち、少なからずの人の手の痕跡を有するものではないでしょうか。この機械製品にあふれる市場の中でそのような唯一無二性を見出した消費者が、それらに価値を見出し、高い評価を与えているのでしょう。勿論、希少性そのものは価値であることに異論はありません。数が少ないからこそ競争原理は働きますし、価値は高まります。

その一方で、寸分狂わずに1mm幅程度の縫代を残して縫製されたシャツの裾には、ある意味では人の手の痕跡は勿論ないわけですが、そこに消費者は感銘を受けないのでしょうか。価値を見出さないのでしょうか。その縫製が可能な生産背景も同様に、希少性を伴うもののはずなのです。

偽物の手の温もり感や、プロではないものの作る歪さも時として心を温める素敵なものとなりますが、歪みなく淀みなく、無駄のない絶対的技術力を伴って作り出される精緻な美しい編み地にこそ、私の心は静かに、楽しく震えます。(守屋)

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どこかの香り

Barbour for BLOOM&BRANCH / Cruiser Jacket - Black / 66,000+tax

紅葉などの色彩変化によって得られる情報は非常に直接的で受動的なものであり、目が見える限りの範囲においては否が応でもそれらの情報は言葉通り、私たちの眼前に姿を表します。一方で、金木犀の香りが街中に広がって秋の訪れを知らせてくれるように、香りというものはそれらが持つ情報をとても控えめに伝えてくれるものです。無意識的にそれらの情報をキャッチできる人もいれば、意識しようともその香りが個人の記憶の中に存在するものでなければ全く何の情報すら持ち得ないものにもなるでしょう。

土の香りやハーブの香り、食べ物の香り、様々なもので記憶は呼び起こされ、それがある特定の季節を認識させるスイッチとなることもあれば、ある特定の場所を想起させるきっかけにもなり得るものが香りです。あるいは直接嗅覚に訴えかけるものでなかったとしても、「色香」という言葉のように、視覚情報とがスイッチとなって、色彩がある特定の香り=特定の場所や人や時間を想起させるものとなる場合もあるのでしょう。その場合香りというのは香りがもたらす誰かの記憶の結果の方を指し示す言葉へと変化します。

Barbourというブランドの持つ固有のチェック柄や代表的なコーデュロイの襟がついたジャケットをみたときに、「イギリス」という国を想起することがある人は多いと思いますが、その想起される「イギリス」というのは十人十色違う景色や大きさや色彩を持つイギリスなのでしょう。誰かにとっては昔過ごしたことのある懐かしい「イギリス」であり、またある人にとってはイギリス紳士なるものが存在する遠い国であり、誰かにとっては歴史的建造物の存在するクラシックな街並みが存在する憧れの土地であるのかもしれません。

そしてとても興味深いことに、このジャケットの出自はもちろんイギリスであるに違いないのですが要素としてアメリカを含んでおり、日本という国で作られているはずなのに、しっかりとイギリスの色香を纏っているということです。極々個人的な意見になりますが、アメリカの色香をいい意味で消して、イギリスという香りを丁寧に纏っているような気がします。(守屋)

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優れたDJが必要

OLDMAN'S TAILOR / Suede Work Jacket - Camel / 98,000+tax

この世に存在する商品の中に、必要不可欠なデザインを探そうとしたとき、果たしてどれほどものを見つけることができるでしょうか。市場に溢れすぎた商品の中で人から選ばれるためには、おそらく目立つデザインを加飾することが手っ取り早い方法として取られることが多く、特に日本では利便性という言葉が強固な価値を持っているように思います。

良い塩梅のセンスに「利便性」が付加された途端、それは「ありふれたもの」から「気が利いたもの」という付加価値を伴った存在に格上げされることがしばしばあります。その結果、本来必要がなかったものにまで「便利」を付加するために不要なデザインが備わってしまった、というものを散見します。もちろん「便利」は一例にすぎず、過不足なく仕上がっていたものに「トレンド」が付加されていたり「豪華」が付加されていたりするのですが、果たしてその物が存在するためにそのデザインは本当に必要だったのかと思わず首を傾げた経験は決して少なくありません。

デザインが付加された経緯を遡ればその過不足は測量可能であり、その経緯は、ものが生み出される目的を振り返れば必要か否かは明瞭です。「10月に売れるスウェットを作るため」、「20,000円の価格を通すため」という目的のために採用された吊り編機を使用した生産背景やディティールは、そこに存在するものに対しては本当に必要だったのでしょうか。「20,000円で販売する、その値段ででき得る最大限の生産背景を探す」という経緯を辿って選ばれた吊り編機という選択とは雲泥の差があるはずなのです。

結局のところ、付加価値をつけるために出来たデザインは不必要であり、付加価値というのはものやサービスに対して事後的に付与されるからこそ付加価値なのであり、それを目的とした時点で論理は破綻しています。やりたいこと、目指したいことに対して最大限に尽くせる方法を模索する結果に出来たものに対して、それを受け取る人がそこに「付加価値」を初めて見つけるに過ぎないのです。

誰かに必要とされるだろうものをこの世に生み出す、そこにおいて、最良の方法を最大限探し尽くしてものを作ること、デザインすることが本来真っ当なものづくりの経緯であったはずなのです。良い素材、良い生産背景は今の時代はきっとひと昔に比べて数多存在するからこそ、それらを駆使することができる力を持った人、それを良いバランス力で整える力を持った人が必要なのでしょう。そしてそれを、商売的感覚からは一歩離れて、純粋な目で良し悪しを見つめられる人が必要です。(守屋)

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能動的な受け手の存在こそ全て

m's braque / CHINA JACKET DEADSTOCK HOMESPAN / 60,000+tax

メンズ・ウィメンズディレクターがそれぞれの視点でものについて言葉を綴るJOURNALという新しいコンテンツがBLOOM&BRANCHのHP内にてスタートしております。9月にリリースとなったm's braqueとの別注アイテムやOLDMAN'S TAILORとの別注アイテムについて、制作における思いを語った回も公開となりました。

m's braque / 3TUCK BELTED TROUSERS DEADSTOCK WOOL KERSEY / 38,000+tax

オウンドメディアの重要性が叫ばれるようになって久しく、今では多くの個人やブランド、企業が自身のYouTubeチャンネルを開設しており、商品にまつわるストーリーや、スタイリング提案を流して有益な情報を提供しているチャンネルが相当数増えたように思います。そんな中で、BLOOM&BRANCHでは「BLOOM&BRANCHらしさ」の表現として、動画制作ではなく静止画を含むJOURNALというページにて言葉を綴る方法を選択したわけです。

良くも悪くも、文章だけでは伝えられないことというのは洋服において本当にたくさんあります。手触り、シルエット、ドレープの表情などはいくら精度の高い言葉や写真をもってしても表現し切ることは困難を極めます。そこまでして、JOURNALというページで、BLOOM&BRANCHらしさや考えていることを伝えようとした意味とはどこにあるのか、私的な見解を述べるとするならば、おそらく情報を受動的ではなく、能動的に受け取ってもらいたいという思いが強かったからなのではないでしょうか。

テレビも映画も、動画チャンネルも、映像というのは画面を眺めていると受け手の心持ちやペースや感情の変化をもろともせず決まった速度で流れ続け、そこに詰め込まれた情報は私たちの目の中に否が応でも飛び込んでくるものです。文章となった言葉達は、私たち読み手が読もうとしなければ、読み進めなければ、情報は自動的に入ってくるものではありません。「らしさ」というのは言葉にすると平易で簡単な言葉になりますが、それをいざ表現するべき時には、多角的な意味性を伴った表現というのが必要になるのでしょう。その包括的な表現として、BLOOM&BRANCH JOURNALというものが誕生したのだと思います。こちらの別注アイテムについては、もちろん私の言葉でなく、ウィメンズディレクターの中出の言葉にこそ真実があるものです。是非ご一読ください。(守屋)

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刹那生の反対側に位置するもの

NICENESS / ROYAL

例えば食事を楽しむ場合、それは味わいを楽しむものであるのはもちろんのこと、そこから漂う香りなどの嗅覚情報、給される皿やしつらえなどの視覚情報も伴ってその食事の「美味しさ」は決まってくるのではないでしょうか。本来の目的である「美味しいものを食べる」ということの周りにある様々な体験情報によってその美味しさは二倍にも三倍にも膨れ上がります。

それが洋服の場合は、真の目的はもちろん身に纏うこと、装うことであるので自分が洋服を着たときの見た目の格好良さや落ち着き具合というのが最終的には洋服を所有するときの大きな価値となるでしょう。ではその周りにある情報、纏うことの価値を増進させる情報とは何なのでしょう。

洋服では嗅覚や味覚の体験はない反面、手触りや着心地といった触覚が大切な要素になります。やはり肌に触れたとき、身に纏ったときの心地良さはそうでないときと比べて大きな価値、というよりは絶対的に譲ることのできない不可欠要素となるはずです。そしてもう一つ、食事はその席だけで消えてしまうライブパフォーマンス的な価値を持ちますが洋服はそれを何年、何十年と長く着ることで価値を増進させていくという特徴もあると思います。

家や車にも同じことが言えますが、真鍮の表札が古美色に変化していく経年や、漆喰の壁が深みを増していく変化の様はライブパフォーマンスとしての一瞬の価値体験にはないものがあります。そのような経年の価値というものは、それを体現している人や店で直接体験することも可能ですし、それを持ち帰って、自分だけのご褒美のようにこっそりと味わうことも叶います。それもまた醍醐味ですね。(守屋)

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上手とは何か

STUDIO KETTLE / The Pint Bag Waxed Cotton / 16,000+tax

絵が上手、下手というのは何を基準に判断しているのでしょうか。「上手い絵」と「価値ある絵」はイコールの関係にあるのでしょうか。「下手な絵」でも「価値ある絵」とは存在するでしょうか。このキャンバスに描かれた絵を見ても、「上手」かどうかを判断出来る人は決して多いとは思いませんが、例えば多くの人はきっと「素敵だ」などのポジティブな感情を抱くのではないでしょうか。

絵画のみならず、音楽も言葉も料理も造作も、上手いと言われる人がきっとそれにまつわる職業に就き、対価を受け取れるような立場にあるのでしょうから、そんな方々が提供するものがきっと世の中では「上手い」とされ、「価値がある」とされているのだろうと思います。ただ、「上手い」以外のものにも私たちは所々で価値を見出し、それらを欲する場面があるはずなのです。

STUDIO KETTLE / The Pint Bag Painted Canvas / 18,000+tax

レストランの食事が絶品に美味しいことはもちろんそれを作るシェフが料理上手だからなのですが、たまに実家に帰って食べる絶品ではないけれど懐かしい母の味の料理は、決して「上手」ではないけれど「価値があるもの」として、自らが求めていることはないでしょうか。決して上手ではない子供の絵が、誰かの心を震わせることがあるのも同様に、「上手」と「価値がある」ことがイコールでつながらない例えの一つにあげられます。

ではどうして、下手でも価値があるものが生み出されるのかという疑問に対しては、個人的にはそこに愛情があるかどうかに尽きるように思います。母の料理の持つ愛情の無限大さ、子供が絵を描くことが好きで、絵を描きたいという純真無垢な行動への愛情は、時として何よりもの価値を生み出すのだと思います。好きこそものの上手なれではないですが、日々のものごとに対して、どれだけ愛情を持って接するかによってそこから生まれる影響の輪は変化していくでしょう。(守屋)

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高揚感も安心感も、そして希望も胸の中に

R.ALAGAN / VINE FICKLE BANGLE / 40,000+tax
R.ALAGAN / FICKLE VINE RING / silver 30,000+tax  gold 33,000+tax

金や銀が富の象徴だとするならば、それはつまり装飾することに他ならず、衣服を身に纏うという不可欠性を伴うことの意味とは少し外れたところに、ジュエリーは存在していたのだと思います。

その存在意義を過去のものとして認識したことの理由は、もちろん現在はそういった装飾的な意味合いのみに留まっていないと思っているからで、例えばお守りとしてジュエリーを手元においていたり、そこに誓いや願いを込めていたりと精神的な拠り所とする人が現代においてはすごく多いような気がしています。

殊更、近頃は衣服の意味合いすらも変わり始めていて、TPOにとらわれずに、派手でなく着飾る必要すらもないけれどただ単純に自分が快適で心地よくあれるもの、本当に素材の良いシンプルな物などを長く着るという考え方に傾倒する人も多いかと思います。そうして変化した衣服の存在意義に華を添える存在としても、ジュエリーの価値はあるのでしょう。

決して着飾るということだけでなく、例えば服を纏うことによる心の高揚感を捨てて、服を纏うことには安心感を求めたならば、その高揚感を担うものはきっとジュエリーになるのでしょう。心地よい服を身にまとい、腕や耳に決して派手ではない飾り物を施して、そこに未来への微かな希望や願いを込めて、そっとお守りとして心の中に閉じ込めておくものとして。(守屋)

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自分を映す鏡として

VINCENT JALBERT / LACE RAGLAN COAT / 92,000+tax

「相手は自分を映し出す鏡だ」というような言葉を耳にしたり実際に誰かに言われたことがありますか。相手にした行いはいずれは自分に返ってくるもだともされ、幼い頃、人に優しくしなさいとか、友達をいじめてはいけないのだと、教わったことが少なからぬ人に経験があるものではないでしょうか。自分のワードローブを見つめながらふと、そのことを思い出すに至りました。

というのも、自分に対峙する人間がそうであるのと同じように、自分に対峙する物も必ず自分の内面を反映しているはずなのです。とりわけそれが世の中に転がっているものではなくて自分自身が選択し、自分のものとして近くに置くことを望んだものであるならばその傾向はより一層強くなるはずです。人は1日に何度もの選択をして運命的とも言える1分、1日、1ヶ月そして一生を過ごすわけですが身なりを包み込むための自分のワードローブはその時々の自分の状況を反映させたものが並んでいて然るべき場所なのだとは思いませんか。

自由になりたい、個性を主張したい、誰かに認められたいと、社会とはいかなる場所なのか分からずにもがいていた若かりし頃に選んだ洋服たちはやはりどこか自分よがりで強い主張のものが多かったり、一方で高いも安いも関係なく、目立とうが目立たなかろうが気にすることもなく、ただ心地よいものだけを選びたい心情に置かれていた時に選んだ服たちはどこにも個性のかけらが見当たらないように見える奥ゆかしさをはらみながらも長くそこに留まっていてくれるような、安定感のあるものが多かったりします。

少し歳を重ねたり、出会う人々の種類が変わったり、例えば同年代の人と会うことが減って人生の先輩たちと会うことが多くなるフェーズにある人にとっては、少し背伸びをしながらも自分らしさは忘れず慎ましく、そして決して自分の価値を下げるようなものを手に取るまい強い心を持っているのではないでしょうか。そんな人生のフェーズにある人へ向けてとてもおすすめしたいなと思います。(守屋)

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「間」について

KIJI / COTTON NEP GATHER BLOUSE / 28,000+tax

「間」を心地よく、あるいは少しの緊張状態を持って意図的に作り出すというのは、感覚仕事を伴い、それなりの経験やスキルが必要とされるものです。混沌状態から単純にいくつかの要素を取っ払って間を作るだけのそれは、もしかするとただ「間抜け」な状態になってしまう危険性を孕んでいます。

例えば店舗空間を作り出す際にも、1本のラックに洋服が密着するほどたくさん掛けられているところを見るとどうしても美しいという感覚を感じることは少ないですが、それが少し間引かれて適度な緊張状態を保ったその時、そこに置かれている洋服が美しいと見えるようになり、手に取ってみたいと感じるようになるのだと思っています。

一方でそれが何の脈絡もなくただ数を少なくされたラックであったとすれば、それは単純にすかっと商品が足りていないような不足感を与えてしまい、そこにも美しさというのは表出しないはずです。どの程度の「間」を美しさとするかは人それぞれに委ねられてはいるものの、「間」への意識というのは日本人には無意識的に備わった感覚の一つのように思います。

店舗空間のみならずとも、茶室において「間」というのは非常に重要な意味合いを持っていたものでしょうし、それが今では寝室やリビングに取って代わったという話であって、あるいはコミュニケーションの場においても、会話と会話の間、発言のはじめに一呼吸おくその一瞬が、言葉の持つ説得力を補強したり場の雰囲気を変えてしまったりといった役割を果たすことがあるはずです。

洋服を着こなす、スタイリングを考える場合には、「白」という色の持つ「間」的な感覚がとても重要になるような気がします。白を足すことで抜けた感じが演出できることもあれば、白を足すことで窮屈な印象を与えてしまうこともあるでしょう。それぞれのフィールドにおいてセンスを光らせる人というのは、この「間」を操れるような人なのかもしれません。(守屋)

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安定と不安定の間に感じるもの

Phlannèl / Cotton Silk Viyella Skirt / 36,000+tax

人間は本質的に、自然界にある有機的なかたちを成すものに対して安らぎや心強さを感じる生き物であるはずです。不規則にやってくる波の音には、母の手に抱かれた子供が感じるそれのように温かな安堵を感じたり、木々が自然に自由に生い茂って出来た木漏れ日には独特の美しさを見出したりするものです。

また、地球上には角や直線を伴うものが存在していたとしても経年、風化によって角は取れ、究極的には球に近づいていきます。自然の中には球体に近いかたちのものが多いことから、私たちは円を成すものにも安定を感じることが多いはずです。

一度、それらの円形が揺らぎを見せたとき、例えば丸い湖の湖畔が波立ったときなど、その無作為的な動きに自然を見出し美しいと思うのか、あるいは安定の壊滅による不安感を抱くのかは、それぞれの人のその時の感情に依拠することも大きいのだろうと思います。長い梅雨を超えて束の間の夏に歓喜した人が多かったことも同様に、自然界が私たち人間に与える影響というのは非常に大きなものがあります。

ぽつりぽつりと小さなドットを描くように配された小紋柄の美しいスカートが揺らいでそのドットが曖昧な表情を見せたその時、私たちはそれらに何を感じるのでしょう。(守屋)

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オリジナルストーリーを大切に

Le Yucca's / Ghillie Shoes for womens / 118,000+tax

BLOOM&BRANCHのお店で働き始める前、別のお店で見て気になって、欲しくて欲しくてどうにか手にしたのがLe Yucca'sのギリーシューズとの出会いでした。その頃はまだ若くて他にもたくさん欲しいものがあって、そんな私にとってはなかなかに高価な買い物でした。

Le Yucca'sを履き始めて半年か一年くらい経った頃、BLOOM&BRANCHでも取り扱わせてもらえることになりました。自分の好きなものと、自分が好きで働いているお店の共通点がまた一つ増えたことがとてもとても嬉しくて誇らしくて、たくさんの人におすすめしていたのを覚えています。

Le Yucca's / U-Tip Shoes for men / 124,000+tax

希少でなかなか手に入らないという類のものはこの世界にはほとんどなくなりました。どれだけ遠く離れた国のものであっても大抵のものは日本にも輸入されていますし、されてなかろうと、インターネットで探して取り寄せるということも難しくない時代になりました。Le Yucca'sも今では取り扱う店舗も昔に比べれば多くなってきたのかなと思います。

「ここにしかないもの」からは少し遠くなったLe Yucca'sですが、「ここにしかないもの」を買うことで得られる特別感の代わりに、そんなものをどこで買うのかであったり、買った時にどんな経験をすることが出来たかという、新しい買い物の価値指標や楽しさのようなものが、このシューズにはついてまわるようになったと感じます。A店でもB店でもC店でも買えるLe Yucca'sをどこで買いたいか。それを考えた上で、C店でDさんから購入したからこそ、自分にしか得られないマイレユッカス・ストーリーみたいなものが得られるのであり、まさにそれこそ「ここにしかないもの」に違いないのではないでしょうか。

そこにしかなくて買った私のLe Yucca'sよりも、ある程度どこかにある可能性がある中において、買う場所から自分で選択していけるというのは本当に贅沢な体験で、手にするものの価値は変わらずとも付帯価値は格段に高騰するのでしょう。とはいえ、そうたくさん存在する靴ではないというのも悩ましいところではあります。偶然の出会いという可能性に掛けなければならない場面もたくさんあるはずです。だからこそ、こういった買い物は楽しいものでやめられないものなのかもしれません。(守屋)

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限界点を探る

NICENESS / GUY / 48,000+tax

細かな意匠がそこかしこにと作り込まれ、そこに作り手の叡智が凝縮されているほど、その物にまつわるストーリーはより長くなり物語としての存在感を増していきます。それというのは本来ならば作り手本人から語られるはずのものであり、あるいは本人から直接聞いた物語をまた誰かへと語り継いでいくことで、それは持ち得るエネルギーを保持し続けることを可能にします。

ギミックの効いたアイテムの蘊蓄は、調べればある程度のことはインターネット上で知ることができます。それに対して私たちは知識を得たかのように感じ、知った気になり、その作られたものの意図を理解していると感じて消費活動を行うことが多かれ少なかれあるでしょう。知っている気になっているデザイナーの思いとは裏腹に、私たちはその思いを抱いているデザイナーの顔すら、実際は知らないということが往々にしてあり得るというのに。

私自身、価値ある情報はきっと一次情報あるいは二次情報くらいまでに留まるものと思っています。実際に目で見たり聞いたり触れたり、あるいはそれを実際にした人から直接その具合を聞いたりすることだけでしか、本当の意味で何かを体験したり理解することは難しいのではないかというのが、私の実体験に基づく個人的な見解です。

だからこそ、簡単に調べたりすることをよしともせず、こう言ったインターネットの上での文字情報に必要以上のことを書くことはせずにいたいし、知りたい人は実際に店に行ってプロの販売員からそれらの情報を聞くべきだという思いはいつまでも拭い去ることはできません。ただ、時勢もあるからこそ、それらの体験をオンラインでも提供できる方法を、私たちは模索している最中です。むやみやたらなオンラインでのそれとは、絶対に一線を画したものを提供したいと切に思っています。(守屋)

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Contradiction

KIJI / KACHI ICE BLUE / 27,000+tax

KIJIの定番アイテムであるデニムシリーズは、今更ながらの説明になりますが、デニムの本場であるアメリカのデニムを目指していない、あるいはそれに近づかないようにしているという点で新しさがあると思います。そして国産デニムといえば日本が世界に誇ることの出来る製品の一つであることは揺るぎのない事実であるにも関わらず、KIJIはその国産の良さすらも新しい解釈を持ってオリジナルな価値に変容させています。

コットン素材の藍染のセルビッチ付きで、アタリはLevi'sのビンテージのように縦落ちするデニムというのがその世界での善だと捉えるならば、そもそも素材からしてその定説に背いているのがKIJIです。基本から筋違いであるのに、一方では縦落ちする経年変化の風合いという良さは保っているのです。ビンテージのデニムであったり国産の技術を示すキーともなるセルビッチは、パンツの筒の外側に持ってくることはせず、それゆえに裾を折ってもその技術を見せびらかしたりすることなど不可能になります。

しかしその技術をKIJIのデニムはしっかりと受け継いでいて、誰にも見えない腰回りの内側の部分にそれを潜ませており、極め付けにそれは、多くのデニム愛好家が好む「赤耳」ではないのです。そんな多くの矛盾を孕んだデニムの新作のICE BLUEは、USA製のビンテージデニムのようなムラがあってのっぺりとしていない色落ちというのを敢えて避けています。その真逆をつき、逆説的に単調で均一でのっぺりとした表情を持っています。

そののっぺりとした表情はビンテージデニムでいうならばあまり良しとされない表情であるはずなのです。これがKIJIのデニムとなった途端、ヨーロッパのビンテージのトラウザーなどを主なデザインベースとしていることも相まって、その単一的な表情がシャープさや品の良さを保ってカジュアルな雰囲気を抑えるという新しさを持ち始めるのです。そんな新作デニムは、「新しい定番」という多くの矛盾を含んだ言葉で表現されうる一本となるのでしょう。(守屋)

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どこにでもありそうなどこにもなさ

KaILI for BLOOM&BRANCH / UTOU US (LIGHT GRAY) / 16,000+tax

BLOOM&BRANCHが常々やっていることといえばいかに普通を貫けるのかということだけであり、どれだけ奇を衒うことを避け、生活に馴染ませていけるかという限界点の突破へと邁進しているのみです。これだけ多様なものに溢れ、フォトジェニックな場所やものが珍重される時代において、全く逆の方向へと歩を進めているようにも見えてしまいます。

このKaILIのエクスクルーシブアイテムは何が特別なのかと言えばその色のみであり、さらにはかなり普通の色を特別に作ってもらっているものです。どこにでもありそうなLIGHT GRAYとSAND BEIGEですが実はどこにもないのです。特に今年らしい色であるわけでもなく、どんな時代にもありそうな、本当にありきたりな色なのですが、何度も言いますがどこにもないのです。

KaILI for BLOOM&BRANCH / UTOU US (SAND BEIGE) / 16,000+tax

ミルクコーヒーのような柔らかなSAND BEIGEは流行りのグレートーンのベージュとはまた異なりカーキを帯びた格好良いベージュともまた異なります。落ち着いていて優しそうで、安心感や懐かしさを感じるような、どこにでもありそうなSAND BEIGEです。コンクリートの冷たさはないけれどしっかり青さはあるLIGHT GRAYはBLOOM&BRANCHの店内に同化してしまって本当に目立たなくなります。それくらい普通のLIGHT GRAYです。それなのにどこにもない色です。

その“どこにでもありそうなどこにもなさ”は、UTOUというデザインとの親和性がとても高いと感じています。どこにでもありそうな普通のデザインに見えて、その実力や隠されたギミックは使った本人にしか分からないし、それも雷が落ちたような衝撃的な感動体験を提供してくれることもないのです。美味しい食べ物の栄養がじわりじわりと体内に染み渡って、気がついたら身体を健やかに育ててくれているような、かなり意識しないと見逃しそうになるほどの感動を提供してくれます。そんなものどこにあるでしょう。(守屋)

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私の欲しいものはどこにあるのだろう

Vintage / 60s French Air Force M-47 Field Pants Lately Dead Stock / 24,000+tax

過去にもVintageに関する記事をこちらの書いていましたが、その時にも「希少性だけが価値ではない」といった旨のことを書いていました。人の価値観はそう簡単に変わることがないのだなと変に感慨深くなり、同時にそんな自分自身に安堵感を抱きました。

先日公開されたコンテンツでもディレクターの柿本が話していますが、希少で高値になったものであっても、市場がこぞって求めるものであったとしても、それが今の自分自身の価値観や感覚に沿うものでなければ、自分にとってはその値段同様の価値が見出されていないということになります。その時は市場の価格と自分の価値観には不思議と大きな乖離があるのです。

目の前にあるものの傷が自分にとっての価値になる場合もあれば、特異な形がその価値を生むものであったり、あるいはサイズや、ブランドネームや、そのものの存在自体が価値になります。必要とする人が多ければ多いほど、テクノロジーの力を借りればそれはスケールメリットを得て価格を下げられるかもしれないし、反対にそれが難しいものであるならばオークションのように価格はぐっと上昇します。

大きな市場の生み出す価値基準とは異なる指標を自分の中に持っていることは、もしかすると非常に非効率なことなのかもしれませんが、それを世の中から見つけることの面白さと、どこに自分の琴線に触れるものがあるか手探りになる感覚も、言わば従来的な買い物の醍醐味であるように思います。それがディレクターの場合はいつも訪れているパリにたまたまあったということです。(守屋)

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横長の記憶

PHLANNÈL SOL / Landscape Shirt / 20,000+tax

Landscapeという言葉には「横長」という意味が含まれるようですが、私がLandscapeと聞いて先に思い浮かぶのは「景観」、「風景」という意味合いの方でした。言葉には様々な側面があって様々な表情があって面白いなと改めて思います。

景観や風景という言葉で表されるのは例えば幼い頃に訪れた祖父母の家の周りの景色だったり、大人になって自分のお金で旅に出た際に初めて見た日本以外の国の街の様子や自然の織りなす景色であったりするのだろうと思います。そういった景色について頭に思い浮かべるとき、何故だかその風景というのは縦位置の映像ではなくて映画館のスクリーンのような横位置の映像や画像が浮かびます。

テレビモニターやスクリーンやあらゆる場所に映し出される景色は、それが地平線のように横に広いものであるという特性からか、横位置の映像や画像として表されることが常でした。その影響を自然と受けているせいか、私たちが記憶の中にある景色を追いかけるとき、頭に浮かぶのはやはり横に広がった景色なのでしょう。

このLandscape Shirtもきっと、いつか誰かの横長の記憶の中にちらりと存在したりするのでしょう。そう考えると、自分だけが下らない秘密めいたものを知っている気持ちになります。(守屋)

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竹を編む

SIRI SIRI / Basket S / 48,000+tax

竹という素材は不思議なもので、細く割いた繊維はすぐに割れてしまいそうな見かけとは裏腹に堅く丈夫です。数百年の時が経ったものでも、姿を変えることなく今に存在していたりもします。

そんな丈夫な竹を使った竹細工は、編み模様の織りなす繊細な美しさが人々を魅了します。これはどんな魔法を使って描かれた表情なのかとまさにはっと息を飲むような、そんな体験をしたことがきっと少なからずの人にはあるだろうと思います。

ところが考えてもみると、あんなに固い竹をどうやって編み込むのか、その工程の部分に私はある時点まで目を向けたこともなかったように思います。

編むという方法をもって作られるということは、そう説明されているのでもちろん知っている(つもり)になっているのですが、では編んでるうちにぱきっと割れたりしないものなのか、あるいは固いもの特有の直線を描くような形状にならずに優美な弧を描くフォルムはどこからやってくるのか、それを理解して誰かに教えることなど全くかないませんでした。

竹はその強さ故に、その素材の反発の力によって曲線を描くことができるということ、編まれるときのその姿はまるで竹という素材はワイヤーか何かであるように、柔らかに自由に動き回ること。分かった気にならずに目で見てみると、ますますこの籠が存在することが信じ難くも素晴らしい現実なのだと知ることになります。(守屋)

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肌馴染みとはつまりバイアスなのか

AURALEE / LINEN DOUBLE FACE HALF SLEEVED SHIRTS / 34,000+tax

ファッションの市場においてはまだまだ合成繊維や化学繊維に比べ、天然繊維が重宝がられる傾向があるように思います。"シルクのような"、または"麻のような"という前置詞を伴った合成繊維の紹介文言をどれだけ見てきたことかと振り返ってみるとその結果は明らかです。

一方で、化学繊維や合成繊維は天然繊維に劣るもののように一蹴しているのは、全くもってこちら側の勝手な偏見に過ぎないように思います。化学繊維は本来人間の知の結晶のような繊維であって、例えば心臓と同様の組織構造の素材を開発出来るからこそ救える命があったりだとか、ゴアテックスやプリマロフトが存在するから快適に過ごせる環境があったりだとか、人間は化学繊維により大いなる恩恵を受けているはずなのです。

「肌に合わないから」と一言で片付けてしまえばそれまでなのですが、やはり素材の成り立ちや素性が分かるもの、あるいは人間と同様にこの地球に自然に生まれ育っているものを必然的に私たちは信用してしまうのでしょう。私自身、この色感と番手が異なる糸の織りなす表情を見た時に、「茣蓙のような素材だな」と感じたとともに、不思議と安心感を得ていたことにはたと気がつきました。

もし技術発展がこのまま続いた先の未来に、環境負荷を全くかけない化学繊維が一般的に用いられるようなファッションの業界の流れが生まれていたとしたならば、私たちは布の次元を超えたそれらのものたちに馴染みや安堵の気持ちを抱くのでしょうか。(守屋)

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新しい季節の手触り

OUTIL / ROBE LOISIN / 50,000+tax

日本の夏はじめじめと湿度が高いことが気候的特徴であったはずなのですが、近年加速する地球温暖化の例外にもれず、そこに亜熱帯地域のような気温と日差しもそこに加わってきました。暑さにやられて何もする気が起きない中で、ぼーっとする頭を無理やりにどうにか叩き起こしながら仕事をしたり、黙っていても流れ出る汗をやり過ごして大勢の人でごった返す電車に乗り込んでいくという季節がやってきます。

そういった私たちの思い描く季節の風景が、一つも余すことなくこれまで通りやってくることは現状を見るにまずないことなのだろうと思います。ましてや、ぎゅうぎゅうの人混みをかき分けて仲間と共に見上げる花火や、食べ物と汗と夜の匂いが混ざった祭りの空気を感じることも出来ないかもしれません。これまで私たちが抱えていた夏の記憶の中には、そのどこかしこに人混みと湿度と、太陽があったことを、今更ながら思い知らされました。

パートナーと共に、あるいは家族と共に、そしてもしかしたら友達と共に過ごすこれからの季節は、べたべたしたりじりじりしたり、そういったこれまでの手触りとは全く別の感触を持ったものになっているかもしれません。べたべた、ひりひり、じりじりしない季節を、その季節たらしめるための新しい手触りを、是非今から探してみましょう。

しっかりと汗を吸ってくれるパイル生地や柔らかく肉厚で肌に纏わり付かないコットンや、カリカリとしたリネンの生地がこれまでの手触りなのだとしたら、例えば風のようにふんわりとしたシルクや、ひやっと肌に触れるレーヨンや、柔らかいのにドライタッチなラミーなど、新しい季節の手触りは、決して文字通り新しく作り出さなくても、周りを見回すと意外とたくさんあるものです。(守屋)

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言葉を尽くして

AURALEE / WOOL KID MOHAIR KERSEY SLIT SKIRT / 36,000+tax

フィードに流れてくるスタイリング画像を見て購買欲求を掻き立てられてり、画面越しに誰かが商品を持って説明してくれる動画を眺めてウインドウショッピングのように楽しんだりと、私たちの生活の中には写真や動画の形をした情報のやりとりというものが急速に浸透していき、新しい当たり前となりつつあります。

例えば商品を手に持って熱心に説明の言葉を添えてくれる人の映る動画を眺めていて思うことは、そこにあるのは主役としての商品であり主形態としての動画というコンテンツなのですが、補完的に添えられている彼らの語る言葉にこそ、重要な側面があるような気がしてならないということです。

素晴らしいストーリーの語られた美しい動画や完成度の高い写真は、それ自体が価値でありアート作品の様相すら呈していますが、そこに意味性や目的性を見出すことは多くの消費者にとっては難しく、そこに同じ空気感を纏った言葉が添えられていることが、その動画や画像の意味や輪郭を明確に形作ってくれるような気がしています。画面越しの誰かに向けて話をしたり何かを見せたりしているときにも、言葉を尽くして説明しなければそこにはやはり温度のない画面があるだけで終わってしまうのです。

対面で直接語られるものではなかったとしても、目の前にいない相手に向けられた言葉なのだとしても、そこにいる誰かに対して言葉を尽くすことは、新しい当たり前のプラットフォームの中ではより重要度を増していくのではないでしょうか。そこに添えられる"言葉"の持つ意味をもう一度自分に問い直してみたいなと、上達しない写真技術に直面しながら素直に感じ入りました。(守屋)

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マイスタンダードの見つけ方

PHLANNÈL SOL / Light Suvin Cotton French-sleeve T-shirt / 11,000+tax

定番の一着だと思って買い足しているカットソーは、実は「定番だ」と自分に言い聞かせたところでその立ち位置は案外危ういものであることがあります。その定番は数年続いているものなのか、それとも2、3年置きに移り変わる定番なのかと振り返ってみると、後者の定番として思い当たるものが数着、クローゼットの中で今日も自分の活躍の場を与えられるのを待っています。

前者の方の、数年続いている定番というのは、アイテムそれ自体が、マイスタンダードとしての存在意義を獲得しています。"PHLANNÈL SOLのカットソー"が定番なのではなく、"PHLANNÈL SOLのユニセックスTシャツ"こそが自分の定番だということです。一方で後者の方は、まだその定番という言葉が、そのアイテム自体には係っていないという状態であるのでしょう。まだ、PHLANNÈL SOLのカットソーが定番だというだけで、もしかしたらそれは今年はユニセックスTシャツかもしれないし、来年は違うかもしれないのです。そんな危うい立ち位置は、いとも簡単に別のブランドに定番の座を譲ることになります。

またあるいは、自分が定番だと決めた一着は、実は毎年生産されておらず、気がついたときにはどこにも売っていないという状況だってあり得るのだと思います。案外、毎年律儀に同じものを作ってくれるブランドはあまりなく、老舗の海外ブランドや専業ブランドなどに限られてくるでしょう。だからこそ、これぞ私のスタンダードと呼べるようなアイテムと出会えることは大変に貴重だと思います。

老舗の誰もが知っているブランドではないのに、律儀に毎年同じものを作っているブランドがあったとしたら、それはきっとそのブランドの強みとなるアイテムなのだと認識して間違いはないはずです。そう思って、マイスタンダードになり得るのか、一度クローゼットに迎え入れて審査をしてみるのも悪くないかと思います。そうしているうちに、貴重な貴重なスタンダードに出会える日が、必ずやってきます。(守屋)

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桜の季節の後から紅葉まで

Phlannèl / Cotton Silk Over Sized Band Collar Shirt / 28,000+tax

コートやジャケットのインナーとなるようなシャツの担うべき役割は、桜の木の下あたりに置き去りにされ、夏へと向かうこれからの季節にはまた違った役割がきらきらと輝く太陽の光に混ざって降り注いできます。もちろんそれは、カットソーの上にさらりと羽織って温度調節をすることであり、強い日差しを遮って、汗ばむ身体を守ることにあります。

その役目を果たすシャツには、肌に触れることの心地良さや幾度となくやってくる洗濯に耐えうる強度や、脱いで手に持ってもシワになりづらいことなど本当に様々なことが求められてきます。そして実用面以外で私がこの季節のシャツに求めたいのは、「シャツから覗く肌とのバランスが取りやすいこと」です。

単純に肌を露出した状態の首筋に光るネックレスより、シャツの襟元からちらりと見えるそれがより美しく見えるように、半袖のシャツから伸びる腕より、長袖を無造作に捲り上げた先から表れる腕が美しいように、シャツがあるからこそ際立つ人の姿や肌、そしてそこに乗せられたジュエリーの輝きがあるはずだと思っています。だからこそ、肌が見えすぎるだけのシャツは良くないし、かといって身体を覆い隠してしまい少しの隙も与えないようなシャツはバランスが取りづらく季節に対する要望を満たせないのです。

バランスの取りやすいシャツには人それぞれの着こなしが如実に表れてきます。そしてそこに表現されたバランスの取り方というのは、どんなコーディネートを組んでいるかということにもまして、その人の感性を顕にしてくれます。その明快に表現された人々の感性は、とても魅力的に映ります。(守屋)

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正しく装う

SHORT SLEEVE RAGLAN ALOHA SHIRTS - Black / 28,000+tax / Mens

アロハシャツは現地の人々にとって、男性の正装として認識される服なのだそうですが、その「正しさ」については、アロハシャツのルーツを共にする私たち日本人にとってもなかなか理解しづらいものがあります。正装と言われて思い浮かべるのは、襟付きのシャツにタイを締める、さらにはジャケットを羽織る姿ではないでしょうか。

そもそも「正装」とは、「正しく装う」ことであると考えるならば、その正しさの依拠するところはそれを装う場所、シーンということになります。その文脈に則ると、前述の「正装」のイメージは冠婚葬祭時に着用される装いの正しさであるかと思うのですが、そのようなシーンにおいて「正装」として着用されることを許されるアロハシャツも、そこに描かれる絵柄のモチーフによって細かく定められているようです。

勿論、そういったシーン以外の場において、例えば観光地を盛り上げる場所で、雰囲気づくりのために着用されていることも往々にしてあり、そのような場での「正装」として成立するアロハシャツは、きっと明るさ、華やかさ、幸せな時間や心の表れる色彩を用いたシャツということになるはずです。そして描かれる柄はハイビスカスをはじめとする現地らしい植物や海の絵柄であることがその時求められる正しさです。

SHORT SLEEVE RAGLAN ALOHA SHIRTS - White / 28,000+tax / Womens

では、これらのアロハシャツを街の中や生活の中で着用する際の「正しさ」はどこにあるのかと考えるならば、その答えは、頑張らないこと、格好つけずにリラックスして着ること、であるというのが私の持論です。

日常生活のシーンの中で正しくあるためには、自分自身があくまで自分らしくあることこそが一番の正解の形なのだと考えると、それを覆い隠すように背伸びをしたり、頑張って、気を張って、ベールを纏うような行為は正しさとは離れていくのではないでしょうか。特に、ハワイの柔らかく寛大な島の雰囲気を想起させるアロハシャツを着ようと思うならば、尚更気を付けたい正しさであると思います。(守屋)

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一杯のコーヒーを

大村剛 / 色絵カップ各種 / 3,500+tax〜

ほっと一息つくためのコーヒー。眠気と戦い集中力を高めるためのコーヒー。談笑するためのパートナーとしてのコーヒー。自宅でもオフィスでも、座って何か作業する時間が長ければ長いほど、コーヒーを必要とする時間、あるいは自分でコーヒーを淹れる時間というものが増えてくるだろうと思いますが、先日公開したCOBI COFFEEマネージャーへのインタビュー記事で語られていたことで印象的だったのが、「コーヒーの味をデザインできる楽しさ」がコーヒーを淹れる時間には含まれているということです。

大村剛 / コーヒーサーバー色絵 / 10,000+tax

缶コーヒーでも、マシンメイドのコンビニコーヒーでも、そして専門店のハンドドリップコーヒーでも、それらはまるで別の飲み物であるにも関わらず「コーヒー」という名のものとに一括りにカテゴライズされます。その一括りになったコーヒーのうち、味わい以外で違いをなすものとしてはその前後にある時間の流れなのかと思います。一括りのコーヒー達に求める役割は、それを手にする人々によって千差万別なのです。

ある人は缶コーヒーを手にする時間で仕事を一区切りさせる人もいるでしょう。またある人はコーヒーショップにコーヒーを買いに行く時間で気持ちをリフレッシュする人もいるでしょう。そうかと思えばある人はコーヒーを片手に仕事をすることで集中力を保っているのでしょう。そして、本当に少数派になるかもしれませんが、コーヒーを淹れる時間を通して、気持ちを整えたり、思考を整理したり、あるいは何か自分好みのものを生み出す楽しさを感じている人もいるのだろうと思います。

大村剛 / コーヒードリッパー黒 / 6,000+tax

その時間を過ごしたからといって心がどうにか動くわけでもなければ、仕事の効率が上がったり、誰かから喜ばれたり報酬をもらえたりするものでは決してないのです。ただ真剣になってコーヒーを自分のために淹れてみる、自分の思い通りの何かを作り出してみる、それだけのことなのです。それだけのことが、無駄に思えることが、もしかしたら人生を楽しく豊かなものにする近道なのかもしれません。大袈裟な言い方をすれば、コーヒーを淹れる時間は、コーヒーの味をデザインするだけでなく、自分の人生や自分の時間をデザインする時間なのかもしれません。(守屋)

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パラドックスに備えて

KIJI / ILLUST ALOHA SHIRT / 24,000+tax

夏というものは、さあこれから長い夏がやってくるといくら身構えても、どれだけ夏の予定をしっかり立てようとも、気づいた時にはあっという間に、私たちの後ろ側へと通り過ぎているものです。

今年の春、誰もが春を見落としてしまったと感じていると思います。花見が出来なかったり、行楽の予定を棒に振ってしまったり、それこそ用意していたドレスを着て、シャツを着て、降り注ぐ太陽を存分に浴びることが出来なかったと。でも本当にそうでしょうか。いつもより、桜を愛でよう、春を精一杯感じようと、心の中では必死に季節を追いかけてはいませんでしたか。

KIJI / MONGARA ALOHA SHIRT / 24,000+tax

きっといつもより少し敏感になりながら、太陽のありがたさを感じたり、風の端にある季節の匂いを嗅ぎとったり、風景の変化や空の色の変化とゆっくり目を合わせて対話していたのではないでしょうか。

思った以上に、夏は圧倒的なパラドックスを持って私たちの前に現れます。私はこの春の季節に体験し習得したスタンスを持って、この一瞬の夏を迎え入れ、楽しみたいと心から思います。もう夏の準備は、しておいても早くはないかもしれません。このアロハシャツに刻まれた円相の一本一本がまさに私たちの過ごす1日1日なのですから。(守屋)

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アートを完成させるには

SCHA / Derby CA Seagrass Hat -SPECIAL EDITION- / 32,000+tax

先日の記事で、帽子は日差しから身を守るための道具として生まれたという旨の文章を書きました。勿論、ものの誕生には全て目的があるもので、その目的のためにデザインされた必然の形があるものです。そして、それらに解釈を加えることでファッションアイテムとしての誕生があるのだろうと思います。

ただ、解釈を与えられたファッションアイテムとしての物体には、本来の目的以上に求められる新たな目的が加えられること、そしてそれが何よりの最優先事項になることも往々にしてあります。例えばデザイナーのエヴァにとって、帽子の目的は自己表現の媒体として存在していることです。外的要素から頭を守るという本来の目的のためにデザインされた「帽子」という概念的な形を踏襲していながら、そこには自由に生茂る草花のような、秩序に囚われない表現の広がりが存在します。

アートピースとして、表現物としての帽子という目的が最優先事項となれば、本来の目的(何かから頭を守る)を達成し得ない形であってもそれは全く問題ではなくなり、その意思が、透けるような編み目や柔らかな素材という形となって表現されるのです。彼女の生み出す帽子の美しさに魅了されるファンは多いと思いますが、アートピースとしての帽子の存在意義が求められた結果なのですから、それは実に自然なことではないでしょうか。

そして彼女生み出すアートは、帽子を被る人と、その被り方という要素が加わって初めて完成されます。(守屋)

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今日の旅先

Phlannèl / American Sea Island Linen Pintuck Shirt Blouson / 38,000+tax

現実的に自らの身体をどこか遠くの異国へ旅させることが難しい時、心だけでも優雅な旅をさせる方法はいくつかあります。所謂現実逃避の方法と言ってしまえばそれまでですが、例えば映画を観て世界に自分を没頭させたり、本を読んで空想の世界を広げたり、かつて旅したときの写真を見返してタイムスリップしたりなどが出来るでしょう。それと同様に、服を着るということも、忘れてはならない心を旅させる方法の一つなのではないかと思っています。

ブランドそれぞれに、独自のコンセプト、表現したい世界観があります。フランス生産に拘っているブランドはフランスの古い資料やビンテージアイテムから洋服のデザインソースを得ている場合もあるでしょうし、そもそも旅をテーマにシーズンコレクションを組み立てているブランドもあります。あるいは、毎シーズンのテーマは設けていないものの、デザイナー自身が旅した土地で見た色や風景、その土地の伝統衣装などから新しい洋服をデザインする方もいます。

そんな洋服の背景を知ったとき、見えたとき、感じられたとき、きっと洋服が心底好きな人ならば、その土地のことやデザインソースとなったオリジナルのアイテムのことをより理解しようと、自分なりに考えてみたり調べたりするのではないでしょうか。その土地はどんな色が散りばめられた世界なのか、どんな空気の匂いがするのか、人々は普段どんな服装で街を歩いているかと想像するそれこそ、心が旅しているまさにその時なのです。

本を読んで頭の中に世界を思い描くように、洋服を着ることそれだけでも、洋服それぞれが連れて行ってくれる世界があり、そこにいる自分を夢想することは容易に出来ます。意外と見落としてしまうことが多いのですが、これは洋服の楽しさを構築する大きなパーツの一つなのではないかと思います。今日の旅先はどこにしましょうか。(守屋)

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二つの接合点

Lunor / A5 226 / 37,000+tax

日差しから身体を守ためにある帽子、寒さを防ぎ手を保護するための手袋、足を傷つけないように包み込む靴などの道具と違い、眼鏡に託された役割は「補うこと」です。低下した視力を回復させるため、視力を補助するための道具として眼鏡は誕生し、知識人を中心に愛用されてきたという経緯があります。

そんな補助器具としての役割は、コンタクトレンズに始まり、レーシック手術などの誕生もあって代替可能な機能となりました。いつしか時代遅れの道具と化した眼鏡という補助器具ですが、それにも関わらず今もこうして無くなることなく存在し続けています。

Lunor / Aviator Ⅱ / 46,000+tax

おそらく、眼鏡に装うための道具という新たな役割が付与されたからでしょう。人の第一印象を決定づける顔というパーツに装着する道具は、必然的にそのデザインのアップデートを求められることになります。そして装身具として、金、銀、チタン、鼈甲、セルロイドなど様々な素材を用いて美しく見られるための道具としての役割を少しづつ増していきました。

Lunorの創業者は、補助器具としての眼鏡の存在意義が強かった時代のアンティークの眼鏡や顕微鏡、望遠鏡、ひいては検眼機までをも収集していたそうです。そんな彼はきっと、眼鏡に託された二つの役割の接合点となった人そのものと言えるでしょう。(守屋)

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未来へ投資すること

OUTIL / MANTEAU LUZE / 60,000+tax

この時勢を考えずに純粋に洋服に向き合おうと思ったところで、どうしても頭や身体は素直にこの正常でない環境のことを考え、過敏に反応してしまいます。そんな数日を過ごす中で私の肌でひしひしと感じることは、ここにある洋服たちがどれだけの人の関わりや数えきれない苦労を経て運ばれてきたのかという奇跡への感動と、それに私たちは正当な対価を支払えているのかという疑念の思いです。

これまでだって、当然のように私たちのもとにやってきていたように思われるこれらの服たちは、本当に多くの人の手や国境を跨ぎながらここまで辿り着いているのですが、昨今の状況によって強いられる苦難が増している今、それぞれに関わる人々の努力と、お客様のもとまでこのクリエイションを届けたいという熱意だけが、ここまで洋服を運ぶことを可能にしているのだと感じます。

私たち自身も、特に東京近郊に住む人々はむやみな外出や必要以上の購買行動が憚られる中、洋服を買うことは現状娯楽消費と見做されるでしょうからほとんどの場合においては「不要なもの」にカテゴライズされてしまうような状況です。それでもそんな洋服を買うということは、「今」ではなく「将来」の私たち自身に投資することと、ここまで洋服を届けてくれた全ての人の「未来」に投資するという意味合いを持つのではないでしょうか。

来る先の未来で自分がどうあるべきかを想像して、そんな自分がどんな心持ちでいるべきかを考え、そのためのモチベーションとなる服を買うとか、目指すべき自分にふさわしい服を買うことで将来の自分へ投資するということ。そして、この困難な状況で予定通りの生産活動が出来ないことで必要な収入を得られず、もしかしたら次シーズンの生産へ影響が出てしまうかもしれない人々がいることを想像して、自分が応援したいブランドやそこに関わる人々の未来へ投資するということ。不必要に思われることでも、何のためかを思えば、本当に必要な購買、そして必要に見えて不要な購買だってあると思います。今こそしっかり考えてみるべきではないでしょうか。(守屋)

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