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裏でも表でも

cantate / SUKA JUMPER / ¥330,000

例えば熱い討論を繰り広げることになった仕事の場や、仲の良い間柄の人との些細な喧嘩のとき、あるいはあまりの楽しさに全てをさらけ出せるほど心を許した食事の席などで、自身でも知り得なかった自分の一面というのを垣間見て、内側に秘めた思いや感情はこんなものがあったのかと驚くことがたまにありませんか。

普段はこんな姿を人に見せることなどなかったのにと思うほどの熱量のこもった感情を抑えきれずに吐露してしまったその時、自分の知らない姿を見た時、これは本来の自分の姿ではなく口から出てきたその言葉は本心ではないのだ、と誰よりも先に自分自身に弁明したい気持ちにかられたことが、誰しもにあるのではないでしょうか。

「表裏のない人」というのは良い人を指し、反対に「表裏のある人」は多くの人に嫌悪されるような声が多くありますが、少からざる人には必ずと言っていいほど「表と裏」はあるもので、時として表に、裏側に隠していた自分が顔を出すことだってあるのです。感情に任せてしまえば裏が途端に表に出ることだってあるのです。

表と裏をエゴによって使い分けるのはやはり首を傾げてしまうところはありますが、表も裏もあって自分だということを自分が受容し、表に見える部分をきれいに保ちたいと努力したりすることは悪いことではありません。時として見え隠れする裏側の自分の声にハッとさせられた時、意外にも自分自身で思いもよらない発見だってあるものです。(守屋)

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オーラを纏えるひと

Cristaseya / JAPANESE TRIPPLE GAUZE PATCHED JACKET / ¥143,00

シャツにジャケット、タイを締めてデニムを合わせ、少し短めの裾から覗くカラーソックスに、ビスポークと思わせるほどその人の足にしゃんと馴染んだ革靴。どこにでもいるような(今は少ないかもしれませんが)王道の着こなしにも関わらずどこか普通じゃない雰囲気がある人を見たことがあるでしょうか。

着こなしで言えば全く面白味があるわけでもないのに、どこか違和感というべきかその人らしいセンスのかけらがどうしてもその姿の中から見つかってしまうような人がいるでしょう。それは年齢や経験によって醸し出されることが多いですし、若い人がそうした着こなしをすると大きな大人は「洋服をわかっていない着方だ」と揶揄したりもするかもしれませんが、若い人にもそういった面白さやその人らしさを上品に持ち合わせている人もたくさんいます。

私が知る、合わせは王道でクラシカルなのにどこか面白さを漂わせるスタイルを得意としたある人は、逆にこういったどこの国にも属さない無国籍な洋服さえも、着こなしだけでイギリスにもアメリカにも出来てしまい、それなのに決して普通に収まらずに目を、会話を楽しませてくれる人です。そんな人が洋服屋であろうとなかろうと、洋服のプロであろうと趣味として楽しむ人であろうと、オーラを纏う力を持ったそんな人の姿が格好良いということには、変わりありませんね。(守屋)

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苦手を好きになる

KIJI / SUNA CHAMBRAY / ¥28,600

KIJIといえば生地と同色のステッチワーク。KIJIといえばコットンテンセルの光沢ある軽やかなデニム生地。という「らしさ」を持たない新作のシャンブレーシリーズが誕生しました。早速ですが、私はシャンブレー、特にウェスタンシャツというものは苦手です。

アメリカのウェスタンシャツの代名詞ともいえるブランドは、かつてプロのカウボーイと契約し、カウボーイのためのウェスタンシャツをデザインしました。誰かのためにデザインされているということは詰まるところデザインの意図が存在するわけで、その一つがタックインするために長めにとられた丈と、少しシェイプを持たせた身幅でした。

プロのカウボーイではなく、現代を生きる私たちにとっては、その長めの丈が時として不便を生み、細めの身幅は不自由を感じさせるものとなります。それはデザインされたもののターゲットが私たちでなかったのでもちろんものの欠陥などではなく、端的にいえば、当たり前の結果です。

四季のある日本で生活する私たちにとっては、着脱できる洋服は便利であり、羽織るためには適度な丈というものがあり、そして一枚着でも羽織でも不自由のない身幅というものが理想ではあります。それをデザインが叶えてくれる、それがKIJIらしさの一つの側面でもあるように私は思います。デニムがカジュアルで苦手な人にも履いてもらえる少し綺麗なデニムや、ウェスタンシャツが苦手な人にも心地良くフィットするウェスタンシャツがあるブランド、それがKIJIです。(守屋)

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それぞれ

Phlannèl / UTO×Phlannèl FRANCE APRON / 15,000+tax

人の生活は千差万別なので、「こんな生活に馴染むように」、「こんなシーンで使ってもらえるように」と生み出される商品は、その目指す姿を消費者によって正しく達成されることはそうないことだと思います。良くも悪くも、予想だにしなかった姿をもって誰かの生活の中に存在していることの方が、きっと多いのでしょう。

陶器のコップはある人にとっては湯呑みであり、ある人にとってはカトラリースタンドとなるように。ランニング用のシューズがある人にとってはファッションアイテムとなるように。今回発売されたワークウェアとしてのエプロンは、もちろんキッチンで使う人もいれば工房で使う人もいるし、毎日洗って清潔に使う人もいれば、汚れるものとしてたくさん汚し、定期的にしか洗濯をしない人もいるでしょう。

腰紐をぎゅっと縛る人、そこにクロスを挟み込む人。胸前部分を折って腰下のエプロンとして使う人もいるでしょう。正解を押し付けるような商品に、否応なくその指定の型にはめ込まれるのが苦手な私にとって、そんなふうに手にした人それぞれが、思い思いの生活の知恵を付け足しながら、ものを生活に馴染ませていく姿を見れたことは非常に幸せなことでした。

SNSでそういった日常はいくらでも切り取られシェアされやすくなったため、その共有はありがたくもある一方で、それぞれの姿には囚われることなく、自分自身の生活に心地よい姿を見出せることができたら良いのではないかと思います。それこそがものの存在する意義であり、私たちがきっと心から幸福や満足を感じる方法でしょう。(守屋)

商品の再入荷に関するお問い合わせはこちらから「お問い合わせボタン」よりお願いいたします。

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服の寿命を考える

KIJI / SHU / 23,000+tax

ファッションが民衆化することによって、洋服の寿命というのは圧倒的に短くなりました。早く、安く生産して届けられるトレンドのアイテムは、言わずもがなトレンドと共に着倒されることもなく捨て去られていきます。トレンドはより瞬発的になり、熱狂はより短期間になり、買い物はますます衝動的になり、そして洋服の寿命はこれでもかと短くなっていきました。

まだデニムがファッションではなかった頃、それは労働者のものであったため、デニムが求められることはいかに長く着られるか、という耐久性でした。ここ数年までファッション産業において、長く着られるかどうか、というのはほとんど考えられておらず、一部のエシカル消費者が考えていたにすぎないことのように思います。長く着られるものである以前に、洋服には、ファッションには、トレンドが求められていたからです。

そんなデニムもファッションアイテムになり、トレンドの形というものが数年おきに切り替わるようになり、その生産には大量の汚染水を伴うことが指摘されていますが、数十年前のデニムを今でも「王道」として多くの人が求める様子はどうでしょう。デニムというアイテムが悪いのではなく、トレンドとして消費するためのファッションアイテムになることが悪いのであって、一着のその洋服が数十年着ることが叶うものなら、それはある意味では正しい姿なのではないでしょうか。(守屋)

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梅の花が咲く頃は

R&D.M.Co- / HICKORY FRONT OPEN DRESS / 72,000+tax

いつものように通り過ぎる公園の片隅で、梅の木がふくふくと膨らむ蕾を抱えており、これからやって来るであろう春の生き生きと希望に満ちた空気をその中にたっぷりと詰め込んでいるのだろうと思って眺めていました。

気がつけばそんな梅の木は見頃というべきほどに美しい花を咲かせており、行き交う人々は一様に足を止め、入国審査を通過するためにパスポートを取り出すかのごとく、皆ポケットからカメラを取り出して梅の木にそれを向けています。季節は平等にやっては来るものの、どうしても縮こまる冬からの開放と包み込むようなその温かさから、春は特別な季節として多くの人が待ちわびているものなのでしょう。

ただ忘れてはいけないことは、春は冬があるからこそこんなにも温かな気持ちにさせてくれるものなのであり、春があり夏が来て、秋を通過して冬が来るからこそ、春は春なのです。冬がなければ、夏も秋もなければ、春は春でもなく、ずっと続く365の連続でしかありません。

暦と実生活との季節の巡り方が乖離し始めて久しいですが、今一度、春たる春を考え、その季節をしっかりと享受したいものです。そのために、私たちができることは何なのでしょう。ただ春を待っているだけでは、いつかやってこなくなってしまうかもしれません。(守屋)

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観察しよう

Christian Wijnants / PARIA / 52,000+tax

商品をオンラインで閲覧したり情報をインターネットで収集したりした後に、そのまま実物を見ずに購買行動に至ることは悪いことでは決してないと私自身は思っています。今の世の中の情勢を踏まえてもなおのこと、出来るだけ人と対面しないことを社会的に求められているのであればそれに従いながら自身の用事を満たす最善の方法だとも思っています。

そんな中での実店舗の存在意義については、勿論議論されて然るべき問題だと思います。オンラインでは叶わない体験があるから。コミュニケーションが取れる、そして知識を教えてくれるスタッフがいるから。色々と店舗の優位性について挙げられますが、私は、店舗で実際にものを手に取ることはつまり、何かを「観察する」ということが出来るという価値を持ち合わせているような気がしています。

出かける時間がないからクイックに買い物ができることがオンラインショッピングにおける利点である反面、出かける時間すら削がれた生活の中で、ゆっくりものを観察するという時間は絶対に取れないでしょうし、そういった時間を大切なものだとも判断しないのでしょう。ものをじっくり観察することで初めて発見される自分自身の視点や、ものの価値はきっとあり、それに気付けることこそ新しい自分の発見や世界の発見や、そしてそれらによる買い物の満足度につながるのではないでしょうか。じっくり観察することで見えてくる新しい世界はきっとあるはずです。レオナルド・ダヴィンチが木を観察してフィボナッチ数列を発見したように。(守屋)

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境界

manuelle guibal / THEME ARZA H TRENCH / 100,000+tax

生活の中には時間の切れ間というようなものがいくつも存在しています。寝ると起きるの間、自宅でのオフモードから通勤電車、そして会社でのオンモード。お風呂でのリラックスタイム、団欒の食卓、そして眠りにつくまでのささやかな読書のひととき。

manuelle guibal / THEME TINO H MAO CHEMISE / 42,000+tax

一つひとつの時間の境目を意識し、一つひとつの塊の時間へ深く没入していくということが、近年では非常に難しくなり、時間と時間の間にデジタルデバイスが介在し、全てを細切れにしていきました。通勤電車という一塊の時間は、SNSで情報収集をする時間となり、そうかと思えばポップアップされたメール受信の情報を見てビジネスメールの返信時間へと変わり、そうかと思えば気になっていた洋服をリサーチし、という具合に、ひとつづきであったはずの時間は、どんどんと細分化されているように感じます。

一つ、何かに深く没入していくという時間が少なくなり、長い時間読書に興じたり、アイディアを練るための脳のストレッチ時間を十分に持てなくなり、気がついたらあの人と会話をし、この人とメールをし、という時間の消費は、長く、そして深い時を過ごすことを難しくしました。

あっちを見てこっちを見て、画面をスクロールしてあれこれタップしているうちに、ただでさえ見分けづらくなった季節の境目を全く気にも留めることなくやり過ごしてしまうのでしょう。意識的に時間の切れ間を少なくしたり、何かに没入したり、顔をあげる努力をしながら、本来気づくべきものや向き合うべき自分の姿というのを、見失わないようにしたいものです。(守屋)

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情緒と道具の間

Le Yucca's / Loafer / 125,000+tax

私を構成する上で欠かすことのできない要素として、軸足を置く土台として、生活というものをこれまでになく強く意識するようになりました。生活を差し置いてでも、仕事で成し遂げたいことがあるとか、生活が苦しくなっても手に入れたい靴があるとか、つまりはそれこそが幸せの形だったわけなのですが、果たしてこれは空想なのではないかと、疑いの目を向ける人は増えたはずです。

毎日安いコンビニのパンを買って空腹をしのぎながら手に入れる十数万円の服や靴は、その物質的価値以上の情緒をもたらす一着や一足となったことは、明らかなる事実であり決してそれを美化したりあるいは後悔することもありませんが、では今の自分も変わらずにその意識で物事を成し遂げたり手に入れたりしたいのでしょうか。

どれだけの情緒的価値を手に入れようとも、生活は私たちの前に横たわり、そして生活とは情緒と道具の間に存在するものだと、現代を生きる私たちは感じているはずなのです。情緒だけの夢物語も、道具だけの修行の日々も、満足ではなく、その間にある、生活というものこそが、私の心を満たし、幸せとは何かを考えさせる機会を与えてくれるもののように感じます。(守屋)

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じっくりと味わうことの幸せ

Phlannèl / Organic Cotton Over Sized Hooded Sweatshirt / 22,000+tax

Phlannèlが目指すのは“並外れた普通”、“最高級の普通”。決してPhlannèlの服に袖を通した人全てをファッショナブルな印象に仕上げてくれることはなく、良くも悪くも、目立つことなく自然に上品な雰囲気を醸し出される程度でしょう。服を纏っている人自身も、急激な気分の高揚があるわけではなく、ちょっとした嬉しさや安心感がある程度のはずです。

例えるならばそれは、白いお砂糖をふんだんに使った甘い甘いケーキと、素材の持つ自然な甘味を活かしてこっくりと仕上げられた栗きんとんの違いのようなものでしょうか。頭の先から足の先まで甘い幸せに包み込まれる白砂糖の魔法は、急激な幸福とともに不足感を同時にもたらします。一方蜂蜜やきび糖のもたらすものはゆるやかな坂を登っていくように訪れる幸せと共にそれが長く長く続く余韻です。

刺激的なものや目を惹くものについ目線を奪われてしまうことの多い昨今ですが、その一瞬の満足や目眩しに翻弄されることなく、自分の生活をより豊かにしてくれるものを、自分の目でしっかりと選ぶことが、長期的な幸福をもたらしてくれるのだと、私は信じています。(守屋)

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同質化ではなく一体化を

Phlannèl / Summer Loop Yarn Collarless Jacket / 48,000+tax

シームレス、ボーダーレス、ジェンダーレス。様々なことやものの境界線が非常に曖昧化されている昨今において絶対的なもの、局地的なスタンスというのは受け入れられづらくなりました。「女性らしい服」が絶対的支持を受けづらくなった一方で、「ジェンダーレスな服」が一定層の支持を得ていることは明白な事実です。

あるいはメンズライクな服を女性があえて纏い、元来女性的とされているアイテムと掛け合わせることで、自分のスタイルのうちに「ジェンダーレス」や「ボーダーレス」を作り出すことも可能ですし、実際にそういったスタイリングの人を街中で散見するようになりました。

物事の中間を取ること、境界をなくすことはフレキシブルで自由な選択を可能にする一方で、両極にあったはずのそれぞれの個というものを潰し、ありとあらゆるものを同質化・均質化させてしまうという可能性もはらんでいます。同質化が決して悪いとは言いませんが、ファッション領域において私が考えることには、やはり同質化されたものは単調で退屈に感じやすいのではないでしょうか。

ふと目に留まる着こなしの人は、決して派手ではなく、ともすると当たり障りのないフラットな服を纏っているかもしれませんが、そこには「個」が潰されることなくしっかりと残っているのではないでしょうか。中間のもの、境目のないもの、均質化されうるものを着るときにこそ、どこかに局地的なものを取り込んだり、あるいは自分という「個」を発揮する必要がありますね。(守屋)

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研ぎ澄ます

児玉美重  露華 52,000+tax / 露華 白 32,000+tax

昨年はこれまでになく、家での食事を意識することを余儀なくされ、更に言うと生活空間そのものを見つめ直すのに絶好の機会を与えられたように思います。空間に花を活けることが新しいルーティンとして日常に加わり、身の周りを整えることがいかに自分の心の整理になるかを改めて認識することになりました。

花を活けることは空間を設えることではなく、花を活けるという行為をもって自身の心を整え、空間に向き合う視点を新しいものにセットし直し、そこに居ることを快く引き受けるための準備をするようなものでしょうか。

食卓に並べる器を選ぶのも同じことでしょう。お世辞にも美味しいとは言えない自分の手料理を少なからず良きものに見せる、見立てるための器としてではなく、その皿を用いて供する食事の場を整えるということへの自分自身の意識づけや、食事を少しでも美味しく楽しいものにしたいという自分自身の向き合い方をセットするようなものではないでしょうか。

水垣 千悦 / ウズ福皿 / 3,000+tax

そんなに難しく考えずとも、自分の感性に引っかかった気に入りの皿や心がときめいた花器や、それに活けるための好みのお花など、心地よいと思えるものに囲まれた空間を用意することは、自分の感覚が常に穏やかに整うための環境整備であり、ささやかなことに美しさを見出す視点を常にフレッシュに保つことができる重要なチューニングのようなものなのではないでしょうか。去年得た新しい感性は忘れず今年も持ち続け、慎ましやかに毎日を過ごしていきたいものです。(守屋)

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月明かりさえも味方にするものたちを見逃さないように

Mimi / HEBE / 48,000+tax

まだ太陽の明かりが微かに残る夕暮れの空に月がぼんやり見えた時、その周りにある雲たちはほんの僅かながらの月明かりに照らされて、雲自らが光を放っているような、くっきりと白い輪郭を持った不思議な雲の姿を浮かび上がらせてくれます。地球を照らす太陽の光は、月に対しても平等に光を与え、そしてその月は、地球やそれを覆う雲たちにも平等に光を与えます。

自然の光は誰にでも平等に降り注ぐこと、そしてその光をどれだけ吸収し受け止め、自らが放つ光の如く活用して自分自身を光り輝かせることができるかは、もちろん受け止める側によっても変わってくるのでしょう。

照らす方向を選択して制限し、必要以上の光を与えて無用にものごとを照らすLEDライトの明かりと異なり、その自然の光の公平性や必然性には人々に無条件の正しさなるものを教えてくれるようにも思います。誰かの意図により導かれる「正しさ」らしきものに惑わされることが多い昨今で、何を指標に正しさを問えば良いのか迷う時、全ての答えはきっと身近なものが教えてくれるのではないかと、私自身は信じています。

意図的に市場原理によって照らされる煌びやかなブランド名に左右されることなく、名もなきファクトリーが立ち上げたブランドや、あるいはブランド名すら持たないクラフトアイテムにさえも、月明かりは僅かな光を与え、本当に力のあるものはその光を存分に反射させながらきらきらと輝くことでしょう。そして私たちはその光を決して見逃してはならないのではないでしょうか。(守屋)

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美しい選択を伴ったプロダクト

COMOLI / Hand Turtle Neck Knit / 82,000+tax

非常なまでの不確実性と不安定性を容認し、それらの包含された世界を常として、今を生きる我々は誰もが予想をし得ない未来に向かって常に様々な選択を迫られています。その選択の正しさは、誰もが知る由もなく、不測の未来がやってきた時に初めて誰かが「やはり違った」と、揚げ足を取ることしかできないのです。

言うなれば決断をしなければならないその一瞬の時に、出せる答えに正解はないのでしょう。そこにはきっと、決断する者の心に「その選択が美しい」と思える意識があること、そしてその選択が「真実である」と胸を張れる正直さでしか、判断の良し悪しを憶測することができないように思います。

「こっちの方がより美しいと思ったから」、「自分が美しいものや世界を生み出せると判断したから」という選択にはきっと、そこに醜さや嫌悪を感じる人は少ないはずです。

そしてそこにある真実味のある選択に人々の心は動かされ、例えそれが来る未来において「誤った判断だった」と決めつけられてしまうものであったとしても、それを取り立てて指摘する愚か者は少ないのではないでしょうか。決断の時、多くの人の心を動かし、納得させ、美しさを共感したのであればそれこそ正義なのではないでしょうか。(守屋)

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繊細さは時として不自由を招くけれど

R.ALAGAN / SIGNET RING ONYX / 45,000+tax

感覚が鈍い方がいいとは決して言えないまでも、繊細な人ほど時として不自由に生きることを強いられる場面の増加というのは、ここ数年その勢いを止めることなくもはや増すばかりではないでしょうか。繊細な人にしか感知できない誰かの機微や空気の流れの移り変わり、距離的には遠く離れた世界のどこかで起こった出来事について、考えなければそれまでですが、何かを感じ取ってしまうことが出来る人は果たしてどこに心の落ち着く場所を求めれば良いのでしょう。

ある程度の鈍さを持つか、“鈍いふり”をして見過ごすことも、ひとつの方法として挙げられるでしょう。あるいは、自らで内に籠る時間や、外をシャットアウトして、今感じてしまったことや考えていることについて、自分一人で他者の意見を無視してじっくり考え、自分に問いかける時間を持つというのもあるいは大切なのかもしれません。

繊細な人ほど生きづらいのかと問いかけてみると、決して鈍い感性の方が得をしたり楽しく生きられるとも言い切れないのですが、それはつまり繊細な感性を持った人に感じ取られたあれこれについて、内に籠もって苦しみながらも出された答えや、出せない答えにもがく様を誰かにぶつける形で表出されるその人の感情などは、やはり多くの人の心を動かす力があるように感じるからです。

その人にしか感じ得なかったこと、見ることのできなかった景色を、その人の心や目を通して擬似体験出来たことへの感動というのはやはり、誰にでも生み出せるものではないなと感じます。そしてその繊細な感性というのは、大小の差やこそあれ誰にでも心のどこかには持っているものなのだと思います。(守屋)

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#15

Cristaseya / WOOL AND CASHMERE RIBBED RAGLAN SWEATER / 85,000+tax

実際にデザイナーが日本を訪れた際に受けたインスピレーションから構成されているというEdition 15。私たち日本人にとっての当たり前の日常の風景が、日本を生活拠点にしていない人の目を通すと非常に非日常的であり違和感があり、面白さや発見があるのだろうということはとても理解出来ますが、それをさらに逆輸入する形で受け取る私たちは、果たしてどのような視点を持ってこれらのアイテムに対峙することが叶うのでしょう。

私たちにとってはいつも変わらぬ空の色、風の香り、湿気。そしてどこにでもある捨てられたビニール傘や、無造作に停められた自転車。店先で、今にも雨に溶けてなくなりそうになりながらどうにか形だけは留めている手書きの張り紙。いつ開くのか判らないシャッターや、朽ちたペンキの色。

普段それらを目にしたところで立ち止まってその存在について思考をするどころか、目にも入っていないのではないかというほどの当たり前が、新しい役割を与えられたかのように写真におさめられているのを見ると、なんとも言い難い矛盾を孕んだ歯痒さや、思いがけず行き違ってしまった時の切ない気持ちになりませんか。

このEditionで生まれたアイテムは、世界中の名だたるショップで取り扱われているでしょうが、それらを世界のファッショナブルな人々が享受することと、日本を拠点に生活を営むファッション好きの私たちが享受するとでは絶対的にそこに生ずるものの意味合いや持ちうる感情は異なるはずです。ほとんどのアイテムがお客様の手に渡っておりますが、手にした人にこそ、是非その感情を教えていただきたいなと思います。(守屋)

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新しい夜

denis colomb / HORO BLANKET NOMAD / 140,000+tax

夜の静けさは人々の眠りや街の眠りそのものであり、朝の微かな温かさは、目覚めと共に温度を上げていく人々の体温そのものであるように感じることがあります。そして柔らかな朝の陽光に包まれて私たちはそれぞれの新しい1日を始めます。

まだ子供の元気な声や誰かが通り過ぎる足音が聞こえない静かな朝の時間というのは、空気の揺れ動くようなエネルギーを感じることが少なく、ぴんと糸を張ったような緊張感すら感じることがあります。一方で同じように空を桃色に染める夕日やその時間の空気は、1日を懸命に生きた人々のエネルギーを吸い込んで大きな振動を起こしているように感じます。

その揺れ動く空気を肌で感じながら、私たちはまた来る新しい夜を、迎えます。冬は日が短く長い夜がありますが、そんな冬の夜には夏とは違った「夜の新しさ」や「何かの始まりの夜」の存在に気づかされます。

新しい夜が始まると、私たちは思い思いの音楽を聴きながら物思いに耽ったり、誰かと食卓を囲んだり、会話を楽しんだり、昨日とは違う自分になれるような本を読んだり映画を観たり、泣いたり笑ったりするのです。光に照らされてきらきらと光る空気や、ぼんやりと浮かび上がる星空の美しさが一層際立つ冬がやってきますね。(守屋)

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本能に従い五感を経由して

Phlannèl / Cotton Yak Hoodie / 26,000+tax

人は一生を費やして常に何かを選択し決断し、そして失敗を経験しながら何かを学び続けていて、あるいは自分自身とはつまり選択の連続で形成される存在であるのでしょう。目の前のメニューの中から何を食するかを選択し、歩いて帰るか電車に乗って帰るかを選択し、お風呂に入って右手から洗うのか左の足から洗うのかを選択し、就寝前にスマートフォンを眺めながら明日着る洋服について考えるのか、ハーブティーを飲みながら読書をするのか選択するわけです。

日々は選択の連続で、その選択すべてが今の自分を形成するわけなのですが、最終的に自分の根幹をなすようなものはきっと、自分の本能が赴くままに五感を経由して反射的に選んできたものの蓄積であるように思うのです。「誰かが言っていたから」、「誰かも選択していたから」というような外的要因に依存する選択は、自分で選んでいるように見えて実は選ばされているという状況すら発生させてしまいます。

主観の表現として「なんとなく」という感情は言葉にするととても平易なように感じますが、「なんとなく好き」や「なんとなく気になる」、「なんとなく手に取りたくなる」という自分発信の感情だけ決定だとなり突き動かされる衝動というのは実に曖昧ながらに重要な感覚です。本能的に「なんとなく良い」と感じるものに触れたくなる欲求は自分自身の内側から出る純粋な感情であり、それによって選択したものごとの蓄積は自分の奥深く、とても芯に近い部分を形成するものとなり得ます。

多くの愛用者が、疲れた時に「なんとなく」手に取ってしまいたくなる洋服と表現するのがPhlannèlの洋服の特徴の一つです。誰かが本能的に欲する何かを満たす洋服は、ありそうで意外とないもののように思いますし、その欲求がファッション要素ではない感情に寄与しているのもとても面白いものです。そして「なんとなく」Phlannèlの洋服を手にすることによって、そんな人たち自身やその人たちの生活の根幹というものが形成されていくのでしょう。(守屋)

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影に潜むものに目を向ける

Phlannèl / Wool Cashmere Cable Stitch Cardigan / 34,000+tax
GALLEGO DESPORTES / LONG ANTIK SHIRT STYLE WITH WAVE COLLAR / 34,000+tax

先日更新されたJOURNALでの対談にて、ULTERIOR牧さんから『陰翳礼讃』の言葉を耳にし、久しぶりに書籍を読み返していました。光が届かない影の部分、陰影の部分に美しさを見出した日本人の美意識について語られている本ですが、スポットライトに照らし出された場所ではない、その周囲に潜むものの存在に目を向けるという視点の発見は、内容の本筋とはずれますがとても大きな発見であったことは間違いありません。

スポットライトに照らされて輝くものの存在があるということはすなわち、その照らされる存在を支えている影の立役者の存在が必ずあるということです。あるいは輝くものの周りには輝かずにひっそりと静かに自らの存在を潜めている大多数のものの存在が「標準」という価値を形成しているからこそ成り立つ構造と言えるでしょう。

ファッションの分野に置き換えるのは少々強引に過ぎるようではありますが、スポットライトに照らされるようなブランドの存在があるということは一重にそのブランドを支える優秀な作り手、職人、ビジネスマンなど華々しく披露されるアイテムの影に潜む者の存在があってこそなのです。

そして、スポットライトに照らされ輝くブランドもあればそうではなくその影に潜みながらしっかりとその存在価値を示しているブランドももちろんあり、後者の存在があってこそ前者は存在し得るものであるということを、しっかりと認識する必要があると感じたと同時に、そういった影に潜むものの存在に目を向けられる人でありたいと、自分自身の視点の持ち方を改めて見つめ直すきっかけとなりました。(守屋)

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感情の代替物を生み出す

Phlannèl / Wool Tweed Shawl Collar Gown Coat / 110,000+tax

全てのものごとは見る角度によって実に様々な情報を私たちに与えてくれます。日々積み重なる一日いちにちでさえ、朝に見る街の景色と夜に見るそれとでは全く異なる風景を見せてくれ、朝が印象的だった1日と夜が印象的だった1日ではそれぞれ意味合いの異なる「1日」が私たちの記憶の中に刻み込まれるように思います。

重要なことは、その1日が見せる一瞬一瞬の違う表情をできる限り敏感に感じ取り、様々な表情を見逃さないようにと心を配ることではないでしょか。意識の置き方次第で私たちが見ることの出来る景色は二次元の水彩画のようにもなれば三次元の壮大なパノラマにもなり得るのです。

どんな一瞬が最も素晴らしいかどうかの優劣はもちろんつけることは不可能で、受け取る人それぞれによってその印象の強度というものは異なってくるのだろうと思いますが、そうして感じ取った日々のかけらの表情やニュアンスや空気に沿わせるように洋服を選んでみると、手持ちの服にも今まで感じ得なかったような新しい感情を抱くことができたり、新しい一面を発見することができたりするものであります。

カサカサと擦れる落ち葉の色に心が動いた時、その温かな色彩を自らの装いに取り込みたくなります。あるいは暮れゆく空に太陽の光を吸い込んでその名残をぼんやりと光らせて移ろう雲に目が奪われたならば、奥の方から光を放ち身体や心を温めてくれるようなホームスパンの生地に触れたくなったり。感じたことを何かに置き換えるという行為はとても創造的で感覚的で個人的ではありますが心に栄養を与えてくれるような大切な営みの一つです。(守屋)

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インスピレーションを大切に

SEEALL / Padded Collarless Coat / 65,000+tax

ジョージア・オキーフはその作品の素晴らしさもさることながら、彼女自身の生き方や感性にスポットライトが当てられ、彼女自身についてを語る文脈が多いような気がします。以前にニューヨークでも彼女の作品展ではなく、彼女のワードローブにまつわる展示が開催されていたことも記憶に新しいのではないでしょうか。

2020年という時代においては、女性の社会進出や活躍は全く珍しいことではなくなりつつありますが、ジョージア・オキーフが生きた20世紀初頭においては、一人荒野の中で強く生き抜く女性の姿は珍しかったのではないでしょうか。そんな彼女の姿勢や、オリジナリティの感性に今を生きる女性は強く励まされ憧れを抱き、自身の姿を重ねようとするのかもしれません。

上質な天然素材の衣服を愛していたとされるジョージア・オキーフの着ていたガウンは、ブラックアンドホワイトの洗練されたスタイリングに度々用いられ、とてもモダンな印象を与えます。そんなアイテムを敢えて天然素材を表面に用いないダウンコートというアイテムに置き換えた一着は、彼女の生きる姿勢を現代に蘇らせるかのような大変面白いアプローチです。

その上で、彼女へのリスペクトや天然素材との相性や、近代らしさを適度に削ぎ落とすように生地表面は加工によって自然なシボの表情を見せています。全く新しいというほどセンセーショナルでないからこその、今の私たちや地球に優しく適度に寄り添ってくれる、そんな一着です。(守屋)

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それぞれが持つ唯一無二の装身具

YLÈVE / BLOCK PRINT SILK PLEATS SK / 62,000+tax

草花のようにしなやかで、芯の強さがあり、けれど時々はかない表情を見せぐっと周りの人を引き込むような女性はとても魅力的であります。そんなしなやかな人が、幾何学的な模様を纏っている時、その人はきっとひらりとその表情を変えていて、柔和で繊細な顔は影を潜め、やや真面目できりりとした鉱石のような一面を見せるのでしょう。

あどけない表情の女性が、テーラードジャケットを羽織ったとたんにその視線は鋭く何かを見つめるようになった時、あるいは素朴な女性がきらきらと輝くジュエリーを首もとに輝かせながら現れた時など、その人自身が持つオーラとは少し離れたところにある衣服や装身具を纏った時に垣間見えるその意外性のある側面は、そのギャップが大きければ大きいほどおそらく周囲の人をはっとさせる勢いというものがあると思います。

普段のその人から全く新しい人に生まれ変わるのではなくて、その人の普段のオーラがあるなかに、普段とは違う側面が見えるという、少しの不安定さや異質感、不自然さは、マイナスの要素のように見えて実は大きくプラスに転じる言わば大逆転のツールなのです。

洋服そのものの雰囲気だけではなく、普段とは違う柄、違う素材、違うアイテム、または洋服に限らず普段とは違うジュエリー使い、シューズ選び、そしてメイクアップやヘアスタイル。少しの冒険で少しのギャップを作ってみるとありふれた日常の中に新しい光を感じられるような、そんな女性ならではの楽しみはいつどんな時代であっても忘れてはならない感性ですね。(守屋)

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裏の裏は表

BEAUTIFUL SHOES / MIDDLECUT SIDEGORE / 57,000+tax

生地にはいわゆる表と裏が存在します。織物では織り柄が表現される側が表とされますが、敢えてそれを裏返して洋服の表地として用いられることもあります。当たり前の話をしますが、革にももちろん表と裏があり、革はその用途によってどちらの面が表として使用されることも往々にしてあります。磨き上げられた銀面が美しいシューズもあれば、毛羽の立った表情が趣深いジャケットも存在します。

あるいは洋服に関しては、生地の表側を洋服の裏地として使うこともあります。キュプラがコートの裏地として用いられていることが多いですがそれは一つの例えとして挙げられるでしょう。その裏地として多用される素材を、敢えて表に出してもいいのではないか、と考えてその素材を主役に洋服を作っていたデザイナーがいました。裏を表に出すという逆転の発想は、他にも表裏を返してジャケットを羽織るといった着こなしにおける段階でも試されていたのは記憶に新しいのではないでしょうか。

靴はもちろん足を入れる入り口があり、地面を踏み締める底があるので上下を返して履くことは不可能ではありますが、裏の裏は表という理論で考えるならば、裏に「らしさ」という表情があってももちろんおかしくはない話でしょう。

昔とある器の作家さんが教えてくれたのですが、ある器が素晴らしい出来であるか否か、その作り手の技術が優れているか否かは、器の裏側を見て判断することもあるのだそうです。普通であれば見えないところに気を配る、自らの表情を映し出すということは、「表の顔だけで判断されない真髄」のようなものを留めておきたい作り手の強い意志のようにも感じられます。(守屋)

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静かに心を震わせるもの

molli / WIDE CARDIGAN IN ZIGZAG KNIT / 52,000+tax

クラフトマンシップ、手触り感、唯一無二の表情、手工芸などもっともらしい言葉を並べてものの持つ歪さや希少性にスポットがあてられる機会が増えました。トレンドワードのように簡単に吐き捨てられてゆくその言葉が形容するものそれ自体は、一方でその正しい価値を持っているのかさえ危ういものが増えているように感じます。

手工芸性を伴うものに求められる一方的なイメージはおそらく多少なりとも歪さを持ち、少なからずの人の手の痕跡を有するものではないでしょうか。この機械製品にあふれる市場の中でそのような唯一無二性を見出した消費者が、それらに価値を見出し、高い評価を与えているのでしょう。勿論、希少性そのものは価値であることに異論はありません。数が少ないからこそ競争原理は働きますし、価値は高まります。

その一方で、寸分狂わずに1mm幅程度の縫代を残して縫製されたシャツの裾には、ある意味では人の手の痕跡は勿論ないわけですが、そこに消費者は感銘を受けないのでしょうか。価値を見出さないのでしょうか。その縫製が可能な生産背景も同様に、希少性を伴うもののはずなのです。

偽物の手の温もり感や、プロではないものの作る歪さも時として心を温める素敵なものとなりますが、歪みなく淀みなく、無駄のない絶対的技術力を伴って作り出される精緻な美しい編み地にこそ、私の心は静かに、楽しく震えます。(守屋)

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どこかの香り

Barbour for BLOOM&BRANCH / Cruiser Jacket - Black / 66,000+tax

紅葉などの色彩変化によって得られる情報は非常に直接的で受動的なものであり、目が見える限りの範囲においては否が応でもそれらの情報は言葉通り、私たちの眼前に姿を表します。一方で、金木犀の香りが街中に広がって秋の訪れを知らせてくれるように、香りというものはそれらが持つ情報をとても控えめに伝えてくれるものです。無意識的にそれらの情報をキャッチできる人もいれば、意識しようともその香りが個人の記憶の中に存在するものでなければ全く何の情報すら持ち得ないものにもなるでしょう。

土の香りやハーブの香り、食べ物の香り、様々なもので記憶は呼び起こされ、それがある特定の季節を認識させるスイッチとなることもあれば、ある特定の場所を想起させるきっかけにもなり得るものが香りです。あるいは直接嗅覚に訴えかけるものでなかったとしても、「色香」という言葉のように、視覚情報とがスイッチとなって、色彩がある特定の香り=特定の場所や人や時間を想起させるものとなる場合もあるのでしょう。その場合香りというのは香りがもたらす誰かの記憶の結果の方を指し示す言葉へと変化します。

Barbourというブランドの持つ固有のチェック柄や代表的なコーデュロイの襟がついたジャケットをみたときに、「イギリス」という国を想起することがある人は多いと思いますが、その想起される「イギリス」というのは十人十色違う景色や大きさや色彩を持つイギリスなのでしょう。誰かにとっては昔過ごしたことのある懐かしい「イギリス」であり、またある人にとってはイギリス紳士なるものが存在する遠い国であり、誰かにとっては歴史的建造物の存在するクラシックな街並みが存在する憧れの土地であるのかもしれません。

そしてとても興味深いことに、このジャケットの出自はもちろんイギリスであるに違いないのですが要素としてアメリカを含んでおり、日本という国で作られているはずなのに、しっかりとイギリスの色香を纏っているということです。極々個人的な意見になりますが、アメリカの色香をいい意味で消して、イギリスという香りを丁寧に纏っているような気がします。(守屋)

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優れたDJが必要

OLDMAN'S TAILOR / Suede Work Jacket - Camel / 98,000+tax

この世に存在する商品の中に、必要不可欠なデザインを探そうとしたとき、果たしてどれほどものを見つけることができるでしょうか。市場に溢れすぎた商品の中で人から選ばれるためには、おそらく目立つデザインを加飾することが手っ取り早い方法として取られることが多く、特に日本では利便性という言葉が強固な価値を持っているように思います。

良い塩梅のセンスに「利便性」が付加された途端、それは「ありふれたもの」から「気が利いたもの」という付加価値を伴った存在に格上げされることがしばしばあります。その結果、本来必要がなかったものにまで「便利」を付加するために不要なデザインが備わってしまった、というものを散見します。もちろん「便利」は一例にすぎず、過不足なく仕上がっていたものに「トレンド」が付加されていたり「豪華」が付加されていたりするのですが、果たしてその物が存在するためにそのデザインは本当に必要だったのかと思わず首を傾げた経験は決して少なくありません。

デザインが付加された経緯を遡ればその過不足は測量可能であり、その経緯は、ものが生み出される目的を振り返れば必要か否かは明瞭です。「10月に売れるスウェットを作るため」、「20,000円の価格を通すため」という目的のために採用された吊り編機を使用した生産背景やディティールは、そこに存在するものに対しては本当に必要だったのでしょうか。「20,000円で販売する、その値段ででき得る最大限の生産背景を探す」という経緯を辿って選ばれた吊り編機という選択とは雲泥の差があるはずなのです。

結局のところ、付加価値をつけるために出来たデザインは不必要であり、付加価値というのはものやサービスに対して事後的に付与されるからこそ付加価値なのであり、それを目的とした時点で論理は破綻しています。やりたいこと、目指したいことに対して最大限に尽くせる方法を模索する結果に出来たものに対して、それを受け取る人がそこに「付加価値」を初めて見つけるに過ぎないのです。

誰かに必要とされるだろうものをこの世に生み出す、そこにおいて、最良の方法を最大限探し尽くしてものを作ること、デザインすることが本来真っ当なものづくりの経緯であったはずなのです。良い素材、良い生産背景は今の時代はきっとひと昔に比べて数多存在するからこそ、それらを駆使することができる力を持った人、それを良いバランス力で整える力を持った人が必要なのでしょう。そしてそれを、商売的感覚からは一歩離れて、純粋な目で良し悪しを見つめられる人が必要です。(守屋)

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能動的な受け手の存在こそ全て

m's braque / CHINA JACKET DEADSTOCK HOMESPAN / 60,000+tax

メンズ・ウィメンズディレクターがそれぞれの視点でものについて言葉を綴るJOURNALという新しいコンテンツがBLOOM&BRANCHのHP内にてスタートしております。9月にリリースとなったm's braqueとの別注アイテムやOLDMAN'S TAILORとの別注アイテムについて、制作における思いを語った回も公開となりました。

m's braque / 3TUCK BELTED TROUSERS DEADSTOCK WOOL KERSEY / 38,000+tax

オウンドメディアの重要性が叫ばれるようになって久しく、今では多くの個人やブランド、企業が自身のYouTubeチャンネルを開設しており、商品にまつわるストーリーや、スタイリング提案を流して有益な情報を提供しているチャンネルが相当数増えたように思います。そんな中で、BLOOM&BRANCHでは「BLOOM&BRANCHらしさ」の表現として、動画制作ではなく静止画を含むJOURNALというページにて言葉を綴る方法を選択したわけです。

良くも悪くも、文章だけでは伝えられないことというのは洋服において本当にたくさんあります。手触り、シルエット、ドレープの表情などはいくら精度の高い言葉や写真をもってしても表現し切ることは困難を極めます。そこまでして、JOURNALというページで、BLOOM&BRANCHらしさや考えていることを伝えようとした意味とはどこにあるのか、私的な見解を述べるとするならば、おそらく情報を受動的ではなく、能動的に受け取ってもらいたいという思いが強かったからなのではないでしょうか。

テレビも映画も、動画チャンネルも、映像というのは画面を眺めていると受け手の心持ちやペースや感情の変化をもろともせず決まった速度で流れ続け、そこに詰め込まれた情報は私たちの目の中に否が応でも飛び込んでくるものです。文章となった言葉達は、私たち読み手が読もうとしなければ、読み進めなければ、情報は自動的に入ってくるものではありません。「らしさ」というのは言葉にすると平易で簡単な言葉になりますが、それをいざ表現するべき時には、多角的な意味性を伴った表現というのが必要になるのでしょう。その包括的な表現として、BLOOM&BRANCH JOURNALというものが誕生したのだと思います。こちらの別注アイテムについては、もちろん私の言葉でなく、ウィメンズディレクターの中出の言葉にこそ真実があるものです。是非ご一読ください。(守屋)

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刹那生の反対側に位置するもの

NICENESS / ROYAL

例えば食事を楽しむ場合、それは味わいを楽しむものであるのはもちろんのこと、そこから漂う香りなどの嗅覚情報、給される皿やしつらえなどの視覚情報も伴ってその食事の「美味しさ」は決まってくるのではないでしょうか。本来の目的である「美味しいものを食べる」ということの周りにある様々な体験情報によってその美味しさは二倍にも三倍にも膨れ上がります。

それが洋服の場合は、真の目的はもちろん身に纏うこと、装うことであるので自分が洋服を着たときの見た目の格好良さや落ち着き具合というのが最終的には洋服を所有するときの大きな価値となるでしょう。ではその周りにある情報、纏うことの価値を増進させる情報とは何なのでしょう。

洋服では嗅覚や味覚の体験はない反面、手触りや着心地といった触覚が大切な要素になります。やはり肌に触れたとき、身に纏ったときの心地良さはそうでないときと比べて大きな価値、というよりは絶対的に譲ることのできない不可欠要素となるはずです。そしてもう一つ、食事はその席だけで消えてしまうライブパフォーマンス的な価値を持ちますが洋服はそれを何年、何十年と長く着ることで価値を増進させていくという特徴もあると思います。

家や車にも同じことが言えますが、真鍮の表札が古美色に変化していく経年や、漆喰の壁が深みを増していく変化の様はライブパフォーマンスとしての一瞬の価値体験にはないものがあります。そのような経年の価値というものは、それを体現している人や店で直接体験することも可能ですし、それを持ち帰って、自分だけのご褒美のようにこっそりと味わうことも叶います。それもまた醍醐味ですね。(守屋)

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上手とは何か

STUDIO KETTLE / The Pint Bag Waxed Cotton / 16,000+tax

絵が上手、下手というのは何を基準に判断しているのでしょうか。「上手い絵」と「価値ある絵」はイコールの関係にあるのでしょうか。「下手な絵」でも「価値ある絵」とは存在するでしょうか。このキャンバスに描かれた絵を見ても、「上手」かどうかを判断出来る人は決して多いとは思いませんが、例えば多くの人はきっと「素敵だ」などのポジティブな感情を抱くのではないでしょうか。

絵画のみならず、音楽も言葉も料理も造作も、上手いと言われる人がきっとそれにまつわる職業に就き、対価を受け取れるような立場にあるのでしょうから、そんな方々が提供するものがきっと世の中では「上手い」とされ、「価値がある」とされているのだろうと思います。ただ、「上手い」以外のものにも私たちは所々で価値を見出し、それらを欲する場面があるはずなのです。

STUDIO KETTLE / The Pint Bag Painted Canvas / 18,000+tax

レストランの食事が絶品に美味しいことはもちろんそれを作るシェフが料理上手だからなのですが、たまに実家に帰って食べる絶品ではないけれど懐かしい母の味の料理は、決して「上手」ではないけれど「価値があるもの」として、自らが求めていることはないでしょうか。決して上手ではない子供の絵が、誰かの心を震わせることがあるのも同様に、「上手」と「価値がある」ことがイコールでつながらない例えの一つにあげられます。

ではどうして、下手でも価値があるものが生み出されるのかという疑問に対しては、個人的にはそこに愛情があるかどうかに尽きるように思います。母の料理の持つ愛情の無限大さ、子供が絵を描くことが好きで、絵を描きたいという純真無垢な行動への愛情は、時として何よりもの価値を生み出すのだと思います。好きこそものの上手なれではないですが、日々のものごとに対して、どれだけ愛情を持って接するかによってそこから生まれる影響の輪は変化していくでしょう。(守屋)

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高揚感も安心感も、そして希望も胸の中に

R.ALAGAN / VINE FICKLE BANGLE / 40,000+tax
R.ALAGAN / FICKLE VINE RING / silver 30,000+tax  gold 33,000+tax

金や銀が富の象徴だとするならば、それはつまり装飾することに他ならず、衣服を身に纏うという不可欠性を伴うことの意味とは少し外れたところに、ジュエリーは存在していたのだと思います。

その存在意義を過去のものとして認識したことの理由は、もちろん現在はそういった装飾的な意味合いのみに留まっていないと思っているからで、例えばお守りとしてジュエリーを手元においていたり、そこに誓いや願いを込めていたりと精神的な拠り所とする人が現代においてはすごく多いような気がしています。

殊更、近頃は衣服の意味合いすらも変わり始めていて、TPOにとらわれずに、派手でなく着飾る必要すらもないけれどただ単純に自分が快適で心地よくあれるもの、本当に素材の良いシンプルな物などを長く着るという考え方に傾倒する人も多いかと思います。そうして変化した衣服の存在意義に華を添える存在としても、ジュエリーの価値はあるのでしょう。

決して着飾るということだけでなく、例えば服を纏うことによる心の高揚感を捨てて、服を纏うことには安心感を求めたならば、その高揚感を担うものはきっとジュエリーになるのでしょう。心地よい服を身にまとい、腕や耳に決して派手ではない飾り物を施して、そこに未来への微かな希望や願いを込めて、そっとお守りとして心の中に閉じ込めておくものとして。(守屋)

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