JOURNAL

真実だけを伝える店でありたい

BLOOM&BRANCHがお届けするJOURNALでは、私たちが大切にしているスタイルや丁寧にピックアップしたアイテムについてご紹介しながら、その深部にある考え方や価値基準、“BLOOM&BRANCHらしさ”をお伝えしていきます。ディレクターの柿本と中出が、そんなコンテンツを立ち上げた経緯や、今想うこと、日々のことについて語り合いました。

 

 

 

店舗という空間の大切さ

 

 

“BLOOM&BRANCHらしさ”を改めて紐解いていくような試みを、何故このタイミングで始動させたのでしょうか。

 

「今年に入って新しく京都、横浜に店舗を構えたことが大きな理由ですね。初めて店にご来店下さるお客様や、『この店はなんだろう』と興味を持って下さるお客様が増える中で、自分たちがやりたいことや表現したいことをもっとしっかり伝えていかなければと強く感じるようになりました。そういった、自分たちが大切にしていること、伝えたいことというのは表面的なことにとどまらず、見えない部分、内側の部分に大きな比重があるので、じゃあそれをどうしたら的確に伝えられるかと考えたときに、きちんと言葉にしてじっくり読んでもらえるものであった方がいいなと思い、このコンテンツを新しく公開しようということになりました」(柿本)

 

「ECの重要性や市場規模が大きく膨らむこの時代に店舗を新しく構えるということに、経済的なメリットを見出すことは難しいと思いますが、そんなお店にこそ、私たちの大切にしているものや価値観が詰め込まれていると思っています」(中出)

 

「そうですね。まず5月にオープンした京都店は、僕たちにとっては初めて20坪強という小さな店舗になりました。小さな面積の中では表現できることも限られてくるので、コンセプトからしっかり考えて表現する必要がありました。京都という街は古いものをしっかり残していく文化が根付いていたり、地域密着型の文化があったりとても特殊な場所だと思うので、商品に関しては僕たちが作りたいもの、時代に左右されない上質でシンプルなものをしっかり提案できるよう、あえてエッジの効いたものをなくして安心感や温もり感の感じられるものを仕入れました。店内には僕たちの店の中では初めてフローリングの床を採用し、天井から足元にかけては古材をどしりと立てて、古い日本家屋に見るような柱を想起させる内装を取り入れることで、シンプルな商品をより安心感を持って手にとってもらえるように工夫しました」(柿本)

 

 

「横浜店は、与えられたL字型の区画が設計のベースになりました。僕自身も感じることですが、こういった作りのお店は中に入ることを躊躇してしまうし、奥の方にはますます入りづらく感じてしまうんですよね。それを打開して、心地良く店内を回遊してもらえるよう、壁面、什器、ラック全てにアールを取り入れることで突き当たり感を無くしました。こうすることで店内に入った際に体が自然にカーブに沿って動いていき、気がついたら店内をぐるりと一周してしまっているというような感覚を体感できます。マテリアルに関しては、横浜らしさということで分かりやすく赤煉瓦から着想し、これまでの店舗で用いたことがなかった煉瓦という素材を採用しました。象徴的な塔が店舗の中心に据えてあり、そこから煉瓦がブワーっと床一面に放射状に広がっていく様子は、ワンマテリアルでシンプルながら他の店舗にはない全く新しい個性になったなと思います。

他に拘ったところは商品の見え方ですね。僕たちの主力の取り扱いブランドの多くは素材をとにかく大切にしていて、シンプルなデザインにも関わらず綺麗で上品な見え方のものが多いです。その見え方の素敵さをきちんと表現するために、商品を置くという陳列方法は最小限にして、ハンガーにかけて商品を陳列することをメインにしました。そのときに、ちょっと店内に洋服が浮遊しているような見え方の方が自分たちの店には相性がいいなと前々から感じていたので、ラックの位置を極端に高くする一方でハンガーは柄の部分を長く取り、ラックと洋服の距離を開けることで浮いているような見せ方を実現しました。肩傾斜も変えられるハンガーも今回特注しました。個人的に、なで肩の体型の人の方が雰囲気よく洋服を着こなせると思っているので、そういった人が着ている雰囲気を表現したかったんです」(柿本)

 

 

 

 

真実があること

 

 

オンラインでももちろんありとあらゆる洋服を購入できる時代に、お客様にとっては、ここまで作り込まれた店舗でお買い物をすることで得られる価値や経験というのはどんなところにあるのでしょう。

 

「僕自身が考える理想の洋服屋は、空間と人が掛け合わさることで初めて実現すると思っています。BLOOM&BRANCHの場合、空間に関しては現在ある4店舗すべてが違ったコンセプトを持っているので、どの店を訪れても全く別の店に訪れたような体験をしてもらえるはずです。人に関しては、やはり人に接客してもらい、商品に対して説明を受けてものを買うというプロセスが買い物の醍醐味なので、そこにどれだけ真実の言葉があるかというのがとても大事だと思っています。僕自身も、接客してもらって洋服を買うときに、『この人は本心で言っているのかな?』と勘繰ってしまうことが多々あります。どれだけ商売っ気なく本気なんだろうと。本心で語れる人は、本気で服が好きな人に間違いないですよね。とにかく好きで仕方がなくて、好きなものを好きな人に届けたいという気持ちが強烈にある、そんな人だと思っています。そういうスタッフが集結した空間で商品の説明を受けて買い物ができることは、オンラインでは決して提供できない体験であり価値だろうと思っています」(柿本)

 

「BLOOM&BRANCHのスタッフは、他のアパレルショップで接客経験を積んできたスタッフがほとんどですが、これまでのお店には実は自分が好きなものが置いていないとか、売るために作られたものを売らなきゃいけないとか、洋服が好きだからこそ感じる歯痒さみたいなものを体験してきたスタッフが少なからずいます。その反動で、本当に好きなものや本当に良いと共感できるものを売りたいと思ってBLOOM&BRANCHで働くことを選んでくれたスタッフも多いです。そんな彼らの口から出る『これはすごくいいですよ』という言葉には嘘がないですよね。だから、真実があるということがお店の大きな価値なんだと、私も思います」(中出)

 

 

 

 

時間をかけて見極める

 

 

「それぞれの店舗で個性を出すということで言えば、取り扱うブランドは店舗ごとにかなり細分化しています。全店共通展開のメインブランドはBLOOM&BRANCHらしさの軸となる部分なのでそこは大切にしながら、例えば青山店と東京店では全体の8割くらいは取り扱いブランドが違っています」(柿本)

 

「ウィメンズも同様に7割くらいは違うブランドを各店舗で展開しています。ただ、単純にたくさんのブランドを取り扱うという意味では決してなくて、BLOOM&BRANCHらしさを表現できることがあくまで大前提にあります。ウィメンズは特にその軸が見えづらくならないよう、全店舗共通の取り扱いブランドはメンズよりは多いかもしれません。青山店は、これまで様々な洋服を着られてきた経験がある方にも選んでいただきたいものや、素材の作り込みが素晴らしくマイビンテージとして育てていけるような長く愛せるものを取り扱っています。一方で東京店は幅広い年代のお客様にもご利用いただいているということもあり、より都会的で、今の私の気分も反映されたものをセレクトしています。新店舗の京都店は青山店をぎゅっと凝縮したような店にしており、横浜店は東京店をベースに、ややトラッドやクラシックな要素を取り入れています」(中出)

 

 

BLOOM&BRANCHらしさに沿うブランドを見つけることもなかなかに難しいものであるように感じますが、新しく取り扱うブランドを決定する時の判断基準はどこにあるのでしょうか。

 

「1回目に行った展示会ではデザイナーとしっかり話ができなかったり、ブランドの考えを僕らが理解できなかったりすることが割とあって、それでも気になって2回、3回と展示会に足を運んで色々話を聞くうちに、嘘のない言葉で語られるブランドのアイデンティティーが理解できたり、いいなと思える瞬間があります。最初はあまり良く見えなかったのに何度か見るうちに作り手がどんな思いで制作しているのかという過程も見えたりするのでますますいいなと思えてくるとか。そうなったときに初めて、取り扱いたいですとお願いしたり、もちろん断られてしまうこともあるけれど何度もお願いして取り扱いが叶ったりするブランドが多いですかね。考えに共感できないと、結局は長くお付き合いすることができなくなってしまうしね」(柿本)

 

「ウィメンズは、メンズに比べより一層トレンドによって一気に広がっていくブランドが多いなと思います。だからこそ、トレンドとの連動性は全く無視してでも、しっかりとものづくりをしているブランドかどうかが私にとっては重要です。私も1回見ただけの展示会では判断できないこともたまにあるので、何度も展示会に行ったり、あるいは数シーズンにかけて少しずつ取り扱い数を増やしていったり、じっくり時間をかけながら本当に良いものかどうかを見極めています」(中出)

 

「結局自分たちが着たいかどうかというのも、本当に重要な判断基準になりますよね。ただ、自分が着たいなと感じるブランドの商品であっても実際は自分の体型には合わないものも多いので、そういった場合に僕は、取り扱う予定の店の店長やスタッフの顔を思い浮かべて、彼らはどう着るかなとか、どのスタッフが好んでくれそうだなというのを考えて仕入れの参考にしたりしています」(柿本)

 

「私ももちろん自分が着たいなと思うものを仕入れていますが、もう少しお客様の顔も思い浮かべながら仕入れしていますかね。顧客様だと何シーズンも前のものを気に入って着てくださっていて、素材が良かったからもっと欲しいとお声がけしてくださる方もいらっしゃいます。そういったお客様の意見は、参考にさせていただいていることが多いです。私たちの取り扱っている服は、一瞬の見た目のキャッチーさよりも、長く着ることでじわじわと素材の良さや経年の美しさが分かったりするものが多いと思うので、ワンシーズンでたくさん購入いただくよりも、何シーズンにもかけてゆっくり良いものを集めてくださる方がいることは、伝えたいことが伝わっているのかなと感じるとともに、とてもありがたいことだなと思います」(中出)

 

 

 

 

女性らしさという
固定概念にとらわれない

 

 

「前職ではメンズが主力のショップのバイヤーをしていたこともあり、スタッフももちろん男性が多い環境でした。そんな中で経年変化をすごく重要な価値基準として持つスタッフが多かったこと、日々実験のようなことをして表情が変化していく洋服を着て楽しんでいる姿を目の当たりにしたことが、今思うととても大きな経験だったのかもしれません。風合いが変わっていったり形が変わっていったり、そういった変化のある洋服を見ているととても楽しいと思ったし興味深いなと思いました。リジッドのデニムは綺麗で素敵ですが、洗い込んで色が落ちたデニムの表情が面白いと思うかどうかみたいな感覚ですよね。昔は私もそうでしたが、女性の多くは“服を着た自分がどう見えるか”の方を重要視すると思います。その両者が共存するスタイルが、とてもBLOOM&BRANCHらしいし、素敵な女性像だなと思います」(中出)

 

 

「例えば取り扱っているブランドの中ではYLÈVE、R&D.M.Co-などのブランドはシルエットには女性らしさがありながら、素材が素晴らしく美しい経年変化をするものが多いです。一つのもの自体が、女性らしさや男性らしさに偏らないバランスを持ち合わせているものもこの2つのブランドに限らずたくさんありますし、例えば女性がメンズアイテムを着こなすと独特の雰囲気が出ますよね。そういったときに少しジュエリーを合わせてみたくなったり、足元はヒールのある靴を履いてみたり、反対にドレッシーな服に端正なレザーシューズを合わせたりなど、自分自身の着こなしでミックス感を楽しみたいなと、歳を重ねて私自身が今感じています。女性らしさ、男性らしさという区別にとらわれないバランスは難しいですが、それこそBLOOM&BRANCHらしさだなと思っています」(中出)

 

 

 

好きなことを自由に楽しむ

 

 

最後に、二人の日常におけるインスピレーション源や今気になっているブランドについて聞きました。

 

「私は休みの日にはほぼ毎回、どこかの美術館や展覧会に出かけています。特にこれといって観たい展示がなかったとしても、美術館それ自体の建築を見たり、街行く人のなかでお洒落だなと思う人を無意識に見て着こなしの参考にしたり、外に出ることで新しい考えが湧いてくることがあるのかなと思っています。何よりリフレッシュになりますよね」(中出)

 

「自分たちの世代だと、洋服が好きな人はずっと洋服のことだけ考えていてそれ以外のことに興味もなければお金も使わない人がほとんどでしたが、今は服が好きな人でも一方でカメラに興味があったり音楽の分野を経験していたり、洋服以外の分野を経験している人も少なくないですよね。他分野で経験を積んだ人が改めてアパレル業界に入ってくる時には、洋服を諦めきれないという並々ならぬ熱意を持って入ってくるし、やはり他分野を経験しているからこその振り幅の広さがあったりと、洋服以外のことに興味を持つことの重要性が増してきているようにも思いますね。僕はずっとアパレル業界だし、洋服のことをずっと考えている人なので、一つのことに没入している人の才能に惹かれることがあって、今はHERILLというブランドがとても面白いと思っています。秋冬はカシミヤばかりのコレクションを展開しているんですが、長くアパレルに携わった自分でさえこれまで着たことがないようなカシミヤアイテムがあったりと、本当に好きなことをストイックに、値段も気にせず、やりたいようにやっている姿にとても惹かれます」(柿本)

 

「私はこの数シーズンcantateのアイテムは必ず何か購入していますね。とても特徴のあるブランドで、メンズとウィメンズの世界観が全く違うんです。ユニセックスのブランドでは、メンズとウィメンズで共通の世界観を持っていたり、あるいは共通のアイテムをサイズ違いで展開しているケースは多々あると思いますが、cantateはデザイナーの好きな女性像というのがウィメンズのコレクションに反映されているような気がしてとてもおもしろいですよ。また、cantateは他のブランドが作らないような生地を作っている点にも魅力を感じます。cantateのコートを着て先シーズンパリ出張にいった時にはたくさんの人に褒められました。この時着ていたコートはソラーロという生地で作られていて、着こむほどに身体になじみくたっとしてくるので、 ビンテージのコート?と聞かれるような風合いなんです。他にも、着込むごとに光沢が増していく定番のコットンのシャツは、柔かな肌触りなのにノーアイロンでもシワが気にならずに着られるなんとも不思議な生地で、着てみたい!と思わせてくれるものがたくさんあります。この秋冬も展開がありますので是非注目していただけたら嬉しいです」(中出)

 

ひと目見て、一度手に触れただけでは分からないものの良さを見極めながら、自分たちが持つ感性を頼りにスタイルを構築していくことは、高度な技術を要するものではなく、トレンドや先入観を排して自分に正直にあることこそが大切なのかもしれません。

 

 

 

柿本 陽平(BLOOM&BRANCHディレクター)
2014年3月にBLOOM&BRANCHを立ち上げる。COBI COFFEEやTHE BAR by Brift Hなどのショップインショップの立案をはじめとするショップのコンセプトワークからPhlannèl、KIJIなどの自社開発ブランドの企画も先導する。その他、国内外のメンズアイテムやうつわの仕入れ、別注アイテムの企画など取り扱い商品にも広く関わる。

 

中出 由佳(BLOOM&BRANCH ウィメンズディレクター)
2016年に入社し、バイヤーとしてウィメンズ商品の仕入れを担当。その後ウィメンズ商品企画やKIJIの商品企画を担当しながら、現在はウィメンズディレクターとしてウィメンズ分野を統括する。

 

 

 

photo : Ryuhei Komura

text : Yukina Moriya