JOURNAL

アメリカとイギリス
国境を超えて、いいもの(前編)
- Barbour

「このFILSON、めちゃくちゃ重いですね。結構古いものですか?」
「いや、当時の新品を買ったので、そんなに古くはないんです。2002年くらいの当時のものですね。とりあえず最初べたべたがすごくてとにかく重くて、硬くて、着るのも大変でした。久しぶりに引っ張り出しましたけど、その時のレシートとかポケットに入ってないか今さらひやひやしてます。」

 

そんな会話から始まった今回のJOURNALでは、日本でBarbourの販売を行うスープリームス インコーポレーテッドの佐々木悠平さんをお招きして、ディレクターの柿本・中出とともに、10月3日にリリースとなる別注アイテムについてお話しいただきました。

 

 

 

 

20歳の自分が出会ったFILSONと、
今の自分が欲しいBarbour

 

 

「BarbourのアイテムはBLOOM&BRANCHではしばらく取り扱いをしていなかったのですが、数シーズン前から久しぶりに自分たちが着たい気分になってきて、せっかく取り扱いを始めるのであれば別注の商品からスタートするのもいいねって中出さんと話していたんです。でも当時はまだ店舗も2店舗しかなかったし、やりたかったことと実際に出来ることのギャップもあったりしてずっと企画を温めていました。ここにきてようやく、たくさんのわがままを聞いてもらいながら実現しました」(柿本)

 

「最初は、既存の“BURGHLEY(バーレイ)”という形をベースに、それを少し短くリデザインして柿本さんが思い入れのあるFILSONの雰囲気を反映して…という流れで1stサンプルをあげましたよね。そうしたらなんだかしっくりこないという話になりましたね」(佐々木)

 

「はい、企画を進行する時点で、柿本さんの頭の中にはFILSONのジャケットという大きなイメージが既にあったので、その上でどのBarbourのモデルをベースにするか、その選定から始めました。丈が長い“BURGHLEY”をベースにしてコートのようなものを作ろうと思ってスタートしたのですが、ギミックの効いたこのデザインとどうしても上手くバランスが取れず、1stサンプルを本当に様々な丈バランスに調整しながら試してみて、結局ベースとなったジャケットに近いくらい短めの丈感に落ち着きました。不安でしたが、仕上がりの顔立ちの良さにほっとしました」(中出)

 

そもそも今回の企画は、柿本自身が20歳の頃に買ったというFILSONのジャケットが発端となっているそうですが、どんな出会いがあり、そこからどんな経緯を経て今に至ったのでしょう。

 

「20歳の頃に買ったこのFILSONのジャケットが今回の始まりです。僕の地元は熊本なんですが、そこに50歳くらいのものすごい格好良いオーナーがやっている老舗のアメカジショップが当時あって。そこである日僕がオイルドジャケットを買いたいと話をしたら、オイルドジャケットといえばFILSONかBarbourだって話をされたんです。その時自分の心の中ではBarbourが欲しいなと思ってはいたんですがその店にはBarbourは置いておらず、近くにあるちょっと良いセレクトショップで取り扱いがありました。そんな状況もあり、結局どれを買おうか悩んでいたら、Barbourはみんな持ってるし誰もが通る道だからこそ、FILSONからいった方が格好良いぞ、ってさらっと言われてしまって、その言葉通り当時の僕はこのFILSONのジャケットを買いました」(柿本)

 

「買ってから長野にしばらく住んでいたのでそこで2年くらいは、これどうやって着たら良いんだろうっていうくらい硬くて重いこのジャケットを、洗ったりしながらもとにかく沢山着ました。その3年後くらいにはBarbourの“BEDALE(ビデイル)”も買ったりしているんですが、結局僕にとっての始まりであるこのFILSONへの思い入れが、今でも一番大きいです。その経験から僕にとってオイルドジャケットの二大ブランドといえばFILSONとBarbourで。これをミックスしてみたら面白いかもしれないな、という思いがありました」。ここから掘り下げてはいきつつも、結局今回は私物のFILSONのジャケットからはデザインソースを採用してはいないと柿本は続けます。

 

「別にこのFILSONのジャケットはベーシックなハンティングの仕様であって、おそらくFILSON以外にも老舗のアメリカブランドから出ていたりもするはずです。だからこれをそのままデザインソースとして使ってもあまり面白くないかなと思い、だったらFILSONのアイテムの中でも誰もが知っている“ダブルマッキーノ・クルーザー”とBarbourをミックスしていこうと考えて進めていきました。 “BURGHLEY”をベースにしたら、ダブルマッキーノのデザインのロングコートが出来るんじゃないか、と思ってこのモデルをベースにしてみようとしたんですよね」(柿本)

 

「そうでしたね。ただ、斬新すぎてしまい結局短くなりましたね。このヨークのデザインをコートの着丈に上手く落とし込むことがすごく難しかったです。ただ、仕上がりはすごく良く仕上がったと思います。僕自身は、Barbourらしさが完全に無くなってしまうことが懸念でしたが、前立てや襟、ジップ、ボタン、更には裏地ももちろんタータンですし、結構Barbourらしさが活きましたね。襟は、“BURGHLEY”のものだと大きすぎるので少し調整したんですよね」(佐々木)

 

「今回はユニセックスモデルということもあって、よりBarbourらしさが際立つ “BEDALE”の襟型に変更しました。最初はデタッチャブルにしたいとかボアを付けてみたいとか、色々試行錯誤もしましたが、Barbourならではのコーデュロイの襟に落ち着きましたね。襟色も、柿本さんの私物のFILSONのように、生地の色と変化をつけようかなとも話したのですが、BLOOM&BRANCHで提案したいのはこうじゃないね、という話になり生地と同色の襟を探して付けていただきました」(中出)

 

 

 

先人の叡智を尊重しながら
新しいものを生み出す

 

 

着丈の長い“BURGHLEY“とのハイブリッドデザインが困難を極めたという特徴的なヨークデザインは、最後の最後まで調整して、どんな体型の人が着ても収まりが良くなるバランスを見極めていったそうです。

 

「ダブルマッキーノの最大の特徴がこの袖から身頃まで繋がったヨークのデザインなのですが、肩に切り替えもなければ袖は二重になった仕様で、着る人によって肩のシルエットが大きく出すぎてしまったり、コンパクトにおさめようとすると可動域が制限されて着づらさが起きたりと、とにかく調整が難しかったです。1stサンプルから2ndサンプルも、2ndサンプルからその先も、細かく細かく修正しました。自分たちはすごく大変な思いでしたが、こういった難しい別注制作はよくされているのですか?」(中出)

 

「多くの別注アイテムはやはりベースのデザインがあって、そこから生地を変えたりパーツを変えたり、中にはデザインを修正するものもありますが、ここまで変更点が多かったものはあまりないかもしれないです。あとは袖が完全に二重になっていたりと特徴的な作りなので難易度は高かったと思います」(佐々木)

 

「生地を二重にするのはハンティングシーンで考えれば補強の意味だったり、ワックスの素材と同様に防水を考えてとか、雨を防ぐためにといった考えのもと作っていたと思うんですが、当時としては結構画期的なデザインだったでしょうね。フランス軍のコートでも古いものには同様の考えで肩に傘みたいなデザインを配したものも見かけたことがあります」(柿本)

 

「Barbourでもフーデッドのジャケットで野歩き用のデザインの“DURHAM (ダーラム)”というのがあって、それも同様の考えで肩の部分だけ生地が二重になっているんです。あとは“STOCKMAN COAT(ストックマンコート)”というのも同様ですね。素材でどうにか出来る時代ではないので、ディティールでどうカバーするか、試行錯誤していた時代の名残りですね」(佐々木)

 

「今回はそのディティールを活かしながらも素材をワックスにしないというのもポイントです。透湿防水のナイロンを使っていて、クラシックデザインでありながら、それを現代の雨具として落とし込むという考えです。そもそもですが、アメリカベースのデザインで別注をすることはこれまでにありましたか?」(柿本)

 

「声を大にしてそれをやったことはなかったと思います(笑)抵抗はなかったですが、先ほども言ったように、Barbourらしさが無くなってしまうのは懸念していました。仕上がりを見てみたらそこは全く問題なく、Barbourのジャケットとして見えるものになりましたし、ヨークもきれいにおさまっていて安心しました」(佐々木)

 

「このデザインは、クラシックなものとか古いものが好きな人が見ると、かなり斬新に感じるでしょうね。どこを取っても気になるギミックが隠れているような気がします。分かる人が見れば、Barbourでは見たことがないディティールが隠れていることにすぐ気がつくはず、なのにブランドネームはもちろん、全体の顔立ちもちゃんとBarbourですからね」(柿本)

 

 

 

photo : Ryuhei Komura

text : Yukina Moriya