JOURNAL

My Standard Items

スタンダードアイテムや定番品というのは、誰かが示してくれたものでもなければ、トレンドから拾い上げたものでもなく、自分のワードローブの中で必然的に生まれ、自らが選んだものに他なりません。今回はディレクター二人が自分自身の眼を信じて選んだ「マイ・スタンダードアイテム」を通して、BLOOM&BRANCHに宿るフィロソフィーや、自分らしさを生み出す着こなし、もの選びのヒントを探ります。
まずはウィメンズディレクターの中出が選ぶ「マイ・スタンダードアイテム」のご紹介です。

 

 

 

KIJIのデニム

 

 

KOGANE(left)・MOEGI(center)・SHIMA(right) / KIJI

 

BLOOM&BRANCHのバイイング業務をする傍ら、KIJIのデザイン業務を兼任する中出が考える、スタンダードなデニムとは、KIJIの目指す姿とはどんなものなのでしょう。

 

「私が尊敬するデザイナーの方が『Levi’sの501に勝るデニムはない』と言っていて、私自身もその意見には同意しています。だからこそ自分でデニムが主軸のブランドをスタートさせるとなった時に、全く違うアプローチのデニムにしようということを決めました。一言に、違うアプローチと言っても様々な方法があると思いますが、その一つのキーとなるのが素材です。タフだけどごわごわしたデニム特有の着用感からは離れ、少し上品に、快適に履けるデニムを目指しました。機屋さんを紹介してもらって、柿本さんのアイディアもありコットンテンセルという素材でデニムの生地を織ってもらいました。光沢感のある表情が綺麗なとてもいい仕上がりを見て気に入り、この素材ならば作業着というよりは少しユニフォームのようなものにしたいなと思って、例えば軍パンのようなものを上品に履くならどうするか、というアプローチでスタートしました」

 

 

主なデザインソースは自分自身のスタイリングのスタンダードアイテムとして存在している昔のペインターパンツやスラックス、軍パンなど。それらをデニムという素材を使うことで新しい見え方にしたり、新しいベーシックアイテムとして成立するものを目指してもの作りをしているのだそうです。

 

「例えば“SHIMA”はペインターパンツをモデルにしていますがこれは私が履いている昔のペインターのデザインからディティールをとっています。ペインターパンツはずっと好きだけれど、今の私には少しカジュアルすぎると思っていたので、それを少し上品に履けるようこのデニムの素材を用いることでブラッシュアップしたかったんです。KIJIのデニムのもう一つの特徴が生地と同色のステッチを用いること。これは隠れた特徴だと思っていますが、特にペインターの場合、3本針のステッチはインパクトがありとても目立つところ。これを生地と同色にすることで、そのステッチの迫力は残しつつも主張が弱くなり、さりげないポイントとなってくれます。そういったバランスが、カジュアルなものを少し綺麗に落とし込む大切な要素かなと私自身は思っていますし、この素材とのバランスを取る上で特に気を付けたいところです。ただ、コットンテンセルの素材って、とろみと落ち感、光沢が特色な反面、細身のシルエットだと体のラインを拾いすぎてしまうこともあり、この素材と相性の悪いモデルというのも正直あるんですよね。だから、コットンテンセルが今のKIJIのデニムの特色ではあるけれど、ずっとこの素材だけを使うのではなくて、その時その時で作りたいモデルにフィットするような生地に改良したりしながら、今後も挑戦してみたいと思っています」

 

 

「21SSコレクションでは新作の“SHU”を作りました。これはマリリン・モンローが履いていたとしても有名な701をベースにデザインしています。最初にお伝えしたようにKIJIは、Levi’sのオーソドックスなデニムのデザインからは違うアプローチをしていましたが、この素材でやっぱり5ポケットは作ってみたいなと思ったので逆から来て一周しましたね(笑)。元々ハイウエストなモデルを、KIJIらしく更に股上を深くしています。そして私自身、Levi’sのデニムが体型に合わない悩みがあって、ヒップが強調されすぎてしまうのが気になっていたんです。なのでウエストとヒップのバランスが極端になりすぎないよう、股上の寸法や履く位置を踏まえつつ、ウエスト周りやヒップ周りの設定を細かく詰めていき、ベストバランスを目指しました。デニムって股下の開きの角度とかでフロントの見え方も変わるので、そこをかなりパタンナーさんと緻密に調整することが多いです。股下の開きが大きいと可動域も広がるので作業着としては理にかないます。Levi’s特有のヒゲの表情などはそれが起因となる経年変化ですよね。KIJIは作業着を目指しているわけではないので、そこを少し抑えめにして、きれいなシルエットとしてすとんと落とせるように、開きは抑え目にしています」

 

元々自身のスタイリングに欠かすことのできなかったデニム。デザイナーそれぞれの個性が現れるデニムに面白さを見出す中で、KIJIの生み出すデニムは新しいスタンダードアイテムとして、多くの人のスタイリングに溶け込むようなデニムを目指します。

 

「自分が好きなブランドやデザイナーが作るデニムは昔から興味があって、それこそみんなLevi’sのデニムを知っているわけですしそれを軸にしているからこそ、様々なアプローチでブランドらしい表現をしていてとても面白いですよね。素材に特色があるブランドもあれば、シルエットに個性を出す作り手もいて、他にもステッチ含め細かいところにギミックを効かせる人もいたりと、その色んなアプローチに惹かれて沢山買ったり履いたりします。好きな時に好きなものを履いていますが、特に春と秋には欠かせません。KIJIのデニムも、なんとなく履きたいと思った時にすっと手が伸びるような、日常に欠かすことのできない定番アイテムとして、作り続けられたらと思います」

 

 

 

デニムに合わせるアンティークブラウス

 

 

Antique Blouse

 

「そんな自分のスタンダードアイテムであるデニムに合わせるものとして欠かせないのが、アンティークのフリルブラウス。しばらくはバンドカラーシャツなどのトラディショナルなアイテムを選ぶことが多かったんですが、ここ最近はフリルやレースがとても気分。ずっと昔から好きだったアイテムで、気に入ったものを見つけたら買うようにはしていたのでいくつも持っていますが、カットワークのレースや大襟なものは自分には可愛らしすぎるなという印象があって、レースものよりフリルの立ち襟などが多いですね。これは元々は乗馬用のシャツのようで、そのためにどこか格好良い雰囲気があるのだと思います。さらにそれらを、可愛くなりすぎないようにニットやスウェットとレイヤードしたりデニムと合わせてバランスをとっています」

 

Antique Silk Dress

 

「このシルクドレスもデニムとレイヤードするのに欠かせない一着。素材感でエレガントさを出したい時に着ています。アンティークのブラウスやドレスはパリ出張に行った際にパリ近郊の蚤の市やビンテージショップを回って買うことも多いですし、日本でも古着屋を回って購入することももちろんあります。パリでは珍しいものが見つかることもたまにありますが、日本にも十分揃っていると現地の人も言っていました。とは言っても私は飾り物になってしまいそうなほど素敵なものや、華奢すぎて着用が難しいものは避けています。この二着も自分で綻びを直しながら愛用しています」

 

 

 

新しいクラシックを叶えてくれる
Le Yucca’sのシューズ

 

 

Slip-on Shoes(left)・Heel Loafers(right) / Le Yucca’s

 

「そしてもう一つデニムとのスタイルに欠かせないのが革靴です。昔はデニムにスニーカーを合わせたりもしていましたが、カジュアルすぎるスタイルはだんだんと減り、カジュアルの中に上品さをプラスしたり、自分の中でのバランスの取り方が変わってきました。特にLe Yucca’sには思い入れもありデニムとのスタイルに限らずよく履いています。スリッポンシューズはBLOOM&BRANCHでも買い付けさせてもらったもの、ヒールのローファーは私が新卒で入社したお店で出会い一目惚れしたものです。でもその時は、入社したての私にはイメージが合わないからと言って買わせてもらえず、後々同じものを見つけて購入したんです。その後買い付けの仕事で村瀬さんに出会った時にもこの話をしました。同じ名前ということで気に入ってもらい、その後BLOOM&BRANCHでも買い付けさせていただいたりとお世話になっています」

 

 

「ベーシックなアイテムは好きなんですが、ベーシックすぎるものや変化のないもの、退屈なものは私はあまり好まなくて。村瀬さんの作る靴はベーシックでとてもいいものなんですが、ベーシックの中に変化があり、新しいクラシックみたいなものが村瀬さんという人を介して表現されている。そこがとても好きなんです。お店で仕入れさせていただいているものはLe Yucca’sの中でもベーシックなものが多いですが、展示会に行くとレザーの使い方や色使いなどに村瀬さんのセンスが集結されていて、決して単なるオーソドックスやクラシックにおさまっていない、そのバランスがとても素敵なんですよ」

 

ベーシックな中に変化を求めるというフィロソフィーは、流行に流されない自分らしさを持ち続けようとする姿勢や、ベーシックアイテムを見続けてきた経験に裏打ちされたものなのでしょう。

 

 

 

柄・大きさ・素材
三拍子揃ったdenis colombのストール

 

 

HORO BLANKET NOMAD / denis colomb

 

「昔から寒がりなのもあって冬にストールは欠かせません。コートはやっぱり長く着ることを考えるとなかなか柄物は選ばないですし、毎日毎日変えられるほどのレパートリーも持てないので、冬のスタイリングは一辺倒になりがちですよね。そこに変化をつけられることもあって、ストールは気に入ったものがあると買い、すごく長く愛用していることが多いです。denis colombはずっと気になっていて2年前取り扱いを始め、今年ようやく私物のものを購入できました。これはアーカイブの柄からオーダーさせてもらったもので、ネイビーからシャンブレーでブルーっぽくなっている部分の色がとても気に入っています。このブルーに合わせてデニムやネイビーのアウターをスタイリングしたら素敵だろうなと思って。柄物は、素材バランスやサイズバランスなど要素は色々ありますが上手く取り入れるコツはきっと色合わせじゃないでしょうか。パリでは素敵に歳を重ねたお爺さんやお婆さんが、美しい色使いのストールをつけていることが多く、いつも目を奪われてしまいます。そんな姿が私の憧れです」

 

ストールを選ぶポイントは柄・大きさ・素材。特に無地のストールはほとんど持たず、正統派なチェック柄などよりは、色に個性があったり変則的なチェック柄のものを気に入ることが多いそうです。ここにも独特の視点が垣間見えます。

 

「それこそコートも無地の時に無地のストールだと退屈だなと思ってしまって、無地のストールはほとんど持っていないですね。無地だとしたら色がグラデーションになっていたり、ダブルフェイスで両面の色が違ったりと変化があるものには惹かれます。無地のコートにプラスした時にスタイリングのイメージをパッと変えられるものが好きです。大きさは大判のものを。大判ストールは早い時期からアウター代わりに使えますし、首元に巻くだけというよりはやはり肩まで隠れるものの方がスタイリングの幅が広がります。素材に関しては、ウールもカシミヤも色々持っていますが、特に首元に巻いた時にストレスのない素材というのが大切です。このストールは、カシミヤの中でも特に柔らかなモンゴリアンカシミヤを手織りしているものなので、ふわふわと極上な肌触りです」

 

 

 

クラシックスタイルに添える
ゴールドジュエリー

 

 

Gold Jewelry
noguchi BIJOUX(upper left) / 母から譲り受けたもの(upper right)
R.ALAGAN(lower left) / SOURCE objects(center) / AVM(lower right)

 

「しばらくシルバージュエリーの気分だったのでゴールドをしていない時期もありましたが、元々はゴールドのジュエリーがずっと好きで、クラシックなものやトラディッショナルなアイテムには華やかさや女性らしさを加えてくれるゴールドジュエリーを合わせたいなと思っています。ジュエリーを買うタイミングは特に決めていないし、好きなもの、目に入ったものがあった時に買うことが多いです。母から貰ったものはずっとつけています。noguchiのリングは、元々少し燻しがかかっていて、使い続けることで結構ゴールドがきれいに出てきました。石ものはあまりデイリーにつけないけれど、これはブラウンダイヤが入っていて、手に馴染みが良くていいなと思いよくつけます」

 

 

「SOURCEで昔に買ったのは22金のイギリスのビンテージリングです。AVMは最近購入しましたがこれも20金で鍛造で作られているもの。純金のゴールドは美しいですし、金属アレルギーもあるのでネックレスは特に、純金で作られているものを選びたいと思っています。ただ、昔からあるコスチュームジュエリーなどデザイン性が高いものは純金だけでは表現できないですし、アクセサリーに少しボリュームを出したいときは遊び感覚でメッキのものも身につけます」

 

 

 

dragonのバッグ

 

 

Pom Pom Double Jump / dragon

 

「ずっと仕事用に使っているトート型のものと、この巾着型の2つを持っています。かごバッグも私の中では定番アイテムとしてずっと好きで色々使ってきましたが、可愛くなりすぎるものは苦手だし自分に合わない気がしていて。最初にdragonを見た時にレザーで出来ていることに単純にびっくりました。実際に買い付けのために展示会に行った際に作っている風景を写真で見せてもらい、ハンドメイドで作られている生産背景にも納得ができました。あとやっぱり重いレザーのバッグは苦手なので、dragonのバッグの軽さは実用的にもポイントが高いです。そしてベーシックな形を作っているけれど編みだけで変化のある表情が生まれるのもいいですよね。少し夏のリゾートっぽいスタイルにも合うし、簡単に言ってしまえばジェーンバーキンみたいな自然体なスタイルにも合うし、トラディショナルなスタイルにも合うし、普遍的で汎用性の高いところが気に入っています」

 

ウィメンズディレクター中出のスタイルに宿る自分らしさは、誰もが一度は通る王道アイテムを横目に、本当に自分が欲しいと思ったものや自分の生活により馴染むものを選んでいく中で培われたもの。汎用性はもの選びの大切な要素になる一方で、それだけではオーソドックスになり過ぎる、そんなバランスをコントロールする術を身につけるのが、自分らしい着こなしを叶えるための近道なのかもしれません。

 

「すごく素敵だと思ったものでも、例えば街行く人が同じ靴を履いている姿を見ると少しそれを遠ざけたくなってしまうんです。だからベーシックなものやノーマルなものが全て嫌いなわけでは決してなく、結局ノーマルなものは誰かが持っているから、そこから少し外れたもので自分の琴線に触れるものを欲しくなってしまうんだと思います。その中でも服はできるだけ飽きのこないものを選ぶ傾向がある一方、どちらかというと靴や鞄、メガネなど小物の方が遊びを加えたものを選びたい感覚があるかもしれないですね。次回に柿本さんのスタンダードアイテムのご紹介もあるので、今回はメンズのアイテムをあえて省きましたが、根本的には女性らしく作られたアイテムよりもジェンダーレスなものが好きなので、そこに女性らしさや作りが良い上品なアイテムをプラスしてバランスを取るというのが、今の私らしいと思っています」

 

 

 

photo : Ryuhei Komura

text : Yukina Moriya