JOURNAL

生活とともにあるワークウェア
- Phlannèl

バッグ、エプロンなど日々の生活に根付く道具たちを一つ一つ丁寧に手作りで制作し、古いものの良さを引き出すようなプロダクトを展開するUTO。PhlannèlのデザイナーはそんなUTOのものづくりへの姿勢や背景に惹かれ毎シーズンコラボレーションアイテムを発表しています。今シーズンは、ワークウェアを背景とし男性も女性も着用できる普遍的なデザインのエプロンを制作。その際、デザイナーの頭の中にあったのは陶芸家のルーシー・リーのエプロン姿でした。
そんなイメージを追いかけ、新作のエプロンを磁器作家の角田淳さんに実際にご着用いただき、使用感を伺うことに。大分県の緑豊かな土地に自邸と工房を構える角田さんとオンラインでお会いし、その感想をお話しいただいたスペシャル対談です。

 

 

 

 

 

ルーシー・リーの姿を追って辿り着いた
角田淳さんの仕事風景

 

 

「元々Phlannèlはヨーロッパのビンテージやミリタリーウェアをベースとした洋服を展開していますが、今シーズンは特にワークウェアに惹かれました。ワークウェアのデザインの魅力といえば機能美ですが、そういったディティールは女性にはなかなか取り入れづらいと感じた中、“女性にも取り入れやすいワークウェアとは?”と考えて行き着いたのが、料理家や画家、そして陶芸家がつけているエプロンでした。タイミングを同じくしてディレクターの柿本からもエプロンを作りたいと要望があり、今シーズン制作することになりました」(Phlannèlデザイナー浅川、以下浅川)

 

「昔BLOOM&BRANCHとしてエプロンを別注したことがあるUTOさんは、アメリカやヨーロッパをルーツとする歴史あるオーセンティックな道具を手作業で制作されていて、エプロンで使われているコットンやリネン素材がすごく良いよねと。僕自身も自宅でエプロンを使っていますが、男性が着用できるエプロンはデザイン的にも素材的にもなかなかないんです。長く使えるシンプルなもので、丈夫で汚れても格好良く、出来ればリネンの素材がいいなと思っていたので、UTOさんの世界観や作るものはまさに僕の欲しいイメージにぴったりでした」(柿本)

 

「制作がスタートしたとき、イメージのベースにあったのはルーシー・リーがエプロンをしながら轆轤を回している姿でした。そして素材はリネンで、着丈はフルレングスのような長さで大判のものであること。作業していても肩が凝らないようにするためには、肩紐が背中でクロスするデザインが一般的なのですが、リネン素材、フルレングス、大判という理想をそのデザインで叶えようとすると、どうしてもギャザーを取り入れないと不可能でした。そういったディティールは、女性でも男性でも使いやすいものを目指す今回の目的からは外れてしまうので、腰でぎゅっと紐を締めて着用するデザインにしました。角田さんにまず伺ってみたかったのが、そのデザインだと作業しているときに疲れてこないかという実用面についてです」(浅川)

 

 

「私は毎年お正月に作業用のエプロンを自分でミシンで作っていたんですけど、ちょうど去年はPhlannèlのものと同じように肩紐がクロスしない形を作りました。腰紐をしっかり巻いて固定すれば肩は凝らないし、苦しければ紐を緩く締めたりすればいいので全然気にならないですよ。私は肩が凝りやすい方だと思うけれど、全く問題なかったです。後ろがクロスするデザインって、ちょっと女性らしいデザインになるような気がして、私は今回のようなシンプルな方が好みです。あと、腰でぎゅっと結ぶことで長さを調整することもできるので、長さ調整ができないクロスのデザインより、私はこちらの方が好都合でした」(角田淳さん、以下角田)

 

「毎年エプロンを作られていたんですね。僕もエプロンを自宅ですることもありますが、なかなかセンスの良いものって見つからないんですよね。男性の僕からすると、女性っぽいデザインが多い印象ですしサイズもない、あるいは余計な装飾がついたものがあったり素材が軟かったり。気に入るのが全然なかったのでPhlannèlで作りたいなと思ったんです。自分で作れたら、良いですね」(柿本)

 

「都会のエプロン事情は私は分からないけれど、私も同じように、エプロンを買いに行こうかなと思ったところでどこに行けば良いか分からないしそもそも買いに行こうってあまり思わなくて。作業用のエプロンは、ぐるっと巻けるほど幅が広いものがいいとか、丈は長い方がいい、色は白がいい、ポケットはここに付けたい…と自分なりの希望もあるので、作る方が早い!と思っていつも作っていました。生地は古いシーツなどを再利用するので家にあるもので簡単に」(角田)

 

「丈は長い方が良いとおっしゃっていましたが、角田さんは身長どれくらいでしょうか?今回のPhlannèlのエプロンは、作業している時に邪魔になりませんでしたか?」(浅川)

 

 

「身長は156cmくらいかな、日本人の平均くらいです。丈はこのくらい長い方が逆に作業の時には嬉しいです。自分で作っていたのもこれくらいの長さのあるものでした。轆轤を引く時って、足を大きく広げて作業するので、その時に丈が長くて横幅もあるものの方が洋服が汚れなくて良いんです。あと私の場合は土が白なので、白いエプロンの方がいいんですよ。黒だと逆に汚れがすごく目立ってしまって」(角田)

 

 

白の方が仕事の時につく土の汚れもいい感じなんですよ、と教えてくれた角田さん。制作風景を見せてもらいましたが、まさに汚れのついたエプロンがリネンの風合いと相まって素敵な雰囲気を醸し出していました。リネンの素材についてはどのような感想を持たれているのでしょうか。

 

「このリネンは厚さがあってハリもあって、洗濯してもよれなそうでいいですね。今2回洗いましたがいい雰囲気です。夏でも、そんなに分厚いわけではないし、通気性もいいので問題なさそうですよ」(角田)

 

「角田さんの場合は磁器ですが、作業工程にも色々ありますよね。土づくり、釉掛け、窯出しや轆轤。どんな作業の時にエプロンをつけているんですか?」(柿本)

 

 

「一日中です。朝から夕方まで、仕事は仕事用のエプロンをずっとつけています。自宅で料理するときはもちろん別のエプロンをします。すぐ汚れちゃうから白のエプロンばかりで、長い裾を持って手を拭いたり、釉掛けの時は腰紐にタオルをさしたりもします。もちろん汚れていい作業着に着替えてはいますが、エプロンをしないと気持ち的に仕事をしようというスイッチが入らなくて。エプロンをしたら仕事がスタートする感じです。仕事場に行ったらエプロンが置いてあるので、それをつけたら、『よし!』と気合が入る。だから、汚れるとか汚れないとか、そういうこと以前にユニフォーム的な存在なのかもしれないですね」(角田)

 

 

「思った以上に、陶芸家のエプロンとしてぴったりで何よりです。角田さんとしては、もっとこうして欲しかったなどのデザインの要望はありますか?フロントの裾にスリットを入れて足を広げやすいようにした方が良いかなとも思っていたんです」(浅川)

 

「足を広げる人は前割れのエプロンを使っている人も多いと思います。でも私は元々自分で作っていたものもこんな感じですし、幅を広く取っているので気にならないです。この長さも、ちょっとお洒落に見えていいですよね。昔勤めていた陶芸の工房のおばあちゃんが、汚れたエプロンから綺麗なエプロンに着替えて出かけていたことがあって、私もそれをしようと思って。そうやってちょっと出かけるのにも遜色ないくらい、ちょっとロングスカートを履いているような感覚というんでしょうか」(角田)

 

 

 

 

 

エプロンは気持ちのスイッチを入れるための
道具でもある

 

 

共に陶芸作家の松原さん(角田淳さんの旦那様で陶芸家の松原竜馬さん)と角田さんの作品でいっぱいの食器棚が目を惹くご自宅の様子。台所では黒のエプロンをご使用いただいていました。そんな角田さんはお料理上手で、この日も松原さんの耐熱皿を使ったリンゴのケーキを焼かれていました。きなこのスコーンも手作りのもの。台所には、子供たちがとにかくたくさん食べるという果物がいつでもいっぱいなのだそうです。

 

 

「お菓子は簡単なものしか作らないですよ!いつもいつも、台所に立っている時についでに作れるようなものしか作らないんです。昼はパスタなど簡単なものをスタッフの分も作って皆で食べますが、仕事が忙しくて台所に立てないこともしばしばで、前日までに作った食事などで済ませることもあります。なので基本的には朝ごはんを作る時に、その横でまとめてお菓子はいつも作っています」(角田)

 

 

「仕事をするときは白が多いですが、普段つけるなら私は黒がいいなと思いました。昔からお料理の時につけているエプロンは藍染めの古いもので、もうくたくたですが生地が厚く丈夫で、全然破れたりしないんです。お料理の油はねとかはやっぱり黒い方が目立たなくていいのかなと思います」(角田)

 

「私自身は、子供が生まれるまではエプロンとは無縁だったんです、なぜならお料理が得意ではないから。ただ子供が生まれてからはいくら料理が苦手でも作らなければいけないですし、尚且つ働いて帰ってきてからでは着替える暇もないので、とりあえずエプロンをつけ、お風呂に入るまではずっとつけています。そうして今では欠かせない存在になりました。角田さんは、お料理以外でエプロンの用途ってありますか?」(浅川)

 

 

「お料理の時ですら、忙しくてつけないこともありますけど、油ものをしたりするときや『今日は頑張るか』と思った時につけます。仕事の時も同じですが、やっぱりエプロンをつけた方が気分が良いというか、気持ちのスイッチが入るのだと思うんですよね。お客様が新しいお皿を買ってくれて、こんな料理を作りたいなとか盛り付けたいなと思ってくれる行為と一緒で、エプロンを買ったら『これをつけて今日は何を作ろうかな?』って気持ちが高まるものだと思います。いいお洋服を買った気分になりますよね。あと私は、この白が汚れたらインディゴに染めようと思っています。先日古い服を藍染めしたら新品みたいになって!」(角田)

 

「白を藍染めするのはきっと素敵でしょうね!この素材とも合いそう。藍染めして縮みませんでしたか?」(柿本)

 

「うーん、大雑把なのであまり分からないけれど(笑)でも水だったのでそこまで縮んでないと思いますよ。京都に昔からある染物屋さんが出している染料があって、その液をおっきなたらいみたいものにバーっと入れてお洋服をどさーっと入れて。化学染料の方が簡単に染まるのでたまにやっていましたが、やはり天然の青と化学染料の青とでは全然違いますね」(角田)

 

 

Phlannèlデザイナーの浅川が理想的と話す角田さんの作業場での様子に加え、飾らずありのままのの生活の様子も見せてくださった角田さん。実用面はさることながら、気持ちのスイッチを切り替えるものとして、生活とともに存在するワークウェアのあるべき姿を教えていただきました。

 

 

 

photo : Suguru Tsumura(QRAFTS)
HP https://www.qrafts.net/
Instagram https://www.instagram.com/qrafts_/

text : Yukina Moriya