JOURNAL

一から作る自分のデニムストーリー
- CIOTA

ディレクター柿本が20代前半だった頃はまだ手が届く値段だったというビンテージデニム。今では市場価格が高騰し続け、多くのものが手の届かない存在となってしまいました。そんな憧れの一本が、“デッドストックで見つかってしまった!”としたら——
誰もが夢見る歓喜の出会いと、それを一から育てる楽しさを味わってもらおうと提案するのが今回のCIOTAとの別注デニムです。

 

 

 

 

 

手にした40年代の革パッチデニム
思い描くのは90年代のあの姿

 

 

「CIOTAというブランドは、歴史的な定番のアイテムをベースに、そのデザインをほとんど変えることなく忠実に再現しています。数あるブランドの中でも、ベースとなるデザインにここまで忠実な姿勢を貫くのはなかなか珍しいんじゃないかと思います。そしてそんないくつもの定番品を、スビンコットンを使用することで、全く新しい上質な逸品へと昇華させています。形はスタンダード、素材は最高、そんなCIOTAと一緒に僕たちはどんなものを提案したいか?と考えたときに、僕たちが憧れてきたデニムのことが頭をよぎりました。自分が20代前半だった時はまだ頑張って手を伸ばすことができたデニムは、20年くらい経過した今はもう手の届かないところまでいってしまいました。それを今21世紀版として良い素材で作れたら、手の届かないと感じる僕たちは感動を覚えるかなと思ったし、もしかしたら今の若い人たちはもはやそれを目の前で見たことすらないかもしれないですよね。彼らにとっては、知らなかったものを知るきっかけになったりそれを掘り下げる契機になるかなと思って、古い時代のデニムを作ろうと思いました」

 

 

「そんな経緯があって、今回ベースにしたかったのが革パッチの時代のもの。それを今に焼き直して、さらにBLOOM&BRANCHらしい提案をしようと思いました。せめて50年代くらいのデニムを手に入れることができたらと思ったのですが、これがなかなか見つからなかったんですよね。50年代中盤からの紙パッチのものは、僕も所有していましたし、探した時にも数本出てきたのですが、革となると全く見つからず、古着屋でサンプリング用として容易に買えるものでもなくて。アイディアの構想段階から3〜4ヶ月くらい見つからなかったんじゃないでしょうか。商品を希望の期日に生産するためにはもちろんタイムリミットもあるので、間に合わなかったら次のシーズンまで温めなくてはと思っていた最後の最後に、ようやく見つかったんです。それも40年代のものでした」

 

ようやく見つけた40年代の革パッチデニム。CIOTAらしい忠実なものづくりのために細かく計測し、それをスビンコットンを用いた新しいデニムへと昇華させていく作業が始まりました。

 

「早速、CIOTAのデザイナー荒澤さんに細かくオリジナルを計測してもらったところ、50年代のものと比べるとやはり細身で、CIOTAがサンプリングしている70年代のストレートデニムより僅かに太いくらいということが分かりました。僕らの世代がイメージするビンテージデニムの履き方っていうのが、おそらく90年代に有名人がこぞって履きこなしていたその姿だと思うんです。例えばパフィーとか浜田雅功とかが、まさに年代物のデニムを履いていて、ゆるゆるっと腰に溜めている履き方をしていました。僕はその姿が、今すごく新鮮だしある意味王道だし、いいなと思うんですよね。それを叶えるために、ビンテージデニムを忠実に再現した今回のデニムは、4インチアップのサイズを選んで是非履いてもらいたいと思っています。通常CIOTAが提案している『マイサイズの2インチアップを履く』というもののさらに2インチアップ。そうすることで、あの腰の溜まりとか、ニュアンスのあるデニムの表情を作ることができるなと」

 

 

4インチアップのサイズチョイスを推奨するにも関わらず、展開するサイズレンジは30〜36インチまでと幅広く揃えています。そこには自分たちが提案したい履き方だけに拘らなくてもいいという、スタンダードアイテムに対する独自の思いが反映されています。

 

「90年代のような腰が溜まった履き方をしたいと思ったので、普段32インチを履いている人だと例えば36インチが必要になります。CIOTAは通常35までのサイズしか作っていなかったので、今回36インチは初めて展開してもらうことになりました。ただもちろん、4インチアップのサイズで提案したければそういった大きいサイズだけ作れば良かったですし、正直に言えば1インチずつ細かくサイズを刻む必要もなかったんです。2インチ刻みのサイズだけ展開しても、提案としては問題なかった。でも、デニムって本来スタンダードなアイテムですし、いろんな履き方を楽しめるアイテムですよね。オリジナルに忠実なCIOTAのものづくりをもってしても、これは誰にでもスタンダードになり得るアイテムです、それは間違いありません。そうである以上、ジャストサイズで履きたい人はジャストサイズを選べる選択肢を残しておきたかったし、自分のマイサイズを選ぶ楽しさを味わって欲しいという思いから、今回は30〜36インチまでの7サイズを揃えることにしました」

 

 

「まさに“デッドストックで出てきちゃった”という想定にしたかったので、シルエットやディティールで手を加えてもいいところをあえて何もデザインしませんでした。あとは素材をCIOTAのストレートデニムで使用している藍ではなくインディゴ染料に変えたのもポイントです。ここは古着業界でも諸説ありますが、僕はこの当時アメリカで使われていたのは合成インディゴだと思っています。藍のデニムが魅力的なのはわかりますが、この企画では当時の匂いを優先したくて藍という選択肢は外しました。ステッチの取り方や幅に関しても、全てオリジナルに忠実なので、インラインで展開しているCIOTAの一般的なデニムとも違うんですよ。もうデッドストックなんて買えないですよね、それが夢のようにちゃんとサイズがあるので、自分の好きなサイズで選んで買えるってことを楽しんで欲しいんです。だから4インチ上げてもらいたいけど、もちろん5インチ上げてもいいし、ジャストで履いてもいいし、好きなサイズを選んで欲しいと思っています」

 

 

「キーとなる革パッチに関しても、もちろん拘りがあって。ここは荒澤さんと考えが一致した部分でもあるんですが、革パッチに『CIOTA』とか『BLOOM&BRANCH』ってネームが入っていたらなんかブランドっぽいしデザイナーズみたいですよねと。そんな印象は、ブランドの方向性と異なると感じたので、よりアノニマスで、よりプロダクトとしてしっかり見てもらえるものにするためにネームを入れるのをやめました。今はブランドネームで『CIOTA』って入っていた方が嬉しいお客様が多いと思いますが、そこに頼らず、ファッションとしてではなくプロダクトとして見て欲しいと思っています。そして、自分のサイズを選ぶ、これを洗っていく、縮める、色が落ちる、ということに集中してもらいと考えています」

 

 

 

Style Sample 32 - 35

 

 

HEIGHT 168cm / 着用サイズ32(未洗い)

 

「実際にスタッフの香村君に履いてもらって説明しましょうか。まず、40年代のビンテージデニムは、特に今のファッションデニムに比べると股上が浅いです。だからジャストサイズに近いサイズを選ぶと、股上の浅さをまず感じることと、ヒップのシルエットもそれに伴って小さく感じると思います。アメリカ人はお尻が日本人より上にあがっているから、それを日本人が履くとヒップが強調されて見えるかもしれませんね。ただ、こういったオーソドックスな5ポケットのデニムをジャストで履くのは個人的にはいいと思うので、もしジャストを選ぶなら、レングスは短めにして、足元はローファーなどを合わせたいな、と思います」

 

着用サイズ33(未洗い)

 

「2サイズアップくらいになると程よいゆとりが出てくるので、靴選びがまた変わってきますよね。このサイズでも革靴はもちろんですが、甲が低いスニーカーとかどうでしょうか。adidasのスタンスミス、コンバースのオールスターとかが相性が良いかなと思います」

 

着用サイズ34(未洗い)

 

「香村君は通常サイズは30〜31インチなので34、35インチを今回は履いて欲しいです。ただ、このサイズになると思っている通り腰回りに溜まりができてカジュアルに見えるので、僕の感覚ではそのバランスをとって足元は革靴にしたいです。そしてもちろん、サイズアップすると丈が長くなるので、切るか切らないか、というのも新たな選択肢として上がってきます。そこに悩む人はブーツを履いてみるといいと思いますよ。ジャストサイズだと裾幅もそれに伴って狭いですが、大きいサイズを選ぶことで裾幅が大きくなる、その裾幅によって、クッションが綺麗に出てくるんです。なのでブーツや、Clarksのチャッカとかもいいと思いますよ。あとはウエストをどこで溜めるか、ですよね。後ろで溜めるか、フロントでタックのようにするか、だと思うんですが、僕が今回イメージしていた90年代の人の着こなしでは、前でタックのように寄せて履いてます。そうするとカジュアルには見えるけどよりニュアンスが出るというか、大きいサイズを履いているというわかりやすいシルエットが出ます。だから僕はこの履き方で履きたいですね。ただ、それを後ろで溜めるようにすると少しすっきり見えると思います。その分、お尻がぽこっと出るような丸いシルエットになりますね」

 

着用サイズ35(未洗い)

 

「大きめのサイズを選んだら必然的に長くなる丈を切るかどうか、のチョイスですが、僕だったら何度か生の状態をロールアップで楽しんだ後に、洗って好みの丈感に切ります。そのためにもして欲しいことが、まずはのり落としからやってもらって、可能な限り革靴を履いて丈の長さを見てもらいたいということです。例えばニューバランスのようなボリュームのあるスニーカーだとクッションが強く出るので、これに合わせて切ってしまうと、ヒールのある革靴を履いた時に短いということが起こります。CIOTA初の試みとして今回はワンウォッシュでなく生デニムなので、この時点で結構な縮みが出ます。もしかしたらロールアップでも問題ない丈になるかもしれないので、それを見て、考えます。ただ、1回洗っただけより、5回、10回と洗っていくと多少なりとも縮んでいくのでそれを見越して切った方がいいかなとは思いますよ」

 

 

「縮みに関してですが、先ほども言ったように今回はCIOTA初の生デニムです。この試みの意図としては、もちろんこの40年代の革パッチデニムは今もう買えないけれど、それがデッドストックで出てきてしまった、手に入ってしまった!という出会いの楽しさと、そのデニムをまず最初に洗ってのりを落とすという工程から始めることで、自分のデニムのストーリーを作ってもらいたいなという思いがあります。CIOTAの一般的なデニムはワンウォッシュしているので、もう縮んでいる状態なんですが、これは最初の家庭洗濯でタンブラーにかけず天日干ししたらおおよそ3cmくらいは縦に縮みが出ると思います。ウエストはその半分くらいでしょうか。レザーに関しては、40年代当時のものだと防縮加工などもされていないのですが、今回は極端に縮まないものを選んでいます。もちろん、本革なので多少縮みますが、シワが入ったり表情が出るようなものになっています。そういったこともあり、ランドリーに行ってタンブラーなどにはかけないようにしてください。アメリカ人ってやっぱりタンブラーにかけてガシガシ洗濯するので、当時のデニムなどは革パッチが熱でほとんど形を留めていなかったり、紛失してしまっていますよね。それもそれで味ですけどね」

 

 

「デニムって今となってはファッションアイテムになっていますが、本来労働者の作業着ですしやはりカジュアルなものだと思うので、綺麗なアイテムを合わせていくとか、少し上品な着こなしはしたいなという個人的な好みはあります。一方でベーシックな着こなしとして、スウェットにデニムっていうスタイルもやっぱり外せないし誰にでもできるスタイルの一つだと思っています。そんな思いがある僕がスウェットにデニムというスタイリングをするなら、ネイビーのスウェットにネイビーのデニムを履いて革靴を合わせるっていうワントーンのスタイルの方が大人らしくて良いな、と思っています。それがきっとBLOOM&BRANCHらしさもあるなと思い、ネイビーのスウェットも今回CIOTAに別注で制作していただいています。スウェットのほうも同時発売の予定ですが、これも結構色出しから拘っていて、慎重にビーカー出しから吟味しました。出来上がったスウェットのネイビーカラーは、生の状態のデニムのトーンに合わせています。上下で着ると同トーンになる、けれどまずデニムはワンウォッシュするので青味が出て、上下の色にコントラストが多少出来ます。もちろんスウェットの方もずっと洗いを繰り返していけば少しづつ色が落ちていくと思います。なので、まずは生のデニムに合わせたトーンから、それぞれの色が落ち、青のグラデーションを楽しめるようになっています。そのグラデーションの出方も人それぞれ。自分で青のグラデーションのストーリーを作っていただけたらと思っています」

 

 

 

photo : Ryuhei Komura

text : Yukina Moriya