JOURNAL

良いだけが良いじゃない服の面白さ
- KAPTAIN SUNSHINE

古いものが持つムードに惹かれ、そんな佇まいを目指すKAPTAIN SUNSHINE。自分の作ったもののセカンドライフまでを見据えてものづくりをするデザイナーの児島さんとディレクターの柿本との対談を通して見えてきたのは、KAPTAIN SUNSHINEのものづくりを支える“編集”というキーワードでした。

 

 

 

 

古着のような新品や、新品のような古着
そのフラットな立ち位置が気分

 

 

「まず、今回の別注アイテムを作ってもらおうと思ったきっかけなんですが、21SSの展示会に行って並んでたこのM-43をベースにしたパンツを見て純粋に良いなと思ったことと、なんとなくこれを見ているうちに、そのシーズン僕自身がよく履いていた40年代のU.S.NAVYのビンテージデニムのことが頭をよぎって、これと掛け合わせたら良いものができそうだなって直感で思ったんですよね」(柿本)

 

 

「その感じすごい分かります。僕も実は先シーズンに、本当に久しぶりに引っ張り出して履いてたんですよ。501みたいな部分もある一方でやや違う気分で履くこともできるじゃないですか。デニムのテンションで履くのももちろん良いんだけど、クリース入れて履いちゃっても良いよね、みたいなすらっとして綺麗なシルエットだから、なんとなく気分だったんだと思います」(児島さん、以下敬称略)

 

「気分ですよね。僕はずっと古着が好きでいつもどこかに取り入れていたし、新品には絶対ビンテージを合わせるというスタイルだったんですけど、ここ数年だんだんと着なくなってきているなというのは感じていて。でもこれだったらなんか履きたいなというムードがあって。それで別注のご依頼をして生地を探してもらったんですよね」(柿本)

 

「そうでしたね。でも僕は逆に、最近また古着をよく着るようになっていたんですよ。同じアイテムに気が向いていても気分が違うのは面白いですね。なので僕は一時期ずっと着ていなくて倉庫で眠らせていたのを結構また持ち出してきて、着ていました。今日履いているペインターパンツも引っ張り出してきて久しぶりに履いているもので、そのムードはまだ継続中です。これは当時すごい安かったやつなんですけどね。この太さの感じと色の感じが、古着といえば古着だし、新品といえば新品にもありそうなフラットな立ち位置がちょうど良いなと思って」(児島)

 

 

「M-43もすごい昔に買ったものだったんです。でもなかなか難しいアイテムなのでこれもしばらく履いていなかったんですけど、去年結構履いて。こっちのM-51のオーバーパンツも去年の春夏によく履いていたので、今回のパンツのベースのモデルではここからウエストの仕様を取りました」(児島)

 

 

「この仕様見た時に、これ何だったか思い出せてなかったんですよ。じゃあこのアイテムは結構アメリカの名品ミックスだったんですね。それで僕も自然とアメリカのもう一つの名品のU.S.NAVYのことが頭をよぎったんですね」(柿本)

 

「元々僕も、このモデルでデニム素材をやりたいっていう構想は頭の中に実はあったんですよ。でもブランドの構成の都合などでデニムは外してしまい、今回はインラインでは敢えてアメリカのミリタリー臭さを消すようなさらっとしたリネンの素材で作りました。そういった経緯も実はあったので、柿本さんからアイディアが出てきたときは嬉しかったです」(児島)

 

 

「今回別注のために選んだ生地は10.5ozのもので、経糸も緯糸も強撚糸を使っています。それによってこのジャリっとした感じが出るんですよ。こういう素材はKAPTAIN SUNSHINEでは特に春夏によく使います。独特の素材感で気持ちいいですし、春夏は結構長い間履けるような素材ですよね」(児島)

 

「そしてこれはワンウォッシュですよね?それでも結構アタリが出るんですね。すごくいい雰囲気に仕上がってよかったです。この後の変化はどうなっていくんですか」(柿本)

 

 

「もともとムラ糸の強撚糸なので、ちょっと表情を出しながらムラっぽい色落ちをしていきます。ビンテージデニムのような激しいタテ落ちというよりは、経緯同じ糸なので、均一にいい雰囲気で落ちていく感じでしょうか。そしてお話ししている中で柿本さんが、生デニムでもいいかなということを言っていたので、ワンウォッシュですがノリを半分残しているような状態にしています。お湯で洗うとノリは完全に取れて柔らかな風合いになりますが、これはお湯を通さないで水で洗っているんです。家庭で洗濯すると、強撚糸特有のこのシャリ感は残しながら、ハリが取れて柔らかさが出てくると思いますよ」(児島)

 

「仕様も少し変えていただきましたよね。フロントは元がボタンフライのデザインだったかと思うんですが、より使いやすいようジッパーに変えてもらいましたね」(柿本)

 

「あとウエストのスピンドルの位置も微調整したんですよ。もうちょっと位置が遠かったんですけど、閉めた時にフロントが下がってしまわないようにということで、位置を近くしています。あとは丈ですが、お客様がなるべく丈を切らずに履けるようにということで少しだけ短くしています。なので、裾のアタリの雰囲気をより楽しめるかと思います。ボタンはM-43に合わせて尿素ボタンに変えました。ポケットのデザインはKAPTAIN SUNSHINEオリジナルなんですが、内ポケットが両方についていて、これがとても使い勝手がいいんですよ。携帯や、小さめの財布がちょうど入る大きさになっています」(児島)

 

 

「ここ好き嫌い分かれますもんね。シルエットが崩れるのが嫌な人もいればパンパンに詰めた方が格好良いという人もいたり。すっきり履きたい人にはすごく助かるデザインだと思います」(柿本)

 

「そうですよね。あとは縫製のピッチもかなり細かく指示しているので、そこはU.S.NAVYのデニムに近い形になっています。ステッチ色も合わせてスミクロの綿糸を使いました。このビンテージのように糸の色もフェードしていくので、その経年変化も楽しめるんじゃないでしょうか」(児島)

 

 

 

ものづくリは編集作業

 

 

古着の素材や古着のデザイン、そしてディティールなど、古いものへの敬意を持ちながら、それをいかにKAPTAIN SUNSHINEらしく表現するかというものづくりのプロセスには、かつて編集の仕事をされていたからこその視点が活きています。

 

「この古着のこの生地が好きだという方向からアプローチすることもあれば、このデザインが良いよねという方向から入ることもありますが、自分なりのルールとして、古着をそのまま作るっていうことはやらないんです。例えばフランスのマキニョンコートがありますよね。あのリネンの素材がすごく好きで、100番のリネンで再現しようとした場合、じゃあ形は違うものをあててみようという考え方でデザインを決めています。マキニョンの何が良いかというところを一つ引っ張ってきたら、そこから紐解いていって、それにどんなデザインが合うかを練っていきます。あるいはこの10.5ozのデニム生地を見つけたとしたら、じゃあこの生地でマキニョンコートの形を作ったら格好良いだろうな、というように、パズルのピースをはめるように編集していく方法をとっています」(児島)

 

 

「実例を挙げると、このチェックのリネン混の素材は、パームビーチっていう40年代のフロリダのブランドがあるんですが、いわゆる富裕層向けのサマースーツを作っているブランドです。そこの素材でこういう太番手のリネンで織られた生地があって、これで仕立てられたダブルのジャケットのスーツを着て、みんなボルサリーノ被っていて、というスタイルがあったんですよね。それがすごく格好良いんです。それを目指してまずは素材から動き、じゃあこれでどんなアイテムをやろうかなと考えていって、ミリタリーをミックスすることにしました。さらに素材も、そのままサンプリングするのではなくて、今にアップデートするならどうしたら良いだろうかというのを考えてトライしています。洋服作りの中では生地生産が一番時間を要するので、生地を考えることから始まりますが、それと並行してパズルをしている感覚です。最終的に上がってきた素材が全然イメージと違うこともありますし、逆によく上がりすぎてしまうこともあるので、それを元に戻したりとか、予定していたデザインをやめて違うものを作ってみたりとか、その作業は本当に編集の仕事ですよね」(児島)

 

 

「色んなパズルをして出来上がったアイテムの集積でコレクションができているんですね。先にコーディネートを考えたりはしないんですか?」(柿本)

 

「僕はあまり最初にコーディネートは考えないですね。生地を作っているので必然的にセットアップは出来ますし、それをベースにコーディネートを考えたりもしますけど、後付けになることの方が多いです。コーディネートに興味がないわけではないんですが、やっぱり編集しながらものを作っているので、ものありきというか、ものが最初にあるんですよ。これはきっとメンズっぽいものの作り方だと思います。だから色も、大体ははじめにカラーパレットをなんとなく決めてしまっていて、この色はどんな素材で使ってみようかとか、どういうものを作ってみようとか、考えています」(児島)

 

 

「僕は児島さんが前のブランドをやられていた時からずっと見させてもらっていますが、ブランドが変わってもものづくりの根幹は何も変わっていないんだなと感じています。そんな中でKAPTAIN SUNSHINEが持つ特徴はご自身ではどんなところだと思いますか?自分の中で、以前から変わった部分というのはあるんでしょうか」(柿本)

 

「素材にフォーカスしていったのは今のブランドが始まりなので、それはやっぱり特徴ですよね。会社の背景があるので、ここでものづくりさせてもらっていると必然的に素材の勉強ができる環境です。以前よりは圧倒的に川上にいる現場の方々と会う機会も増えました。そんな方々と共に、こうして様々な素材を作らせてもらったりしているということがやっぱり今までとの大きな違いですかね。これまでも生地は作っていましたが、なんというか、生地屋さんの持ってる風呂敷の中から選択していくしかなかったので」(児島)

 

「一から素材を作れるようになったというところとリンクするのだと思いますが、KAPTAIN SUNSHINEの強みとして柄の生地があると僕は個人的に思っています。チェック柄や小紋柄などは他のブランドでももちろん目にすることがありますが、プリント系の柄の作り方、過去のものからの引っ張り出し方に児島さんらしさが出ている気がします」(柿本)

 

 

「プリントはすごい難しいんですよ。いつもすごく古い資料を見ながら、10くらいリストアップして作っているんですが、大体いつも1つくらいしか残らないですね。先染めのチェック柄などはもちろん作る中で想像通り出来ることが多いですけど、プリントは思いもよらない出来になってしまうこともあったりします」(児島)

 

「でもそういう柄のイメージというのはKAPTAIN SUNSHINEにありますし、特徴的だなといつも思っていますよ。だから展示会に行く時も、次はどんなのが出るかなというのが楽しみの一つなんです」(柿本)

 

「昔のリゾートウェアとかが、僕はやっぱりずっと好きで。80年代、70年代のヨーロッパの感じとかがすごく好みなのでそういったムードを春夏は特に取り入れたくなってしまうんですよね。だから本当はもうちょっと数をやりたいとは思っているんですよ。コレクションのアイテムが全部揃った時に、今の数だとやっぱりポツンとそれだけいきなりあるような感じなので、柄の素材作りの精度が上がれば、もっと楽しいだろうなって思います」(児島)

 

 

 

自分のフィルターを通して出来た洋服たち
そのセカンドライフも見据えて

 

 

スキーやサーフィン、そしてキャンプなど、多彩な趣味を持つことでも知られる児島さんですが、そういった趣味の時間はデザインにどう活かされているのでしょうか。ここにも、古いものを愛する児島さんらしいエピソードが垣間見えます。

 

「僕は昔6年くらい白馬に住んでいたんですよ。インストラクターもやったりしていて、そこからスキーはずっと趣味の一つです。そんな冬の話からすると、スキーに出かける行き帰りの道中や、滞在先で着るものは結構意識しています。そういったシーンでどういうものを着たいかな、どんなものが心地良いかなと考えてものづくりに生かしたりしています。21AWの展示会で柿本さんが『これ良いですね!』って言ってくれたフリースとかがまさにそういった考えで出来たものです。サーフトリップも、楽しいですよね。でも特にサーフトリップの時って何を着ていけば気持ちいいのか、すごく悩んでしまいます。出来るだけ普通のサーフブランドは着ないようにしているので、そんな時何持って行こうかなって」(児島)

 

「僕はサーフィンのときなんてすごい適当ですけどね」(柿本)

 

「でもそれって柿本さんのフィルターを飛び越えることはないですよね。きっと、自分のフィルターを通して何を着ていたいか決めるってことが自然にできているんだと思うんですけど、僕もそれはすごく意識していて。どういうのがあったら良いか、どんなものがあったら気持ち良いかみたいなのはいつも考えます。コロナ前までは海外に出て、その旅での感覚をデザインにも反映させてたいたんですけど、今は出れないので、国内を回ったりしています。あと最近はキャンプに行っていましたね」(児島)

 

「キャンプって、児島さんのイメージにぴったりじゃないですか。ギアとかも絶対好きでしょうし」(柿本)

 

「そう、好きなんです。だから一時期すっごい古いものに拘ってそういったギアを使ってました。でも一緒に行く家族からは理解されなくて、家族が使う便利な道具と僕が使いたい古いギアをわざわざ2セット持っていっていたくらいで。例えば一緒に行った友達は朝10分でコーヒーが飲めるんですけどうちだけ30分かかるんですよ。でもそれがもう家族からの批判がすごくて、やめました(笑)」(児島)

 

「やっぱ好きなんですね。でもいいですよね、道具に拘る楽しさはすごくわかります。サーフボードだって、普通の人には、たくさん所有する意味なんて理解されないでしょうしね」(柿本)

 

 

「楽しいですよね。だから趣味はね、なるべく活かすようにはしていますよ。あとは、趣味とは別で、仕事の繁忙期が終わったら2週間くらい時間をとって次のシーズンのテーマだったりムードを探しに、自分が行きたい土地へ旅することは出来るだけしています。行く土地で僕は結構な距離を車で移動するようにしていて、そこで見た色や空気感をものづくりに活かしたりしています」(児島)

 

 

世界中の古いもの、世界中の土地、様々なアクティビティを通して蓄積される経験を児島さんの視点を通して“編集”されていくKAPTAIN SUNSHINE。キーワードである“編集”の根幹にあるものを最後に伺いました。

 

「やっぱり好きってことに尽きますよね。柿本さんも一緒だと思うんですけど、やっぱり古着が好きなんです。もののディティールやクオリティの高さとかに限らず、これってやっぱり良いよねっていうようななんとも言えない雰囲気とか、味わい含めてその佇まいが。だからそれを目指しているところがあるのかな、と思っています。いわゆるレプリカを作りたいってことではなくて、これが古着になっていくにはどういうふうに作ったら良いのかな、ということです」(児島)

 

「何十年後とかに、自分の子供達世代が見た時に、古着屋さんにあるようなものってことですね」(柿本)

 

「そうです、それをすごい思います。なんというか、そこで色んなレシピを投入して、編集して、ものづくりしているのかなって。そうなってくるとやっぱり素材は良いものの方が長く残るためには大切ですし、やっぱり原料が良かった頃のものとかって、形に時代性があったとしても、今見ても良い素材だなって感じるみたいなことってあると思うので。でも、良いだけが良いじゃないところって、古着の良さの一つだと思っていて。そういう部分も含めて、残るものが作りたいなと思います」(児島)

 

 

 

photo : Ryuhei Komura

text : Yukina Moriya