JOURNAL

私の好きな映画と着こなし
- INJIRI

日本人の感性では作れないもの。日本では出来ないものづくりの背景。20SSシーズンのバイイングで、ディレクターの中出は、ヨーロッパだけでなく世界各国のブランドを可能な限り見て回りました。ピンとくるものが見つかり取り扱わせてもらうことになったというINJIRI。彼らの作るアイテムは、インドならではの伝統的な魅力に敬意を払えるものであり、そしてそのアイテムが決してネイティブやデコラティブなものにはならず、私たち日本人が日常着として着やすいものとして完成されています。
そんなINJIRIとのエクスクルーシブアイテムのドレスとブラウスは、フランス人がバカンスで訪れるリゾート地でのゆったりと流れる時間と、そこに馴染む自然体な着こなしの人々の姿をイメージして作られました。今回のJOURNALでは、中出が好きなフランス映画を参考に、気負わない自然な着こなしのヒントを探ります。

 

 

 

 

エリックロメールの映画に
着こなしのヒントを

 

 

「私にとって、フランスのバカンス映画といったらエリックロメールの映画。可愛らしいフレンチスタイルをはじめ古き良きフランス映画の醸し出す空気感が好みで、BGM代わりにでも何気なく流しておきたくなる映画です。特に『Pauline à la plage(邦題:海辺のポーリーヌ)』は、内容はさておき、セーラーカラーシャツをあどけない表情で着こなす姿、カットワークのワンピースやブラウスを纏った自然体なスタイルなど、心くすぐるアイテムと質感が散りばめられています」

 

Photo via @eric.rohmer_toujours

 

Pauline à la plage(1983) Film by Éric Rohmer

 

Photo via @eric.rohmer_toujours

 

「幼さのある主人公は素肌にワンピースを一枚で纏っている、それだけですごく可愛らしいですよね。INJIRIのドレスはそんな可愛らしさもありながら、少し大人っぽいエッセンスが加わったアイテムです。きっとこの映画の世界のように、外国人は素肌に一枚で格好良く着こなすのだろうと思いますが、自分にはなかなか真似できない…。でも昨年リリースした別注のドレスを購入して日常で何度も手に取り袖を通すうちに、私も一枚でさらりと着たいなという思いが強まって、今年はその刺繍ドレスの下にも着用できるスリップも別注でお願いして制作してもらいました。どちらのドレスもさらりと一枚で着て、足元はレザーのサンダルなど。それだけで様になるものです」(中出)

 

Photo via @eric.rohmer_toujours

 

「スリップドレスは、シルク特有の滑りもありながら、インドシルクらしいカサッとした肌にまとわりつかない質感がとても良いので、夏はこれにTシャツやシャツなどを重ねても心地良さそうですね。『海辺のポーリーヌ』は映画全体が淡い優しいトーンでまとめられていますが、エリックロメールの他の作品ではブルーや赤などの色が散りばめられたカラーコントラストも私にとっては印象深く、そんな要素を取り入れる感覚で、スリップはピンクもオーダーしました」

 

Photo via @cinematicpaintings

 

「手刺繍が入ったブラウスは、レースなどに少し抵抗がある方にも着ていただける大人なブラウスを作りたくて。歳を重ねたジェーンバーキンのようなスタイルで、リネンやコットンなどのゆるいシルエットのパンツに合わせて、少しだけボタンをあけて、ラフに着たいです。少し上品に着たいときは細身のパンツにバレエシューズなども、定番のスタイルですが私は変わらず好きですね」

 

 

 

 

大切にしたいのは職人への敬意と
好きなものを着ることを楽しむ気持ち

 

 

着飾るのではなくありのままの自分らしく、そして自由で開放的なスタイルは、バカンスだけでなく日々の生活の中でも取り入れたいものです。これからの気持ちの良い気候の中での着こなしのアイディアを、一つひとつのエクスクルーシブアイテムについての詳細とともに紹介します。

 

 

「多くのインドブランドや、伝統技術を取り入れたブランド、古い生地やアイテムを再構築しているブランドなど幅広く見た中でも、INJIRIの良さは一番伝統的な要素を踏襲していると感じたところ、そしてその技術に敬意を払っているということ。ジャムダニ織りや手刺繍、もちろんカディもそうですね。意外と他のブランドでは、民族的な要素を排除したり、それ以外の装飾を加えていたりするものが多かったんですが、INJIRIは織り柄で表現する生地での遊びは多いものの、その分デザインは余計な加飾がなくて私たちの日常にも取り入れやすいアイテムが多いです」

 

 

「この刺繍ドレスは去年に引き続きのアイテムで、元々ブラウス丈だったアイテムをマキシのロング丈にしてもらっています。日本のように平面的な洋服を作っていたのか、パターンがシンプルで面白いのと、耳使いがアクセントになった生地の取り方も好きです。素材はカディを使っていて、手紬独特の糸はまるで強撚糸のような、ドライタッチな素材がとても気持ち良いアイテムです。インド人にとってカディは日常着なので、ものすごく希少なものではないのですが、すごく細い糸で織られる繊細で質の高いカディは、それを織れる職人の少なさからとても手に入りづらいものなんです。そして特徴的な刺繍部分は機械刺繍でできているのですが、これも機械を操れる人が多くないのだそう。アイテムの随所に職人の仕事の細かさが光りますね。INJIRIのデザイナーはそういったインドの伝統的な手織りの生地を使ってゆっくりと服を完成させるものづくりによって、職人や織工をサポートできると考えていて、そういった部分に重きを置いてものづくりをしているのだそうです」

 

 

「私も着用していたドレスが透けるので、一緒に合わせて着られるもの、かつ一枚でさらりと着られるものが欲しいなと思って新たに別注でお願いしたスリップ。カディと相性がよく、そして素肌に着ても心地良いものをと思い、インドの軽いシルクで作っています。INJIRIはシルクのコレクションが多く、カディと並びブランドの代表的な素材の一つだと思います。インドのシルクはワイルドシルクのような質感で、節が残っている表情や、ドライタッチな素材の印象が私にはありました。細い糸で織られているのでしょうが、その素材の質感はきっとインドの夏にも肌にまとわりつかず涼しいのだろうと思いますし、同様に湿度の高い日本の夏の気候にもとてもマッチするのではないでしょうか」

 

 

「エリックロメールの映画の登場人物さながら一枚で開放的に着たいですし、他にはゆるい古着のTシャツや大きめのシルエットのニットとかを上から着て、スカートを履いているようなカジュアルなスタイリングもいいですよね。リゾートも日常も、とても良く似合うし、心躍るアイテムになるかなと思います」

 

 

「コレクションに出ていた手刺繍入りのドレスをブラウス丈にすることで甘さを軽減してもらいました。軽快な素材は心地良い反面やはり少し透けてしまうので、その透け感はブラウスというアイテムの方が私にはしっくりきました。先ほども話したように、歳を重ねたジェーンバーキンのような着こなしで、リネンのパンツやデニムなどラフさがあるものを合わせて、袖をきゅっと捲り、気取らないスタイルを楽しみたいです」

 

 

「コロナ禍でバカンスや旅行を楽しむのは難しいと思いますが、少しでもおやすみの日には高揚感のある洋服を着るなど、着たいものを着て楽しんだり、ただそれが決して気取ったものではなく、リラックスした気持ちで過ごせるものが今の生活には必要かなと思います。そんな気持ちで、ゆったりと楽しみながらこの夏を過ごしたいですね。インドの手紬手織りの生地、職人技が光る刺繍のアイテムは、散歩に行くだけでもきっと気分を高めてくれるはずです」

 

 

 

photo : Ryuhei Komura

text : Yukina Moriya