JOURNAL

上質なカットソーと美味しいお米
洋服と食の共通点(前編) - Phlannèl

21AWコレクションのデリバリーがスタートしたPhlannèl。今対談ではPhlannèlのデザイナーを務める浅川とBLOOM&BRANCHウィメンズディレクターの中出が、Phlannèlらしさを形作るかなめとなる価値観について語り合います。
前編では、より一層Phlannèlらしさにフォーカスしたという今シーズンのものづくりの過程や、拘り続けるスビンコットンという素材との向き合い方について掘り下げていきます。

 

 

 

 

 

 

Phlannèlらしさについて
自分たちに問い続けること

 

 

「21AWでは全体のブランドの組み立て方をこれまでとは少し変えていて、これまでPhlannèl といえば強みは素材なので、まず素材から考えそこに適しているデザインを当てはめていくという方法をとっていたのですが、今回はPhlannèlの中でもちゃんと強みのあるアイテムをつくろうと、まずPhlannèlとして必要なアイテムを洗い出すという作業から始めました。“Phlannèlといえば…?”というのを企画チームのみんなで洗い出し、“Phlannèlのコート”といったらこんなものだよね、というアイテムに対して、じゃあそれはどんな素材なんだろうというのを当てはめていきました。そこに、21AW全体としては、イギリスのトラディショナルな素材や色を織り混ぜながら、アメリカのトラッドな要素をスタイリングで取り入れるイメージです」(浅川)

 

「いつもは素材から入っていく作り方の順序をデザインから入る方法にシフトしたことで新しい発見や、逆に苦労はありましたか?」(中出)

 

「素材の良さを活かすのがPhlannèlの企画なので、それを逆にすることは結構難しい作業でした。例えばPhlannèlのシャツというものを作ったときに、じゃあ果たしてそれが世の中的にベストなのか?というのが問題としてあって。Phlannèlらしいものだけれど今求められているものなのだろうかという葛藤みたいなものはありました。ただ、“Phlannèlといえば”というコートやニットなど、代表的なアイテムを考えていったときに、それらのアイテムは思いついた時点で既に素材との相性が見えているものが多くて、それが結構今季の顔になっているなと感じています。特にコートは、Phlannèlではずっとアルルウールを使っているので、らしさのあるコートのデザインをイメージするとそれがアルルウールという素材と結びついていたり。その柄を、これまではずっとヘリンボーンだったところ、今季はイギリスのオーセンティックな柄と色を取り入れて作っていたりしています。企画には中出さんも参加していただき意見をもらっているんですが、今回作った新作のドレスシャツは、もともとメンズのデザインとしてあがっていたものを中出さんが気に入り、ウィメンズでも欲しいということで形になりました」(浅川)

 

「ここ最近、これが着たいというレギュラーカラーのシャツがなかなかなくて。シャツはずっと好きでいつも着ていたんですがここ最近は少し遠ざかっていました。バンドカラーのシャツばかり世の中に出ていたのと、あとカジュアルな素材のシャツが多かったのですが、今は少しきれいめなシャツや、レギュラーカラーのシャツが着たいなと思っていて」(中出)

 

 

「レギュラーカラーのシャツをレディースで作るのは難しいんですよね。メンズのものをラフに着るくらいのこなれたバランスが良いんですけどね」(浅川)

 

「そうですね。女性用のデザインでゆとりをもたせてラフな印象に作っているシャツって、結構肩を抜いていたりするものが多くて、私自身はそういうものが苦手なんです。なのでそれこそメンズデザインのものをラフに羽織るのが好きなんですが、今回もメンズの方でドレスシャツの企画があったときに、このメンズのシャツをそのまま羽織るのもいいなと思って、欲しいなって個人的に思っていたんですよね。それを女性用として形にするために、袖丈とかちょっとしたバランスを調整しているだけなんですけど、そのちょっとしたところを調整するだけでも色んな女性の方がもっと着やすくなったと思います。それこそメンズサイズを羽織っているくらいのバランスだけれどきちんと着られる、すごい良い塩梅になったと思いますよ。シャツの素材選びはどうでしたか?」(中出)

 

「企画で一番悩むのがシャツの生地選びなんです。どうしても、シーズン問わず長い期間着てもらいたいなと思うと、どの番手の糸にするかは結構重要です。あと、どういう風に仕上げたいとか、どういうシャツが着たいかっていうのも結構悩むところで。今回は、中出さんの意見にもあったように、カジュアルじゃない少しきれいなものが着たいということでドレスシャツを考えたんですけれど、ドレスシャツの生地ってビジネスライクなものが多くて、どうしてもワイシャツっぽくみえてしまうんです。そうではないものを探していて見つけたのが、スビンコットンの素材をシャトル織機で織っているものでした。繊細さがありつつも、シャトルで織っているのでふくらみ感があるのと、そこにスビンのなめらかな柔らかさっていうのが絶妙なバランスで表現されていて、そのバランスがドレスシャツっぽくなりすぎずカジュアルにも見えないのでいいなと思っています」(浅川)

 

「シャトルで織っていてもふくらみがありすぎないのがいいですよね。大きめのシャツを着るとき、私は落ち感がないととちょっと着づらいんですよね。これは適度な落ち感がありつつ、シャトルのふくらみ感もありくたっとしていないのが好きです」(中出)

 

「スビンに限らず超長綿を使ったものは割と長くきれいに保つことが出来ます。そしてこのシャツの素材はアイロンをかけてもすぐシワが出てきてしまうほど繊細な生地なんですけれど、あえてそれをそのままの表情で着ていただいても、ドレスシャツとカジュアルシャツの間のバランスで着ていただけるかなと思って、それもひとつの着方かなって思います」(浅川)

 

「デザインのお気に入りのポイントや拘りはありますか?」(中出)

 

「袖や背中に入れた細かいタックのデザインは、古いシャツのデザインから着想しているのですが、ここまで細かいタックってなかなかないデザインです。なのでその古いシャツデザインの写真を見ながらイメージして作り上げました。おそらくもとはギャザーを細かいタックに置き換えてデザインされたのかなと思いますが、他にありそうでない気品あるデザインが気に入っています。あと拘りとしては、普段作っているシャツより更に運針数を細かく出来る工場に依頼して縫製しています。PHLANNÈL SOLのシャツもドレスシャツ工場で縫っているんですが、今回は初めてシャツに前立てをつけようと思って、一段階細かいことが出来る工場に依頼しています」(浅川)

 

 

「前立てありのシャツもなんか久しぶりな感じがしますよね。ワイドスプレッドも新鮮ですし。そこはイギリス由来ですが、着こなしはアメリカのトラッドな印象にしてミックスな感じにしても全体にまとまりがあるのがこのシャツの素敵なところです」(中出)

 

「今回、ローファーを履いてトラッドなスタイリングをと意識して作ったんですが、その着こなしって内面が伴っていないと結構難しいものなので、そこにジュエリーを足したり、アクセントが欲しいなと思っていたんですよ。なので今回の中出さんのスタイリングは、私のイメージ的にはパーフェクトだなと思ってます(笑)さりげなくピアスがあるからこそシャツが活きる感じがあり、嬉しいです」(浅川)

 

 

「シンプルなシャツなので、ジュエリーとか、ベルトとか小物を用いたいなと。まずベルトをつけてドレスシャツが着たいなっていうのと、スラックスを履いたスタイルにドレスシャツを羽織って着たいなと思って個人的にもこのシャツをオーダーしたんです。あと今はヒールを履いていますが、ローファーでもきっと格好良いだろうなとイメージできます。私が若い頃ソフィア・コッポラがサックスのシャツを良く着ていて、それを見てサックスのシャツが好きになって、それからは本当に良く着ていたんです。当時ソフィア・コッポラはジャストサイズのシャツにゆるいデニムを合わせたりして着ていたんですが、今の気分はゆるいデニムにもゆるいサイズのサックスのシャツがいいなと思っているのでこのシャツのバランスがとても好みです」(中出)

 

「襟のサイズは苦労したというか、人によって顔のサイズは違うので、どんな人にもしっくりくるようなサイズバランスって難しくて。最終的には大きすぎず良いバランスに仕上がったと思っています。開けてもおさまりが良くなったかなと。中出さんは袖まくりして着たりしますか?」(浅川)

 

「袖まくりももちろんしますが、これは袖に特徴的なディティールがあるので、それを活かしてそのまま着たいなと思いました。洗ってもう少し味が出てきたときには、Tシャツに袖をまくってざっくり着るのは良いだろうなと想像しています。浅川さんのおっしゃる通りワイドスプレッドなので羽織りも着やすいですし、堅苦しさがなくなるのでいいですよね」(中出)

 

 

 

 

良い素材を用いるだけではなく
それをどう料理するかがデザイナーの真骨頂

 

 

良い素材を用いることはブランドにとって個性であった時代から、いまではそれが当たり前の条件である時代へと変化してきています。そんな中でも、良い素材を用いるブランドの個性というのはどんなところに表れるのでしょうか。デザイナーとディレクター二人がそれぞれの視点で語ります。

 

「私がPhlannèlに参加した時は、良い素材を用いてベーシックなものをメンズデザイナーが作っていて、それをメンズからウィメンズへと落とし込んでいるものが多かった印象です。Phlannèlはメンズあってのウィメンズなので、もちろんそこは尊重しながらではありますが、私はそこに女性らしい目線を入れられたらいいなと思っていて、普段着ている中でもうちょっとこうだったらいいなとか、そういう普段の感覚を素材に入れていくことでしょうか。例えばスビンコットンのジャージ素材も、ずっとPhlannèlが取り扱っている素材・生地ではありますが、本来のスビンコットンの良さを活かすのであればそれは素材をそのまま使う方がいいはずなんです。ただ、私はそのふかっとしている素材感が気になってはいたので、ガス焼きして表面をクリアにすることで、少しハリを出してクリーンな印象にしています。そのちょっとしたクリーンさがあることで、カジュアルになりすぎずに女性らしく、多くの方が着やすいものになるんじゃないかと思ってそうしています。そういったバランスが大切なんじゃないでしょうか」(浅川)

 

 

「良い素材を突き詰めていくというのももちろんですが、自分たちが良いと思った素材をどう料理するか、デザイン、シルエット、縫製など大切な要素の全てのバランスを、素材との相性やシーズンの気分などと合わせてずっと突き詰めていくことが、熟練したデザイナーの腕の見せ所であり、とても大切なことなのかなと思います。今はどこのブランドでも、今シーズンはスビンの素材を使ってTシャツを作りました、って出来てしまうと思うんですが、そのスビンという素材は番手も違えば加工も違うし、スビンのもともとの糸からも違いがありますよね。その違いを、今の私たちはどんなものが着たいかとか、これだったらどんなデザインに合うとか、それをずっと追求していくことが必要ですよね。
その時々で、デザイナーとしては先シーズンのこのスビンTシャツが好きだったけど、でも着ているとこんなところが気になるとかもっとこうだったらいいのにというのが出てきて、それをどうしたら良いかと、ずっと追求していくことでいいものって生まれてくるだろう思います。ずっと追求することで、良いと思うものと悪いと思うものの違いが作り手なりに分かってくるというか。それは自分たちでずっと突き詰めて、いろんな面を見ているからこそ判断できることですよね」(中出)

 

 

 

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photo : Ryuhei Komura

text : Yukina Moriya