JOURNAL

上質なカットソーと美味しいお米
洋服と食の共通点(後編)- Phlannèl

21AWコレクションのデリバリーがスタートしたPhlannèl。今対談ではPhlannèlのデザイナーを務める浅川とBLOOM&BRANCHウィメンズディレクターの中出が、Phlannèlらしさを形作るかなめとなる価値観について語り合います。
後編では、良い素材を使ったベーシックなものづくりを白いご飯のようだと例えた中出に、その真意を聞きました。上質な大人の日常着を目指すPhlannèlの服だからこそ、食にも多くの共通点があることに気付かされます。

 

 

 

 

良い素材を見極めるのは食も服も同じ

 

 

ベーシックなものを良い素材でつくること、そしてそれらを自分たちの感性でよりよいものにアップデートしながら作り続けることでPhlannèlらしいアイテムは誕生していきます。そんなPhlannèlに対し、中出はどんな印象を持っているのでしょうか。

 

「Phlannèlそれだけの主張で楽しむっていうよりは、それと何かの合わせで楽しむもの、だけどずっと持ってたいアイテムとか着続けたいアイテムだと思ってPhlannèlを買うことが多いです。メインディッシュというよりは白いご飯のような存在で、美味しいおかずには産地や炊き方に拘った美味しいご飯を合わせたいですし、美味しいご飯はそれだけでも、梅干しや納豆などストイックな合わせでも美味しいですから。そんなふうに、全体を支えるものだからこそ、拘りを忘れたくないなというものですね」(中出)

 

「日常で長く着ていただきたいというブランドのコンセプトにすごくしっくりくる表現ですよね。メインディッシュっていうとお肉とかお魚だと思うんですけど、ご飯って、主役ではないですけど毎食なくてはならないというか、日常で食べない日もあるけれど欠かすことは出来ないじゃないですか。そんな存在になれたらいいなとは思っています」(浅川)

 

「白いご飯って正直いかようにも出来てしまうところなんですよね。パウチになった即席ご飯を買うことも出来る、もうこれでいいかなって思えばなんでもあると思うんですけど。洋服だったら、そこを使い捨てのようなもので代用することってできるし、白いTシャツはどこにでもあるかもしれない、けれど特にカットソーなら肌に触れるものだからこそ、着心地が良いものであってほしいし、一生は着られないとしても長く着ていられるものであってほしいし、その選択には自分の価値観が一番出るから、ちゃんと選ばなければと、Phlannèlを見ていると特に思います」(中出)

 

 

「もちろんメインディッシュに憧れがないわけではないんですけど、両方追うよりは、こういった下支えのアイテムを追求していく方が、自分の得意不得意も含めての良いのかなって思っています。私は白いご飯は毎日は食べないですけど、娘がないと嫌だと言うので毎日炊いています。私は富山の出身で小さい時は実家のお米しか食べていなかったんですけど、新潟の棚田米ってすごく美味しいんですよね。産地でやはりお米も違うなと思いました」(浅川)

 

「私の実家は先代が農家で、今でも田んぼはありますしそこでお米もとれます。なので小さいときはあんまりお米の種類を選ぶ手段がなかったというか、自分のところでとれるお米を食べるのが当たり前でした。でも本当に、新潟のお米って美味しいですよね。旨味が強い気がします。私は里山十帖で食べたお米が忘れられません」(中出)

 

「水の違いなのでしょうか。お米がしっかりしているというか、立体的というか。炊き方でも変わるのでしょうけれど。美味しいお水で炊く方が美味しくなりますし、土鍋で炊いたお米は美味しいし。でもお米自体の違いってあるなあと思いました。それこそスビンと一緒ですよね。素材本来の良さや違いはもちろんあるけれど、突き詰めると料理方法でも本当に様々に変化すると思います」(浅川)

 

 

 

 

 

心から満たされるものを自ら選択すること

 

 

洋服のことを食事や食べ物に例えることが多い中出と浅川。二人にとって、食と服には共通する価値観があるのでしょうか。そこには生活に密接に関わるブランドの理念があるからこその拘りや生活全てに向けられた広い視野がありました。

 

「Phlannèlは特に、生活に欠かせないものだからこそ、食と近いかもしれないです。食と服のどちらにも求めることは私はきっと同じで、そこは無意識かもしれないですが、良い素材を買いたいと思っています」(中出)

 

「平飼いの卵と一緒です。Phlannèlが定番素材として使っているアルルウールは、放牧されて育った羊の毛を用いているもので、それは食べ物でいうならば平飼いの卵のようなものです。生産性を求めてケージで管理されて育ったにわとりの産む卵と、平飼いという健康でストレスの少ない環境で育ったにわとりが産む卵では、味も、そして栄養価も全然違う。そういうのを考えることや求めることにおいては、食に対しても洋服に対しても一緒ですね」(浅川)

 

「そうですね。そこには共通の価値観がありますね。そして結局、私自身はそういう“自分が良いと思うものを選択したい”マインドでいるから、そうじゃないものを食べる方がストレスになるのかもしれないです。心が満足しないというか、食べてよかったと思えないというか」(中出)

 

「気分でこれが着たいとか、これを着るとテンションがあがるとか、精神的にストレスがないことも大事なのかなと思います。Phlannèlにはそういった、テンションをあげるファッショナブルな洋服ってあまりないんですけど。でもそれは他のブランドさんが担ってくれるところでもあると信じているので、私はそのベースとなるもの、良いお米からつくる美味しい白いご飯のようなものを作れたらいいのかなと思います」(浅川)

 

 

「そういった本当に素材の良いものを選ぶということ・行為は、人によってはエッセンシャルなことではないものでもありますよね。ジャンクフードを食べていても別に困っていないし美味しいと思っている、という人もいますもんね。全員が同じ考え方ではないからこそ、私が良いと思って選択していることも、もしかすると多くの人には理解されないかもしれない、とも感じます」(中出)

 

「身を以て体感した人にしか、実感がわかない考え方ではあると思います。でもどちらが良い悪いではないですが、少しでも生活に興味を持って、食べるものを選んだり、着るものを吟味したりする人が増えたらいいなとは思います。その結果、Phlannèlが良いと思って、必要だと思って、購入してくださる人が増えたらいいなと。それは決して高いものがいいということでもなくて、適正価格に素晴らしいデザインを提供しているブランドや素晴らしい食材を提供している農家さんだってありますから。柳宗理さんのデザインは多くの家庭に寄り添う素晴らしいデザインで、それを工業化させ手に届きやすい価格にされていて、本当に素晴らしいなと最近実感しています」(浅川)

 

「そうですね。道具は50年以上先を見て、長い目でものを選ぶことが洋服に比べると容易なのでそういった視点でものを選択したり購入する方は多いでしょうけれど、洋服となるとなかなか難しい部分もありますよね。どうしても、いくら上質でも肌着はある程度消耗していくものでもありますし。でも、そういうものがあることを知ることや、価値観を理解することにも、きっかけというのは必要なので、それは人それぞれですが、気になったら気にしてみる、というのでいいかもしれません。私も、美味しいお米があればという話をしましたが、家のご飯が全てだとも思っていないですし、それだけでは満足できないのでたまには外食したりしたいなとも思います。美味しいお米を食べるにしても、塩結びで良い人もいれば、美味しいステーキ肉とあれとこれと…とたくさんおかずが欲しい人もいるでしょうし、そこには自由があって良いと思います」(中出)

 

 

決して視野を狭めることはなく、様々なものを見て聞いて、取り入れる柔軟性。購入する時や、実際に着て生活する時に自分自身にストレスが掛からずに本当に心地よくあれる洋服を選ぶための鋭い感性。そして心が喜ぶものを選ぶことに妥協しない素直さ。自分の価値尺度を他のどこかに頼ることなく自分の中心にしっかりと持ち、生活全体に共通するものとして大切に育てることで、心の充実度はより一層増していくのだとPhlannèlの洋服は教えてくれます。

 

 

 

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photo : Ryuhei Komura

text : Yukina Moriya