JOURNAL

blurhmsの表現するフレンチとは- blurhms

匿名的なものづくりの中に、ほんのりと見え隠れするのはアメリカやイギリスをベースとしたようなシルエットやデザイン。そんなblurhmsのアイテムの中に一際目を引くモールスキンとブラックシャンブレー素材がありました。王道のフレンチ、だけどどこか普通と違う。そんな特異な素材表現に魅了され完成したセットアップはリバーシブル仕様で、どちらの面を使っても王道のフレンチビンテージを楽しめるような心躍るアイテムになりました。
blurhmsデザイナー村上さんをお迎えし、その絶妙なバランス感覚でたどり着いた別注アイテムについて詳しくお話しいただきました。

 

 

 

 

 

素材は王道のフレンチ
でも、直球の表現はしない

 

 

「僕がイメージするblurhmsは国をあまりイメージ想起させないというか、特定の国にずばっと寄っていかないような、上手いミックス感があるブランドだなと思っていました。そして僕の中ではフランスのイメージというものをblurhmsに対して特に持っていなかった。そんな中で、展示会に並んでいたこの2つの素材が、僕にとってはすごい新鮮だったし、特にモールスキンなんかは、他のブランドがやるアプローチとは全然違うものだったからすごく印象的だったんです。この新しさは、フレンチ好き、ビンテージ好きの人にきっと響くんじゃないだろうかって瞬間的に思って、フレンチの王道的なアプローチの素材を2つ贅沢に使ってみたいというところからスタートしました」(柿本)

 

「今まで、いわゆるフレンチっぽいものって正直作ってこなかったんです。どっちかっていうとアメリカっぽい物が多く、あとUKとかがそこに入ってきたり。ディティールでフレンチを取り入れることはもちろん今までもたくさんありましたが、所謂フレンチワークっていうのはあまり手をつけてこなかったんです」(村上さん、以下敬称略)

 

「フレンチワークに手をつけてこなかった理由はあるんですか?」(柿本)

 

「好きは好きなんです。古着もいっぱい集めていますし。でもなんというか、“観賞用”といった感じで、実際に自分で着ることはほとんどないです。デザインは好きなのにシルエットがあまり好みじゃないんですよね。だからこれまでも、フレンチのディティールを用いながらどちらかというとアメリカっぽいデザインやシルエットのものにそれらを落とし込んでいったものづくりでした。不思議と、フレンチのディティールを引っ張ってきても、アメリカっぽいアイテムに使うとそれは全体としてアメリカのものっぽくなるんです。 “どうフレンチっぽさを残して見せるか”というのが今まであまり上手くできてなかったのかなと思うんですが、今回はそれが素材とデザインのマッチングとして上手くいったから、そういう見え方になったんだろうなと思います」(村上)

 

 

「確かに、ずばりフレンチワークをそのままやろうとしている感じは、ないですよね。だから僕にとっても新鮮に感じたんだと思います。モールスキンなのにこんなに滑らかに薄く作って、原料もいいから光沢もあって、着やすくて。モールスキンなのにこの感じで作るんだ!というのが他にはないと感じました」(柿本)

 

「このモールスキンの生地を作るにあたっては、何回も試作しましたがなかなか上手くいかなくて。でもこの薄さ、この感じがやっと出せたので、これだったらまず自分も着れるな、玄人目線でも戦えるなと。やっぱりモールスキンだったり分厚い生地って格好いいんですよ。本物のモーターサイクルコートだって、飾っているとみんな、すごいなあって感じる圧巻の雰囲気がありますけど、実際には3〜4kgくらいあるあのコートを現代で着れるかっていうと我慢のファッションみたいなところがありますよね。自分がまず着ないっていうのは一番よくないことだし、だからこそ、そこを意識して作りました。あとは出来るだけオールシーズン着られるものということと、ジャケットなので中に何か重ねて着やすいものをと思ってデザインしています」(村上)

 

 

「モールスキンの裏にお願いしたブラックシャンブレーの生地ですが、この杢はちょっと独特だなと。一般的なものよりも柄っぽい感じがしますよね。どうやったらこんな素材になるんですか?」(柿本)

 

「ブラックシャンブレーの方はシャトル織機で織っています。糸は白と黒を撚って打ち込んでいくので、そのときの撚り回数とか打ち込みの本数とかで表情は決まっていきます。ビンテージ物ってもっと薄いものが多くて、グレーに白が入ってるみたいな色なんですが、blurhmsで作っているものは黒に近い濃いチャコールと、ちょっとアイボリー調の白の糸を使っているので濃くはっきりした印象になっているかと思います」(村上)

 

 

 

 

 

王道のフレンチを4パターンで堪能できる
両A面のリバーシブルセットアップ

 

 

「もともとはblurhms ROOTSTOCKのレーベルで出していたこのブラックシャンブレーとモールスキンの素材を、blurhmsのほうで作っていたホスピタルジャケットの形に落としてもらい、さらにそれをリバーシブルで楽しめるようなものにできないかと、依頼させてもらいました。さらにそれに組下のパンツもお願いするという無茶ぶりだったんですが(笑)これまでリバーシブルのアイテムは作られていたんでしたっけ?」(柿本)

 

「過去に何回かはチャレンジしています。でもリバーシブルって生地が2倍になるので値段が高くなるんですね。だから普通は少しでも見合う価格帯になるように吟味するのですが、今回柿本さんはこの2つを使いたいと言ってくれて。自分たちの頭の中にはあっても、インラインで展開するのは正直値段が通るかなと心配してしまうような、スペシャルな素材の組み合わせをやりたいと言ってもらえたことが、僕たちとしてはすごいテンションが上がりました」(村上)

 

「一重のホスピタルジャケットが2つ合体しているわけだから、2着分のジャケットの生地代がかかり、さらに縫製も、2着縫ったものを組み合わせているってことですよね?このクオリティのところまで作り込めて、この金額で出せるのは、ちょっと安いんじゃないかというくらいのバランスですね。表と裏、どちらも本当に綺麗で違和感がないのがすごいと思いました」(柿本)

 

「今回のリバーシブル企画の何が大変だったかというと生地が違うことなんです。だいたいリバーシブルって同じ生地の色違いとかでやるんですよ。生地が違うと縮率とかも変わってきてしまうので。なので今回はまず、生地の状態で洗って乾燥機に入れ、生地が縮んだ状態で裁断するという工程を経ています。僕らは普段から、縮み方が不安な商品は必ず自分たちでコインランドリーに持っていって、家庭と同じ状況で洗濯テストをしています。そうして、洗っても問題ない、縮みを考慮しなくていい商品に仕上げているので、お客さんが普通に家で洗濯してもらっても特別問題が起こることがないようにしています。表裏は完全に同じデザインで仕上げることができて、ボタンのみ、チェンジボタンにしてあるので好きなように付け替えて着てもらえるようにしています。面倒くさいときは、ボタンはそのままで裏返してきてしまっても良いかなって思っています」(村上)

 

 

「ちなみに、パンツの方が難しいっておっしゃってたと思うんですが、パンツのリバーシブルは初めての制作ですか?」(柿本)

 

「前開きがないのはやってましたがこの仕様は初めてですね。そこが結構大変でした。裏側の仕様が結構特殊なんです。普通のパンツって、内側に一枚ボタンが隠れるよう比翼布がついていますよね。その比翼布を、裏面で履くときにも付けてしまうと分厚くなってしまって縫えないんです、そして履き心地も悪い。だから、特殊な仕様になってます。口頭だと説明するのが難しいのですが(笑)」(村上)

 

「ポケットはどうなっているんですか?」(柿本)

 

「ポケットは袋布が2つになってます。1枚にもできたんですけど1枚にすると、表に出てくる生地色と違う方の生地がポケットの内側に見えてしまうので、袋布は2枚にして、完全なリバーシブルになるようにしました」(村上)

 

 

「さらっとこういうことをやってのけるし、製品自体が綺麗すぎてその難しさは全然見えてこないんですけど、聞けば聞くほどすごい技術ですね。これは村上さんみたいな人じゃないとなかなかできないものですね。パンツの形自体はインラインのモールスキンパンツで使われていたパンツが原型で、それをリバーシブルにできる仕様に変えてもらったんですよね?」(柿本)

 

 

「そうです。ウエストがつながっているパターンではなかったので、そこをイージーに変えました。モールスキンのパンツとシルエットは共通なんですけど、やっぱりこれも2枚分あるので、もう一回パターンは引き直して出すところは出して削るところは削って、履き心地のバランスを考え直しています」(村上)

 

「極端に太いシルエットじゃなくて、若干テーパーしているから、ハイウエストで履くとしゅっとした印象になるし革靴にも合わせやすいです。腰を落としてルーズな感じにもできますし、あとリバーシブルだからこそ、裾を折り返して内側の生地を見せて遊ぶスタイリングも楽しめて、これはやりたい放題だと思いました。どちらの面を組み合わせても成立するフレンチビンテージのセットアップなので単純に上下を持っていれば組み合わせは4パターン楽しめるわけです。そこがすごいのに、それ以外にも、単品で着こなしを色々楽しめるなと、さっき実際に着てみて感じました。スタイリングが楽しくなるし本当にテンションが上がりますね」(柿本)

 

ブルー×ブルーを合わせてグラデーションの色合わせ

 

ブルー×ブラックのブルーを合わせたセットアップスタイル

 

「モールスキンの方は硫化なので少しづつ色が落ちていきます。インラインでも色を最初から落としたものを展開していますが、普通の洗濯であれほどまではなかなかいかないにせよ、徐々に徐々に落ちていくはずです。ビンテージと同じようにそういった変化も楽しめると思います。ブラックシャンブレーの方は、モールスキンほどの変化はないですが、もちろん色はフェードしていきますし、糸の撚りがちょっとずつ甘くなったりとか少しずつ毛羽立ったりとか、変化はもちろんしていきます」(村上)

 

ブルー×ブラックのブラックを合わせたセットアップスタイル

 

 

 

 

誰にも気づかれることなく静かに、着実に
時代を超えて作りのいいものを目指して

 

 

先にリリースされたジップスウェットとパックTeeの別注アイテムは、blurhmsらしいアメリカのビンテージを彷彿とさせるサイジングやディティールが盛り込まれていますが、ただ古き良き時代の再現にはならず、どこか上品で落ち着きのある大人のためのスウェットに仕上がっています。blurhmsの目指したイメージを具現化できるようなスウェットとカットソーのレイヤードスタイルを、BLOOM&BRANCHでは提案しています。

 

「僕は村上さんがつくるリバースのスウェットが好きだったし、そろそろジップとか着たいなと思っていたタイミングだったこともあり、自分が今着たいなと思うスウェットを別注させてもらいました。大きく羽織りのように着たらブルゾンのように活用できるジップのスウェットです。仕上がりを見たら最高の出来栄えで、これはいい!ってスタッフみんなで盛り上がってしまい、急遽色も増やしていただきましたね」(柿本)

 

 

「そうでしたね。この生地は、もともと“大人が着れるスウェット”を作りたくて考えたものでした。アメリカンビンテージのスウェットといったら、王道のアイテムが誰しも頭に浮かぶでしょうが、それをもっとブラッシュアップして大人が着れるバージョンにしたいなと。スウェットは表糸・中糸・裏糸で構成されてるんですけど、まずはその表糸を出来るだけ毛羽をとってきれいにしてあげる、そうすることで若干光沢が出るんですね。他にも企業秘密ですが特殊な加工をしています。糸自体も、毛羽が立ちづらいものを使っているんですが、全部その糸で作ると全体が硬くなるんです。なのでバランスを取るために、裏糸(ループになって肌が当たる方)は無撚糸を使ってあげることで柔らかい着心地を実現しています。若干ハリがあるので綺麗な印象にもなり、ウエイト感も頼りなさすぎず、厚すぎずのぎりぎりを狙っています」(村上)

 

「白杢っていうんでしょうか、この色もなかなか珍しいですよね。ビンテージのものよりクリーンさがあるように見えますね」(柿本)

 

 

「ビンテージのスウェットはもうちょっと黄味がかっているんです。当時の糸が少し黄色っぽいんだと思うんです。このblurhmsのスウェットは、最初は白くクリーンな感じで着てもらえると思うんですが、経年変化で少しずつ白に黄色っぽい色が乗ってくるんです。そうなったときにちょうどビンテージライクな雰囲気が出るかと思いますよ」(村上)

 

 

「チャコールはいわゆる後染めなんですけど、内側と外側で糸が違うので、同じ染料で染めてもこんなに発色に違いが出るんですよ。無撚糸ってぼそぼそしているので染料をそんなに吸わないんです。逆に毛羽をとってあげた綺麗な糸の方が染料を吸いやすく、発色がよくなるんですよ。中糸はこのちょうど間くらいの糸を使っているので、表糸との染まりの差が少し出て、ちょっと全体がヘザーっぽい感じの表情になるんですよ」(村上)

 

「確かにハリがあって綺麗な印象なのに、着ると本当に裏が気持ちいい。これも先ほどおっしゃっていたように先に洗いをかけたりしているんですか?」(柿本)

 

「これも製品の状態でタンブラーまで入れています。なので自宅で万が一乾燥機かけてしまったりしてもそんなに縮むことはないはずです。僕自身、スウェットを洗って思いの外縮んでしまい悲しい思いをした経験がたくさんあるんで、そうならないようにって思って作ってます」(村上)

 

「このジップスウェットに合わせるものとして、タートルネックじゃなくてハイネックを合わせるほうがライトな感じでいいかなと思って、今回のパックTeeはこのデザインを作っていただきましたね。もちろん、今回発売になるセットアップのインナーにも合わせられることを考えて色をつけているので、白はどれにも合わせられて万能ですが、ブラックシャンブレーのほうだったら、チャコールのインナーを合わせられるようにと思っています。素材はこれまでと同じですよね?」(柿本)

 

「はい、一緒です。パックTee用にオリジナルで作った超長綿の生地なんですけど、出来るだけ製品染めに見えないような、綺麗な染まり方をする糸を選別しています。その糸を双糸にして使っているので、洗ったときに斜行もしづらいですし、あとは一般的なカットソーのゲージよりはハイゲージで編んでいるので、キックバックがよくなっています」(村上)

 

 

「なるほど。改めて聞けてよかったです。ネック部分がだれてしまうことを心配しているお客様も多そうだったのですが、普通のカットソーに比べたらキックバックがいいということなんですね」(柿本)

 

「そうです。あとハイネックって襟の後ろのところはロックミシンのままにするのが普通ですが、ここも伏せてます。ネックのあいたTシャツはここが見えるので巻いたりすることも多いですが、ハイネックは見えないので必要ないんですけどね。裏返して洗濯したときにちゃんと伏せてあると、『ちゃんと作られてるな』って自分は思うんで、些細なことですが、無意識のうちにお客さんが『長持ちするな、良い商品だな』、『買ってよかったな』って思ってもらえるものであればいいかなと。こういうところはフレンチとかヨーロッパものの意識が強いかもしれないですね」(村上)

 

 

「M-52のチノパンとか初めて見たときはびっくりしませんでしたか?あの時代の技術で、しかもミリタリーものだから使い捨てのはずなのに、ちゃんと折り伏せしていて。そんな作り方しているのを若い頃見たとき、衝撃的でしたね。無名のよくわからないブランドのものが古着屋に並んでいることってあると思うんですけど、そんなものの中でも何故だかやたら作りがいいものとかたまにありますよね。何十年後かに自分たちが作った服が例えば古着屋に並んだとしたとき、そんな一着になったらいいのかなって思います」(村上)

 

これまでありとあらゆるジャンルのファッションを通ってきたと話す村上さん。アメカジもモードもストリートも、興味が湧いたらとことん買って自分で着て、気になる洋服の作りを見て、時には解体して、時代のムードと共に洋服の作りまでをも徐々に吸収してご自身の中に蓄積させていかれたそう、これまでのその全ての経験が、絶妙なバランスで様々な国やジャンルをミックスしながらオリジナリティを追求するblurhmsというブランドを作り上げているのでしょう。

 

 

 

 

photo : Ryuhei Komura

text : Yukina Moriya