JOURNAL

曖昧な中に潜む強さを携えて
- AURALEE

朝起きて、着心地の良いパジャマから、着心地のいい日常着に着替えて、お洒落しよう!と肩肘張らずにさらりとコートを羽織って出かけるときに便利な一着。気合を入れているわけではなく、たおやかなオーラを纏いながらも洗練された印象で街に繰り出すことができる、そんなコートがAURALEEとBLOOM&BRANCHのコラボレーションで完成しました。洋服を着て、その洋服がより一層素敵に見える、そしてそれによって着る人ももちろん素敵に見える、そんな魅力の詰まったAURALEEの洋服。デザイナーの岩井さんにブランドに対する思いを伺いながら、今回の別注コートについてディレクター中出がお話しします。

 

 

 

Interview with Ryota Iwai

 

 

―今回別注させていただいたSHETLAND WOOL DOUBLE-BREASTED COATについて、使用している素材やデザインについて教えてください。

 

今回、レディースで展開するにあたり、サイズ感とバランスを変更しています。着丈を長めにし、ゆるいシルエットで、ばっと羽織ってもさまになるようなイメージで作りました。素材は紡毛の英国羊毛(シェットランドウール)を使用してしっかりと打ち込んだハリコシのあるラチネという素材です。最終工程で縮絨と起毛を繰り返し、さらにボリュームとハリ感をつけた、膨らみのある素材感が特徴になっています。今シーズンのインラインではパンツやシャツを作ったのですが、コートはそれをさらに高密度にしてより硬くボリューム感を出しました。

 

 

―ウィメンズのアイテムを作ることは、メンズアイテムの制作に比べて難しさや思考プロセスなどに違いはありますか?

 

レディースアイテムに対しては常に難しさを感じながら取り組んでいます。メンズであれば僕自身が男性なので、サンプルができたら自分で羽織ってみることができるし、商品になって実際に長く使ってみることによって気づきを得たり、新たな発見が見つかることも多々あるのですが、レディースだとそれができないですよね。男性の僕にとって、女性の気持ちを想像するのはどうしたって難しい部分があります。なので、実際メンズの倍ぐらい時間がかかっている感覚です。

 

―素材をひとつひとつ追求していくAURALEEのようなアプローチ方法は今や多くのブランドがその後ろ姿を追いかけるようになったかと思います。そんな中でも素材に対する向き合い方として、AURALEEらしい、岩井さんらしいことはどのようなところでしょうか?

 

良い素材といっても考え方は時と場合によって変わると思います。僕は洋服全体や着る人の雰囲気を作るため、素材から選び、オリジナルで作っています。

 

―モンゴルやペルーなど、産地へ実際に足を運ぶことによってどんなことが理解できたり、どのようなことがものづくりに生かされているのでしょうか?

 

旅がデザインのインスピレーションになることももちろんあるのですが、実はそれほど多くはなくて。それよりも、現地に足を運ぶことによって、どういう人たちが、どういう風土で、どんな風に動物を飼い、どう刈り取っているのか…そうした実際の姿を見て、知ることを大事にしているということです。そうすることで、原料に対する思い入れがより一層強くなるので。作っていた人の生活や顔が浮かぶことによって、より大事に素材を扱おうと思いますし、この素材の美しさをちゃんと商品にして伝えたいという気持ちになるんです。どの素材もすごく美しい自然の中で育てられていて、それにいつも感動してしまいます。大切に育てられた素材は、当然ですが育てた人の生活の一部になっていて、その姿からもいつも多くのことを学んでいます。

 

―あいまいな色使い、ニュアンスのあるカラーパレットにAURALEEらしさを感じる方はきっと多いはずです。色のチョイスで気をつけていることはありますか?その時の個人的な気分などが濃く表れているのでしょうか?

 

直接的な色はそんなに好きではないので、身につけるものならばもうちょっと馴染む色のほうがいいなと思います。そして、できるだけ上品に見える色味。例えば黄色といっても、今シーズンの気分はベージュが混ざっているようなくすんだ色を使ったり。あるいはピンクでもパープルでもない、ラベンダーがかったピンクのようなものがあったり。そういうどっちつかずのニュートラルな色が好きなんです。“これは何色”というふうにカテゴライズできないような、できるだけどこにも属さない色を考えます。最初は特に意識して色付けはしてなかったんですけど、やり続けていく中で、今まで付けてきた色を振り返ったら、似たような曖昧な色ばかりだったから、結局こういうのが自分は好きなんだろうなと気づいた感じです。

 

 

―ブランドをはじめてから直営店を出店したことで変わったこと、パリコレクションに出てから変わったことはありますか?

 

まずは直営店舗を出したことは、自分にとって大きな変化でした。
それまでは、TシャツならTシャツ、コートならコート、といった風に、製品一つひとつに向き合って、製品それぞれを単体で考えていました。お店を作るようになってからは、自分が求めている世界観がどういったものかちゃんと意識するようになりました。パリでのコレクションも同じで、自分たちの強みが何かを改めて考えるきっかけになったと思っています。AURALEEは素材やクオリティにこだわって、一つひとつ丁寧にものづくりをしているブランドですが、それ以外にもブランドが考える世界観や哲学があるということを、いろんな形で伝えていこうとしているところです。

 

―今最も興味のあることはなんですか。自由な時間があったらどんなことに費やしたいですか?

 

趣味という趣味がなくて、あえていうなら銭湯にいくことぐらい。お風呂だと誰も洋服を着ていないし、唯一仕事を忘れてぼーっとできるので、時間があったら毎日銭湯に行きたいですね。

 

―これから挑戦したいことはありますか?

 

実はこれまで、仕事において“絶対にこれを達成したい”というような目標を持ったことがないんです。できるだけ今のスタンスを崩さず、ブランドを長く続けていけたらいいなと思っています。

 

 

 

AURALEEの哲学とは

 

 

「上質な素材、美しいパターンの魅力というところには、変わらないAURALEEのブランドらしさがあるように感じています。そして曖昧さのある色付けがそこに加わることで、魅力も増していますよね。今シーズンはどんな色があるんだろうと展示会前には楽しみになりますし、実際に新しいコレクションを見ると、こういう色の合わせも可愛いなっていう発見がいつもあるので、そういった色使いには、常にアップデートされるブランドらしさがあるのだなと感じています」

 

 

そんなAURALEEのコレクションアイテムをBLOOM&BRANCHとして提案するとき、どのようなことに重きを置いているのでしょうか。

 

「やはり先ほど言ったようにAURALEEらしい色使いのものが私個人的にも気になりますし、この色とこの色を合わせたスタイリングはきっと素敵だろうなと、コーディネートを想像したアイテムチョイスや色のチョイスをしていることが多いです。他のブランドからは絶対に出てこないような色付けのものも、ブランドらしさが詰まっていますし、店内に並べてもポイントになりますし、そして何よりそういった色使いのアイテムを期待してくださるお客さまも多いので積極的に取り扱わせていただいています。今回もニットやシャツ、ドレスなどでそのような色使いのものを展開させていただいていましたがとても好評でした」

 

そしてそんなAURALEEらしい色使いだけには留まらないAURALEEのブランド哲学の表現方法は、月日を重ねるごとに深まり、進化を続けているのでしょう。

 

「直営店が始まりパリコレにも出るようになってからは、色使いや素材のクオリティ、パターンの技術だけに留まらない、しっかりとしたAURALEEとしての意思を感じるデザインの提案があるなと感じるようにもなりました。ベーシックなアイテムはブランドが始まった頃からありますが、それらを壊したりすることはなく、そういった素晴らしいものづくりにプラスされる形で、デザインや遊び心や、ブランドの哲学というものをより追求した提案をされているんだろうと感じています。そういったブランドとしての変化にはとても刺激を受けますし、わくわくします。そういった高揚感は、もちろん直接お洋服を見て、袖を通すお客さまにも伝わっているからこそ、長く支持され続けているんだろうと思います」

 

 

 

 

ざっくりと羽織って、
何気ない日常を共にできる一着に

 

 

そんなAURALEEとの別注コートの発売は実に3年振り。シェットランドウールを使ったラチネの素材がディレクター中出の目に新鮮に映り、ばさっと羽織れる分量感のあるメンズのコートをウィメンズ仕様にお願いしました。

 

 

「今回別注させていただいたアウターはもともとメンズのコレクションで展開されていたものです。展示会へ行くと
AURALEEの場合はいつもブランドの方が丁寧にコレクション一つひとつのアイテムや素材について説明してくれますが、このシェットランドウールを見たときに『これって本当にシェットランドウール使われているのかな』っていうくらい、一般的にイメージするがさっとした素材感や野暮ったさがなく、クリアな見た目で、着てみたいなと純粋に感じさせてくれた素材でした。この素材を使ったコートはメンズで展開があったのですが、たっぷりして動きのある雰囲気が優雅で素敵だなと見惚れました。鮮やかなコートがコレクションアイテムには多かった中でAURALEEらしいトップから色付けされたカラーも目を惹き、このコートをウィメンズサイズで作ってもらえないだろうかとお願いしました」

 

 

「メンズのコートを試着したときにも重さは感じず、分量感のあるシルエットが素敵だったので、最初にサンプルを作ってもらった時はメンズサイズの肩幅などを調整しただけにしたんです。そうしたらやっぱり不格好になってしまったので、もう少しレディースっぽく、全体的にパターンを小さく調整してもらっています。ただ、最初にメンズを羽織ったときのような分量感や、何気なくばさっと着て出かけられるようなイメージはそのままにしています。ボリュームはありますが、ボタンの色も変更してもらい生地に馴染むものにしてもらったので、かっちりしたきれいめな印象でも着ていただけるようになっています」

 

着心地のいい服を着て、ばさっとコートを羽織り、近所を散歩する。あるいはカフェにモーニングを食べに行く。そんな何気ない日常の中で、気張らずともスタイリッシュでモダンに羽織れるコート。自分たちの暮らしをより一層意識するようになった今だからこそ、そんな日常のワンシーンに手に取りたいコートになったのではないでしょうか。

 

 

「朝気持ちのいい服に身を包んで、その上からばさっと羽織ってコーヒーを買いに行ったり、お散歩をしたり。そんなときに重たいコートは着たくないですよね。かと言ってスポーティーなものを着てみると思った以上にカジュアルになってしまったりもします。なので、あくまで上品に、そして何より自然に、ばさっと羽織って出かけたいなっていう思いがありました。フロントを閉めてかっちり着ていただいてももちろん素敵なんですが、イメージ的には、そんなラフな着こなしが浮かびます」

 

着心地の良いScyeのニットスウェットのセットアップにラフに羽織り、AURALEEのベビーカシミヤニットをアクセントに。朝起きてから心地よい洋服に包まれながら散歩に出かけるイメージ。

 

「ブランドらしくこのコートを着るとしたら、淡いトーンや綺麗な色使いで着てあげるほうが素敵かなと思います。ただ、デニムを履いたりスウェットだったり、カジュアルな着こなしにさっと着るくらいがすごく格好いいなと思います。トレンチコートのようにどんなスタイルにもはまるアイテムですが、モノトーンのスタイリングに普通のトレンチコートを羽織ると単調でつまらなく見えてしまったりするところに、このグレーがかったベージュのニュアンスはちょっとした奥行きとオーラを与えてくれると思いますよ」

 

素材に相性の良い色でポイントになるようなボタンに変更したデザイン。AURALEEのタートルネックにシャツのレイヤード。パンツも同じくAURALEEのレザーパンツでシックな色合いでまとめています。フロントを閉めたクラシックな着こなしもおすすめです。

 

落ち感や滑らかさの際立つコートにはない、クリーンで力強い意思を感じる素材の魅力。そしてばさっと気張らずラフに羽織れる使いやすさ。特別な時ではなく、ささやかな日々の積み重ねの中に自然に入り込む上質さは真に“本物”であり、本当の“贅沢”を味合わせてくれるものになるはずです。

 

 

 

 

photo : Ryuhei Komura

text : Yukina Moriya