JOURNAL

日々追い求めるものを信じたものづくり
- PHLANNÈL SOL

フレンチビンテージの中でも市民権を得ているモーターサイクルコートをベースに、今の時代によりフィットさせた日常着としてPHLANNÈL SOLでリリースしているコート。今回は新たな取り組みとして、フレンチビンテージに造詣が深く、BLOOM&BRANCHでも長くお付き合いのあるOUTILデザイナーの宇多さんに生地提供を依頼。時代にフィットしながらも、ますます意味深く、そして長く着ていくことの楽しさを見出せるような一品が完成しました。そんな特別なアイテムの発売を前に、Phlannèlデザイナーの浅川、BLOOM&BRANCHディレクターの柿本がOUTILアトリエに訪問、お話を伺いました。

 

 

 

 

オリジナルを目指しながら
さらに良いものを

 

 

「PHLANNÈL SOLのモーターサイクルコートは、私がBLOOM&BRANCHの店頭で販売されていたビンテージのモーターサイクルコートを改めて見たときに、簡素化されたディティールがいいなと思って、そのデザインをベースにパターンを起こして現代のコートとして提案している一着です。素材に関しては、もともとのコートは重いし着づらいのでそれを取り払って全く別のものとして提案していました」(浅川)

 

「ただ、モーターサイクルコートってフランスのビンテージの中でも多くの人が知っている定番的なアイテムで、だからこそ、宇多さんにオリジナルのコートをより彷彿とさせるような生地を作ってもらえたら面白い化学反応が起きそうだよねって会議の場でぽつっと僕が発言したんですよね。それでお願いしたら快諾していただけて。元のコートの匂いは残しつつも、今着たい雰囲気のものを作って欲しいという感じでご依頼しましたね」(柿本)

 

 

「そうですね、だからちょっとオリジナルの要素を残しながらということなのかな、と僕なりに解釈して作りました。新しく作った生地に関しては、僕が定番にしようと思って作った通称“OUTIL-2”という生地があるんですけど、それをベースにしています。この“OUTIL-2”は、平織で限界の高密度の生地を作ろうと思い作ったもので、さらにそれを先染めにして奥行きのある生地の表情を出したいなということ考えました。経糸と緯糸をかなり近い色だけど微妙な色差をつけて染めるというのがポイントで、それによって生地に奥行きが出るんです」(宇多さん、以下敬称略)

 

「なるほど。この“OUTIL-2”だと緑っぽい糸と赤みのあるベージュっぽい糸が見えますね。これは綿麻でしたよね?」(柿本)

 

 

「はい、緯糸に麻を打っているので素材による色差もあります。これを応用して、今回のモーターサイクルコート用にはコットン100%で織りました。柿本さん、浅川さんと話していた時、もっとオリジナルに近くてもいいのかなと思ったので、経にはGIZAコットンの双糸を、緯には太番手のムラのある単糸を打って、厚みと肉感を出した感じです。その番手差によってオリジナルに近いようなムラ感も出ているかと思います」(宇多)

 

「普通、コットンの素材だと生地は縦に縮むことが多いのに、この生地はすごく横に縮んだんですよね。ワンサイズくらいの縮みが出て、それが不思議だなと感じていました」(浅川)

 

 

「本来は経糸が勝つことが多いんですけど、これは双糸の緯糸に対して太番手の単糸なので、洗った時にそっちが縮んでぐっと入ってきて縦はあまり縮まないです。多分横に縮むだろうって予想はできましたけど、僕も作ってみないとわからないです。縮率も本来は3%くらいに抑えるのが普通だと思うんですけど、僕が好きな生地を作ると5-8%くらい縮むものもあります。たとえ縮んで、形が少しいびつになっても、それがネガティブなことだけでは無いですからね。古い生地ってだいたいぎゅっと縮んでそうなっているものなので、もっと自由に生地を作ってみても良いかなって思って最近は作っています。密度が高いものが好きだから、『限界まで』っていう言葉を使いがちなんですけど、出来るだけ多く打ちたいんですよね。そうすることで他には見ない表情になると思うし、その分ちゃんとエレガントに仕上がると僕は思っていて、なるべく密度は高くということを考えています。今回のものもあえて太番手を打っていますけど、その割に密度は高いです」(宇多)

 

「織り方は“OUTIL-2”がシャンブレーとおっしゃっていましたけど、今回のものはオックスでしたよね?それはオリジナルの雰囲気を再現するためにというところでの判断ですか?」(柿本)

 

「そうです。オリジナルに近づけながらもよりいいものをっていう着地点を目指しています。オックスって、個性が出づらいというか奥深さが出しにくい生地だなと個人的には感じていました。だから今回は長く仕事をしている西脇で織ってもらっています。信頼できる職人がいて、これどうする?って話をして、糸はこうしてみましょうかと一緒に相談しながら、ちゃんと個性が出て良い表情になるものを目指しました。洗うとその風合いがより出てきますよね」(宇多)

 

 

「Phlannèlってどちらかというとカジュアルな素材で綺麗に仕立てることが多かったので、今回はPhlannèlとしてはとても珍しく製品洗いをしました。すごく良い表情が出て嬉しいですし、いい意味で普段のPhlannèlには絶対にないような雰囲気になりました」(浅川)

 

「僕もお話をいただいたとき、Phlannèlのイメージは綺麗な生地を作って、綺麗な洋服を作っている印象だったので、僕が綺麗な洋服を目指して作っても違うんじゃないかなって。程よくミリタリーで、でもそれなりにきちんと上品さも出てよかったなと思います」(宇多)

 

「このモーターサイクルコートのオリジナルの生地って意外と色も統一されてないじゃないですか。着心地もめちゃくちゃ硬いものがあったりリネンやコットンや色々あると思うんですけど、どのあたりを目指したというのはあったんですか?」(柿本)

 

「そこに関してはそんなに意識してないです。50年代以降のフレンチアーミーに関してはそんなに生地に惹かれることも少なくて、そこを目掛けて作りたいとは思ったことないかもしれないです。色に関しては、オリジナルの生地でもベージュっぽかったり茶色に近いものとか色々個体差があると思うんですけど、僕がその中でもこれくらいのトーンのものが好きだなというのがあって、そんなイメージでは作っています。だから特に年代が古ければいいとか、何年代を目指そうとかそういったアプローチではなかったです」(宇多)

 

 

 

土地に根差す素材の理由を理解して

 

 

モーターサイクルコートと合わせ、モーターサイクルパンツをベースに制作したパンツも同時リリースとなります。より現代の生活に馴染むよう、貫通式のサイドポケットは袋布をつけ、裾についたバックルを省くなど簡素化された仕上がりになっています。

 

 

「このパンツのさらに古いものというか、原型と思われるパンツを持っていますよ。1910年代のミリタリーの真っ白のリネンのパンツです。これは陸軍で、BOURGERON(ブージュロン)というフレンチアーミーの作業着があるんですが、そのパンツですね。これがのちにモーターサイクルのパンツになったのかと思います。ベルトも取れてなくなってしまっていますが裾と同じバックルが付いていました。この頃のフランスの軍モノを見るといいなって思うんですよね」(宇多)

 

 

「こういうリネンの高密度な素材って日本ではあまり見かけないですよね。フランス特有なんでしょうか?」(浅川)

 

「日本で作られている大麻を使った生地を先日見ましたが、その生地見てると日本の麻やヘンプ生地もどこか海外に通じてるのかなと感じました。北フランスからベルギーにかけては世界でも有数の麻の産地のはずなので、原料が手に入りやすかったと思います。古いフランス軍のものはリネン100%があって、綿麻や徐々にコットン100%になっていったということなんだと思います」(宇多)

 

 

「フランスの古いものにも、リネンにする必要は別になかったってものが多いですよね。身近にリネンがあったから、たまたまリネンを使っていただけって感じがありますよね」(柿本)

 

「身近にあるもので作ったということでフレンチミリタリーにはリネンが使われているものが多いんだということだと思います。歴史を紐解くと素材の理由、デザインの理由も見えてきて面白いですよね」(宇多)

 

 

 

誰と会い、どこで作るか

 

 

素材に地域性や風土が反映されているように、製品の生産背景にもその土地その土地で培ってきた技術があり土地性があります。その個性を見極め、自分の作りたい世界観や、自分自身のものづくりの姿勢に共鳴するパートナーを見つけるところまで、妥協ないものづくりが行われています。

 

「今回のこの生地は西脇で織られているとのことですが、コートの生産は新潟で縫ってもらっています。ずっとモーターサイクルコートを生産してくれている腕の良いコートの縫製工場です」(浅川)

 

 

「僕はもともと生まれも山口ですし、経歴的に西の方で作ることが多かったので、今でも日本生産のものに関しては半分くらいは岡山や広島の工場で生産しています。北の方はなんだか自分の馴染みも薄くって、しっくりこないことが多いんですよね。西にあるミシンも限られているし、こっちで作ったらこんな面構えになるって大体限られてきてしまいますけど、でもそれで良いのかなって気もしています。作ってくれている人の顔もほとんどわかるようになりましたし、イメージしやすいのはいいことなのかなと」(宇多)

 

「Phlannèlは真逆で、東北の工場で作ることが多いんですよ。だからこそ、宇多さんの生地との組み合わせって新鮮さもありました」(浅川)

 

「そうですよね。北の方で作っているものはその個性があるのでなんとなくわかります。たまに、綺麗な面のコートなどを作ってみたいなと思う瞬間もあるんですけど、僕より得意な方がいるんだからあえてそこをやらなくてもいいのかなってやめてしまいます。だからOUTILのコートはもちろん原料はできるだけ良い原料を使って密に打ち込んだ良い生地を使っていますけど、それを単純に綺麗に仕立てようとかはしていません」(宇多)

 

「ものづくりにも土地の個性が現れるということでいうとやっぱりOUTILはフランスのものづくり、フランスの生地作りが欠かせないと思います。前回のBLOOM&BRANCHの別注生地を作ってくれたフランスにいる若い男の子との話が僕は印象に残っていますが、数週間前にまたフランスに行かれていたとき、彼には会えましたか?」(柿本)

 

 

「今回も会ってきましたよ。次に作りたい生地の話をしてきました。僕が最近たまたま買ったベルベットの古いベストがあって、その裏地がインディゴだったんですよ。なんでインディゴなんだろうって思ったのと、僕がファーストシーズンにすごく似た生地を作ったことがあったので、こんなに似ている生地が昔フランスにもあったんだ!というのが面白いなって思ってまた作ってみたいなと。その彼にベストを持っていって、その場で解体して今度これ作ろうよって話をしてきました」(宇多)

 

「僕その生地覚えていますよ!こうやって古いものに似た生地が見つかることもあるんですね、すごく面白いですね。次に出てくるのが楽しみです」(柿本)

 

「その時はもちろんいいと思ってコレクションに使って出しましたが、やっぱり日本で織るのとフランスで織るのとでは全然雰囲気が違うと思うんですよね。それは空気の違いとしか言えないんです。フランスの彼は古いションヘルを使っているから、仮に尾州のションヘルを使っても似たような生地はできるはずなんです、でも、フランスと尾州ではやっぱり違うんですよね。だから今自分がフランスで作ったら、ファートシーズンに自分が作った生地とどれだけ違うものが作れるかなって。基本的には好きなものは変わらないので、見る人から見れば、同じことをずっと繰り返しているだけって思われてしまうかもしれないですけど、でも6年7年積み重ねてきたものによる違いってすごくたくさんあると思っています。今僕と仕事をしてくれているパートナーたちと協力して作ったらどんな風合いのものができるだろうって、すごく楽しみです」(宇多)

 

 

「そうやって、仕事をするパートナーもそうですし、自分自身のフィーリングの合う土地土地でものづくりをすることも、たとえばこのアトリエにしたって自分の好きなものを置いて自分らしい空間を作ってそこに身を置いてデザインをするとか、全てが繋がっていて嘘がないなと私は感じました」(浅川)

 

「やっぱり環境は大切ですよね。僕は、自分がストレスを感じないってことが一番だと思っていて、ストレスってやっぱり作るものに出てくると思うんです。だったら、自分の周りに出来るだけストレスにならないものを置いて、そういう場所で仕事したいなって。たとえばカップ一つとっても、手にとってなんか違うなって感じるものより、口に当たる感じが好きとか、誰が作っているものでちゃんと愛着があるとか、そういうもの一つひとつをしっかり見ていたいです」(宇多)

 

 

 

 

photo : Ryuhei Komura
text : Yukina Moriya