JOURNAL

今こそ、欠かせないブルーのかたち
- Phlannèl

今シーズン“青のコレクション”をテーマに様々な素材が織りなす美しいブルーのグラデーションを展開するPhlannèl。そのコレクションに欠かせなかったアイテムの一つがデニムでした。Phlannèlとしてデニムを作るとき、果たしてどんなデニムがふさわしいのだろうか?——王道アイテムだからこそ、Phlannèlだからできる表現を目指してできた新作デニムについて、今回のJOURNALではデザイナーの浅川にインタビューしました。

 

 

Phlannèlとして表現できるデニムの姿とは?
バナナ繊維という選択

 

 

「ずっとPhlannèlではデニムを作らないんですか?と言ってくださる方も多かったんですが、私自身、デニムは日常的に本当によく履く一方で作ることには抵抗がありました。Levi’sという絶対的な王道デニムがあるからこそ、好きな人が突き詰めて究極の一本を生み出すようなイメージがあり、私には太刀打ちできないなと。そんなことを考えている中で、この22SSコレクションの構想を練っている時に美しい青の世界に感銘を受けたことからブルーのグラデーションで構成されたアイテムを作ろうと思い、そこにデニムは欠かせないだろうと思ったんですよね。もしデニムをやるなら、Phlannèlとして表現できるものをやろうと思いました」(Phlannèlデザイナー浅川)

 

かつて2015年の秋冬コレクションでPhlannèlではデニムを作ったことがありました。その当時のアイテムを今でも履いている人の姿を目にし、経年変化したデニムの持つ風格を目の当たりにした時にも、改めてデニムというアイテムの魅力に惹かれていったと話します。

 

「2015年の秋冬に、Phlannèlではシルクコットンのデニムを一度作っていました。くったりした表情がとても格好よかったので、改めてデニムっていいなと思えたきっかけのひとつでした。そのデニムはコットンをベースにシルクが12%入ったもので、オンスもしっかりした厚さがあったしシルク特有のぬめり感があってとても肌触りがよかったんですが、秋冬にはぴったりだろうけど夏だとちょっと履きづらいかもしれないなと思ったんです。なのでコットンと掛け合わせることで夏に快適に履けるデニムってどんなものだろうと、生地屋さんと話している時に見つけたのがバナナの繊維が入ったデニムでした」(浅川)

 

 

「このPhlannèlのデニムにはふたつ特徴があって、その一つがその素材ですよね。バナナ特有のネップがいい表情になっていて、バナナ繊維ならではのカリッとした肌触りがドライな印象です」(中出)

 

 

「まだまだ認知度の低いバナナ繊維ですが、もともとは廃棄されるバナナの茎を有効活用できないか?という観点から開発された繊維だそうです。私も知らなかったのですが、バナナはとても生命力の強い植物で、生育過程で出てくる新芽を残して茎は伐採されるそうなのですが、それが年間10億トンにもなっているのだそうです。焼却処分をするにも環境への負荷が大きく問題になっていたものを、再利用する方法を模索して誕生したのがバナナ繊維だと知りました」(浅川)

 

ドライな質感はリネンと似ていて独特のネップの表情が目を惹きます。水を吸うと繊維が膨らみ中に空洞ができるので吸湿性にも優れているのだそうです。

 

バナナ繊維を使った特有のネップの表情は、経年ともに落ち着いていきます。
バナナをイメージしたイエローのミミがポイントに。

 

「ただ、バナナ繊維だけだと繊維長が短く耐久性の弱い素材になってしまうのと、ドライタッチな反面ちくちくとした肌あたりはとても肌に気持ちいいとは言えないものになってしまう。なので、基本的には他の素材と掛け合わせて使われるのだそうです。バナナの特徴的なネップ感はビンテージライクでPhlannèlのアイテムとも相性が良さそうだなと思い、今回のデニムができました。オンスも11.4ozと軽いので、夏でもからりと履きやすいものになっていると思います」(浅川)

 

 

「ワンウォッシュの方は特に素材感が際立ちますね。ブリーチカラーの方はネップ感がほとんどないですが、経年変化はどうなるのでしょうか?とても楽しみですよね」(中出)

 

「洗っていくと濃紺の色は少しずつ落ちてもう少し青味が出てくると思います。洗いをかけるごとにネップ感も少しずつ落ち着いていきます。リネン混のデニムは洗っていくとくったりと落ち感が出ていくと思いますが、それよりはこの紙のようなぱりっとした表情が残りやすいかと思っています。リジッドデニムを一から育てるという観点からはずれますが、今出ているこのワンウォッシュの濃いネイビーと、ブリーチの浅いブルーのカラーに直感的に惹かれたり、どんな気分でどんな色を合わせたいかを考えて手にとってもらえたらと思います。私自身、そんな感じでその日履きたい気分のものを選ぶ選択肢の中の一つにデニムがある、という感じで好きな時にいつでも好きなデニムを履いています」(浅川)

 

 

 

オーセンティクでリラクシーなシルエット

 

 

デニムに特化したブランドとして発足したKIJIのデザインを手がけるディレクターの中出。かつてJOURNALのインタビュー内でも自身が作るデニムへの思いを話していました。

 

「前にスタンダードアイテムについて紹介した際にも話したことですが、デニムといえばLevi’sを超えるものがないと感じている中でどういったアプローチができるだろう、どんなものを作ることでお客様の生活の中で活躍するデニムが作れるだろうと考えたとき、『Levi’sのデニムが似合わない』という自分のコンプレックスはKIJIのデニムをデザインする上でのアイディアの発端にはなりました」(中出)

 

 

「私も、Levi’sのデニムは好きなのに、体型に合わずにどうしても野暮ったくなってしまって履きこなせないなと思うコンプレックスがありました。私が普段から愛用しているものはデニム専業ブランドやファクトリーブランドのものではなくてファッションブランドがコレクションの中の一つとして展開しているデニムばかりです。その方が、デザインが施されているがゆえの格好よさがあったり、自分のスタイルに相性がよかったり、そのときしたい着こなしの気分も反映できたりするんだなと。単純に正攻法のデニムだけが正解ではなく、その人の日常に合えば、それがその人にとってのベストなアイテムになるだろうと、自身を振り返ってそう感じたんです。だからPhlannèlとしてデニムを作りたいなと思った時には、ファッションアイテムの一つとして、日常に手に取りやすいものがいいなと思ったんです」(Phlannèlデザイナー浅川)

 

「その履きやすさ、シルエットというのがこのデニムのもう一つのポイントですよね。Phlannèlアイテムとの相性の良い大人しいデニムで、オーセンティックな着こなしにはまる一方で、ゆるめの腰回りのシルエットがどんな体型の人にも履いていただきやすいものになっていますよね」(中出)

 

Cotton Banana Denim (Bleach) / ¥30,800-

 

 

「デニムを履くなら、例えばウディ・アレンの映画の中のようなオーセンティックな着こなしで普段からラフに着こなしたい、ジャケットを合わせたりもしたい。そう思ったらやっぱり5ポケットが一番使い勝手はいいだろうなと思いました。ただその中でもちょっとゆるめのシルエットを履きたい気分でもあったので、80〜90年代のデニムのアーカイブを引っ張ってきながらデザインを考えていきました」(浅川)

 

ジャストサイズよりもサイズを上げてルーズに履いたデニムのシルエット特有の腰回りのゆとりをイメージしながら、ただシンプルなストレートにせず、テーパードの効いた懐かしいシルエットで調整していくことで、リラクシーなムードを持ちながらもルーズにならない独特のデニムが完成しました。

 

「元にした昔のデニムはテーパードがきつく効いていて、それを大きめのサイズで履いて裾をクッションさせて履く着こなしを昔していたようなものでした。そのゆるいシルエットが今気分だなと思ったのですが、テーパードの効いたシルエットは履く人をすごく限定してしまうので、誰でも着やすいバランスを考えて調整していきました。オーセンティックな着こなしで、革靴などに合わせて欲しいというスタイルがベースにあるので、裾もクッションさせずジャスとレングスで履ける長さを意識しています」(浅川)

 

Cotton Banana Denim (One Wash) / ¥28,600-

 

「大きめのサイズを選んで腰を落としてもいいですし、ジャストなサイズを選んでハイウエストでベルトをしめた着こなしもどちらもできそうです。私は今回はブリーチカラーを結構大きめのサイズで履いていますが、ルーズに見えすぎないシルエットが履きやすいなと思いました。私自身はヒップ周りが強調されて見えるデニムに苦手意識があるのですが、このデニムはヒップが小さくてコンプレックスがある人も、逆の人にも、本当に履きやすいと思いますよ」(中出)

 

どんな体型の人にも寄り添ってくれるデニム。そしてあくまで日常着のデニム。気負いなく、ラフに楽しめるさりげない配慮が散らばる一本になりました。

 

「デニムに通常ついているフラッシャーも、あると店頭では目を引きますが、結局外して捨ててしまうだけなのでゴミになってしまいます。だったらその代わりにと、今シーズンPhlannèlでデザインしたシルクのスカーフ柄をつけたバンダナをさすことにしました。15AWで作ったデニムにも、オリジナルのバンダナがさし込まれていましたのでそのデニムへのオマージュでもあります。デニムのポケットにさすバンダナ一つにも、その人の個性が出ますので、デニムを履くときにも、ポケットにビンテージバンダナをさすのか、このPhlannèlのバンダナをさすのか、あるいは何もささないか、履く人それぞれの個性が出る場所であったらいいですよね」(浅川)

 

 

 

 

 

 

photo : Ryuhei Komura
text : Yukina Moriya