JOURNAL

その土地に根付く綿
- Phlannèl

Phlannèlの夏の定番素材のひとつとなっているアメリカンシーアイランド×リネンシリーズ。“奇跡の綿花”と称されるアメリカンシーアイランドコットンと、リネンを交織して出来上がった素材は、リネンならではのシワ感やナチュラルな風合いに、アメリカンシーアイランドコットン由来の滑らかで上品な光沢が加わっています。からりとした素材感は着用を繰り返すごとに柔らかくとろみを増していき、肌離れもよく丈夫。
夏にぴったりのそんな素材について、日本に流通する全てのアメリカンシーアイランドコットンを栽培から管理しているシーアイランドクラブ株式会社へお伺いし、“奇跡の綿花”の成り立ちや特徴について紐解きながら、素材の魅力に迫ります。

 

 

 

 

 

アメリカンシーアイランドコットンは
日本にしかない?

 

 

一つの洋服を出来るだけ長く、大切に着ようとするマインドの消費者が年々多くなる中、どんな素材が使われたアイテムなのかまでに興味関心を寄せる方も少なくないはずです。そんな人にとってはよく耳にするシーアイランドコットンという名前。全ての超長綿のはじまりとなる品種です。非常に名前が似ているシーアイランドコットンとアメリカンシーアイランドコットンは、それぞれどんな特徴がある素材なのでしょうか?

 

「シーアイランドコットン(=海島綿)は超長綿の中では一番歴史のあるコットンです。スビンやギザ、ピマコットンなど超長綿にも様々な種類がありますけれどみんなもとを辿ればシーアイランドコットンとの掛け合わせでできた素材なのです。こういった意味で、シーアイランドコットンは超長綿のオリジナルという品種になりますよね。そのシーアイランドコットンと全く同じDNAを継承しながら、研究開発されたのがアメリカンシーアイランドコットンです」

 

 

シーアイランドコットンはカリブ海に浮かぶ島で育った綿花が起源となるコットン。のちにその栽培地域はアメリカの東海岸へと広がり、アメリカのシーアイランドという地名から、この綿花に『シーアイランドコットン』という名前がつきました。

 

「その後、アメリカで発生した害虫被害によりアメリカ産のシーアイランドコットンの栽培が断絶してしまうことになりました。この時点ではシーアイランドコットンの栽培地はカリブの島国、いわゆる西インド諸島に限られてしまいます。この素晴らしい品種を再びアメリカの地で育てることはできないだろうかと、我々が現地の州立大学の研究開発に加わる形でカリブ産のシーアイランドの種を持ち込み、開発したのがアメリカンシーアイランドコットンということになります。アメリカンシーアイランドコットンは、アメリカのニューメキシコにあるエルパソという地域で栽培しているもので全て契約栽培です。育った綿はわたの状態で我々が買い上げ、日本の協力紡績工場に持ち込み紡績し、糸にして責任を持って販売していますので、世の中にある全てのアメリカンシーアイランドコットンは栽培から完全なトレーサビリティを確保しています」

 

 

 

 

気候風土がもたらす素材の特徴

 

 

シーアイランドコットンと全く同じDNAを持ち、そのほかの種と交配されることのないアメリカンシーアイランドコットンは唯一無二の素材。そんな特殊な素材の特徴はどのように表れてくるのでしょうか。

 

「カリブ産のシーアイランドコットンのDNAを100%継承しているものではありますが、育てる環境の違いによって綿のキャラクターは全く変わってくると思います。一つはカリブの島国、一方はアメリカ内陸部の砂漠地帯です。どちらも超長綿の栽培に不可欠な日照時間と日照強度がありとても綿の栽培には適した場所といえます。ただ、カリブは日中と夜の寒暖差があまりなく、アメリカのエルパソは砂漠地帯ですから日中と夜の寒暖差が激しいんですね。そんな土地でもきちんと育つ綿花を研究開発した結果、その土地のキャラクターを反映したアメリカンシーアイランドコットンが完成しました。どちらも超長綿ですから非常に繊維長が長いのは特徴です。繊度(=繊維の太さ)はカリブのシーアイランドコットンの方が細く、アメリカンシーアイランドコットンの方が太くなっています。繊維長が長く、そして太い品種というのはとても珍しいんです。それが何よりのアメリカンシーアイランドコットンの特徴と言えると思います」

 

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アメリカで再びシーアイランドコットンを育てようと始まった研究開発。その土地に根差す植物たちが、その土地の気候風土に引っ張られ、自ら持つ綿花のキャラクターと響かせ合い、新しい魅力を持った品種が誕生したのだと話は続きます。

 

「例えばカリブ産の種をそのままアメリカの畑に持っていって植えてもまず花は開かないですよね。同じ品種と言っても遺伝的に多少のばらつきもあります。その中から様々な条件の種を植え、よく育つものや、育った品質の良いものを選抜していき、アメリカという土地で育ち、品質がよく、そしてなにより農家さんにとっても収穫量がとれるものでなければなりませんから、そういった全ての条件を満たしたものが最終的に出来上がっています」

 

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こうしてできたアメリカンシーアイランドコットン。その綿花の持つ特徴は、生地として織り上げられたときにも表れます。

 

「Phlannèlのアメリカンシーアイランド×リネンシリーズは、タテ糸にリネン、ヨコ糸にシーアイランドコットンを用いています。リネン100%の素材はナチュラルな風合いの特徴がありとても魅力的な面もありますが、シワになりやすかったりなど実用に際して気になることもありました。アメリカンシーアイランドコットンを交織することで、リネンとの間で適度なクッション材となり、膨らみ感がありながらも上品な光沢感がもたらされ、さらに長く使うことで変わる表情も楽しめる。そして何より丈夫で、とても互いの素材の良い面を引き出しあっているなと感じました」(Phlannèlデザイナー浅川)

 

 

着用と洗濯を繰り返すことでとろとろ柔らかな素材の表情が立ち現れ、肌離れもよく快適で、湿度の高い日本の夏場も快適に着用できる素材。そんな素材の魅力をより伝えられたらと今シーズンからはメンズのイージートラウザーが新しくシリーズに加わりました。

 

American Sea Island Linen Easy Trousers / ¥37,400-

 

「リネンとアメリカンシーアイランドコットンとを合わせた素材の特徴は、やっぱりアメリカンシーアイランドコットンだからこその風合いが出ているのかなと感じています。これが他の超長綿だとこういった膨らみ感もでないのかなと」(浅川)

 

「やはりあえていうならカリブ産の超長綿のほうがしなやかさがあると思います。逆にアメリカンシーアイランドコットンのほうは繊維が太く強いと先ほど申し上げましたが、そのおかげでやはり膨らみ感が出ると思います。例えばタオルなどふんわりとした風合いを目指す製品には適していると言えるかもしれません。実際に、アメリカンシーアイランドコットンを使用したタオルというのは製品化されているのですが、全く同じ条件で作られた別の超長綿の糸を使用したのタオルとでは嵩高が全く異なり、アメリカンシーアイランドコットンを使用したものがふんわりと嵩高感がありました。ただ一方でいうならば、ブロードなど、より繊細で光沢感のある素材を作りたいとなると、カリブ産のシーアイランドコットンの方が適しているかもしれません。どんなものを目指すのかによって、使い分けていただけたらと思います」

 

 

 

 

アメリカの土地ならではの栽培方法は
環境負荷をも減らす

 

 

気候風土の違いの他にも、アメリカの土地ならではの栽培方法の違いもあるのだそうです。

 

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「テキサスとニューメキシコ州の間あたりにあるのが、現在アメリカンシーアイランドコットンを栽培しているエルパソという街です。ここに土地を持つあるご家族がいるのですが、そのひと家族に我々は毎年これだけの量を栽培してほしいとお願いし、作ってもらっています。アメリカンシーアイランドコットンは彼らだけが栽培していて、種も他に流出しないようなやり方にしています。この土地は、綿花の刈り取りの時期(10月〜11月)になると霜が降りて、その寒さで植物全部が枯れます。コットンは、育成がとまるとコットンボールが開くのですが、この寒さによって一気にコットンボールが開くのです。そのため、ピッカーマシンという機械が畑に入り、一気に刈り取り作業をすることが可能になります。通常は、こういった機械を畑にいれるために薬品などがまかれ、人工的に植物を枯れさせるのですが、最終的な段階でそういった薬品などを撒くと残留農薬の問題など、環境負荷がとても高くなってしまいます。最終段階で薬品を撒かずとも自然の力でコットンボールを開かせることができるのは、この土地ならではのもう一つの特徴です。それゆえにカリブのシーアイランドコットンよりも生産コストを抑えることができ、比較的に手に入りやすい価格での流通が可能になっています」

 

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カリブのシーアイランドコットンに関しても、シーアイランドクラブ株式会社と契約を結んでいる農家との契約栽培となり、栽培から紡績、そして糸になるまでの日本の流通を管理しているのです。

 

「カリブ産のシーアイランドコットンは、現在はジャマイカの契約農家で栽培しています。ジャマイカの方は土地の性質上、アメリカのように一気にコットンボールを開かせることもできないので、3ヶ月程度の長い時間をかけて現地のピッカーが全て手摘みで収穫をしています。収穫時期は周辺のコミュニティにピッカーを募り、皆で協力して収穫をしていますが、現地の経済的な状況の改善にも役立っているということで、ジャマイカ大使からももっとシーアイランドコットンを広めてほしいということで、お手伝いをいただいたりもしています」

 

「我々のやっていることはファッションの原料を作ることですが、農業の方に片足を突っ込んでいるようなスタンスですね。相手はやっぱり農作物ですから。」というのは今回お話をお伺いしたシーアイランドクラブ株式会社の伊藤さんと藤井さんの言葉。現地に赴き、実際にその土地を歩き、栽培状況を目で見て、素材に向き合う姿勢は毎年進化を続けるアメリカンシーアイランドコットンの品質が物語っているように感じます。

 

American Sea Island Linen Pullover Shirt / ¥27,500-

 

 

Phlannèlとしては4シーズン目のアメリカンシーアイランドリネンの商品が今年も到着しました。

 

 

 

 

photo
*1~5 : シーアイランドクラブ株式会社
Other : Ryuhei Komura
text : Yukina Moriya